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擬岩コーナーカバーの作り方(骨組み編)爬虫類・アクアリウム水槽に

2020/06/20

オーバーフロー水槽DIY 擬岩コーナーカバー制作(骨組み編)

こんにちはー!アクアリウムのDIYが好きなK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。

今回は、オーバーフロー水槽の自作方法 vol.7として、コーナーカバー(コーナーボックス)を作る方法を解説します。ただし、普通のコーナーカバーではありません。モルタルを使用してコーナーカバーの役割を果たす「擬岩」を作っちゃおうというのが今回の目的です。

市販されているプラスチック製の擬岩だと、作り物感がすごくて水槽のレイアウトには使えないというのが正直なところですが、モルタルで自作すれば、塗装などにこだわることでかなりリアリティを追求でき、レイアウト面でも実用に耐える擬岩を作ることができます。また、自作すればカスタマイズし放題なので、色々なギミックを盛り込むこともできました!

なお、このオーバーフロー水槽の自作方法は、以下の通り連載の形でまとめています。前回までで、水槽に穴をあけて台座を接着し、ポンプや配管を組み上げて水を回すところまでは完了しています。

オーバーフロー水槽の自作に挑戦してみようという方は、ぜひこれらの過去記事も参考にしてください!

擬岩コーナーカバー(コーナーボックス)の目的

擬岩コーナーカバーの作り方を説明する前に、まずは今回の擬岩コーナーカバーを作る目的や、このコーナーカバーに期待する役割を整理しておきます。

実は現在自作しているオーバーフロー水槽では亀(ニホンイシガメ)を飼う予定なので、普通のアクアリウムでは必要ない役割も期待している部分があります。今回の擬岩コーナーカバーは、アクアリウムにも爬虫類飼育にも使用できる活用の幅が広いものになっている、というのが一つのポイントです!

ポイント

このコーナーカバーと同じ要領で、爬虫類飼育に使用できる擬岩バックパネルも作ることができます。爬虫類を飼っている人、特にレイアウト飼育にこだわりがある人はぜひ参考にしてください。

オーバーフローパイプの保護(コーナーカバー)

1つ目の目的は、コーナーカバー本来の目的でもある、オーバーフローパイプの保護です。この水槽で飼育するのは亀であり、魚と比べると非常に力が強いです。また、ウチのイシガメはガラス面に沿って移動することが多く、その時に通れない隙間があると無理やりこじ開けて通ろうとするため、オーバーフローパイプに力をかける可能性が非常に高いです。

そのため、オーバーフローパイプがずれたり歪んだりして水漏れ事故を引き起こさないように、オーバーフローパイプの保護が最も重要な目的です。

オーバーフローパイプを隠すためのレイアウト素材

また、冒頭でも軽く触れたとおり、コーナーカバーをモルタル製の擬岩にすることで、レイアウト素材としての役割も期待します。一般的なコーナーカバーは、黒の塩ビ板などで作られることが多く、水槽の中に大きな人工物が存在するのがはっきりわかる点がどうしても好きになれません。

じゃあ、アクリル3重管のような目立ちにくい配管を選べば?という意見もあると思いますが、この場合は外管の部分を亀に引っこ抜かれたり、そこまでは行かなくてもツメでボロボロにされるのが目に見えているので、今回は避けました。

従って、人工物感が極力少なくレイアウトを損ねない、むしろ水槽に映えるレイアウト素材としての役割を果たせるコーナーカバーを目指すことにしました。

亀の健康を保つためのバスキングスポット

水棲ガメの飼育で難しいポイントの一つが、バスキングスポットの確保です。亀のような爬虫類の仲間は、カルシウムを吸収するために必要な「ビタミンD3
」を体内で合成するために、紫外線を浴びる必要があり、そのために積極的に日光浴(バスキング)をします。また、日光浴には体を温める体温調整の役割や、体を乾かすことで皮膚病を予防する効果もあると言われています。

