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爬虫類用紫外線ライト設置時に知るべきUVIとファーガソンゾーン

2020/12/05

爬虫類飼育者が知るべきUVIとファーガソンゾーン

こんにちは、紫外線ライトのお気に入りはパワーサンUVなK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。

今回は、近頃少しずつ耳にする機会が増えてきた印象のある「UVI」や「ファーガソンゾーン」について、その意味や爬虫類飼育における有効性を解説していきます。

爬虫類飼育には紫外線、特にUVBが必要ということは知っている人も多いかと思いますが、UVIやファーガソンゾーンについてはあまり日本語の情報は多くないと思います。知識的には非常に近い分野の話ではありますが、実際に飼育に活用するという観点からは、UVBよりもむしろUVIのほうが扱いやすいです。知らない人は、ぜひ読んでみてくださいね。

UVIは飼育下の爬虫類に照射すべき紫外線強度の指標として最適

まずは端的に、結論から行きましょう。UVIは紫外線の強度を表す指標の中でも、現状では爬虫類飼育に最も適用しやすい指標です。UVIを爬虫類飼育で活用しやすいのは、主に以下の理由によるところが大きいです。

UVIが爬虫類飼育で役に立つ理由

  • 照射している光がビタミンD3の生成に与える影響度合いを推測できる。
  • 爬虫類の種類ごとに適切なUVIの目安を示したデータがある。
  • 計測するための機器が流通している。

なぜUVIがこれらの要素を満足できるのか、その原理や背景について以下で解説していきます。また、UVIについては以下のサイトがわかりやすくまとめていて非常に参考になるので、ぜひこちらも読んでみてください。

参考トカゲと紫外線の話(UVBとUVIについて) | lizardcare.net

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爬虫類と紫外線の関わり

まずは基礎知識の確認です。紫外線は下記の通り波長によっていくつかの種類に分けることができます。

紫外線の種類

紫外線は波長が10nm~400nm程度(上限値はいくつかの基準あり)までの光であり、波長200nm以上の近紫外線と、200nm未満の遠紫外線に大別されます。近紫外線はさらにUV-A、UV-B、UV-Cに細分化されます。

  • UV-A:315~400nm程度
  • UV-B:280~315nm程度
  • UV-C:200~280nm程度

それぞれの波長帯によって爬虫類に与える影響は異なります。

UVA

紫外線の一部であるUVAは、人間の目には見えませんが、一部の爬虫類はこの光を見ることができます。そういった種にとっては、可視光と同じく、概日リズム・概年リズムの調整、活動レベルや生理機能の調節に役立ちます。また、細胞の代謝を活性化させ脱皮を促進する効果もあると言われています。

UVB

紫外線の中でも特に重要なのがUVBです。爬虫類に紫外線をあてる必要がある理由で最も大きいのは「カルシウムを体内に吸収するために必要となるビタミンD3の合成に紫外線のうち特にUVBが必要だから」であり、このあたりの原理については以下のページで詳しく解説しているので、知識に不安がある人は読んでみてください。

爬虫類と光/温度-バスキング・紫外線ライトと亀/トカゲの生理機能

亀・トカゲ・ヘビ・ヤモリ等の爬虫類の飼育では、紫外線照射のような光の管理と、赤外線ヒーター等による温度管理が重要ですが、理屈が難しく理解していない飼育者が多いです。爬虫類飼育で重要な光・温度管理の方法を詳細に解説します。

リンク先のページに書いてある内容のうち、ここで特に重要なのはビタミンD3が合成される過程です。

ビタミンD3が合成される過程

  • エサから摂取した脂質・糖質・タンパク質が分解されアセチル-CoAが生成される。
  • アセチル-CoAからコレステロールが合成されるまでの過程で7-デヒドロコレステロールが生成される。
  • 7-デヒドロコレステロールに波長300nm付近の紫外線が照射されるとプレビタミンD3が合成される。
  • プレビタミンD3は自然にビタミンD3に変化するが反応速度は温度に依存する。

上記の通り、7-デヒドロコレステロールからプレビタミンD3を合成する過程で、波長300nm付近の紫外線、つまりUVBが必要になります。そのため、爬虫類飼育では、プレビタミンD3の合成に必要なUVBを飼育ケージ内に向けて照射します。

