最強のコケ取り生体・ヤマトヌマエビの飼育・繁殖・混泳法

ヤマトヌマエビの飼育・繁殖・混泳

ヤマトヌマエビは、アクアリウムで飼育される生き物の中でも、かなり有名なものの一つです。淡水性のエビの仲間では比較的大型で食欲が強く、水槽に生えた糸状のコケをよく食べてくれることから、コケ取り生体として重宝されています。

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入手しやすく飼育も簡単なエビではありますが、繁殖の難易度がかなり高いとか、どんなコケでも食べてくれるわけではないなど、導入に際して注意しておくべきポイントもいくつかあります。

このページでは、ヤマトヌマエビをアクアリウムに導入し、コケ取り要員として活躍してもらうために知っておくべき知識をまとめます。

ヤマトヌマエビとは

和名・流通名 ヤマトヌマエビ
学名 Caridina multidentata
英名 Yamato shrimp
Japanese shrimp
Amano shrimp
Algae shrimp
分類 エビ目(十脚目)ヌマエビ科ヒメヌマエビ属
原産地 インド洋~西太平洋沿岸部にある多くの国・地域(日本も含む)
飼い易さ ★★★★★
値段(1匹) 100円程度~
最大体長 5cm程度
寿命 10年程度
遊泳層 底層
生息環境 川の上流にある渓流または中流域
適合する水質 水温:20~28℃
pH:6.0~7.5
特徴 淡水性のエビとしては比較的大型で、メスは最大で6cm程度まで成長する。体の側面には黒~赤茶の斑点模様が入る。

ヤマトヌマエビは、エビ目ヌマエビ科ヒメヌマエビ属に分類される小型のエビです。アクアリウムでは、コケを食べてくれる「コケ取り生体」として非常に有名で、ADAの提唱するネイチャーアクアリウムのような水草主体の水槽で特に重宝されます。

その人気は国内だけでなく、海外でも高いです。ADAがネイチャーアクアリウムとともに世界に広めたエビであるため、故・天野社長の名を冠し”Amano shrimp”とも呼ばれています。

形態

オスで体長3~4cm、メスは4~6cmと、淡水性のエビの中では大型の部類です。体色はほぼ透明ですが、個体によって淡い青みや緑がかかったようになる場合もあります。体の側面には黒~赤茶の斑点模様が入り、この斑点模様は雄の場合点線、メスの場合は破線のような形状となるため、雌雄の区別にも使えます。また、尾の広がっている部分(尾扇)には、黒~青色のスポット上の模様があります。

アクアリウムでヤマトヌマエビと並びよく飼育されるエビにミナミヌマエビがいますが、ヤマトヌマエビはミナミヌマエビと比較して大型であることから、コケを非常によく食べてくれます。

生態

ヤマトヌマエビの成体は、渓流や河川の中流域に生息していますが、卵から孵化した体長1.5mm程度のゾエア幼生は、海まで流されて海水環境で成長します。幼生が成長するためには塩分が必要なため、海または汽水域まで流されなかった場合は生きていくことができません。このため、通常の淡水水槽内では繁殖は不可能です。

ゾエア幼生は水中を漂うプランクトンとして生活し、脱皮を重ねて成長します。そして体長4mm程度まで成長すると、稚エビとなり浮遊せずに水底を歩き回って生活するようになります。ここまで成長した稚エビは、水底を歩いて成体の生息地である河川の上流もしくは中流を目指して遡上を始めます。つまり、ヤマトヌマエビは海で成長して川に遡上する両側回遊型の生き物であるということですね。

成体の食性は雑食性で、水槽に生えるような藻類(コケ)や生物の死骸、有機物が分解されて粒子状になったデトリタスなどを食べます。場合によっては、生きた生物を捉えて食べる場合もあります。

流れに逆らって遡上する両側回遊型の生き物であるため、水槽内でも流れに逆らって泳ぐ性質が強いです。また、流れの強いところでは、川べりの少し水がかかる程度の場所を歩いて移動するという性質も持っているため、水上を歩く能力も高いです。

そのため、ちょっとした足がかりから水槽外へ歩いて逃げ出してしまうこともあり、注意が必要です。

ヤマトヌマエビの分布・生息地・生息環境

ヤマトヌマエビは両側回遊型のエビであり、ゾエア幼生は海流に乗って広い範囲に分散します。従ってその分布域は広く、日本をはじめ、インド洋~西太平洋沿岸部にある多くの国・地域に生息しています。