この日光浴をするための場所が「バスキングスポット」です。バスキングスポットは、以下のような特徴を備えている必要があります。

  • 35℃程度の温度に保たれている
  • 紫外線ライトからの距離が適切である
  • 足場が安定している
  • 表面が乾燥しやすい
  • 爬虫類の体全体が収まる広さがある
  • 爬虫類が怪我をしない形状である

また、個人的な経験からは、バスキングスポットの地面はある程度熱を保てる(保温性がある)ほうが、亀が好んでバスキングをする傾向になりやすいです。

モルタルで自作する擬岩は、上手く作ると上記の特徴すべてを満足することができるため、バスキングスポットにかなり向いているはずです。また、コーナーカバーはそれなりに場所を取ってしまいますが、バスキングスポットを兼ねることで空間をうまく利用できるというのもメリットです。

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擬岩コーナーカバーの大まかな設計・機能要求

擬岩コーナーカバーの目的と期待する役割を明確にしたので、そこから擬岩コーナーカバーにの大まかな設計・機能要求の定義に掘り下げていきましょう。以下の通り、今回の擬岩コーナーカバーにはいくつかのギミックを仕込みます。また、DIY作業に取り掛かる前には、イメージをスケッチしてより明確化しておきましょう。

擬岩の裂け目から水が吹き出す機能

オーバーフローパイプは、水槽の水を濾過槽に流すとともに、ろ過槽から汲み上げた水を水槽に戻す役割も持っています。オーバーフローパイプをカバーするコーナーカバーは、この汲み上げた水を水槽に戻す機能を邪魔してはいけません。

今回は水槽内のレイアウトを損ねないことを重視するため、配管は極力見えないようにします。そこで、汲み上げた水は擬岩の隙間から吹き出すような仕組みにします。擬岩の内部に塩ビ管を通しておき、このパイプと濾過槽から飼育槽への給水用の塩ビパイプを接続することで、岩の隙間から水が流れ出す機能を実現します。

この工作は、擬岩の中を通す塩ビ管の位置が重要で、上手く給水パイプと接続できる場所で固定する必要があり、工作精度が求められます。

実は滝みたいにするのもありかと思ったんですが、バスキングスポットをしっかり乾燥させたかったのと、リビングに置くのでうるさいのは嫌だなと思いやめました。

岩の隙間から水を吸い込む油膜取り機能

オーバーフロー水槽のいいところの一つに、水面の水が濾過槽に流れ落ちるため油膜が発生しにくいというものがあります。この特徴はぜひ残しておきたいのですが、擬岩でオーバーフロー水槽のコーナーパイプ周辺を覆ってしまうと、水面の水の流れが阻害されて十分に油膜取り機能が発揮されない可能性があります。

そこで、擬岩の水面付近部分には、岩の隙間や割れ目に見えるように工夫しつつ、スリットを入れておくことにしました。これで水面部分の水がオーバーフローパイプから流れ落ち、油膜取りの機能が発揮されます。

メンテナンスを容易にする分離機能

一般的なコーナーカバーは上部が開口しているのでメンテナンスは簡単ですが、今回はバスキングスポットも兼ねるため上部も擬岩で覆います。そうすると、コーナーカバー内部に手を入れられなくなり、メンテナンス性が非常に悪くなることが想定されます。

この問題の解決方法はかなり悩みましたが、結論としては、擬岩をコーナーカバー+フタの2つのパーツで作り、メンテナンス時にはフタ部分だけを取り外せるようにする方法を選択しました。

この方法によりメンテナンスはしやすくなりますが、コーナーカバー部分とフタ部分の擬岩の接続部分をうまく作らないと、かなり人工物感が出ると思われるので、工作時に注意が必要です。

水深が浅くなる部分を作る

ウチのニホンイシガメ・シカクくんは昔から夜になると陸に上がって寝ます。もしかして水深の深い場所で寝ると息継ぎがしにくくて嫌なのかと思い、水深が浅くて少し首を伸ばせば息ができ、体を休めるだけのスペースがある場所を作ることにしました。

