熱帯魚・観賞魚 図鑑

コリドラス・パンダの飼育・繁殖・生態-小型で柄が可愛い底棲熱帯魚

2017/07/16

コリドラス・パンダは、アクアリウムで飼育される熱帯魚の中でも人気の高い「コリドラス」において、ひときわ高い人気を誇る種類です。可愛らしい見た目だけでなく、底層を主な活動場所とすることから、他の熱帯魚の食べ残しを食べる掃除屋として活躍したり、他種と生息域が被らずあまりケンカをしないため混泳に向いていたりと、多くの魅力を持っています。

幼魚のうちは水質変化に弱く、他のコリドラス類に比べて、導入時には非常にデリケートな一面を見せます。一方で、一度水槽の水に慣れてしまえば繁殖まで狙えるという点は、熱帯魚飼育のステップアップにもってこいです。今回はこのコリドラス・パンダについて、生態や用意すべき飼育環境、飼い方、繁殖方法などを紹介します。

コリドラス・パンダとは

和名・流通名 コリドラス・パンダ
学名 Corydoras panda
英名 Panda Corydoras
Panda Catfish
分類 ナマズ目カリクティス科コリドラス亜科コリドラス属
原産地 ペルー
飼い易さ ★★★☆☆
値段(1匹) 250円程度~
最大体長 5cm程度
寿命 3~5年程度
遊泳層 底層
生息環境 透明度が高いブラックウォーターの、比較的流れが穏やかな小川・支流に生息する。
適合する水質 水温:22~25℃
pH:6.0~7.4
特徴 尾びれの付け根にある黒いスポットや、特徴的な黒いアイバンドが「パンダ」という名前の由来になっている。

コリドラス・パンダとは、ペルーやベネズエラ、ブラジルなど南米を原産とする熱帯魚で、ナマズ目カリクティス科コリドラス亜科コリドラス属に分類されます。同じコリドラス属に分類される近縁種としては、ジュリー、ステルバイ、シュワルツィ、アドルフォイ、などのメジャーなコリドラスの仲間たちが存在します。

形態

体長は最大で5cmほど、多くの場合は3~4cm程度で、コリドラスの中では小型種に分類されます。ベージュのボディに尾びれの付け根にある黒いスポット、名前の通りパンダに例えられる黒いアイバンドが特徴です。また、コリドラスの中でも口の先のが短い「ショートノーズ」に分類されています。

見た目の似ている種にコリドラス・オイヤポクエンシスがいますが、コリドラス・オイヤポクエンシスは、尾びれが縞模様になっています。

改良品種:ロングフィンパンダ

コリドラス・パンダは、流通個体のほとんどがブリード(養殖)個体と言われる、ブリードが盛んな熱帯魚です。この手の観賞魚には多い話しですが、その例に漏れず、コリドラス・パンダにも改良品種が存在します。

コリドラス・パンダの改良品種として知られるのは、「ロングフィンパンダ」と呼ばれる以下のような品種です。

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通常のパンダよりも少し鰭が長いのが分かるでしょうか。ロングフィンタイプは観賞魚の改良品種として定番ですが、やはり優雅さが感じられていいですね。

生態

コリドラス・パンダは、群れを作って昼間に活発に活動します。普段は水底で生活していますが、腸管呼吸をするため時折水面に顔をだすこともあります。また、エサを探すため、顔が砂に埋もれるほど深く潜ることもあります。

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コリドラス・パンダの分布・生息地・生息環境

ここまでに、コリドラス・パンダの特徴や生態について説明しました。次は野生分布と原産地での生息環境、観賞魚のとして販売されている個体の流通経路などについて説明します。

分布・原産地

コリドラス・パンダは、ペルーのアマゾン川上流域に生息しています。生息しているのは、透明度が高いブラックウォーターの、比較的流れが穏やかな小川・支流と言われています。コリドラスらしく、底層が砂地の河川を好みます。

原産地は、アンデス山脈の雪解け水が湧き出すような地域であり、比較的低温にも強いですが、せいぜい15度あたりが限界のようです。日本の冬に耐えられるほど低温耐性があるわけではない点には注意しましょう。

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原産地の生息環境の再現を目指すなら、こちらのページで紹介しているブラックウォーターの作り方を参考に、アマゾン川らしいブラックウォーターの環境を水槽内に作り出すのも面白いですね。ブラックウォーターだと水中が見えづらくなってしまうので、アクアテラリウムにして水槽の外にも華やかさを持たせる方法も面白いです。

流通個体はほとんどがブリード(養殖)個体

アクアリウムショップで販売されているコリドラス・パンダは、ほとんどが養殖された個体です。コリドラス パンダのブリーディング・ファームは東南アジアなどに存在しますが、原産地よりも厳しい環境での繁殖を重ねたため、高温への耐性が付き、ワイルド個体よりも飼育しやすくなっています。

コリドラス・パンダの飼育方法

コリドラス・パンダは、他のコリドラスに比べてややエロモナスやカラムナリス病にかかりやすい種類です。水質の汚染には十分注意しましょう。

基本的な飼い方

エロモナスやカラムナリス病にかかりやすい種類ですので、特に導入時の水合わせは慎重に行う必要があります。特にエロモナス感染症に感染すると治りが悪く、死亡するケースも多いため注意が必要です。

