爬虫類飼育 生体の選び方

ペットに人気の水棲亀・リクガメの種類20選&飼育できない亀

2015/07/12

トウブハコガメ Eastern Box Turtle

爬虫類をペットにするということは最近ではかなり理解されるようになってきたと思いますが、それでもメジャーなペットではないですよね。しかしその中で亀だけは格別にペットとして親しまれている生き物と言えるのではないでしょうか。子供の頃に飼ったことがある人も多いと思います。

しかし亀と言っても多種多様で、世界中には知られているだけでもおよそ300種類の亀がいると言われています。今回はそんなペットとして人気のある爬虫類の代表格である亀の中でも、特にポピュラーな種類をミズガメ・リクガメ合わせて20種紹介します。

基本的には当サイト「AquaTurtlium」の運営者: K-ki の独断と偏見によってペットとしての人気が高い亀、中でも広く飼育をおすすめできる亀を紹介していきますが、一部には人気はあるものの保全状況などから安易には飼育を勧められないような種類も含まれています。それぞれの亀の項目で簡単にその種類について説明していますので、もしもカメの飼育を検討されている方がいれば参考にして下さいね。

亀を飼育する心構え

ペットとして人気の亀を紹介する前に、亀を飼うにあたっての心構えを書いておきます。上にも書いたようにペットとして身近で飼育経験者も多い亀ですが、一方で飼いきれなくなった亀を逃がす人が多く、大きな問題を引き起こしています。

ペットを飼うのは命を預かることですから、必要最低限の知識くらいは身につけてから飼育を始めて下さい。一人の亀好きとしてのお願いです。

絶対に逃がさない・最後まで面倒を見る

一番重要なのは、一度飼い始めた亀を絶対に逃さないことです。日本では1950年代頃からミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)がペットとして輸入され始めました。安価なためペットとして人気が出ましたが、一方でミドリガメは非常に大きくなる亀なので、持て余した人達が飼っていた亀を捨てるようになります。

ミドリガメは非常に生命力が強い亀で、もともと日本に生息していたニホンイシガメ等の在来種の生息地を奪うなど、日本の生態系に大きな影響を与え問題となっています。その脅威はアカミミガメが「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されていることからも分かるでしょう。また元々日本に生息している亀だとしても、地域的な遺伝子多様性の保存に問題を引き起こすためやはり逃すのは御法度です。

狭い場所で飼われている亀が可哀想という理由で逃す人がいたりもしますが、飼育下に置かれていた亀はほとんどの場合野生環境に適応できずに死んでしまいます。また、近年では駆除活動も行われています。生態系に影響を与えているのは、捨てられている絶対数があまりにも多いからで、多くの場合は亀を逃すのと殺すのはほぼ同じです。亀を逃がす・捨てるという行為がどれだけ悪質で残酷なことかはきちんと理解しておいて下さい。

また、カメは非常に長生きする生き物です。ゾウガメなどの一部の種類では寿命は150年以上、ペットとして一般的に飼育される種類でも30~50年程度は生きる種類が大半です。途中で飼育を放棄しないですむように、飼い始める時に長い間面倒を見られるかどうかよく考えてください。

入手経路を良く考える

近年では開発による環境破壊やペットとして販売するための乱獲などにより、絶滅が危惧されている亀が多くいます。亀を好きだからこそ飼育したいと思うものですが、そのせいで野生の亀を絶滅させてしまうようではいけませんよね。だからこそ、亀を入手する際には入手経路についてもよく考えて欲しいのです。

乱獲で壊滅したイシガメ達から学ぶ、動物保護の最低限の知識

【拡散希望】ブログで交流のある方が保護するイシガメが、乱獲により壊滅的な被害を受けました。この事件を多くの人に知ってもらうと共に、野生動物の保護について考えます。WC/CB個体・持ち腹の是非や遺伝的多様性等を解説します。

例えばこちらの記事に紹介しているように、日本国内でもペットとしての販売を目的とした亀の乱獲事件が何度も起こっています。こういった問題を少しでも減らすには、一人ひとりが乱獲された亀は飼わないという意志を持つべきなのです。

上の記事にも詳しく書いていますが、亀を購入する際には「ぶりくら」「とんぶり」「HBM」などのブリーダーズイベントなど、出処が明確に分かる場所での購入をおすすめします。出処が不確かな亀を買って知らないうちに乱獲に加担していた、なんてことにならないようにしたいですね。ブリーダーズイベントではペットショップで購入するよりも安くなっているので、販売価格の面からもおすすめです。

飼育方法を事前によく調べておく

当然ですが、生き物を飼う際には飼育を始める前にその生き物についてよく調べておくべきです。いざ飼い始めて何か問題が起こってから飼い方を勉強しているようでは手遅れになってしまう場合も多いです。

亀の飼い方・飼育方法-水槽から紫外線・ろ過まで完全まとめ

亀の飼い方として、屋内飼育(特に水槽飼育)における必要なもの・ろ過・セッティング例・普段の世話などを解説しています。飼育ケース・エサ・紫外線ライトなどの商品例も挙げながら、亀を飼うための環境作りの方法を詳細に紹介します。

当サイトにも、亀の飼い方をまとめたページがあるのでぜひ参考にしてみてください。ただしこちらのページは主に水棲亀(ミズガメ)を対象としているので、リクガメの飼い方については他のサイトで調べて下さいね。

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水棲亀(潜頸類)

前置きが少し説教臭くなってしまいましたが、それではペットとして人気の亀をドカンと20種類まとめて紹介していきます。まずは水棲カメ(主に水中で生活する亀)、中でも首を甲羅に縦に引っ込める潜頸類(潜頸亜目)に分類される亀から紹介していきます。

厳密にはリクガメやウミガメも潜頸亜目に含まれるのですが、ここではその中でも特に淡水に住む水棲のカメを紹介します。表に書いている値段はペットショップでの販売価格を基準に紹介していますので、ブリーダーズイベントではもう少し安く手に入る可能性があります。また、飼い易さはあくまでもK-kiの主観による評価です。

ミシシッピニオイガメ

学名 Sternotherus odoratus
英名 Common musk turtle
Stinkpot
分類 ドロガメ科ニオイガメ属
原産地 アメリカ合衆国
飼い易さ ★★★★★
値段 4000~6000円程度
甲長 8~10cm程度(最大甲長 13.6cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 水深が浅く、水底が泥や砂で流れの緩やかな河川、湖、池沼、湿地など
保全状況 アメリカでは国としての保護指定はされておらずよく見られる種類ですが、一部地域では絶滅危惧種に指定されています。
特徴 小型で紫外線要求量が少なく、初心者にも飼いやすい亀の代表格。小型な分、幼体時はやや弱く体長を崩しやすい面も。

ミシシッピニオイガメは、甲長8~10cmと小型で飼いやすいとして近年人気上昇中の亀です。爬虫類が健康に成長するには、紫外線を浴びて体内でカルシウムの吸収に必要となるビタミンD3を合成する必要があるのですが、ミシシッピニオイガメはその必要性が他種よりも低く飼育設備が簡易なもので済ませられる点も人気の理由です。60cm水槽があれば終生飼育可能で、バスキングもあまりしないので完全水棲種のように飼っている方も多いです。

ミドリガメを除いた外国産の亀の中では価格も比較的安く手が届きやすいため、初心者にも良くおすすめされます。小型の種類なのでどうしても幼体時は体力がなく弱りやすいですが、基本的には飼いやすい亀です。とはいえ寿命は30年程度と考えられておりペットとしては非常に長生きする部類ですので、飼育する際は最後まで面倒を見る覚悟を決めてからにしてくださいね。

ちなみに、英名の「Stinkpot(スティンクポット)」には、「嫌なやつ」「卑劣な人」「悪臭を放つツボ」という意味があります。非常に失礼な名前ですが、この名前は危険を感じると後脚の付根にある臭腺から臭い分泌液を出すという特徴に由来しているそうです。

同じような防御行動を取るカメにクサガメがいますが、どちらも同じような名前をつけられているのが面白いですね。クサガメ同様、ミシシッピニオイガメも、飼育下では臭いはほとんど気になりません。

寿命は約30年程度とされていますが、カメの仲間は全体的に寿命が長く、継続的な調査も大変なので、この数字は絶対的な正確さを持つものではありません。寿命の目安程度に考えておくと良いでしょう。