寝るとき以外にも水際でじっとしていることも多いので、そういうときにも使ってくれれば良いなーかと思います。

体を隠せるシェルターを作る

60×45cm水槽なので、甲長約15cmのシカクくんがすっぽり隠れられるシェルターを作るのはスペース的に厳しいです。自然な岩の裂け目みたいな雰囲気にしようと思うと、泳いだりする運動スペースがかなり狭まってしまいますし、市販のシェルターみたいな不自然な洞窟みたいな形状にするのは美観を損ねるのと掃除をしにくいので嫌です。

なので、すっぽり隠れられるシェルターは諦めて、頭から体の半分くらいが隠せるシェルターを目指します。無いよりはマシでしょうし、擬岩以外にレイアウト用に流木を入れる予定なので、流木の陰に隠れられるはずです。

擬岩自作の流れ

今回の擬岩作りは、おおまかに以下の流れで作業を進めていきます。

擬岩自作の流れ

  • スタイロフォームで擬岩の骨組みを作る。
  • 擬岩を水槽に固定するためのアタッチメントを作る。
  • スタイロフォームにモルタルを盛って岩の形に整形する。
  • 水中で有害物質が溶け出さないようにアク抜きをする。
  • 塗装前にシーラーを塗る。
  • 耐水塗料で色を塗る。
  • トップコートで表面を保護する。

工程数はそんなに多くなさそうにも見えますが、それぞれの工程で細かな作業の数が多いので、このページだけでは紹介しきれません。また、擬岩を作った上で水槽に設置し水を回すところまで紹介したいので、擬岩作りは全3回に分けて紹介することとし、今回は①~②までの内容を紹介します。

擬岩自作のために用意するもの(工具・材料)

作りたい擬岩の大体の方向性を紹介したところで、次に今回の擬岩自作作業に必要な工具・材料を紹介していきます。モルタルや塗料は今回は使わないので、次回まとめて紹介します。

スタイロフォーム

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この擬岩コーナーカバーは、スタイロフォームを骨格とし、その周りにモルタルを盛り付けるようにして作ります。骨格にスタイロフォームを利用する理由は、擬岩を軽量化可能で、加工性も良いためです。

スチロールカッター

スタイロフォームはカッターでカットすることもできますが、厚みがあると加工が大変になりますし、細かい造形もしにくいです。熱で溶かしながらカットできる専用工具の「スチロールカッター」を使用したほうが、作業効率が圧倒的に良くなります。

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スチロールカッターは、大きく分けてペンのような形をしているタイプと弓のような形をしているタイプの2種類があり、ペンタイプは細かな造形がやりやすく、弓タイプは分厚いスタイロフォームを簡単にカットできます。どちらも役に立つので、上のような両方がセットになっている商品がおすすめです。

シリコンシーラント

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スタイロフォームで骨格を作る際に、スタイロフォーム同士を接着する接着剤が必要です。水槽の中に入れても有害物質が溶け出さない接着剤を使いましょう。今回は、オーバーフロー台座の接着で使用した水槽用のシリコンシーラントが余っていたのでそれを使用します。

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新規に購入する人は、防カビ剤が入っていないタイプのバスコークのほうが安くて使い勝手が良いと思います。

塩ビ板(黒 1mm厚)

擬岩コーナーカバーが水槽と接する部分は、スタイロフォームが直接見えるとかっこ悪いので黒の塩ビ板で覆ってしまいます。また、こうすることでガラス面を傷つけにくくなります。

キスゴム

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コーナーカバーが水槽の壁面から離れてしまわないように、キスゴムを使ってガラス面に固定できるようにします。

電動ドリルドライバー

キスゴムは塩ビ板に穴をあけて、そこにはめ込むようにしてコーナーカバーに固定します。この穴あけ作業に電動ドリルドライバーが必要です。

ドリルビット

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同じくキスゴムを取り付ける穴をあけるために使用します。今回は、φ6mmの穴をあけられるドリルビットを使用します。

