こんにちはー!亀飼育者でアクアリストのK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。
なかなかの長期にわたって連載している「オーバーフロー水槽の自作方法」ですが、そろそろ終盤に差し掛かってきています。オーバーフロー水槽システムが完成して生体を導入するまで、もう少しお付き合いください!
連載「オーバーフロー水槽の自作方法」
- オーバーフロー水槽を自作!水槽に給排水用の穴をあける方法を解説
- オーバーフロー水槽自作!塩ビパイプを配管するための台座を接着する
- 水槽用バックスクリーンの効果・役割と貼り方を画像と動画で解説!
- 自作オーバーフロー水槽配管(設計編)―ポンプやろ過槽の選び方
- 自作オーバーフロー水槽配管(加工編)―給排水管・シャワーパイプ
- 自作オーバーフロー水槽配管(組立編)―ろ過槽と塩ビ管接続~通水
- 擬岩コーナーカバーの作り方(骨組み編)爬虫類・アクアリウム水槽に
- 擬岩コーナーカバーの作り方(モルタル造形編)爬虫類・アクアリウムに!
- 爬虫類・アクアリウム水槽用擬岩バックボードの作り方まとめ
- アクアリウム水槽レイアウト用・流木の作り方!複数本を固定しよう
- 水棲亀の照明・保温-紫外線ライト・ヒーターの選び方とおすすめ製品
- 中国製ライトスタンド+ワイヤーで作る水槽用照明システム
- 亀も棲むアクアテラリウムの作り方!流木と配水チューブで水槽に渓流を
これまでの連載は、こちらの通りまとめてあります。前回は、この水槽で飼育するニホンイシガメに必要なライト・ヒーターなどの照明・保温システムの構成を検討しました。
今回はそれを踏まえて、実際に水槽にライトやヒーターを設置していく様子を紹介します。特に、ライトスタンドに少し特殊なものを使用しているため、そのあたりのセッティングを中心に紹介します。
照明・保温システムを構成する飼育用品
まずは前回のおさらいとして、この水槽で使用するライト・照明器具をもう一度紹介しておきましょう。水棲亀の飼育を念頭に置いたアクアテラリウムなので、一般的なアクアリウムで使用するライトとは少し選定の基準が違います。詳しくは前回の記事を読んでくださいね。
ライトスタンド:豪華型不銹鋼伸縮吊架
今回のライトスタンドは、紫外線ライトの設置位置を考えると高さが最大で60cm程度必要です。日本製のライトスタンドでこの条件を満たすのは、コトブキの「ライトアームスライド」しかありません。
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コトブキのライトスタンド・ライトアームスライド30~60をレビュー!
コトブキ工芸のライトスタンド ライトアームスライド 30~60を購入して使用した上でレビューします。総評として、良いところは使い勝手と安全性、悪いところはデザインと言えます。メンテナンスしやすさを重視する人におすすめです。
こちらのページでレビューしているとおり、一度購入して使ってみたものの、デザインが好きになれなかったので中国から「豪華型不銹鋼伸縮吊架」というライトスタンドを個人輸入しました。
このライトスタンドは、よくあるアーチ型のライトスタンドとしても使用できますが、2つ目の写真のように左右を分割して水槽の背面に取り付けることも可能です。この設置方法がおしゃれで気に入ったのと、高さも45~60cmの間で無段階に調整できるという性能が決め手でした。
紫外線ライト:ZOOMED パワーサンUV 100W
爬虫類の飼育で欠かせない紫外線灯には、ZOOMEDのパワーサンUVを使用します。紫外線の放出量とコストのバランスが優れる「水銀灯」の中でも、可視光線も十分に発していて観賞に耐える色温度の光を放つパワーサンを選びました。
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ZOOMEDの爬虫類用紫外線ライト・パワーサンUVを徹底分析
カメやトカゲなど爬虫類を飼育する際は紫外線ライトが欠かせません。紫外線ライトの中でも水銀灯に分類されるZooMedのパワーサンUVについて、ラインナップや適合する灯具を始め、競合製品との性能\比較や使い方などを徹底的に解説します。
パワーサンUVの性能面の詳細については、こちらのページで詳しく説明しています。
紫外線ライト用灯具:エキゾテラ ライトドーム 18cm