カブトニオイガメ

カブトニオイガメ Sternotherus carinatus

学名 Sternotherus carinatus
英名 Razor-backed musk turtle
分類 ドロガメ科ニオイガメ属
原産地 アメリカ合衆国
飼い易さ ★★★★★
値段 4000~6000円程度
甲長 10~13cm程度(最大甲長 16cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 比較的水深が深く水底が柔らかな泥や砂、落ち葉などで、流れの緩やかな河川、湖、池沼など
保全状況 カブトニオイガメは広い範囲に生息しており、種として絶滅の危機はないと考えられています。国際自然保護連合(IUCN)によるレッドリストにも登録されていません。
特徴 ミシシッピニオイガメと同じく飼いやすい亀ですが、やや大きくなり気が荒い点から単独飼育がおすすめ。子亀の頃は背中が尖りながら大きく盛り上がって尖っており、それが英名の由来にもなっています。

ミシシッピニオイガメと同じドロガメ科ニオイガメ属に分類されるカブトニオイガメも、初心者にも飼育しやすいカメとして近年メジャーになってきています。ミシシッピニオイガメと比べるとやや大きくなり(ニオイガメ属の中では最大種)、比較的気が荒いため単独飼育の方が安心できます。また、他のドロガメと比較してやや神経質な性格をしているようです。

本種の英名に含まれる「musk」という単語は、日本語では「麝香(じゃこう)」と表現されます。麝香はジャコウジカというシカから得られる分泌物を乾燥した香料で、甘く粉っぽい匂いがするそうです。ニオイガメの仲間は英名が「musk turtle」なので、以前はジャコウガメと呼ばれていました。麝香は香水にも利用されるため臭くはない気がするのですが、実際はどんな臭いがするんでしょうね。

幼体時には背甲が尖りながら大きく盛り上がっていて、その様子が英名の「Razor-backed(カミソリのような背中)」の由来にもなっています。甲羅の形ばかりに目が行きがちですが、スポット状の模様が入り巨頭化することもある頭部や、薄めの色合いの中に濃いラインが入る甲羅など、個人的には典型的な外国産の綺麗な亀だと思います。

アダルトになるとオスの方がメスよりも大きくなったり、薄明薄暮性(明け方と夕暮れ時に活動する性質)だったりと他の亀とはちょっと違った特徴を持っているので、ちょっと変わった亀が飼いたい人は考慮して見る価値があると思います。甲長10~13cm、価格はミシシッピニオイガメと同程度で、比較的手を出しやすいです。

クサガメ

学名 Mauremys reevesii
英名 Chinese three-keeled pond turtle
Reeve’s pond turtle
分類 イシガメ科イシガメ属
原産地 大韓民国、中華人民共和国
飼い易さ ★★★★★
値段 1000~2000円程度
甲長 15~25cm程度(最大甲長25.5cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 流れの緩やかな河川や湖沼、池、水田など。日光浴が好きで、エサは基本的に水中でしか食べない。
保全状況 中国ではワシントン条約(CITES)附属書III類に掲載されており、国際的な取引に制限がかけられています。
特徴 日本ではペットとして非常に馴染みの深い亀で、「ゼニガメ」という名前で多くのペットショップで販売されています。野生個体も見られますが、実は外来種で江戸時代頃に移入されたと考えられています。

クサガメは日本にも生息している亀で、子亀は「ゼニガメ」の愛称で親しまれています。ゼニガメは本来はニホンイシガメを指していたのですが、いつしかクサガメを指すように変化してきました。それほど身近に感じられる亀だったのでしょう。他にもキンセンガメやリーブスクサガメといった呼び名でも呼ばれています。

クサガメという名前は、外敵などに襲われると臭腺から臭い分泌液を出すところから名付けられたものです。ただし飼育下で人馴れしていれば、めったに分泌液を出さないので、飼育する際に臭いを気にする必要は無いでしょう。

クサガメは日本に生息して入るものの、本来は中国や韓国が原産で、日本には江戸時代頃に持ち込まれた外来種である可能性が高いとされています。また、ニホンイシガメと交雑してウンキュウと呼ばれる雑種を産むことが知られており、生態系に与える影響が問題視されています。

もともとアジア圏の亀で日本の気候にも適応できるので、飼育は容易ですが、雌の場合には最大甲長25cmと結構大きなサイズまで成長する点には気を付けましょう。飼育方法は基本的な水棲亀の飼育法のとおりです。日光浴もしっかりさせてあげてくださいね。

頭部は暗褐色の暗めの色合いの皮膚に、黄色や黄緑色の不規則な模様が入ります。これがクサガメのチャームポイントとも言うべき特徴です。ただし、十分に成長したオスはメラニズム(黒化)を起こして頭部が真っ黒になります。寿命はおおよそ30年とされますが、60~100歳まで生きたという長寿記録も存在します。

ペットショップなどでの流通も多くペットとして人気の亀ですが、オオアタマクサガメと呼ばれる巨頭化する個体群を育てたり、アルビノやパステルなどの色変個体を飼育したりと、マニアも楽しめる奥が深い亀でもあります。

ニホンイシガメ

亀などの爬虫類に寒い冬でも太陽光の紫外線を浴びさせる工夫

学名 Mauremys japonica
英名 Japanese pond turtle
分類 イシガメ科イシガメ属
原産地 日本
飼い易さ ★★★☆☆
値段 4000~10000円程度
甲長 8~20cm程度(最大甲長22cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 河川、池沼、湖、湿原などに生息します。また、やや流れのある渓流のような環境にも適応します。比較的綺麗な水質を好みます。半水棲ですが、日光浴を好み陸上でも広い範囲を移動するなど、陸上生活にも適応しています。
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。一方で乱獲が話題になったりと、十分な保護が行われていないのが現状です。
特徴 世界で日本のみに生息する日本固有種の亀です。派手ではないものの個体差が大きく、背甲や手足が赤やオレンジ色を帯びたり、甲板が黒く縁取られたりと様々な美しさを持っている亀です。水カビ病にかかりやすいなどやや繊細で、飼育する際には注意が必要です。

当サイト「AquaTurtlium」に最もよく登場する亀のニホンイシガメも、ペットとして人気が高い亀の一種で、日本国内はもちろん、海外でも人気です。私の一番好きな亀もニホンイシガメで、現在も飼育中です。甲長はメスの場合最大で20cm程度になりますが、オスの場合は最大15cm程度と比較的小型の部類に入ります。

ニホンイシガメの魅力は色々ですが、特に背甲の色彩に個体差が大きく、赤みが強い個体や甲板ごとに黒い縁取りを持った個体など、1匹ごとに異なる美しさを持っている点が大きな魅力の一つです。色彩的には決して派手な亀ではないですが、落ち着いた色合いならではの渋さ、いぶし銀的なカッコ良さを感じさせてくれます。日本固有種で、和の雰囲気を纏っているところも個人的には魅力だと思っています。

私が子供の頃はホームセンターで1000円程度の値段で売っていたと思うのですが、生息数が減少していることもあり現在ではやや貴重なカメとなっています。日本にしか生息していないカメなので、日本の愛好家の手で守っていかなければなりません。

ニホンイシガメの寿命は他の水棲ガメと同じく約30年程度とされています。飼育下では、冬期に冬眠させず加温飼育する場合があるのが影響するためか、やや短くなる傾向のようです。

飼い方は上のほうで紹介している亀の飼育方法をまとめたページを参考にしてください。ニホンイシガメはやや繊細で、特に幼体時には飼育水が汚いとすぐに水カビ病などに感染してしまうため、きれいな水質を維持し十分に日光浴(バスキング)をさせるのが重要です。

生物分類ニホンイシガメ

私もニホンイシガメを飼っているので、当サイトにはニホンイシガメに関する記事がたくさんあります。基本的には上のページにまとめられているので、ニホンイシガメが好きな方はこちらから当サイトの色々なページを読んでみてください!