面取りカッター

単純に穴をあけるだけではキスゴムを上手くはめ込めないので、面取りカッターを使ってキスゴムをはめ込みやすいように穴の面取りを行います。

プラスチックカッター・ハサミ

塩ビ板のカットに使用します。

塩ビ板用接着剤

塩ビ板同士の接着に使用します。

スタイロフォームで概形作り

擬岩コーナーカバーの目的や全体的な設計、使用する工具・材料を紹介したので、いよいよここからは具体的な作業方法を紹介していきます。

スチロールカッターでスタイロフォームをカット

まずはスチロールカッターでスタイロフォームを切り出し、擬岩の骨組みを作ります。まずは5cm厚のスタイロフォームを30×30cmサイズに6個切り出します。

スタイロフォームを30cm四方にカット

これで、以下のような30×30×30cmの立方体が出来上がりますね。

スタイロフォームで作った30×30×30cmの立方体

次に、この立方体の一隅を、コーナーパイプを通せるように15×15cm分カットします。スチロールカッターを使っても流石に30cmの厚みを一気にカットすることはできないので、カットする場所をマジックで書き込んで、一枚ずつカットしましょう。

コーナーパイプを通すスペースを切り出す

一番上の段にはあとからフタ部分の擬岩をはめ込むことになるので、フタを支えられるように少し穴を小さめにカットしました。これで以下のような形ができあがります。

オーバーフローパイプの通る穴をあけたスタイロフォームの立方体

最上段の切り欠き部分のカーブが岩と岩の継ぎ目になるので、あまり人工的な感じがしないように自然なラインを意識してカットしています。

次にこの立方体を水槽に仮置して、擬岩をどんな形にするかイメージしながら、スタイロフォームにカットする線を書き込みつつ、スチロールカッターで岩の形に削り出していきます。

擬岩の形をイメージしてカットラインをマジックで書き込む
擬岩の形をイメージしてカットラインをマジックで書き込む
立方体から岩の形を削り出す
スタイロフォームを岩の形に削り出す

手前の出っ張った部分が、水深が浅い亀が休むための場所です。また、その下が小さなシェルターになります。

このあと、全体的に平面感がなくなり自然な岩の感じが出るように表面を削りました。ただ、実際は表面にかなり造形モルタルを盛って形を作るので、ここでの形状出しにあまりこだわりすぎる必要はありません。水槽に合わせると以下のような感じになります。

スタイロフォームから削り出した擬岩の骨格
スタイロフォームから削り出した擬岩の骨格
スタイロフォーム製の擬岩の骨格(背面)
擬岩の骨格とオーバーフローパイプの位置関係

最終的に、フタをはめ込むと以下のような形になる予定です。もちろん、フタ部分も擬岩の雰囲気が出るように、後で形を整えます。

スタイロフォームによる擬岩コーナーカバーの骨格とフタ

ここまでで作ったスタイロフォーム製の擬岩の骨格を、一枚ずつバラすと以下の写真のような感じになります。

スタイロフォームで作った擬岩の骨格の断面図

ここまでで擬岩の形出しは一応完了です。次に、このスタイロフォームの塊にさらに一手間加えて、いくつかのギミックを仕込みます。

取水穴(スリット)を作る

コーナーカバーの外側から内側に水が流れ、排水管を通って濾過槽へと水を落とせるように、擬岩には水を通すためのスリット(穴)を作ります。あとからモルタルを盛ると隙間はふさがっていくので、この時点では広めにスリットを入れておきます。

まずは、水底付近のスタイロフォームに以下のようなスリットを入れます。このスリットには、水槽の底に溜まったゴミがコーナーカバー内部に流れ込み、濾過槽手前のウールボックスで物理濾過により除去されることを狙っています。

スタイロフォームにスリットを入れる

擬岩の形に組み合わせ直すと以下のような感じになります。シェルター部分の裏などに、少し裏側から入ってくる光が透けて見える場所がありますね。この部分にスリットが入っています。