前述のとおり、成体は河川の上流にある渓流または中流域を主な生息環境としています。そのため、高水温やそれに伴う酸欠には弱い一面を持っています。また、エビ類全般に言えることですが、農薬などの影響も受けやすいです。特にアヌビアスの仲間には農薬が残留していることが多いことが知られ、水槽に入れた途端ヤマトヌマエビの様子がおかしくなってしまう場合もあります。

ヤマトヌマエビとミナミヌマエビの違いとコケ取り能力

ヤマトヌマエビはアクアリウム水槽のコケ取り要因として利用されることが多いですが、同じく水槽のコケ取りに利用されるエビとして有名なものに、ミナミヌマエビがいます。


水槽のコケ取りエビとして知られるミナミヌマエビ

これら2種のエビは、性質が少し違うため、どちらをコケ取り生体として利用するかは少し考えた上で決めるようにしましょう。この項目では、ミナミヌマエビとヤマトヌマエビのどちらをコケ取り生体として使うかを決める際に参考となる、これら2種の違いを解説します。

体長の差

ヤマトヌマエビの体長がオスで3~4cm、メスで4~6cmなのに対し、ミナミヌマエビの体長は2~3cm程度です。この体格差は、体力や餌を食べる量に直結してきます。

基本的には、大型のヤマトヌマエビの方が、小型のミナミヌマエビに比べて餌を食べる量が多く、体力があるため水質変化にも多少の耐性があります。

水槽内での繁殖可否の違い

両側回遊型の繁殖を行うヤマトヌマエビは、幼生の成長に海水が必要であり、水草水槽のような淡水水槽では繁殖出来ません。一方、ミナミヌマエビは一生を淡水域で過ごす陸封型のエビであり、水槽内でも繁殖が可能です。

飼育の楽しみという面では、繁殖を観察できるミナミヌマエビの方が楽しいと思います。

コケ取り能力はヤマトヌマエビの方が高い

アクアリウムのコケ掃除役として考えたときには、より大型で食欲の強いヤマトヌマエビのほうがコケ取りの能力が高いです。

一方、ミナミヌマエビは小型であり一匹一匹のコケ取り能力ではヤマトヌマエビに敵いませんが、水槽内で繁殖させ数を増やすことにより多少のカバーは可能です。ただ、それでもヤマトヌマエビの方がコケ取りの能力では優れます。

ヤマトヌマエビは小型卵・ミナミヌマエビは大型卵

ヤマトヌマエビの卵は非常に小さく(直径約0.5mm程度)、産卵数は多いです。一方ミナミヌマエビは、卵は比較的大型(直径約1mm程度)で産卵数は少ないです。

これは、未発達なゾエア幼生を大量に産んで母数を増やすことで、成体になれる確率は低くても種としては生き残れるというヤマトヌマエビの生存戦略と、比較的生存率の高い成長した稚エビを生むことで、少数精鋭で生き残りを目指すミナミヌマエビの生存戦略との違いを反映しています。

エビの仲間では、このように産卵数と卵の大きさが反比例するという現象が広く見られます。

ヤマトヌマエビの飼育方法

ヤマトヌマエビは日本にも生息しているエビであり、気候的な面では、夏場の高水温に気をつければ大きな問題なく飼育できる飼いやすいエビと言えるでしょう。このエビは、コケ取り用のタンクメイトとして水槽に導入されることが多く、丈夫であまり手がかからないのは大きな長所と言えるでしょう。

基本的な飼い方

基本的には、ある程度身を隠せる水草の生い茂った水槽で飼育します。ただ、体長がそれなりにあるため、中型以上の魚でなければヤマトヌマエビを捕食したりはしないので、あまり気にしすぎる必要はありません。

コケ取り生体としての働きを重視するのであれば、エサを与えすぎないように注意し、ヤマトヌマエビが水槽に生えたコケを積極的に食べるような状況を維持しましょう。

水質

エビの仲間ではあるものの、大型で体力もあるヤマトヌマエビは、水質への順応能力が高く、極端な低pH環境や高濃度のアンモニアが存在する場合を除き、水質が合わずに致命的なダメージを受けることは少ないです。ただし、水質の急変化には弱いため、特に導入時の水合わせは点滴法などを利用して慎重に行いましょう。