キボシイシガメ

Spotted Turtle - Clemmys guttata

学名 Clemmys guttata
英名 Spotted turtle
分類 ヌマガメ科キボシイシガメ属
原産地 アメリカ合衆国、カナダ
飼い易さ ★★★★☆
値段 20000~35000円程度
甲長 10cm程度(最大甲長 ♂:12.2cm ♀:14.3cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 流れが緩やかで水深が浅く、水底が泥や粘土質の池沼、湿地、森や平原に囲まれた水場など
保全状況 キボシイシガメはカナダでは全分布域で法律により保護されており、またアメリカでも分布する多くの州で保護対象となっています。しかしながら長期的な視点で見ると十分な個体数が保護されているとはいえません。ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 黒い甲羅に黄色の鮮やかなスポットが入り、手足には赤みがかかる美しい亀。その美しさから国内外を問わずファンが多いです。値段が高めで初心者には手が出しにくいですが、小型で飼いやすい亀です。

キボシイシガメは小型の亀の中でも1、2を争う美麗種です。どれくらい綺麗かはGoogleなどで画像検索して貰うと良く分かると思いますが、派手すぎずどこか上品さすら感じさせる風貌です。Twitterで見つけた私のお気に入りの写真も紹介しておきます。

黒い甲羅に散りばめられた黄色い星のようなドットと、甲羅とは対照的に派手な四肢がとても美しいです。また、最大甲長が15cmに満たず、小型なところも飼い安さの面で長所になります。私もいつか飼ってみたいと思っている亀のうちの一種です。

ミシシッピニオイガメやカブトニオイガメなら少し大きなペットショップに行けば見られますが、キボシイシガメくらいになるとペットショップではあまり見かけません。価格的にも本当にカメが好きな人でないとちょっと購入を躊躇う気持ちも生まれるでしょう。

種の保全状況も決して良いとはいえないので、飼育するのであれば貴重な生き物を飼っている自覚は持っておきましょう。2013年にCITES II(ワシントン条約附属書II)に掲載されて以降、アメリカの野生個体はほぼ手に入らなくなりました。キボシイシガメの保護という面では良い方向に向かっているわけですが、爬虫類の愛好家としては寂しい部分もあります。

幸い、日本でも飼育下繁殖個体がある程度コンスタントに流通しています。美しい本種を飼育する喜びを今後も味わえるよう、キボシイシガメを飼育する方はぜひ繁殖まで目指してほしいと思います。寿命も比較的長いので、チャレンジできるチャンスは多いはずです。

キボシイシガメの飼育・繁殖・特徴まとめ!甲羅に星が輝く美しい亀

アメリカ原産の小型水棲亀「キボシイシガメ」の分類・特徴・分布・飼育・繁殖・保全状況等を解説します。最大でも甲長12cm程度で日本の気候にも適応できる飼いやすい亀です。甲羅に入る黄色のスポットが美しく多くの愛好家がいます。

こちらのページでキボシイシガメについて紹介・解説しているので、よければあわせて読んでみてください。

ハラガケガメ

学名 Claudius angustatus
英名 Narrow-bridged musk turtle
分類 ドロガメ科ハラガケガメ属
原産地 グアテマラ、ベリーズ、メキシコ
飼い易さ ★★★☆☆
値段 50000円程度~
甲長 13~15cm程度(最大甲長 ♂:18cm ♀:15cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 池・沼・川などの浅瀬、低地にある氾濫原など。
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。
特徴 肉食傾向が強くどちらかというと凶暴な亀で、手で持つと良く口を開けて威嚇してきます。腹甲が小さく腹掛のように見える特徴から名付けられました。個体によって見た目の差が大きく、綺麗な個体は高値で取引される場合もあります。

甲長は15cm程度と小型ですが、大型の頭部や凶暴な性格から感じ取れる野性的な雰囲気が非常に人気の亀です。一方で、意外に小柄なサイズ感や、とても小さく和名の由来にもなっている腹甲などところどころで可愛らしも持ち合わせ、まさにギャップ萌えを体現したような亀かもしれません(笑)。

野性的な雰囲気がこの種類の人気理由でもあるため、大型の個体、巨頭化した個体などは人気で高値がつきやすいです。また、甲羅の色味や模様が綺麗な個体も高価になる傾向にあります。

野生捕獲個体(WC)も多く流通し人気ですが、レッドリストで準絶滅危惧種に指定されているように生息数の減ってきている亀です。飼育下繁殖個体(CB)も流通が増えてきているので、できるだけCB個体を飼育するのをおすすめします。WC個体だと配合飼料に餌付きにくく飼育が大変な場合もありますが、CB個体は配合飼料にも餌付きやすいです。

水棲傾向がかなり強いカメですが、原産地では水深の浅い場所に生息しており泳ぎは不得意です。飼育する際は水深をあまり深くしすぎず、28℃程度のやや高めの水温を維持するのが良いとされています。あまり陸地には上がりませんが、きちんと紫外線ライトも用意してあげて下さい。また気が荒いので、基本的に単独で飼育するようにします。

ダイヤモンドバックテラピン(キスイガメ)

学名 Malaclemys terrapin
英名 Diamondback terrapin
分類 ヌマガメ科キスイガメ属
原産地 アメリカ合衆国、イギリス
飼い易さ ★★☆☆☆
値段 20000円程度~
甲長 最大甲長 ♂:15.3cm ♀:23.8cm
寿命の目安 約30年程度
生息環境 流れのゆるやかな河川の河口付近、干潟、入江など
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 暗めの褐色の背甲と、明るいグレーに黒色の斑紋がある頭部・手足が対照的でとても美しい亀です。河口のような淡水と海水が混ざった「汽水」という水質に生息しており、美しい個体はかなり高値で取引されます。昔は食用にされていたこともあります。

ダイヤモンドバックテラピンは亀全体の中でもかなり綺麗な種類で、爬虫類飼育者にとっては一種の憧れのような存在でもあります。ダイヤモンドガメという名前は、背甲中央の甲板(椎甲板)が六角形または八角形になるという特徴に由来するそうです。

和名の「キスイガメ」からも分かりますが、完全な淡水ではなく海水が混ざった汽水域に生息しており、完全な海水下でも活動できます。飼育する際は必ずしも汽水・海水が必要なわけではないのですが、水質悪化に敏感なので飼育水を綺麗に保つのが重要です。

分布域が広いため地域変異が大きくなっており、現在では以下の7亜種に分類されています。

  • キタダイヤモンドガメ
  • カロリナダイヤモンドガメ
  • テキサスダイヤモンドガメ
  • ニシキダイヤモンドガメ
  • ミシシッピダイヤモンドガメ
  • マングローブダイヤモンドガメ
  • ヒガシフロリダダイヤモンドガメ

ダイヤモンドバックテラピンは和名ではなく英名で呼ばれる場合も多いです。キタダイヤモンドガメなら「ノーザンダイヤモンドバックテラピン」、ニシキダイヤモンドガメなら「オルナータダイヤモンドバックテラピン」という感じですね。日本ではノーザンとカロリナの流通が多いですが、亜種を正確に見分けるのは難しいようです。

ダイヤモンドバックテラピンの中には「コンセントリック」と呼ばれる背甲の甲板ごとに同心円状の模様がはっきり入っている個体もいます。こういった特徴のある個体は見た目の美しさから高値で取引されます。ダイヤモンドバックテラピンは個体差も大きな種類なので、自分のお気に入りの個体を探しだす楽しみもありますね。最大甲長はオスで15cm、メスで20cm程度で、概ねクサガメと同じサイズ感です。

水棲亀(曲頸類)

首をS字に折り曲げて縦に甲羅に頭を隠す潜頸類の次は、首を横に曲げて隠す曲頸類の中から人気のカメの種類を紹介していきます。首を横に曲げて隠す様子がイメージ出来ない方は、下の画像を見れば一発でしょう。

Chelodina oblonga gnangarra

曲頸類はこんなふうにぐにゃっと首を曲げるので、首が長い種類が多いです。現在では潜頸類に比べると種類が少ないですが、起源は潜頸類よりも古いグループだと考えられています。

ジーベンロックナガクビガメ(チリメンナガクビガメ)

学名 Macrochelodina oblonga
英名 Northern Australian snake-neck turtle
分類 ヘビクビガメ科オオナガクビガメ属
原産地 インドネシア、オーストラリア、パプアニューギニア
飼い易さ ★★☆☆☆
値段 10000~20000円程度
甲長 30cm程度(最大甲長40cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 河川や池沼、湿原など。陸にはほとんど上がらない。
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。
特徴 曲頸類の定番とも言える種類です。安価でコンスタントな流通量も確保されている種類ですが、マニアにも安定した人気があります。

ジーベンロックナガクビガメは、曲頸類の定番中の定番です。黒に近い暗めの色合いの背甲と黄色から褐色のやや明るい色合いの腹甲、そして何より長い首と大きな頭が特徴です。曲頸類の持つ野性的・神秘的な魅力を存分に感じさせてくれる亀と言えます。

フルアダルトになるとかなり大型になるので、とにかく大きな水槽や飼育容器を用意するのが重要です。また、肉食傾向が強いため配合飼料への餌付けや小魚やエビといった活き餌を上手く活用するのも大切です。その他は基本的な水棲亀の飼育方法と同じです。

