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オロチメダカの特徴・作出方法から飼育・繁殖方法まで解説

2021/01/17

改良メダカのブームが広がって以来、様々な品種が作出されてきました。改良メダカの全体的な傾向としては、特に色合いの鮮やかなものが好まれるようですが、もちろんそれ以外の姿を追求した品種も存在します。「オロチメダカ」は、その最たるものです。

オロチメダカは黒さを追求した品種で、その黒さは「漆黒」と言っても過言ではないでしょう。派手ではないですが、見た目のインパクトは改良メダカの中でも特に大きいと思います。渋いかっこよさが感じられるこの品種は、人気も非常に高いです。

今回はこの特徴的なオロチメダカについて、品種としての特徴や飼育・繁殖方法を解説します。

オロチメダカとは

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品種名 オロチメダカ
種名 キタノメダカ
ミナミメダカ
ニホンメダカ
分類 ダツ目メダカ科メダカ属
原産地 日本
飼い易さ
値段(1匹) 600円程度~
最大体長 3cm程度
寿命 3年程度
遊泳層 中~上層
適合する水質 水温:16~30℃
pH:6.5~8.5
特徴 全身が真っ黒なしたメダカで、2021年時点ではオロチより黒い品種はいないと言われるほど。背地反応を起こさないため、室内飼育や白容器飼育でも濃いブラック体色を楽しめる。

オロチは、2016年作出の新しい品種です。奈良県のメダカファーム「飛鳥めだか」の谷國昌博氏により作出されました。冒頭の写真を見てもらえば分かる通り全身が真っ黒な体色をしたメダカで、その黒さは現在オロチより黒いメダカはいないと言われるほどです。他のブラック系統のメダカでは黒色素胞がのりにくい下顎や腹部まで黒く、さらに各ヒレも黒い、まさに漆黒という言葉がふさわしい黒さのメダカです。

また、ブラック体色のメダカでは、室内飼育や白容器での飼育だと背地反応により体色が抜けることがありますが、オロチは背地反応を起こさず室内飼育や白容器での飼育でも体色が抜けません。この特徴も、濃い体色を楽しみたいブラック系の品種としては大きな強みです。はっきりとしたブラック体色と「オロチ」というネーミングからもわかるように、とにかく「格好良さ」を追求した品種の一つの到達点がオロチメダカだと言ってしまっても良いでしょう。

背地反応とは

周囲の色によってメダカが体色を変化させる保護色機能のことを「背地反応」と呼びます。

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オロチが真っ黒な体色になる理由

オロチの体色がここまではっきりとしたブラックになる理由については、まだはっきりとは解明されていません。まだ発見されていない未知の遺伝子が影響しているのか、既に発見された遺伝子の影響なのかも、よくわからないのが現状のようです。

仮に既知の遺伝子が影響しているとする場合、Va(Variegate)と呼ばれる形質を発現する遺伝子の影響ではないかという説があります。Variegateは「まだらにする」という意味の言葉で、改良メダカ界隈やメダカ研究者の間では、皮膚に黒斑が現れる形質を指します。

似た形質に斑(錦)と呼ばれるものがありますが、Vaでは背地反応しない黒斑が現れるのに対し、斑では背地反応を起こすため白い容器ではまだら模様が見えにくくなるところに違いがあるようです。ブラック体色を突き詰めるためには、背地反応をしない黒色素胞が多いほうが黒さを維持しやすく有利であることは言うまでもありませんね。

また、オロチは目の周囲も真っ黒ですが、この形質はパンダメダカ等と同じ透明鱗の特徴だと思われます。ただし、体の他の部位には透明鱗の特徴は見られません。稚魚から幼魚時には透明鱗の特徴が見られる個体もいますが、成長と共に徐々に黒色素胞に覆われていくようです。

この他に、オロチは白色素胞と黄色素胞を持っていないこともわかっています。

色素胞とは

メダカを始めとする変温動物は、色素胞と呼ばれる色素細胞を持っており、色素胞には「黒色素胞」「赤色素胞」「黄色素胞」「青色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の6種類が存在することが知られています。原種メダカの場合は、こららの色素胞のうち「黒色素胞」「黄色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の4種類を持つことが知られています。

オロチメダカの作り方(作出方法)

ブラック体色のメダカは、もともとは青メダカから発展して生まれました。青メダカは原種メダカから黄色素胞が欠如した品種であり、そこからさらに黒色素胞が多くなったり、大きくなったりしてブラック体色へと変化してきました。この段階では、背地反応を起こすため水槽や白容器での飼育だと体色が抜けるという特徴を持っていました。

青メダカ(チャームより)
青メダカの特徴・作出方法から飼育・繁殖方法まで解説

メダカの基本品種の一つである青メダカを解説します。黄色素胞の欠如により青っぽい体色になる青メダカは、ブラック系メダカの起源でもあり、近年の改良メダカブームでも重要な品種です。関連深い品種や飼育・繁殖方法などを紹介します。

その後、改良メダカがブームとなり様々な品種が作出されていくのですが、改良メダカの中でもブラック系統のメダカの歴史は古く、そもそも近年の改良メダカの始まりはブラック体色の品種だとされています。その品種が、2001年に作出された「ピュアブラックメダカ(黒べえ)」です。

青メダカのページでも詳しく解説していますが、ピュアブラックは「スモールアイ」と呼ばれる目が小さくなる形質を持っていおり、ほとんど目が見えていないため、背地反応が起こらず明るい場所でも黒い体色が抜けないという強みがあり、当時の愛好家に非常に大きなインパクトを与えました。