すなわち、UVIのような紫外線の強度を示す指標が用いられるのは、飼育しているトカゲやカメがビタミンD3を得るのに十分なUVBを照射できているかを評価するためです。

UVC

UVCは強い殺菌作用があり、生体に有害です。爬虫類飼育で積極的に使用されることはほぼありません。紫外線ライトの一部にはUVCを放出してしまうものもあり、そういったライトを使用する場合は飼っているカメやトカゲに害を与えないよう、ライトと生体の距離を十分に離す必要があります。

UVI(Ultraviolet Index)とは何か

では、UVIとは一体どんな指標なのでしょうか。

UVIはUltraviolet Indexの略で、UVインデックスなどと呼ばれることもあります。当然ながら爬虫類を飼うために考えられた指標ではなく、本来は人間のために使用される指標です。

UVIは紫外線が人体に及ぼす影響の指標

UVIの概要は、以下の気象庁のページがわかりやすいです。

UVインデックスとは紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したものです。

気象庁|UVインデックスとは

紫外線を浴びすぎると、「紅斑」と呼ばれる皮膚が赤くなる現象がおこります。日焼けして皮膚が赤くなるアレのことです。紅斑を起こしている皮膚は表皮細胞の遺伝子が傷つけられた状態で、この遺伝子の損傷が蓄積すると、しみになったり腫瘍ができたりと害があります。

UVインデックスで表される紫外線の強さ
UVインデックスに応じた紫外線対策(環境省「紫外線環境保健マニュアル」より)

こういった紫外線による悪影響を防ぐための指標として、UVIが定められています。上の画像のように、UVIに応じて紫外線を対策する行動を取るような呼びかけも行われています。

UVIの計算方法

UVIの計算についても、気象庁のサイトがわかりやすいです。

参考気象庁|UVインデックスを求めるには

紫外線の人体への影響度は波長により異なり、その特性を表すのがCIE作用スペクトルです。CIE作用スペクトルは下図の中段に示すもので、紫外線の波長ごとに人体への影響度を相対的に示しています。低波長ほど人体への影響が強い傾向は、UVCの殺菌作用が強く生物に有害という性質とも符合しますね。

UVインデックスの概念図
UVインデックスの概念図(気象庁より)

なお、上図の上段は太陽光の波長別紫外線強度を表していて、下段は波長別紅斑紫外線強度、すなわち上段と下段を掛けたものです。UVIは、この紅斑紫外線強度を波長250~400nmの範囲で積分し、25で割ることで得られます。数式にすると以下のとおりです。

\[\begin{eqnarray}
I_{CIE} &=& \int_{250nm}^{400nm}E_\lambda\cdot S_{er}\cdot d\lambda\\
S_{er} &=& \begin{cases}1 & (250nm<\lambda<298nm) \\
10^{0.094(298-\lambda)} & (298\leq\lambda\leq 328nm) \\
10^{0.015(139-\lambda)} & (328<\lambda<400nm) \\\end{cases}\\
I_{UV} &=& I_{CIE}/25
\end{eqnarray}\]

ここでI_{CIE}は紅斑紫外線強度、S_{er}はCIE作用スペクトル、I_{UV}はUVIを示しています。

要は、対象となる光の性質(紫外線強度)をCIE作用スペクトルで重み付けして紅斑紫外線強度を算出し、それを現実的に考慮すべき波長の範囲である250~400nmにわたって足し合わせた上で、数値が捉えやすい値になるよう適当に調節したものがUVIなわけです。

なぜ爬虫類の飼育にUVIが重要なのか

上記の通り、UVIは本質的には紫外線による悪影響を防ぐためのもので、ざっくり言えば日焼け予防の指標です。これがなぜ爬虫類の飼育に役立つんでしょうか。ここで重要になるのが、国立環境研究所 地球環境研究センターの以下のページで紹介されている知見です。

紅斑紫外線とビタミンD生成紫外線の作用曲線
図1 紅斑紫外線とビタミンD生成紫外線の作用曲線

図1に赤い実線で示された作用曲線は、紅斑紫外線の有害性の波長分布を示します。地上に届く紫外線うち、短い波長域で、特にB領域紫外線 (290~320 nm) で効果的に人体に種々の害を与えます。