ジーベンロックナガクビガメは分類の際に何度も間違いが起きていて非常にややこしいです。しかも曲頸マニアは基本的に学名で読んだりするので、素人からすると余計に分かりにくくなっています。簡単にまとめると以下の様な感じです。ちなみに括弧内は学名を表しています。

  • ジーベンロックナガクビガメ(C. M. seibenrocki)とチリメンナガクビガメ(C. M. rugosa; ルゴッサ)はこれまで別種と考えられていたが、近年の遺伝子解析で同種とする意見が有力化
  • コウホソナガクビガメ(C. oblonga; オブロンガ)の模式標本がチリメンナガクビガメのものだった事が判明
  • オブロンガの方がルゴッサよりも古いので、国際動物命名規約に基づきチリメンナガクビガメの学名はこれまでのルゴッサからオブロンガに変更
  • コウホソナガクビガメの学名は、これまでシノニム(別名)とされていた(C. M. colliei; コリエイ)に変更

要するに現在ではジーベンロックナガクビガメ=オブロンガということです。うーん、ややこしい。

オブロンガ?ルゴッサ?ジーベン?ヘビクビガメのややこしい学名

エキスパンサ・オブロンガ・ルゴッサ・ジーベンロックナガクビガメ等、学名で呼ばれることも多い曲頸類の名前を解説します。間違いが重なり学名が変更されているため分かりにくいですが、しっかり抑えて曲頸マニアへ一歩近づきましょう!

ヘビクビガメの分類と学名については、別記事で詳しく解説もしているので、良ければこちらも読んでみてくださいね。

ニシキマゲクビガメ

学名 Emydura subglobosa
英名 Red-bellied short-necked turtle
分類 ヘビクビガメ科マゲクビガメ属
原産地 インドネシア、オーストラリア、パプアニューギニア
飼い易さ ★★☆☆☆
値段 10000~20000円程度
甲長 最大甲長25.5cm
寿命の目安 約30年程度
生息環境 流れの緩やかな河川や湖沼。水棲傾向が強いが日光浴も好む。
保全状況 ニシキマゲクビガメはIUCNレッドリストで「軽度懸念」に分類されています。ペットとして取引されている個体の多くは、世界的にはヨーロッパ産の飼育下繁殖個体(CB)なので、絶滅の危険性は低いと考えられています。
特徴 腹甲・背甲の縁、下顎などは赤~オレンジ色で、頭部の側面にはクリーム色の模様が入る色鮮やかな亀。曲頸類の中でも人気が高いです。

ニシキマゲクビガメは鮮やかな色味の曲頸類として有名なカメです。マゲクビガメ属の中でオーストラリア以外にも生息しているのは本種のみで、オーストラリアは生き物の輸出に関する制限が厳しいため、手に入りやすいマゲクビガメとしても貴重な存在です。

ニシキマゲクビガメという名前が表すように、腹甲・背甲の縁、下顎などは赤~オレンジ色で頭部の側面にはクリーム色の模様が入るなど、色鮮やかな亀です。幼体は特に見た目が派手で綺麗ですが、多くの場合、成長するに伴い鮮やかさは薄れやや落ち着いた色味になっていきます。「short-necked turtle」という英名から読み取れるように、曲頸類の割に首は短い印象ですね。

幼体時はこんな感じです。上の写真の個体は成長している割にかなり色鮮やかな個体ですが、それに比べてもやはり幼体のハッキリとした色合いは際立ちます。

中々に特徴的な見た目に対して、生態の方は至って普通の水棲ガメといった感じです。幼体時は皮膚病になりやすいようですが、他の曲頸類のように極端に大きくなりもせず、飼いやすい亀だと思います。水棲ガメの中でも頻繁に日光浴をする種類なので、美しく育てるためにもたくさん日光浴をさせてあげて下さい。

マタマタ

学名 Chelus fimbriatus
英名 Mata mata
分類 ヘビクビガメ科マタマタ属
原産地 エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、トリニダード・トバゴ、ブラジル、仏領ギアナ、ペルー、ボリビア
飼い易さ ★☆☆☆☆
値段 20000~30000円程度
甲長 最大甲長45cm以上
寿命の目安 約40年程度
生息環境 流れの緩やかな河川や池沼の水底付近。陸にはほとんど上がらない。
保全状況 IUCNやワシントン条約(CITES)による保護の対象とはなっていませんが、飼育下での繁殖方法が確立されておらず、ペットとして流通しているのはほぼ野生個体です。ペットとして消費的に扱われないようにするためにも、繁殖方法の確立・CB個体の流通が必要とされています。
特徴 写真を見れば分かるように、水底の落ち葉に擬態した特異な形態をしています。頭は大きすぎて甲羅の中に引っ込められません。特徴的でカッコいい見た目から人気が高い種類です。

写真からも分かるようにとにかく特徴的な亀で、他種とは一線を画しています。皮膚のヒダ状の突起や扁平かつキールが発達したデコボコの甲羅、大きな三角形の頭部などは川底の落ち葉や石などに擬態する効果があると考えられています。

主にオリノコ川やアマゾン川といった南米の非常に大きな川に生息しているのですが、生息範囲が広く地域的な変異が大きいことでも有名です。オリノコ川水系の個体群は明るい色の背甲と斑紋の少ない腹甲を持ちますが、アマゾン川水系の個体群は背甲が暗色で、腹側にははっきりとした黒い斑紋が現れます。

顔をよく見てみると、マタマタって以外につぶらな瞳をしてるんですよね。このギャップも萌えポイントの1つでしょう。

特徴的かつカッコいい亀なので、ペットとしての人気も高い種類です。しかしながらいざ飼育するとなると、以下のような問題点から気軽には飼育をおすすめし難いカメであるとも言えます。

まず一つ目の問題点は、とにかく動かない点です。水族館などで飼育されているマタマタを見る機会があれば確認してみて欲しいのですが、いくら見ていてもほとんど動きません。どれだけカッコよくても置物のように動かないマタマタ相手だと、だんだんと飽きが来てしまい飼育に情熱を注げなくなってしまう人もいます。そうなるとろくな未来が待っていないのは予想に難くないですよね。

二つ目に、ほとんど配合飼料に餌付かないという問題が上げられます。私はカメがペットとして親しまれている理由の一つには、配合飼料を食べるため世話が簡単という点があると考えています。しかしマタマタは魚食性がかなり強く市販の配合飼料をほとんど食べません。飼育する際には生きた魚を与える必要が有り、他の亀に比べてエサやりに手間とコストが掛かります。

亀のエサの種類とおすすめ!あげ方や食べない時の対処も解説

亀の飼育で重要な亀のエサについてまとめます。爬虫類に必要な栄養素とバランス、配合飼料・生き餌・乾燥餌などのエサの種類、与えてはいけないエサ、エサの与え方等を解説します。亀以外にトカゲ・ヤモリ・ヘビ等の飼育にも役立ちます。

そして三つ目は、マタマタでは突然死の報告がよくされている点です。突然死の原因は食べ過ぎによる肥満とも、偏った餌による栄養失調とも言われていて、なかなか明確な対策がありません。おそらくは餌が原因だとは思わますが、他の亀を飼うなどしてある程度経験を積んでから飼い始めたほうが失敗が少ないと思います。

陸棲傾向が強い半水棲亀

ここまででは水棲傾向が強い亀を主に紹介してきました。次は、分類的にはリクガメでは無いものの陸棲傾向の強い半水棲亀の中から人気の種類を紹介していきます。主にハコガメやヤマガメと呼ばれる種類のカメを対象にしていると思って下さい。

カロリナハコガメ

トウブハコガメ Eastern Box Turtle

学名 Terrapene carolina
英名 Common box turtle
分類 ヌマガメ科アメリカハコガメ属
原産地 アメリカ合衆国、メキシコ
飼い易さ ★★★★☆
値段 30000円程度~
甲長 最大甲長21.6cm
寿命の目安 約40年程度
生息環境 開けた森林、湿性草原、牧草地など
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 鮮やかな色合いから熱心な愛好家も多い美しいハコガメ。飼育方法はリクガメに近いが乾燥させすぎないように注意が必要です。流通があまり多くなく値段も高いので、中々手が届かない亀です。

陸棲傾向の強い半水棲亀のなかでも、アメリカハコガメ属には熱心なマニアがたくさんいます。写真を見てもらうと分かるように、なんといってもその鮮やかな色合いが人気の源です。ただし、甲羅や体の模様は個体差が大きく、派手な個体から地味な個体まで様々なのも、マニアの収集欲を掻き立てます。