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もしもエロモナス菌に感染してしまった場合には、こちらの記事を参考にしてもらうのも良いと思いますが、内容を見ていただけば分かるように、私もエロモナス感染症への対処にはあまり自身がありません。やはり予防が最も重要なので、導入時はシリコンチューブなどを使い、コリドラスが入っている袋に少しずつ点滴の要領で水槽の水を足していく「水合わせ」をおこないます。

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一番安全な水合わせの方法は、こちらのページで紹介している「点滴法」です。ビーシュリンプなどの水質変化に弱い生体の導入に使用する方法のため、この方法を使用すれば、水質変化に敏感で病気にかかりやすいコリドラス・パンダも、安心して飼い始めることが出来ます。

また、底面を泳ぐ熱帯魚で、口ひげを痛める原因となりますので角のない丸い底砂を使用してください。推奨される砂には諸説ありますが、K-kiは田んぼの砂で丸みを帯びていることが特徴の「田砂」をおすすめします。

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底砂に潜る習性もあることため、換水時に底砂の汚れもしっかりと掃除することも、エロモナスやカラムナリス病の予防になります。底砂の掃除にはプロホースなどが便利です。

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コリドラスはナマズの仲間であり、腸でガス交換を行う「腸呼吸(腸管呼吸)」と呼ばれる方法で呼吸を行うことが出来ます。腸呼吸時には、水面まで泳いでいって口から空気を吸い込むため、水槽からの飛び出し事故が発生しやすいです。飛び出し事故を防ぐ為に、水槽の蓋は必ずしてください。

ストレスを緩和するため、単独飼育ではなく同種を3匹以上で飼う、流木などの隠れる場所を作ってあげることで良い状態で飼育することができます。

水質

水温は22~25度、pHは6.0~7.4と多くの熱帯魚が好む、弱酸性~中性で軟水の水質で飼育できます。ただし、他のコリドラスに比べるとやや水質変化に敏感なため、上記のように水合わせには特に気を遣ったほうが良いでしょう。

エサ

人口飼料や冷凍飼料など、何でもよく食べます。底床の掃除要因として水槽に導入されることもありますが、比較的大食漢なので専用の餌を与える方が良いでしょう。底層で暮らす熱帯魚のため、沈下性のコリドラス用タブレットが使いやすいです。

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前述のように複数種の熱帯魚を混泳させている場合には、他の魚が残したエサも食べてくれますが、水質悪化を防ぐためにもエサの与えすぎには注意してください。

混泳

低層を泳ぐ熱帯魚なので中層魚との相性はいいですが、少し神経質な性格のため、他種と混泳させる場合は流木などの隠れられる場所を多く作ってやりましょう。

アクアリウム水槽での役割

水槽の底砂を掃除してくれる熱帯魚として人気があります。また、コリドラス・パンダは、コリドラスの中でも活発なほうなので、底砂に口先を擦り付けたり、エサを探しながらちょこちょこと動く姿が見る人を楽しませてくれます。

コリドラス・パンダの繁殖方法

コリドラス・パンダの繁殖方法は比較的簡単で、コリドラスの中では最も繁殖の容易種とも言われます。繁殖を狙う場合には、水槽内で飼育するオスの割合を少し高くするほうが上手くいくことが多いようです。

コリドラス・パンダ単独で飼育し、流木などの隠れられる場所をつくり、ストレスの少ない状態で飼育することで産卵しやすくなります。産卵の時期になると、オスがメスを追いかけ始めるのでわかりやすいです。水草などを植えている水槽では、水草が抜けてしまうので、流木や岩にくくりつけるなどして対処してください。

雌雄の判別方法

繁殖を狙う場合には、まず雌雄のペアを用意する必要があります。コリドラス・パンダのオス、メスは、腹ビレの形状で見分けることが出来ます。腹ビレが丸く団扇型になっているのがメスです。また、メスのほうがわずかに大型になります。

ただし、雌雄の判別は難しいので、水槽内にコリドラスパンダを5匹以上入れておき、オスもメスも何匹かいるであろう状態にしておくのが簡単です。

産卵・採卵の方法

産卵時には、Tポジションと呼ばれる行動が見られます。Tポジションは、メスの口の前にオスが横たわり、メスの口にオスが精子を入れる行動のことです。Tポジション後、メスの体内を通過した精子は、メスの腹ビレ付近に卵とともに排泄され受精します。

コリドラス・パンダは、大きめの葉っぱの水草や水槽のガラス面に卵を産みつけることが多いです。卵を見つけたら食卵を防ぐためにすぐに別の水槽に隔離しましょう。水草なら水草ごと隔離できますが、水槽のガラス面に産み付けられた場合はネットなどを使って優しく剥がします。

稚魚の育て方

稚魚の育て方は、一般的な熱帯魚と同じく、人口プランクトンや、孵化させたブラインシュリンプを主に与えます。孵化してから60日以上経ったら親と同じ水槽に移しても問題ないでしょう。

コリドラス・パンダの魅力・おすすめポイント

コリドラス・パンダは、コロコロとした体型にパンダのような黒いアイバンドがあり、コリドラスの仲間の中でも活発でよく動きまわる種類です。熱帯魚の中ではとても愛嬌のある行動をするため、人気の高い種類となっています。

導入時の水合わせさえクリアすれば、比較的飼いやすい種類ですので、初心者でも挑戦しやすい熱帯魚です。繁殖も難しくないため、コリドラス・パンダ単独の水槽をつくるのも楽しいでしょう。底砂を鼻先でつついているかと思えば、腸管呼吸をするため水面まで上がってきたり、活発に泳ぐ可愛らしい姿がとても魅力的です。

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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