パワーサンを点灯させるための灯具には、エキゾテラ(GEX)のライトドームを使用します。パワーサンが100Wなので、150Wまでのライトを使用できる18cmのほうを選びました。水銀灯を装着できる灯具は他にもZOOMEDなど各社が販売していますが、ツヤ消しの塗装が気に入ったライトドームにしました。
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エキゾテラ ライトドームをレビュー!長所・短所や類似製品との比較
カメやトカゲなど爬虫類の飼育にはライトやヒーターを使いますが、ライト等の使用には灯具が必要です。爬虫類飼育用の灯具からエキゾテラのライトドームシリーズを取り上げ、長所・短所や実際の使用感、類似製品との比較等をまとめます。
ライトドームについてもっと知りたい方は、併せてこちらのページも読んでみると良いと思います。
ヒーター:ビバリア エミート NEO CL 60W
バスキングスポットの温度を適切に保つためのヒーターには、セラミックヒーターのエミートNEO CLを使用します。爬虫類飼育用のセラミックヒーターとしては定番の商品で、通電しているときに色が変わるため火傷のリスクが多少低いです。
ヒーター用灯具:カミハタ クリップスタンド テラ
ヒーター用の灯具にはカミハタの「クリップスタンド テラ」を使用します。他にあまり見ないメッシュデザインがスタイリッシュで好きです。割と昔から、セラミックヒーターなどの灯具にはこのクリップスタンドを使用していて、ある意味お気に入りの品みたいな感じです。
可視光ライト:カミハタ ヴォルテス ホワイト
過去の水槽からの使い回しですが、可視光線を補うためにカミハタのヴォルテスを使用します。パワーサンUVはスポットライトであり、60cmワイド水槽全体を照らすには照射範囲が狭いです。基本的に陸上はパワーサンUV、水上はヴォルテスで照らすことにしますが、ヴォルテスについては今後何か別のライトを新調することも検討しています。
プログラムタイマー・サーモスタット:タイマーサーモ
爬虫類飼育における、ライトやヒーターの管理で欠かせないのが「タイマーサーモ」です。時間に応じて電源のON/OFFを自動で行う「プログラムタイマー」と、温度に応じて電源のON/OFFを自動で行う「サーモスタット」の両方の機能を備えた飼育用品です。
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爬虫類飼育の必需品!タイマーサーモで温度と照明を一元管理
爬虫類飼育では必要不可欠とも言える、照明と温度を連動して一元管理できる飼育用品「ジェックス タイマーサーモ」を紹介します。名前の通り、タイマーとサーモスタットが一体化した製品で、照明点灯時(昼)の目標温度と、照明消灯時(夜)の目標温度を別々に設定できます。
詳しくはこちらのページで解説していますが、時間帯によってサーモスタットの設定温度を切り替える、なんてことも可能です。爬虫類の飼育環境で、昼夜の温度・明るさに差をつけることで生活リズムを整える、重要な役割を果たします。
中国製ライトスタンド:豪華型不銹鋼伸縮吊架の特徴
さて、上記で紹介したライト・ヒーター関連の飼育用品の中でも、特殊なものを選んでいるのが「ライトスタンド」です。なんせ中国から個人輸入しているので、あまり日本での使用例はない製品です。どんなライトスタンドなのか簡単に紹介しておきましょう。
購入から開封まで
今回購入したのは、俊星光電気科技という企業の「豪華型不銹鋼伸縮吊架」というライトスタンドです。中国の大手通販サイト「AliExpress(アリエクスプレス)」で購入し、日本まで送ってもらいました。注文から到着までは9日程度だったので、中国通販の中では大きなトラブルなくスムーズに輸送されてきたと言えるでしょう。
届いた時の状態がこちら。なぜかテープでぐるぐる巻きにしてありますが、中国通販ならこんなもんでしょう。しかし三角形のやたら変な形をしているのと、なんだか透けて見える字が明らかに途中で切れているのが気になる…。
テープを全部取り除いた状態がこれ。うん、半分に切ってますね。送料対策でしょうか。さすがの雑さです。でもむしろ、中国でもこんなちゃんとした外箱に入れて売ってるんですね。そっちのほうがびっくりしたかも。
こちらは裏面。説明書になっているんだと思いますが、途中で切られてるので読めない…。これはちょっと困りますが、まあ雰囲気でなんとかするしかありません。
内容物と仮組み
とりあえず内容物を確認していきます。半分に切られた段ボール外箱の中に、以下のものが入っていました。
当然のように説明書の類はありません。パーツを色々はめ合わせてみて、とりあえず仮組みをしてみます。