一方、図中の青い点線の作用曲線は、体内でビタミンD3 (単にビタミンDと呼ぶ) を効果的に生成する波長分布となっています。

すなわち、その波長での紫外線に含まれる有害な成分と、体内でビタミンDを生成する紫外線の成分の割合を示していて、有害となる紫外線の波長域とほぼ一致しています。

ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報|地球環境研究センター

図1中の赤い実線が、CIE作用スペクトルです。つまり、CIE作用スペクトルとビタミンD3(厳密にはプレビタミンD3)の生成スペクトルがよく似ている、ということを言っています。

で、じゃあ具体的にどれくらい似てるんですか、というのを計算して作られた図が以下です。

地上に到達した紫外線の中に含まれるビタミンD生成紫外線量に対する紅斑紫外線量 (計算値)
地上に到達した紫外線の中に含まれるビタミンD生成紫外線量に対する紅斑紫外線量(計算値)(地球環境研究センターより)

横軸が紅斑紫外線量、縦軸がビタミンD3生成紫外線量で、図からはビタミンD3生成紫外線量は紅斑紫外線量の概ね2倍になる強い相関があることが読み取れます。

ここから言えることは、UVIで指標化される紅斑紫外線の強さと、ビタミンD3の生成に寄与する紫外線の強さはほぼ比例関係にあるため、紅斑紫外線の強さが分かればビタミンD3の生成に寄与する紫外線の強さもわかる、ということです。つまり、UVIはビタミンD3生成紫外線量の強さを表す指標としても利用できるということになります。

爬虫類飼育ではこの性質を利用して、飼育ケージ内にビタミンD3の生成に十分な紫外線が照射されているかをUVIを用いて評価しているというわけです。

爬虫類の種類ごとにUVIの目安を示す「ファーガソンゾーン」

しかし、ここまでの情報だけではまだ不十分です。UVIがビタミンD3生成紫外線量の強さを表す指標として利用できることがわかっても、具体的にUVIをどれくらいの値にすればトカゲやカメを上手く飼えるかがわからないからです。

これを埋める最後のピースが「ファーガソンゾーン」です。

ファーガソンゾーンは、2010年にテキサスクリスチャン大学のゲイリー・ファーガソン教授の発表した論文で提唱された概念です。ファーガソンゾーンでは、UVIの強さに応じて1~4までの4段階のゾーンが設けられていてます。各ゾーンごとのUVIの範囲は以下のとおりです。

ファーガソンゾーンによる爬虫類の分類
分類 特徴 平均UVIの範囲 最大UVIの範囲 代表的な爬虫類の種類
ゾーン1 薄明薄暮性・日陰性の種類 0~0.7 0.6~1.4 クレステッドゲッコー
ヒョウモントカゲモドキ
トッケイヤモリ
ビルマニシキヘビ
ミドリニシキヘビ
ミルクヘビ
アミメニシキヘビ
ゾーン2 たまにバスキングする種類
朝方/夕方にバスキングをする種類
0.7~1.0 1.1~3.0 ヒガシウォータードラゴン
エメラルドツリーモニター
グリーンアノール
オマキトカゲ
コノハカメレオン
キタニシキハコガメ
アカアシガメ
ボアコンストリクター
ホソツラナメラ
ガータースネーク
セイブシシバナヘビ
ゾーン3 朝方/夕方にバスキングをする種類
日中にバスキングする種類
1.0~2.6 2.9~7.4 アルゼンチンブラックアンドホワイトテグー
エリマキトカゲ
スタンディングヒルヤモリ
エボシカメレオン
インドホシガメ
ヒョウモンリクガメ
キボシイシガメ
カーペットパイソン
ゾーン4 白昼にバスキングする種類 2.6~3.5 4.5~9.5 チャクワラ
トゲオアガマ
サイイグアナ
テキサスツノトカゲ

ファーガソン教授は野生下の15種の爬虫類を対象に、これらのトカゲやヘビが毎日自発的にどれだけの日光を浴びているかを研究し、日光曝露の必要量に応じてこれらの種を、ファーガソンゾーンに対応づけて分類しました。つまり、爬虫類が必要とする紫外線量の定量的な目安を作ったのです。この論文は、以下で読むことができます。

参考Voluntary Exposure of Some Western-Hemisphere Snake and Lizard Species to Ultraviolet-B Radiation in the Field: How Much Ultraviolet-B Should a Lizard or Snake Receive in Captivity?