飼育の際には、水温20~28度、pHは6.0~7.5あたりを目安に水質を整えていくと良いでしょう。

エサ

ヤマトヌマエビは雑食性で、藻類(コケ)、生物の死骸やデトリタスなどかなり幅広いものを食べます。基本的には水槽内で勝手に餌を探してきて食べているので、「ヤマトヌマエビのための餌」は特に与えなくも問題ありません。混泳魚に与えた餌の食べ残しなどで十分です。

また、ヤマトヌマエビは手足が非常に発達しているという点で、アクアリウム水槽の中でも特別な存在です。この特徴により、タブレットのような塊状のエサを与えると、塊をまるごと抱えて水草の陰に隠れてしまい、独り占めする様子がしばしば見られます。

従って、ヤマトヌマエビと、コリドラスなどのタブレットタイプのエサを食べる魚を混泳させる際には、エサを多少崩した状態で与え、ヤマトヌマエビに独り占めされる可能性を減らすのが良いでしょう。

脱皮殻は放置で良い

死体か!?と思わず焦るミナミヌマエビのきれいな抜け殻
ミナミヌマエビの脱皮殻

ヤマトヌマエビをはじめとしたエビの仲間は、脱皮殻を食べる習性があります。脱皮殻は水質悪化の原因になると勘違いして取り除く人もいますが、エビに食べられるなどして分解されるためあまり気にしなくて良いでしょう。なにより、脱皮後のエビにとって貴重なカルシウム源になるとも言われているため、むしろ取り除かないほうが良いと思います。

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ヤマトヌマエビが食べるコケの種類や前準備

アクアリウム水槽におけるヤマトヌマエビの最大の役割は、やはり水草などに付着する藻類を食べ、水槽内の景観を美しく保つことです。この項目では、このエビがどのようなコケの除去に向いていて、どのようなコケと相性が悪いか、その傾向を紹介します。

緑藻・アオミドロなどの糸状藻

ヤマトヌマエビが特によく食べるのは、緑藻やアオミドロなどの糸状のコケです。これらの糸状藻に対しては、非常に高いコケ取り能力を誇ります。

この手のコケは水草の葉などから生えてくることが多いため、水草の密に茂った水槽では大きな力を発揮します。

薬剤で弱らせた藍藻や黒髭コケ

藍藻黒髭コケなどの特にしつこいコケに対しては、ヤマトヌマエビは絶対的なコケ除去能力を持つわけではありません。

ただし、黒髭コケに酢を塗ったり、藍藻にオキシドールをふりかけたりすると、これらの藻類を弱らせることができます。このように薬剤等を使って弱らせたコケに対しては、ヤマトヌマエビはかなりのコケ取り能力を発揮します。しつこいコケを根本退治する際には、薬剤とこのエビの合わせ技は非常に有効です。

珪藻類には効果が薄い

その反面、珪藻などの流木やガラス面にこびりつくように付着するコケに対しては、ヤマトヌマエビは十分なコケ取り能力を発揮できません。この手のコケは、オトシンクルスなど別のコケ取り生体を利用して除去するのが良いでしょう。

おすすめの混泳熱帯魚と相性の良いコケ取り生体

ヤマトヌマエビは少し大きめの体長ではありますが、エビなので性格は温和で、多くの熱帯魚と混泳することが可能です。ミナミヌマエビと比べると多少肉食傾向が強く、弱った魚を食べてしまうことがあるとも言われますが、私の飼育している限りではそのような事例はありません。

基本的にはどんな魚とも混泳できるので、ここでは特に相性の良い魚・悪い魚だけをピックアップして紹介します。

コケ取り能力をカバーし合える熱帯魚と相性が良い

ヤマトヌマエビは緑藻やアオミドロをよく食べますが、その他のコケについては上記のとおりコケ取り能力が高いわけではありません。そこで、珪藻類に強いプレコ・石巻貝・オトシンや、藍藻をよく食べるブラックモーリー、黒髭コケを食べることで知られるサイアミーズフライングフォックスなどと組み合わせると、幅広いコケをカバーすることができます。

サイアミーズ・フライングフォックス(Crossocheilus oblongus)
ヤマトヌマエビが食べない黒髭コケを食べることで知られるサイアミーズフライングフォックス(Crossocheilus oblongus / Usien)