カロリナハコガメは以下の6亜種に細分されます。中でも日本では、ミツユビハコガメやトウブハコガメの流通が多いようです。

  • トウブハコガメ
  • フロリダハコガメ
  • ガルフコーストハコガメ
  • メキシコハコガメ
  • ミツユビハコガメ
  • ユカタンハコガメ

カロリナハコガメは以前は安価で流通量も多かったようですが、1995年にアメリカハコガメ属全体がCITESの附属書II類に掲載されたのをきっかけに、流通が減少し値段もかなり上がりました。値段の欄には3万円~と書いていますが、流通の少ない亜種や模様が綺麗に入った個体などは高値になり、10万円を軽く超える値段で販売されている場合もあります。アメリカの個体はCBも含めほとんど流通しないので、今後一層国内でのCB化が望まれる種類です。

ここまでに紹介してきた亀とは異なりほぼ陸棲なので、飼育方法はミズガメよりもリクガメに近いです。ただし分類的にはヌマガメなので、リクガメのように乾燥を好むわけではない点には注意が必要です。

ニシキハコガメ

学名 Terrapene ornata
英名 Ornata box turtle
分類 ヌマガメ科アメリカハコガメ属
原産地 アメリカ合衆国、メキシコ
飼い易さ ★★★★☆
値段 120000円程度~
甲長 最大甲長14cm
寿命の目安 約40年程度
生息環境 やや乾燥した、樹木がないか藪が点在する草原
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 鮮やかな色合いから愛好家の多い、アメリカハコガメ属に分類される亀の一種。比較的乾燥した環境に生息しているため、飼育方法はリクガメに近いと思われます。流通量が少なく非常に高価な亀です。

カロリナハコガメ同じアメリカハコガメ属に分類されるニシキハコガメも、愛好家からの評価が高い人気のある亀です。カロリナハコガメもかなり値段は高かったですが、ニシキハコガメはさらに流通が少なく値段もより高くなります。本種を飼育している人はかなりの亀フリークといっても差し支えはないでしょう。

ニシキハコガメは以下の2亜種に細分されます。

  • キタニシキハコガメ
  • ミナミニシキハコガメ

流通するのはほとんどが基亜種であるキタニシキハコガメで、ミナミニシキハコガメの流通量はかなり少ないです。同属のカロリナハコガメと比較するとより乾燥した環境を好むため、飼育環境もそのように整えてください。

ハコガメという名前からも分かるように、アメリカハコガメ属の亀は頭と手足を甲羅に引っ込めた後、腹甲を折り曲げて箱の様に完全に甲羅に隠れられます。アジア圏に生息するイシガメ科ハコガメ属の亀も、同様に甲羅の一部が蝶番のようになっていて動かせるのですが、分類的には結構離れているため、どのように進化してきたんだろうと考えると中々興味深いですよね。

モリイシガメ

学名 Glyptemys insculpta
英名 Wood turtle
分類 ヌマガメ科モリイシガメ属
原産地 アメリカ合衆国
飼い易さ ★★★☆☆
値段 100000円程度~
甲長 13~23cm(最大甲長23.4cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 森林内の水場、湿地林、沼沢地やその近辺の耕作地など
保全状況 IUCNレッドリストで危急種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 パッと見た印象は地味ですが、背甲に入る放射模様や手足のオレンジ色など、よく観察すると渋いカッコ良さがある亀です。もともとアメリカの北東部に生息しており、寒さに強く日本の気候に適応できること、頭が良いことなどから日本で人気が高いです。国際的に保護されている上に成熟が遅く繁殖に時間がかかるため、ペットとしての流通が少なく非常に高価で販売される貴重なカメです。

モリイシガメは下の写真のように、明褐色から黒褐色の背甲各甲板に黒色の放射模様が入り、腹甲は黄色地に黒色の斑紋、地色が暗褐色の首や手足は部分的に明るいオレンジ色に染まるという特徴を持った亀です。

どちらかと言えば地味な亀ですが、よく見てみると美しさを感じさせる要素がたくさんあります。また、寒さに強く日本の気候に適応できること、活発に動き頭も良いことなどから日本ではペット用の亀として非常に人気が高いです。

飼育自体は一般的な陸棲傾向の強い半水棲亀の飼育方法に従えば良いでしょう。立体的な活動を得意とするので脱走に注意する点以外は、特に飼育で難しいポイントは無いようです。一方で繁殖が可能な程度に性成熟するのに14~18年も掛かるせいか、飼育下繁殖個体の流通は不定期です。

ワシントン条約(CITES)のII類に掲載されているので国際的な取引はほとんど行われておらず、国内のCB個体が流通しないとモリイシガメを入手するのは難しいです。そういった背景から、販売価格が10万円を簡単に超える非常に高価なカメとしても知られてます。

飼育下で繁殖を狙う際には、発情したオスが非常に凶暴になる点に注意が必要です。オス同士で殺し合いになったり、メスに対して激しい交尾を迫った結果殺してしまう場合もあるため、単独飼育が基本になります。

セマルハコガメ

学名 Cuora flavomarginata
英名 Yellow-margined box turtle
Golden-headed turtle
分類 イシガメ科ハコガメ属
原産地 中華人民共和国、台湾、日本
飼い易さ ★★★★☆
値段 20000円程度~
甲長 11~15cm(最大甲長19.5cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 森林内の河川、池沼、湿原周辺などの高湿度な場所
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。国産の亜種「ヤエヤマセマルハコガメ」は国の天然記念物に指定されているため、採取・飼育は認められません。
特徴 セマルハコガメは、甲羅に手足を引っ込めた後に一部分を蝶番のように動かして、完全な箱状になって身を守る「ハコガメ」の仲間です。以前はペット用に多くのセマルハコガメが出回っていましたが、乱獲などにより生息数が減少し現在では希少な亀となっています。

頭や手足を甲羅に引っ込めた後、一部の甲羅を蝶番のように動かし完全な箱状になって身を守る「ハコガメ」の代表格といえば、このセマルハコガメが挙げられるでしょう。こんもりとドーム状に盛り上がった黒褐色ベースの甲羅に、赤やオレンジ、黄色の模様が入る綺麗な亀です。

セマルハコガメは以下の2つの亜種にさらに細分されます。

  • チュウゴクセマルハコガメ
  • ヤエヤマセマルハコガメ

チュウゴクセマルハコガメは中国と台湾に生息するカメで、ヤエヤマセマルハコガメは石垣島と西表島のみに生息する日本固有亜種です。ハコガメ属の亀は主に中国などで食用・薬用・ペット用に乱獲され生息数が激減してしまい、2000年に属単位でワシントン条約の附属書II類に掲載されました。それ以降流通量が減少し、値段が上昇しています。

ワシントン条約で保護対象に指定されて流通量が減るのは、条約が機能している証拠なので喜ばしいのですが、セマルハコガメ好きの人にとってはやや悲しい部分もありますね。現在では国内CB個体がある程度コンスタントに流通しています。

日本固有亜種のヤエヤマセマルハコガメは、国指定の天然記念物なので飼育・採取はできません。ただし、本亜種については密猟が行われている可能性が指摘されています。間違っても怪しげな出処のヤエヤマセマルハコガメを購入したりしないようにして下さい。

セマルハコガメは多くの亀と同じく、卵が産み落とされた土中の温度により生まれてくる子亀の性別が決定する「温度依存性決定」という特徴を持っていますが、これにより近年の温暖化の影響を受けてオスの誕生確率が低くなっていると言われています。性別に偏りがありオスが生まれにくいという問題も、セマルハコガメの流通量減少に影響を与えているのかもしれません。

飼育に関してはほぼ陸棲の種類なので、十分な底面積の飼育容器に湿ったミズゴケなどの床材を敷き、全身が入る浅くて広い水入れを設置するのが基本的な飼い方になります。泳ぎは下手なので誤って水場メインの飼育環境を用意してしまうと、溺れて死なせてしまう可能性もあるので注意しましょう。

スペングラーヤマガメ

学名 Geoemyda spengleri
英名 Black-breasted leaf turtle
分類 イシガメ科ヤマガメ属
原産地 中華人民共和国、ベトナム
飼い易さ ★★☆☆☆
値段 30000円程度~
甲長 11~13cm(最大甲長13cm)
寿命の目安 約20年程度
生息環境 山間部のじめじめした森林の地面付近
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 後縁が鋸歯状になった、赤褐色から黄褐色の背甲が非常にカッコいいヤマガメの一種です。ほとんど完全な陸棲で、陸上を活発に動き回るので観察が特に楽しくなるでしょう。日本よりもヨーロッパやアメリカで人気の高い亀です。