底部分にスリットを入れたスタイロフォームの擬岩骨格

さらに、水面付近にもスリットを入れておきます。こうすることで、水面付近の水が排水管から流れ落ちて油膜取り機能が働くようになります。

水面付近にもスリットを入れたスタイロフォームの擬岩骨格

水面付近と水底付近にスリットを入れるのは、一般的なコーナーカバーと同じ考え方です。なお、浅瀬部分など一部でスタイロフォームの平面がそのままになっているのが気になったので、薄くカットしたスタイロフォームに凹凸をつけたものを少し足しています。

給水塩ビ管を埋め込む

次に、擬岩の隙間から流れ出す水を実現するために、スタイロフォームの中に塩ビ管を埋め込みます。この塩ビ管はオーバーフローパイプの給水管と接続するため、位置合わせが非常に重要です。また、塩ビ管の太さは給水管と同じVP13を使用し、90度エルボで給水管と接続する予定です。

スタイロフォームに埋め込む塩ビ管の位置合わせ

給水パイプから伸びた塩ビ管を、上の画像のようなイメージでスタイロフォーム内に通します(バルブを使っているのは単に長さがちょうどよかったからで、実際は単純なパイプを埋め込みます。)。塩ビ管を仮組みしながら、しっかりと位置をあわせ、スタイロフォームに塩ビ管を埋め込む場所を書き込んでおきます。

スタイロフォームに埋め込む塩ビ管のエルボをカットする

塩ビ管をそのまま埋め込むと、水が真横に吹き出して自然感がなく、また音もうるさいです。そこで、埋め込む塩ビ管の先端には45度エルボを装着します。ただし、45度エルボをそのまま使うと大きすぎて擬岩からはみ出てしまうので、先端部分はカットしておきます。

スタイロフォームに埋め込む塩ビ管の溝を彫る

埋め込む塩ビ管に合わせて、スタイロフォームに埋め込み用の溝を彫ります。塩ビ管とスタイロフォームは後で接着しますが、グラつきがないように溝自体もやや狭めに彫っておくのが良いでしょう。

スタイロフォームに埋め込む塩ビ管の位置合わせ(背面)

塩ビ管を埋め込んだスタイロフォームを再度水槽に戻し、位置がずれていないか確認しておきます。もしもずれてしまっていたら、溝を彫り直して位置をしっかり合わせておきましょう。

シリコンシーラントで接着

ここまでで、スタイロフォームに対する加工は完了です。最後に、スタイロフォームや塩ビパイプをシリコンシーラントで接着して固定します。この時点で、それぞれのスタイロフォームは以下のような形になりました。

接着直前のスタイロフォーム断面図

注意

後で分かるんですが、この骨格には重大な欠点があります。スタイロフォームの体積が大きすぎてモルタルを盛っても水に沈まないんです。そのせいで、モルタルを盛ったあとから内部のスタイロフォームを削り取るハメになり、非常に苦労しました。実はこの時点で「沈むかなー?」という気がかりがあったので多少体積を減らしているんですが、出来上がりの重量が全然予想できず結局沈みませんでした。

水中で使用する擬岩を作る場合は、水に沈むようにスタイロフォームの骨格は形出しに必要な最小限の体積にすることをおすすめします。

以下のように、シリコンシーラントをスタイロフォームに塗って、順番に貼り合わせていきます。ちなみに、シーラントはヘラを使ってしっかり伸ばしてから接着してくださいね。

スタイロフォームをシリコンシーラントで接着

接着まで完了した、スタイロフォーム製・擬岩の骨格がこちらです。

スタイロフォームで作った擬岩の骨格(正面)
スタイロフォームで作った擬岩の骨格(正面)
スタイロフォームで作った擬岩の骨格(左面)
スタイロフォームで作った擬岩の骨格(左面)