仮組みをしてみた状態がこちらです。そこまで苦労なく組み合わせることができました。今はL字部分が真横になってますが、本来はカメラ側にL字が突き上がってくる配置になります。
左下の長方形の形をしたパーツが、ガラス水槽を挟み込む土台部分です。3箇所にネジが付いていて、このネジを締めることでガラス水槽に固定します。この土台パーツには、1本の直管型のステンレスパイプを固定でき、その先にL字のステンレスパイプをはめ込んで、2つのパイプはネジで締めて固定する仕組みです。
L字のステンレスパイプの先の方に付いている金具は、ライトを吊り下げるためのワイヤーを通すための金具です。ワイヤーは付属していませんでした。
ライトスタンドを開封して仮組みまでした感じでは、このままだと使い勝手が悪そうなポイントが2箇所ほどあります。以下で、K-kiが気になった2箇所を改善するかんたんなDIYの方法を紹介していきます。
①ガラス水槽を傷付けずにライトスタンドを固定できるようにするDIY
1つ目のDIYは、ガラス水槽への固定箇所です。上の仮組み状態の写真でもわかるように、水槽のガラス板をそのままステンレスネジで締め込む構造のため、ガラスを傷つける恐れがあります。
また、このように土台パーツにステンレスパイプを固定しているネジもガラス面に接触します。一応平面になるように工夫されていますが、多少凹凸があるので気になります。
コトブキのライトアームスライドだと、この部分はゴムシートを貼って樹脂ネジで締める、というような工夫がされていたので、それを参考に改善していきます。
用意するもの
このDIYには以下のものを使用します。
ゴムシート
ガラス板を挟み込む土台パーツの内壁のうち、ネジ穴があいていないほうにはゴムシートを貼ってガラスを保護します。1mm×50mm×300mmのものをホームセンターで購入しました。
塩ビアングル
ネジ穴があいているほうは、ゴムシートを貼ってもネジが突き出てくると剥がれてしまうので、ガラス板との間に塩ビアングルをかますことにします。これもホームセンターで購入しました。
ゴムシートをカット
作業は簡単です。まずはゴムシートの方を、土台パーツの大きさに合わせてカットします。
こんな感じですね。大きい側だけを使用します。
ゴムシートを土台パーツに貼り付け
カットしたゴムシートは、土台パーツの内壁のうちネジ穴があいていないほうに貼り付けます。左側が貼付け後、右側が貼り付け前です。こういう小さな心配りが中国製品にはないんですよね。
塩ビアングルをカット
次に塩ビアングルをカットします。
長さを土台パーツに合わせた上で、L字の片側はガラス厚に合わせて短くカットしておきます。こうして作ったパーツをガラス板とステンレスネジの間に噛ますことで、ステンレスネジが直接ガラスに触れなくなり、ガラス板を傷つける心配がなくなります。
②ライトを吊り下げる高さを調節できるようにするDIY
2つ目のDIYは、ライトの高さを調節できるようにするものです。そもそも、このライトスタンドではワイヤーが必須ですが付属はしていないので、いずれにせよ多少の工作は必要です。
用意するもの
ライトをワイヤーで吊り下げるためには、以下のものが必要です。
ワイヤーロープ
当然ながらワイヤーが必要ですが、太さの指定はありませんでした(ダンボールの切り取られていたところに書いてあるのかもしれませんが…。)。今回はφ1mmのワイヤーロープを使用しましたが、特に問題は起きていないので1mmで大丈夫だと思います。
リーズロック
ワイヤーの長さを調節できる便利な道具がリーズロックで、高さ調整の肝になります。ワイヤーの太さに合ったものを使用します。
オーバルスリーブ
オーバルスリーブは、ワイヤーにかしめて太さを変える道具です。後で説明しますが、ワイヤーが穴から抜け落ちないようにするために使います。
ワイヤーにオーバルスリーブをかしめて固定金具に通す
まずはワイヤーを適当な長さにカットし、片側をオーバルスリーブでかしめます。その後、ライトスタンドの固定金具に空いている小穴にワイヤーのかしめていない側を通します。
こんな状態になればOKです。
ワイヤーをリーズロックに通して締める
次に、ワイヤーを通した固定金具を、ライトスタンドに通す大穴のあいたパーツに締め付けます。また、ワイヤーのフリーになっている側に、リーズロックを通して輪っかを作ります。
これでライトを吊り下げる準備は完了です。ライトを設置する際は、輪っかの部分にライト側のフック等引っ掛けられる部分を通して吊り下げましょう。リーズロックを使い輪っかの位置を調整することで、ライトを吊り下げる高さを変えることが可能です。