スペングラーヤマガメ、別名オナガヤマガメは、日本での人気はそこそこですがヨーロッパやアメリカでは非常に人気が高い亀です。ギザギザの後縁をした赤褐色から黄褐色の甲羅や、赤みがかかった手足は非常にカッコイイです。また、完全陸棲で陸上を3次元的に活発に歩きまわって昆虫やミミズなどを捕食する生態も観察していてとても面白そうなので、個人的にはものすごく飼ってみたいカメの一種です。

山間部の森林内の地面付近の比較的涼しい場所や、清流などの水場の周辺に生息しているため、高温と乾燥には弱いです。飼育の際には、こういった生息環境から、強い紫外線やホットスポットなどはあまり必要ないとされる点に注意してください。

また、湿気を多く含み、中に潜れる柔らかい床材も用意しましょう。これらに気をつければ、小型で飼い易い上に活動的で飼っていて面白く、ペットとして十分に楽しめるでしょう。

他のアジアの水棲ガメと同様に、以前は野生個体が安価で大量に出回っていましたが、その結果生息数が激減した上にワシントン条約による保護の対象となり、手に入れにくい亀となりました。また飼育下での繁殖も難しいようなので、もし飼育する場合には、貴重な種類だと認識した上で消費的な飼育とならないように積極的に繁殖を狙って欲しいと思います。

リクガメ

私は水棲亀の飼育経験しかないので、リクガメについてはあまり知識がないのですが、ペットとして人気のある亀といっておきながらリクガメを切り捨てるわけにはいかないので、リクガメからも人気の種類を紹介しておきます。リクガメは水棲亀よりもやや寿命が長い場合が多いので、飼育を始める際には最後まで面倒を見る覚悟がいっそう重要です。

また、リクガメ(リクガメ科に分類されるカメ)は全種がCITESの附属書I類またはII類に掲載されています。リクガメを飼うのであれば、ペットとして命を消費的に扱ってしまわないように心がけていきたいものです。

ヘルマンリクガメ

学名 Eurotestudo hermanni
英名 Hermann’s tortoise
分類 リクガメ科ヘルマンリクガメ属
原産地 アルバニア、イタリア、ギリシャ、クロアチア、スロベニア、セルビア、トルコ、ブルガリア、マケドニア共和国、ルーマニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、フランス、スペイン
飼い易さ ★★★★☆
値段 15000~35000円程度
甲長 20cm程度(最大甲長38cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 地中海性気候の乾燥した森林とその周辺
保全状況 IUCNレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 ヘルマンリクガメは、日本の気候への適応、丈夫さ、サイズ、CB個体の流通数、飼育情報量、人慣れのしやすさなどから、リクガメ入門種として広くおすすめされます。物怖じしない性格の個体が多く、飼い主の後をついて歩くような行動を見せることもあります。

ペットとして人気があり、さらに広く飼育をおすすめできるリクガメの筆頭といえばヘルマンリクガメでしょう。もともと日本の気候と似た環境に生息しており、温度や湿度にあまりうるさくなく、丈夫で飼育情報も多い、飼育下繁殖個体(CB)の流通が多い、大きくなり過ぎない、などペット向けのリクガメに要求される多くの項目を満足してくれる亀です。

ただし本来の生息地の地中海沿岸部は日本のように高湿度ではなく乾燥しているため、梅雨から夏にかけては通気性や湿度に気を配って飼うのがポイントです。

多くのリクガメと同じく草食性で、エサとしては野菜を中心に果物、野草などを与えます。リクガメに与える野菜としては、カルシウムなどの栄養素を多く含む小松菜やチンゲンサイが良く利用されます。飼育に関しては他にケージ、ホットスポット用の保温電球や紫外線ライト、床材、水入れ、餌入れ、シェルター、温度計、湿度計などが必要です。

ヘルマンリクガメは以下の3つの亜種に分類されます。

  • ヒガシヘルマンリクガメ
  • ダルマティアヘルマンリクガメ
  • ニシヘルマンリクガメ

上記3亜種の中で日本でも流通するのは「ヒガシヘルマンリクガメ」と「ニシヘルマンリクガメ」の2亜種で、これらは背甲の色味や腹甲に入る黒い模様の大きさなどの違いがあります。ニシヘルマンリクガメは生息する国で厳重に保護されているため、少数のCB個体しか流通せず価格も高めとなっています。

ヨツユビリクガメ(ホルスフィールド/ロシアリクガメ)

学名 Agrionemys horsfieldii
英名 Russian tortoise
Horsfield’s tortoise
Central Asian tortoise
分類 リクガメ科ヨツユビリクガメ属
原産地 アフガニスタン、イラン、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、中華人民共和国、トルクメニスタン、パキスタン
飼い易さ ★★★★☆
値段 8000円~15000円程度
甲長 15~20cm程度(最大甲長28cm)
寿命の目安 約30年程度
生息環境 岩石砂漠やステップのような草原地帯
保全状況 IUCNレッドリストで危急種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 他の亀と異なり、前足の指が4本しか無いリクガメです。丈夫で安価、その上小型なため、初心者にもおすすめされるリクガメですが、CB個体が少ないという問題もあります。穴掘りが得意なので、屋外飼育する場合には脱走されないように注意しましょう。

ホルスフィールドリクガメ・ロシアリクガメなどの呼び名でも知られているヨツユビリクガメは、丈夫で初心者にも飼いやすく、また小型・安価でもあることから人気のリクガメです。一方で、あまりCB化されておらず流通する個体はほぼ野生捕獲個体(WC)なこと、そのせいで状態の悪い個体も多いこと、野生下での生息範囲が広いためその個体に合った環境を見つけるのが難しいこと、など問題点もあります。

通常亀の手足の指は、前足が5本、後ろ脚で4本なのですが、ヨツユビリクガメは前足も4本の指しかありません。これが和名の由来にもなっています。

穴掘りが非常に得意なカメで、野生下では長さ3~4m、深さ1mにもなる巣穴を掘る場合もあるそうですから、こういった生態に適応していった結果指の数が減ってより頑丈な前足になったのかもしれません。飼育下ではこの穴掘り能力を活かしてよく脱走するので、特に屋外飼育する場合には厳重に対策しておくべきでしょう。

飼育する際には、甲羅が隠れるくらいの深さまで床材を多めに入れておくと、穴を掘って隠れられるのでストレスが低減されるようです。食性は植物食なので、エサとしては小松菜・チンゲンサイなどの野菜を中心に、果物なども与えるようにします。屋内飼育では、もちろんホットスポットや紫外線ライトの設置も必須です。

ギリシャリクガメ

学名 Testudo graeca
英名 Spur-thighed tortoise
Greek tortoise
分類 リクガメ科チチュウカイリクガメ属
原産地 アルジェリア、モロッコ、スペイン、トルコ、イスラエル、シリア、ヨルダン、レバノン、アゼルバイジャン、アルメニア、イラン、リビア、グルジア、ロシア、チュニジア、イラク
飼い易さ ★★★★☆
値段 10000~30000円程度
甲長 20~30cm程度(最大甲長38cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 砂漠や乾燥した草原、荒地など
保全状況 IUCNレッドリストで危急種に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 ギリシャリクガメは別名「トゲモモリクガメ」とも呼ばれ、後足の付け根に大きな棘のような鱗を持つのが特徴です。ヘルマンリクガメ・ヨツユビリクガメと並び、飼い易さから人気の高いリクガメです。

ギリシャリクガメは、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメと並び日本でペット用のリクガメとして人気の種類です。やはり本種も比較的丈夫で飼いやすく、飼育情報が多い点も人気の一因です。一方でヨツユビリクガメと同じように、CB(飼育下繁殖)個体があまり流通しないという問題点も抱えています。

WC(野生採集)個体には生息地での個体数が減少してしまうという問題の他にも、亀の状態が悪かったり、餌付けが難しかったり、寄生虫の駆除が必要だったり、という問題もあります。ギリシャリクガメの飼育にあたっては、購入する個体をよく見極め、飼育立ち上げ時に獣医師の診察を受けるなどこれらの問題への対処をしっかりと行いましょう。

ギリシャリクガメは、北アフリカ、南ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中東といったかなり広範な地域に生息している亀なので、当然ながら地域個体群ごとの差も大きく多くの亜種が存在すると考えられています。しかし、その分類はまだはっきりとしていないのが現状です。

見た目からの判別も難しく、基本的には産地によって分類しているため、ギリシャリクガメの亜種の○○ガメという名前で販売されていたとしても、その分類が正しいと100%保証されているとは言えません。日本でよく知られている亜種としては、主に以下の亜種が挙げられます。