これにモルタルを塗りつけて造形していくわけですが、その前にもう二手間くらい加えておきます。

塩ビ板で補強・ガラス保護

水槽の側面からスタイロフォームの青色が見えると、ザ・人工物という感じで萎えますよね。だからといって側面をモルタルで覆うと、ガラスに傷をつける可能性が高いので避けたいです。そこで今回は、スタイロフォームのガラスに接する部分を黒の塩ビ板(1mm厚)で覆うことにしました。

スタイロフォームの水槽との接地面より一回り大きいくらいのサイズにカットした塩ビ板を組み合わせ、その上に先程作ったスタイロフォームの骨組みをのせ、マジックで輪郭をなぞります。この線に合わせて塩ビ板をカットし、スタイロフォームに貼り付ける、というのが大雑把な流れです。

塩ビ板の上に擬岩の骨格をのせる
塩ビ板の上にスタイロフォームの骨格をのせる
擬岩骨格の輪郭を抽出
マジックでなぞって輪郭を抽出する

なお、塩ビ板同士を垂直に組み合わせる部分は、断面に精度が必要になるため自分でカットせず、購入時にサイズを指定して業者側でカットしておいてもらうのがおすすめです。それ以外の部分は、裁ちばさみなど大きめのハサミを使ってカットするのが一番簡単です。

輪郭に合わせて塩ビ板をカット

先程マジックで書いた輪郭に沿って塩ビ板をカットし、保護シートも剥がした状態がこちらです。一部スタイロフォームを覆いきれていない部分がありますが、その部分は後で塩ビ板を継ぎ足します。

カットした塩ビ板を塩ビ板用接着剤で接着するんですが、このままだと接着面が小さすぎて十分な強度が出ません。そこで、塩ビの三角棒を利用して補強しながら接着します。

塩ビ板用接着剤
塩ビ板用接着剤
塩ビ板を接着するときに補強として使う塩ビ三角棒
補強用塩ビ三角棒
擬岩用のガラス面保護カバーを作成
三角棒で補強しながら塩ビ板を接着する

塩ビ接着剤を使用する際は、塩ビ板や三角棒をマスキングテープなどでしっかり固定した上で、表面張力を利用しながら塩ビ板同士の隙間に接着剤を流し込むように接着します。

キスゴムでガラス面に固定できるようにする

上で作った塩ビ板によるスタイロフォームのカバーは、一応ガラスに密着する形に作ってはいるものの、特に固定する部分があるわけでもないので、簡単に位置がずれてしまいます。そこで、キスゴムを使ってガラス面に固定できるように加工します。

まず、以下のようなパーツを4つ用意します。

キスゴムを固定するためのパーツ

これは、4cm×5.5cmにカットした1mm厚の黒い塩ビ板を2枚貼り合わせ、さらに2cm×4cmにカットした黒い塩ビ板を下半分にだけ貼り重ねたものに、上端から7mmかつ左右の中央となる場所にφ6mmの穴をあけ、穴の縁を面取りカッターで面取りしたものです。

次に、スドーの交換用キスゴムを、穴の部分に差し込んでいきます。

スドー 交換用キスゴム(透明)

サイズ的には結構ぴったりなので、キスゴムの引っ掛ける部分を斜めにしつつ、少しづつ押し込んでいきます。

キスゴム固定パーツにキスゴムを押し込む
頭の部分を斜めにしながら穴にキスゴムを押し込む
キスゴム固定パーツにキスゴムを装着完了
キスゴムのはめ込み完了

これでキスゴムをはめ込むパーツが完成しました。

キスゴム固定パーツ(表)
キスゴム固定パーツ(表)
キスゴム固定パーツ(裏)
キスゴム固定パーツ(裏)

あとは、このパーツを先程作った塩ビ板製のカバーに接着するだけです。マスキングテープで仮止めしてから、先程と同じ要領で、毛細管現象を利用して隙間に接着剤を流し込むようにして接着します。

キスゴム固定パーツを塩ビカバーに仮止め
キスゴム固定パーツをマスキングテープで仮止め

キスゴム固定パーツの、2cm×4cmの塩ビ板を貼って高さをかさ増しした部分が、塩ビカバーへの接着面になります。かさ増しによってキスゴムとガラス面の隙間が2mmになっており、この隙間がキスゴムの厚みを吸収して、塩ビカバーとガラス面をピッタリと密着させることができます。