さらに2012年には、英国およびアイルランドの動物園水族館協会(BIAZA)が、ファーガソン教授の研究に基づいてより多くの爬虫類と両生類をファーガソンゾーンに割り当てたリストを発表しました。リストはその後改訂が重ねられ、2016年時点では254種がファーガソンゾーンに割り当てられています。爬虫類を飼う上での実用上は、こちらの報告から各爬虫類ごとのファーガソンゾーンを参照することになります。この文書は、以下のリンクから読むことができますが、何かあって読めなくなると困るのでダウンロードしておいたほうが良いでしょう。

参考How much UV-B does my reptile need? The UV-Tool, a guide to the selection of UV lighting for reptiles and amphibians in captivity

これら先人たちの功績によって、現在の爬虫類飼育では、爬虫類の種類ごとに、照射すべき紫外線量のある程度の目安が設けられているのです。爬虫類飼育者は、アメリカのファーガソン教授にも、BIAZAにも、足を向けては寝られません。

なお、ファーガソンゾーンに頼らなくても、世界各地のUVIは比較的入手しやすい情報なので、爬虫類の生息地からその地域のUVIを割り出して参考にすることも可能です。BIAZAにリストアップされていない生体を飼う場合は、生息地のUVIや近縁種が分類されるファーガソンゾーンからの類推が必要になってくるでしょう。

UVI/UBVを計測できる計器

ここまでで、UVIが爬虫類飼育で非常に役立つ指標であることは分かってもらえたと思います。最後に、実際にカメ、トカゲやヘビなどの爬虫類を飼うにあたって、UVIを計測するために必要となる計測器について説明します。ついでに、UVBの計測器にも少し触れておきます。

Solarmeter 6.5シリーズ

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Solarmeter 6.5は、アメリカのSolar Light Company Inc.という会社が販売しているハンディタイプのUVI計測器です。元々はSolartechという会社の製品でしたが、2015年に買収され現在に至るようです。

Solarmeter 6.5には、派生製品として爬虫類向けに外装が変更されファーガソンゾーンがひと目で分かるようになった「Solarmeter 6.5R」と、アメリカの大手爬虫類飼育用品メーカー「Zoo Med」向けのOEM製品である「ST-7 – Digital UV Index Radiometer」がありますが、いずれも外装の違いだけで性能は同じです。

結論から言えば、爬虫類飼育で使用するUVI計はこのSolarmeter 6.5(及びその派生製品)ほぼ一択です。なぜなら、先に紹介したファーガソン教授やBIAZAの論文は、このSolarmeter 6.5での測定値に基づいて書かれているからです。数値を正確に比較するためには、高価ですがこの計器を使うのがベストだと思います。

一応計器としての特性にも触れておくと、この計器のスペクトル感度は以下の画像のとおりとなっています。

Solarmeter Model 6.5R spectral response
Solarmeter Model 6.5Rのスペクトル感度

赤い実線がプレビタミンD3の生成スペクトルで、これにマッチするほどビタミンD3生成紫外線量の測定値としては正確になる、というわけです。図を見るとわかるように低波長側ではそれなりに誤差がありますが、少なくとも太陽光に関しては290nm以下の紫外線はオゾン層で強く減衰され地上に届かないことが知られているので、これで十分ということでしょう。反対に、測定値への影響が大きい長波長側は、プレビタミンD3の生成スペクトルによく合わせてあることがわかります。

Solarmeter 6.2シリーズ

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Solarmeter 6.2は、Solarmeter 6.5と同じ会社が販売しているハンディUVB計測器です。6.5同様に派生製品があり、爬虫類向けに外装が変更された「Solarmeter 6.2R」と、Zoo Med向けOEM製品の「ST-6 – Digital Ultraviolet Radiometer」がありますが、やはりガワの違いだけで性能はどれも同じです。

日本国内では、Zoo Med向けOEM品がUVB計測器として割と広く販売されていたので、持っている人もいるかも知れません。世界的にも広く使用され、各種紫外線ライトのUVB量をこの計器で測ったデータもググれば出てくるので、紫外線ライトの評価基準としては一定の普及度があります。

ただ、以下のスペクトル感度を見てもわかるように、この計器で測定できる値は必ずしもビタミンD3の生成スペクトルとは一致しないため、この計器での計測値だけでライトの性能や照明環境の良し悪しを評価するのはあまり良い方法ではないです。