  • ムーアギリシャリクガメ
  • アラブギリシャリクガメ
  • トルコギリシャ
  • スースギリシャリクガメ
  • アナムールギリシャリクガメ

飼育方法は基本的にヘルマンリクガメやヨツユビリクガメと同様ですが、本種はよく水を飲むので、きれいな飲み水を十分に与えるように心がけます。

アカアシガメ

学名 Chelonoidis carbonaria
英名 Red-footed tortoise
分類 リクガメ科ナンベイリクガメ属
原産地 アルゼンチン、ガイアナ、コロンビア、スリナム、トリニダード・トバゴ、パナマ、パラグアイ、ブラジル、仏領ギアナ、ベネズエラ、ボリビア
飼い易さ ★★★☆☆
値段 20000~40000円程度
甲長 30~50cm程度(最大甲長51cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 湿度の高い草原やその周辺にある森林
保全状況 ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 頭や前肢に赤やオレンジの模様が入る、リクガメの中では派手な色合いの亀です。見た目に美しいだけでなく、多湿環境を好むため日本の気候に適応しやすい事などからも人気が高いリクガメです。

アカアシガメはその名の通り、褐色や暗褐色の頭部や前肢に赤やオレンジ、黄色の斑紋が入る、リクガメの中ではビビッドな色合いの亀です。分布域が広く、地域個体群による差異も大きいようです。アカアシガメの中でも「チェリーヘッド(ブラジリアン・ドワーフ・チェリーヘッド)」という呼び名が付いている個体は、頭部が綺麗な赤色になり、アダルトでも最大甲長30cm程度までにしかならないという触れ込みで高い人気を博しています。

チェリーヘッドが本当に甲長30cm程度までしか育たないのかという点については、実際のところはやや不確かなのですが、もしこの特徴が本当であれば日本におけるペット用のリクガメとしては非常に適した性質を持っていると言えます。アカアシガメはもともと多湿地域に棲息するため日本の夏にも適応しやすく、 雑食傾向が強いので配合飼料も含めた幅広いエサを食べ餌付けが容易です。見た目にも美しいカメなので、人気があるのにも頷けます。

30年以上前に行方不明になった亀が鍵のかかった物置から生還

ブラジルで30年以上前に行方不明になっていたペットのアカアシガメという種類の亀が、物置から生きた状態で発見されました。シロアリを食べて生き延びたと推測されていますが、もの凄い生命力です。英語ニュースを引用して紹介します。

アカアシガメに関しては、以前に上のようなニュースが流れたことがありました。30年以上も物置に閉じ込められていたにも関わらず、元気に生きていたというから驚きの生命力です。もちろんこれは特殊な環境で起こった奇跡的な現象ですが、それが可能となるくらい強い生命力は持ち合わせているのでしょう。

基本的な飼い方は一般的なリクガメに準拠しますが、比較的高めの温度を維持する、身体全体が浸かる程度の大きさの水入れを設置する、湿度を維持するために散水する、など細かく気を配ってやる必要のあるポイントもいくつか存在します。また、アカアシガメは一般的なリクガメに比べてかなり雑食傾向が強く、動物性タンパク質の必要量も高めだと考えられているので、完全草食性のリクガメと同じような野菜だけの餌になってしまわないように注意します。

インドホシガメ

学名 Geochelone elegans
英名 Indian starred tortoise
分類 リクガメ科リクガメ属
原産地 インド、スリランカ、パキスタン
飼い易さ ★★☆☆☆
値段 30000円程度~
甲長 15~30cm程度(最大甲長38cm)
寿命の目安 約40年程度
生息環境 サバンナ、ステップ、藪地などの中でも高温多湿となる環境
保全状況 IUCNレッドリストで軽度懸念に指定されています。また、ワシントン条約(CITES)附属書II類に掲載されており国際的な取引が規制されています。
特徴 黒字に白系の放射模様が入った甲羅が非常に美しく、ペットとして人気の高いリクガメです。以前までは飼育が難しいとされていましたが、近年少しずつ飼育方法が確立されてきています。密輸が横行しているため、本種を購入する際には正規輸入やCBである旨がしっかり証明されている個体を購入して下さい。

インドホシガメ(ホシガメ)は、リクガメの中でもかなりメジャーで人気の高い種類です。私が小学生の時にも同級生にホシガメを飼っていた子がいましたから、多くの人にとっても馴染みの深い亀だと思います。黒色に白っぽい放射状のラインが入る背甲がとても美しい亀です。

その美しさから様々な国でペットとして人気ですが、一方で密輸・不正取引が多いと言われており、安易に飼育をおすすめはできません。もしホシガメを購入するのであれば、最低限正規の輸出証明書が存在する個体を購入するようにして下さい。

高温多湿の環境を好み、基本的には植物食性ですが、カタツムリや生き物の死骸などの動物性のものを食べる場合もあります。以前までは飼育が難しいとされており、ペットとして飼育されていたホシガメも多くが命を落としてしまったと思われますが、近年少しずつ飼育方法が確立されてきています。ホシガメは他のリクガメと比べてやや神経質で、温度と湿度の管理が非常に重要だそうです。

ペット・飼育には向かない亀

ここまでに様々な種類の亀を紹介してきましたが、その一方で飼育をあまりおすすめできない亀もいます。飼育に向かないと判断する基準は難しいですが、これまでに日本で問題になっている種類を紹介しておきます。もしもこれらの亀を飼うのであれば、本当に最期まで面倒を見きれるのか慎重に見極めて下さい。

ミドリガメ(アカミミガメ)

ミドリガメが問題視されるようになった一番の原因は、恐らく、あまりにも簡単に手に入りすぎてしまう点です。ほとんどのペットショップで取り扱っている上に値段も1000円もしません。すごく軽い気持ちで飼い始めてしまう人も多いカメでしょう。

しかし最初はこの写真のように小さくて可愛らしい姿だったとしても、数年でかなり大きくなり持て余すようになる人が大半です。成体になると甲長30cm程度になりますが、そのサイズの亀を飼育するには最低でも90cm水槽レベルの飼育容器は必要になります。要するに、将来的に数万円はする飼育設備を整える覚悟も持たないまま、500円程度という安い値段でミドリガメを買えてしまうのが問題なのです。

どうなる日本の亀事情?ミドリガメが特定外来生物の候補に!

ペット亀として馴染みの深いミドリガメことミシシッピアカミミガメがモラルのない飼育者の遺棄等により野生化、生態系を破壊していることが問題となっています。これを受け環境省がミドリガメの特定外来生物への指定を検討し始めました。

こういった理由により、軽い気持ちで飼われ始めたミドリガメが捨てられて、日本の生態系に大きな影響を与えています。現在ではアカミミガメを特定外来生物に指定して飼育に届け出が必要にしようという動きもあるので、今後はさらに飼いにくくなると予想されます。

しかしアカミミガメが悪い亀というわけではありません。これまでに大量に繁殖が繰り返されてきたという経緯もあり、希少性の高い色彩変異も色々な種類が固定されていて楽しみの幅は広いとも言えます。

問題なのは亀自体ではなく、安易な気持ちで飼い始めて面倒を見きれなくなってしまうような適当な飼い主です。

2015.08.08 追記

2015年7月29日に、環境省から「ミドリガメを2020年を目処に特定外来生物に指定する」と発表されました。これによりミドリガメは2020年以降基本的に輸・販売・譲渡・飼育が禁止となります。特定外来生物については下の方で詳しく説明しているので、そちらも参考にして下さい。

(撤回)ミドリガメ輸入・販売・飼育禁止?-飼い主はどうすれば良い?