ただし、コケがないとこういった生き物にはエサが不足して厳しい環境になる場合もあるので、コケも生えてないのにコケ取り生体ばかり豊富にするのはおすすめしません。

攻撃的・肉食傾向の強い魚との混泳は避ける

比較的大型な種類とは言え、ヤマトヌマエビも所詮はエビなので、大型で攻撃的・肉食傾向の強い生き物には食べられてしまいます。アクアリウムで飼育される魚だと、例えばベタや金魚、エンゼルフィッシュなどとの混泳は危険です。ヤマトヌマエビを大事にしたいのであれば、混泳は避けるのが無難でしょう。

ちなみに、私は以前、実験も兼ねて飼育しているニホンイシガメとヤマトヌマエビを混泳させてみましたが、やはり食べつくされてしまいました。当たり前ですが、亀との混泳も避けましょう。

ヤマトヌマエビの繁殖方法

既に述べたとおり、ヤマトヌマエビの幼生が稚エビまで成長するためには、海水または汽水の環境が必要です。このため、ヤマトヌマエビの繁殖はやや手間がかかり難易度も高めになります。

しかし、実はこの手の繁殖に海水が必要な生き物はアクアリウムで飼われるものの中にも多いため、身近なヤマトヌマエビで練習しておけば他の生物にも応用が効き、繁殖させられる生き物の幅が広がります。水草水槽を維持する限り、多数のヤマトヌマエビが必要になる場面はかならずあるので、出来る限り自分で増やせるようにしておくことは決して無駄にならないでしょう。

産卵・採卵の方法

エビの仲間が産卵し、メスのお腹に卵を抱きかかえることを「抱卵」と呼びますが、ヤマトヌマエビの繁殖では、抱卵までは特に難しい点はありません。ある程度の数のオスとメスを同じ水槽で飼育していれば、自然に抱卵します。

強いて言うなら、水温やpHを適切な範囲に保ち、大型魚に攻撃されるようなストレスを与えないようにしましょう。

抱卵したメスは、しばらくそのままの水槽で飼育し続けます。そして、抱卵から3~4週間程度が経過したら、まずは淡水の隔離水槽にメスを移動させましょう。メスは隔離の際の水質変化に反応して卵を放出すると言われるため、抱卵してすぐにメスを隔離してしまうと、卵の放出タイミングが早くなりすぎる場合があります。こうなると、幼生が孵化する前に卵がカビてしまうため注意が必要です。

ゾエア幼生の育て方と稚エビの淡水化

適切なタイミングでメス親から放出された卵からは、ゾエア幼生が孵化します。孵化したゾエア幼生は、1~3日程度の期間内に、海水または汽水の水槽へ移動させましょう。海水を用意する場合には、人工海水が便利です。上の手順で母エビを隔離したのは、このゾエア幼生の海水水槽への移動を行いやすくするためです。

ゾエア幼生を飼育する海水水槽は、幼生の行動を制約しないよう、水流は極力減らし、強い光を充てることも避けましょう(ゾエア幼生には走光性があるため)。幼生の飼育においてはエサが非常に重要です。グリーンウォーターやインフゾリアなど、極小のプランクトンを意図的に与えるのがベストですが、細かくすりつぶした熱帯魚用の人工飼料やフィルター内の浮泥も餌になります。ただし、人工飼料は水を汚しやすく水換えの頻度を上げる必要がある点に注意しましょう。

孵化直後から約2週間程度は、幼生が非常に小さくまた上手くエサを取れなかったりして、死亡率が非常に高い時期です。ここを乗り越えれば、体長が4~5mmになる頃に親エビと同じ形態をした稚エビとなり、浮遊生活から水底を歩き回る生活に変化します。

稚エビになってから1~2週間程度時間を置いたあと、1週間~10日程度かけ、徐々に海水から淡水へ水質を切り換えていきましょう。

ヤマトヌマエビの魅力・おすすめポイント

ヤマトヌマエビの一番の魅力は、何と言ってもその偉大なコケ取り能力です。水草水槽を美しく維持するためには、本種の活躍は必要不可欠と言っても過言ではありません。

また、体調がそれなりに大きく「エビを飼っている」という実感が持てることや、繁殖は難易度が高いながらも不可能ではなく、両側回遊型という興味深い生態を自分の手元で確認できることも、このエビを飼育する楽しさでしょう。

アクアリウムを趣味にする人なら、一度は本種を飼育する機会があると思います。その際は、このエビのほとんどが野生採取個体であり、少なからず野生生物に捕獲圧を掛けていることを認識した上で、長生きできるよう大切に育てたいですね。

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