Solarmeter Model 6.2 spectral response
Solarmeter Model 6.2のスペクトル感度

Solarmeter 6.5のスペクトル感度では長波長側が315nmくらいで0に落ちているのに対し、6.2では320nmくらいまでのUVAに片足を突っ込んだ波長までを拾います。太陽光やそれを模した爬虫類飼育用の人工照明では、基本的にこのあたりの波長の紫外線強度は長波長側ほど強いため、このスペクトル感度では、ビタミンD3生成紫外線量としては不十分でもUVB強度が高く検出される可能性があるということです。

じゃあ、UVB計は計器として役に立たないかと言うとそういうわけでもありません。まず、紫外線ライトの中にはこの計器で測れるUVB強度をスペックとして公開しているものもあるので、手元のライトがスペック通りの性能を発揮しているか(要は初期不良ではないか)とか、UVB強度の経時変化を追って紫外線ライトの交換時期を見定めることもできます(UVB強度が3割ほど減ったら交換の目安、という話もあります。)。

もちろん同じ評価をUVIを使って行うこともできますが、UVIの数値が実用上10以下の範囲であることを考慮すると、1桁か2桁大きい値を示すUVB強度のほうが、細かい数値の変化は追いやすいのでこういった用途では使いやすいかもしれません。

また、ライトの交換時期を見定める用途であれは数値の相対変化のみに着目することになるので、数値に対する正確性・厳密製の要求はUVIに比べ低くなります。そのため、UVB強度の計測に限れば、高価なSolarmeterシリーズの商品を使わず、安価な類似品を使うことも選択肢に入ってくるというのがK-kiの考えです。安く手に入るUVB計については、別記事でまた紹介する予定です。

さらに、ファーガソン教授の論文では、Solarmeter 6.2で計測したUVB強度を6.5で計測できるUVIに換算する式として以下が紹介されています。以下の式のS6.2に、Solarmeter 6.2で計測したUVB強度を代入すると、Solarmeter 6.5で計測されるUVIの推測値(S6.5)が得られます。

\[S6.5=0.17+0.011\times S6.2+0.0000357\times(S6.2)^2\]

ただし、この計算式はあくまで太陽光を前提にしたものであり、スペクトルが異なる人工照明で、UVB強度からUVIを計算する用途には使用できません。人工照明に対して6.2、6.5の両方の計器で測定を行った上で、実測UVIが上式の換算値より明らかに高ければ、その照明のスペクトル分布は有害性の高い低波長域の光が太陽光よりも高い割合で含まれている可能性があるため、使用するかどうかをよく考えたほうが良いです。このように6.2と6.5の換算式は、ライトの安全性を確認するような用途で利用する数式であることに注意してください。

UVIとファーガソンゾーンのまとめ

今回は、爬虫類飼育で照射すべき紫外線強度の指標として現状の最適解ともいえるUVIと、UVIに基づき爬虫類の種ごとに照射すべき紫外線強度の目安を示したファーガソンゾーンを中心に解説しました。UVI計は高価ですが、紫外線についての定量的な目安が得られるのは非常に大きいです。ぜひ、積極利用してみてほしいですね。

ちなみに、人間の世界では、かつて紫外線は体内でのビタミンD3の生合成に必要とされ、日光浴が勧められていました。しかし現在は、食物から十分にビタミンDが摂取できるようになってきたこともあってそのデメリットにも注目がいくようになり、手放しで推奨されるものではなくなっています。

爬虫類飼育の世界がこのような状況になっていないのは、栄養管理に関する知見の不足や、十分なビタミンをエサ経由で摂取させる方法が確立されきっていないことが理由にあると思われます。従って今後の飼育技術の進化によっては、人間と同じようにUVB照射も必須ではなくなっていくのかもしれません。

でもまあ当面は、UVI計測やUVBライトが爬虫類飼育において重要な役割を果たすことは間違いありません。適切な飼育器具を適切に使いながら、最新の飼育技術をアップデートすることも忘れないようにするのが良いでしょう。

K-ki

UVIやファーガソンゾーンに関する日本語での情報は、まだまだ少ないのが実情です。K-kiも色々調べながら勉強しているところなので、このページに間違いがある可能性もゼロではありません。もしも間違いを見つけた人や、もっと詳しい情報を持っている人は、ぜひコメントを残していってくださいね。

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K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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