日本で最も人気のペット亀・ミドリガメ(アカミミガメ)が、生態系保護等の理由で2020年を目処に輸入・販売・飼育禁止となることが決定しました。規制の背景・内容・今後の展開と現在飼育している飼い主が取るべき行動をまとめます。

2020年時点で既にペットとしてミドリガメを飼っている場合、特定外来生物を飼育する旨を申請して許可を得なければなりません。特定外来生物の飼育は基本的には研究などの目的以外では認められませんが、規制が始まって時点で既にペットとして飼育していた場合のみ、申請を行えば例外的にペットとしての飼育が認められます。詳細は上の記事を読んで確認して下さい。

これにより、ミドリガメの飼育は一層おすすめできないものとなりました。特定外来生物となると法律的な縛りもかなり強いですし、普通のペットを飼うような感覚で飼育するべきではありません。規制のレベルだけで言えばカミツキガメと同じレベルなるわけですからね。リンク先のページで紹介しているように、亀の中にはもっとペット向きの種類がたくさんいますから、ミドリガメを飼育しようと思っている方は他の種類の亀を飼うのを強く推奨します。

スッポンモドキ

アカミミガメと同じような理由で飼育をおすすめできない亀に、スッポンモドキがいます。以前はそこそこな安値で販売されており、愛嬌のある顔立ちが人気を呼んでいました。「けいおん!」に登場するトンちゃんというキャラクターで知っているという人もいるかも知れません。

しかしスッポンモドキは最大甲長が60cmとも80cmとも言われている大型種で、その上完全水棲で遊泳性も強いため、飼育にはとてつもなく大きな水槽が必要となります。よほどの人でなければ飼育し続けるのは難しいでしょう。

スッポンモドキは現在ではCITES IIに指定されているため、流通量が減って価格も上がり気軽に購入するような人はほとんどいなくなったと思いますが、注意して下さいね。

飼育禁止または許可が必要な亀

カメの中には飼育に向かないだけでなく、飼育が禁止されていたり許可制となっている種類も存在します。人間に対して危害を与える・日本の生態系に影響を及ぼす・希少な種類である・学術的価値が高い、などの特徴が、それぞれ対応する法律によって定められると飼育ができなくなります。以下でそれぞれの項目に指定されている亀を紹介します。

なお、この項目については以下のサイトを参考にしました。ペットとして飼えない生き物について分かりやすくまとめられているので、興味のある方は読んでみてください。

参考PetComNet:知っておこうね!:ペットの法律問題:野生生物に関する法律と国際条約(元記事削除済)

特定動物(ワニガメ)

「動物の愛護及び管理に関する法律」によって、人の生命、身体又は財産に害を加える恐れがある動物だと認められると、「特定動物」となり飼育には都道府県知事の許可を得なければならなくなります。亀の中では、カミツキガメを除いたカミツキガメ科全種が特定動物に指定されているため、該当する「ワニガメ」は飼育が許可制となっています。またカミツキガメについては、後述の「特定外来生物」に指定されたため、特定動物からは除外されたという背景があります。

特定動物に指定されている生き物の飼育許可を得るには、マイクロチップの埋め込みや脱走を防止できる構造・強度が確保された飼育容器を用意するなどの準備をした上で、都道府県知事に対して許可申請が必要です。他の一般的な亀を飼育するのと比較すると、当然ながらかなり飼育のハードルが高いです。それだけワニガメは危険性の高い亀で、安易に飼育するべきではないですね。

特定外来生物(カミツキガメ)

「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」によって、日本在来の生物を捕食するなどして生態系を損ねたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与え得る外来生物だと認められると、「特定外来生物」となり飼育が禁止されます。カメの中では「カミツキガメ」のみが特定外来生物に指定されています。特定外来生物は特定動物とは異なり、ペット目的での飼育許可はまず降りません。

参考「どぶろっく」江口さん、カミツキガメ無許可飼育の疑い:朝日新聞デジタル(元記事削除済)

少し前のニュースですが、お笑い芸人がカミツキガメの無許可飼育で書類送検される事件もありました。無許可飼育は法律違反ですので、当然ながら厳しく罰せられるのは知っておいて下さい。

カミツキガメ
カミツキガメはなぜ駆除される?外来種問題やワニガメとの違い

カミツキガメは、甲長約50cm、全長約100cm近くまで成長する大型の亀で、陸上では特に攻撃的です。また、特定外来生物に指定されており日本では輸入・販売・飼育等が禁止されています。近縁種にワニガメが存在しますが、実はワニガメより噛む力は弱いです。

さらに詳細をこちらのページに纏めているので、あわせて読んでみましょう。

天然記念物(リュウキュウヤマガメ・セマルハコガメ)

「文化財保護法」や各地方自治体の文化財保護条例により、学術上価値が高い動植物だと認められると、天然記念物となって保護の対象になるので飼育はできなくなります。亀の中で該当するのは、「リュウキュウヤマガメ」と「セマルハコガメ」の2種類です。これらについても基本的に飼育許可は降りないため、どうあがいても飼育できません。もし違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられてしまいます。

希少野生動植物種(ウミガメなど)

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」により、絶滅の恐れのある野生動植物の種に定められると、国内希少野生動植物種または国際希少野生動植物種となって飼育禁止になります。カメの中では国内希少野生動植物種に該当するものはいませんが、国際希少野生動植物種はワシントン条約(CITES)の附属書I類に掲載された種などをもとに定められるので、複数の種類が該当します。例えばウミガメ(ウミガメ上科に属するカメ)は全種が国際希少野生動植物種に指定されています。

参考までに、以下に国際希少野生動植物種とワシントン条約の対象種の一覧表へのリンクを張っておきます。

参考環境省_国際希少野生動植物種一覧
参考ワシントン条約の対象種(附属書)・動物

飼育におすすめの亀の種類

随分長々と書いてしまいましたが、最後にまとめとして、ケース別におすすめの亀を紹介して終わろうと思います。亀を飼うにあたって厳しいこと、ネガティブなこともたくさん書きましたが、一人でも多くの人に、亀の飼育を通じてこの生き物の素晴らしさを感じてもらえたらと思います。

初心者向け水棲亀なら小型のドロガメ・ニオイガメ

カメを飼ってみたいと思ったら、まずはミシシッピニオイガメやカブトニオイガメのようなドロガメ科の小型種を検討してみると良いと思います。サイズ的にも持て余すほど大きくはならないものが多いですし、紫外線要求量が少ないなど飼育設備にかける費用が少なくて済む種類もいます。

当ページで取り上げたミシシッピニオイガメカブトニオイガメ以外にも、ドロガメ科には魅力的な亀がたくさんいるので、他の種類を調べてみても良いと思います。

初心者向けリクガメならヘルマンリクガメ

リクガメで初心者向けの種類を1つ選ぶとするなら、ヘルマンリクガメがおすすめです。ヘルマンリクガメの項目に良い所をたくさん書きましたが、やはりCB個体が容易に入手でき、人に慣れやすいので愛着が湧きやすい点が高評価ですね。長く付き合っていける良い亀だと思います。

綺麗で小さい亀ならキボシイシガメ

小型美麗種であれば、キボシイシガメがおすすめです。このサイズでこれだけ美しい亀というのは中々いないと思います。キボシイシガメの背甲のドットの数などは遺伝すると考えられているので、世代を重ねてより美しいキボシイシガメを生まれさせるのを狙うも楽しみ方の一つでしょう。

国産種にこだわるならニホンイシガメ

日本に生息している亀を育てたい、和の雰囲気を楽しみたいなら、日本固有種のニホンイシガメがおすすめです。生息している地域によって、甲羅の色見・模様など見た目にも大きな差があるので、様々な地域のニホンイシガメを血統管理しながら育ててみるのも面白そうです。

亀のレイアウト水槽飼育 アクアリウムとの融合
亀とアクアリウムの融合!レイアウト水槽で魚との混泳飼育!

アクアリウムの濾過やレイアウト技術を取り入れ、亀の水槽を出来る限り綺麗にレイアウトしてみました。ニホンイシガメ・カゼトゲタナゴ・シマドジョウが混泳しており、底砂は田砂、水草はウィローモスが中心の爽やかな陰性レイアウトです。

ちなみに私はニホンイシガメを飼育していますが、その飼育スタイルにもちょっとコダワリがあります。亀飼育では珍しい、レイアウト水槽での飼育に挑戦しています。美しい亀を美しくレイアウトした水槽で飼い、自然に近い行動をいつでも観察できる、こんな幸せはありません。ぜひこちらの記事のレイアウト水槽を参考に、機能的にも見た目にも満足できる飼育環境づくりに挑戦してみて下さい!

カメ以外のペット向け爬虫類

今回は、ペット向けの爬虫類としてカメの仲間からおすすめの20種類を紹介しましたが、爬虫類にはカメ以外にもペットとして飼える生き物がたくさんいます。

例えば、トカゲやヤモリの仲間も、ペット向けの爬虫類として人気があります。以下で人気の10種を紹介しているので、ぜひこちらも読んでみてください。


K-ki

こんなにも長い記事を最後まで読んで下さりありがとうございました。このページさえ読んでおけば、ペットとして飼育される亀のメジャーどころはかなり抑えられたはずです。ぜひペットショップやブリーダーズイベントへ出掛けて、ビビッと来る個体を見つけ出してくださいね。

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K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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