なお、φ1mmのワイヤーとリーズロックの組み合わせでは、約8kgの荷重に耐えられるます。ほとんどの照明器具はこれで大丈夫だと思いますが、もっと重いものを吊り下げる場合はワイヤーを太くする必要があります。
この吊り下げパーツをライトスタンドに取り付けた状態がこちら。これで、ライトスタンドのDIYは完成です。
水槽にライトとヒーターを設置する
ライトスタンドのDIYが完成したので、いよいよ水槽に照明器具やヒーターを取り付けていきましょう。…とは言っても、あんまり順を追って説明するようなこともないので、いきなり設置後の写真を載せちゃいます。
向かって右側が、エキゾテラのライトドームにZOOMEDのパワーサンUVを取り付けたもので、左側はカミハタのヴォルテスです。また、右側の土台部分にはクリップスタンド テラにエミートNEO CLを取り付けたヒーターを設置しています。ただし、このあと微妙な位置調整を繰り返した結果、クッリプスタンドは右側の支柱のもう少し上の場所に移動させています。
画面中央の一番下ギリギリのところに見えるキスゴムは、タイマーサーモのセンサーです。このセンサーが検知する温度でヒーターのON/OFFが決まるので、取り付け位置が非常に重要です。ただ、センサーをホットスポットの真下に設置できないため、センサーの検知温度とホットスポットの温度は絶対に一致しません。ホットスポットが35℃のときに、センサーはだいたい30℃だったので、サーモスタットの設定温度は30℃にしています。
ちなみに、今回の中国製のライトスタンドを導入する前に、コトブキのライトアームスライドを使っていたときの写真がこちらです。ライトスタンドが水槽よりも大きいので、異様な存在感がありますね。やはりライトスタンドを変更して正解だったと思います。
ただし、コトブキのライトアームスライドも決して悪いライトスタンドではないです。ゴムシートや樹脂ネジが付属していて細部まで細やかな配慮がありますし、構造的にも頑丈で安心感は高いです。ライトスタンドに求めるものに応じて、自分の気にいる製品を選ぶための参考程度に考えてください。
YouTubeでも水槽用照明システムの解説を配信中
今回紹介した中国製ライトスタンドを軸としてリーズロック等を使い利便性を高めた水槽用照明システムの設置方法については、YouTubeで動画の形でも配信しています。
このブログではライトスタンド周りを詳しく解説しましたが、YouTubeではライトやヒーターの設置位置の決め方ももう少し丁寧に説明しています。特に爬虫類を飼っている人には役立つ知識が多いはずなので、ぜひYouTubeで動画を見てくださいね。また、このブログで紹介してきたオーバーフロー水槽の作り方も同様に動画にまとめているので、そちらに興味がある人もどうぞ!
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自作オーバーフロー水槽の照明システム製作まとめ
今回は、中国から個人輸入した俊星光電気科技の豪華型不銹鋼伸縮吊架について紹介するとともに、少し手を加えてアクアリウム水槽で安全・便利に使用する方法を紹介しました。海外通販での購入なので少しハードルを感じるかもしれませんが、英語さえ読めれば大した苦労はありません。梱包が雑なのは中国通販では常識なので、そこはおおらかな気持ちで受け入れましょう。
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亀も棲むアクアテラリウムの作り方!流木と配水チューブで水槽に渓流を
アクアテラリウムを作るために必要な飼育用品の選び方、レイアウトにおける構図の考え方・作り方を解説します。自作オーバーフロー水槽を使用したアクアテラリウムで、亀の飼育も可能です。飼育生体や水槽・ライト等も全て紹介します。
水槽と照明の準備が整ったので、次回はいよいよ水槽を立ち上げていきます。以前作った流木に配水チューブを固定し、水上部分に苔を植えアクアテラリウムを作り上げる予定です。ぜひ、次の記事も読んでくださいね!
電気を使用する製品は、国内外で規格が違うため海外製品をアクアリウムに導入するのは難しいですが、ライトスタンドのような電気を使用しないものであれば、少し手をかければ問題なく使用できます。中国製品と入っても価格的にも特に安いわけではありませんが、デザイン面はいろいろなものがあり選択肢を増やすことができるので、ぜひ試してみてくださいね!