キスゴム固定パーツの接着完了
キスゴム固定パーツの接着完了

塩ビ板製のカバーが完成したので、次はこのカバーとスタイロフォームで作った擬岩の骨格を接着します。

スタイロフォームにキスゴム固定パーツをはめ込む溝を彫る

キスゴムを固定するパーツの分、塩ビカバーの一部が盛り上がっているため、スタイロフォームを削って接着面が浮き上がらないようにしましょう。

垂直を出しながら塩ビ板をスタイロフォームに貼り付けるのが難しそうだったので、ここは水槽の角を利用することにしました。塩ビカバーのフチをすべて覆えるように、水槽にマスキングテープを貼ります。スタイロフォームにシリコンシーラントを塗りつけて、ここに置いた塩ビ製のカバーに押し付けるようにして接着すれば、きれいに垂直を出しつつ固定できます。

接着面付近をマスキング
接着面付近をマスキング
スタイロフォームにシリコンシーラントを塗りつけ
スタイロフォームに接着剤を塗って接着する

ここまでの作業で、以下のような物体が出来上がりました。これが、今回作る「擬岩コーナーカバー」の骨組み部分の完成形です。

擬岩コーナーカバーの骨組み(上面)
擬岩コーナーカバーの骨組み(上)
擬岩コーナーカバーの骨組み(底面)
擬岩コーナーカバーの骨組み(下)

塩ビカバーは、スタイロフォームよりも一回り大きくなるように作っています。このあと、スタイロフォームの表面にはモルタルを盛って厚みが増すので、その厚み込みで塩ビカバーが擬岩の輪郭とちょうど一致するくらいを狙っています。

YouTubeでも擬岩コーナーカバーの作り方(骨組み編)を配信中

今回紹介した擬岩コーナーカバーの作り方の解説は、YouTubeで動画の形でも配信しています。この動画の前に公開した、オーバーフロー水槽の自作方法を解説する動画の続編的な位置づけですが、擬岩作り単体でも見てもらえるようになっています。

このページでは擬岩コーナーカバーの作り方を文章で細かく説明しましたが、手元の動き等は動画のほうがわかりやすい部分もあると思います。K-kiのやり方を参考に爬虫類飼育やアクアリウムで使える擬岩を作ってみようと思ってくれた人は、ぜひYouTubeの動画も見てみてくださいね。そして、チャンネル登録もぜひぜひお願いします!

YouTubeチャンネル

擬岩コーナーカバーの作り方(骨組み編)のまとめ

今回は擬岩コーナーカバーの作り方の前編として、擬岩コーナーカバーを作る目的と、期待する役割を明確化し、スタイロフォーム・塩ビ板・キスゴム等を使用して擬岩の骨組みを作り、水槽に固定できるような加工を行うまでを解説しました。

爬虫類飼育で使用する擬岩バックボード(バックパネル)の場合は、平面に切り出したスタイロフォームに凹凸をつけてモルタルを盛っていくだけなのでもう少し簡単なのですが、今回はコーナーカバーなので水の流れや水槽への固定、メンテナンスを考える必要があり構造が比較的複雑になりました。多少工作精度が求められる部分もあるので、自作に挑戦するときは現物をよく見てサイズ・位置の調整には気を配るようにしましょう。

次回は、擬岩のクオリティを決定づける、モルタル造形と塗装について紹介します。この次もぜひ読んでくださいね!

K-ki

オーバーフロー水槽のコーナーパイプを保護するコーナーカバーを擬岩で作る、ありそうであまりなかった試みではないでしょうか。実は既に擬岩コーナーカバーは完成していて、なかなかの仕上がりになっています。作業はけっこう大変ですが、特に亀飼いの人にはぜひ試してみて欲しいDIYです。次回をお楽しみに!

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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