その後、黒色素胞の多い個体の選抜を重ねることでスモールアイではないにもかかわらず背地反応を起こさないブラックメダカ「小川ブラック」が作出され、市場には多くのブラックメダカが流通するようになっていきました。そして2016年に、全身が真っ黒で、完全室内飼育でも白容器でも体色が抜けない「オロチ」が誕生します。

オロチ以前のブラックメダカは、室内飼育だと色が薄くなりがちで、室外飼育することで体色に深みが増していくメダカでしたが、オロチは卵から室内飼育していてもブラック体色が抜けることがなく、非常に濃いブラック体色を実現したことで全国のメダカ愛好家に広く知れ渡ることになったのです。

オロチメダカと関連の深い品種

改良メダカには、オロチ以外にもブラック体色の品種が多数存在します。ここでは、オロチ同様に黒い体色をしたメダカの品種をいくつか紹介しておきます。

Medaka(Japanese killifish, or Japanese rice fish), Oryzias latipes, from Hamamatsu, Shizuoka, Japan.
黒メダカ(茶メダカ)の特徴・作出方法から飼育・繁殖方法まで解説

数多いメダカの品種の中でも、原種に最も近い黒メダカ(茶メダカ)について飼育・繁殖方法、必要な道具等を解説します。また、青メダカから派生した、黒メダカよりも黒い「ブラック」と呼ばれる体色についても遺伝等を詳しく説明します。

ブラック体色のメダカについては、上のリンク先の黒メダカのページでも紹介しています。興味のある人は、こちらのページもぜひ併せて読んでみてください。

ピュアブラック(黒べえ)

ピュアブラックは、2001年に改良メダカ専門店「めだかの館」の大場幸雄氏によって作出されたメダカです。上述の通り目がスモールアイという特徴があり、瞳孔が小さいために周囲の景色を捉えることができないため、背地反応が起こりにくい性質があります。ただしスモールアイは固定率が低く、ピュアブラック同士を交配してもピュアブラックが生まれる確率が低いです。また、デリケートなメダカでもあるため、上級者向きの品種です。

小川ブラック

小川ブラックは、愛知県のメダカ専門店「めだか倶楽部クリーク」の堀田氏が作出した、黒い体色を追求した品種です。飼育は比較的容易ですが、屋外で日光が当たる場所での飼育のほうが黒い体色に深みが出るとされています。

サタン

サタンは、オロチと松井ヒレ長を交配して作出された品種です。オロチの黒い体色に長いヒレが加わったのが特徴のメダカです。ヒレの端に出るカラーパターンが2種類あり、黄色かオレンジ色のどちらかが出現します。ヒレが長く優雅な見た目をしているため、上見だけではなく横見でも楽しめる品種です。

ブラックダイヤ

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ブラックダイヤは、オロチと青ラメ幹之(星河)を掛け合わせることによって作出された品種です。オロチの黒い体色に星河のラメを遺伝させ、F4まで累代繁殖させることで完成した品種です。2018年に神奈川県の中里氏により作出された改良メダカの中でも新しい品種です。

オロチメダカの飼育方法

オロチは真っ黒な色をしてはいるものの、所詮はメダカの改良品種でしかないので、基本的な飼育方法は普通のメダカと変わりません。ヒメダカ黒メダカなど、一般的なメダカについて解説してきたページで紹介している飼育方法と同じやりかたで問題ないので、これらのページを参考にしてください。

ざっくりとまとめておくと、以下のような飼育方法が基本になってきます。

基本的な飼育方法

  • 一般的なアクアリウムでの小型魚飼育では水量は体長1cmにつき1リットルが目安
  • メダカ愛好家は1匹1リットルを目安とする人が多いがアクアリウム的な飼育方法よりも換水頻度は高い
  • 飼育場所や品種によって適する飼育容器が異なるため「飼育容器選びのポイント」のページ参考に
  • 幅広い水質に適応できるが急激な水質変化はダメージが大きいため水合わせは丁寧に
  • 使用期限を過ぎたエサは与えない

屋外飼育のポイント

  • 水質の維持にはホテイアオイ等の浮草系水草の利用が有効
  • すだれを使って夏場の高水温を対策

屋内飼育のポイント

  • ろ過フィルターを使用して水質を維持
  • 概日リズム調節のためライトも必要
  • 水槽は60cm規格サイズか30cmキューブサイズがおすすめ

ただし、オロチが他のメダカと違う部分が一つあります。オロチは、高めの水温が苦手なのです。他の品種に比べて高水温への耐性が低く、「これくらいの温度なら大丈夫だろう」と思ってしまう温度でも、オロチの場合は死んでしまうことが多いです。そのため、オロチの飼育では水温が上がりすぎないように注意しましょう。

オロチメダカの繁殖方法

繁殖方法についても、オロチだからと特別なことはありません。細かい方法は黒メダカ等の他の品種についてのページに書いてありますが、大まかに以下の方法でやれば大丈夫でしょう。

メダカの繁殖方法

  • 日照時間が12時間以上、水温18℃以上をキープ
  • 食卵を避けるため卵はすぐ親メダカから隔離
  • 産卵床を使用すれば卵の隔離が容易
  • 孵化までの積算温度は250程度
  • 稚魚(針子)はエサ切れに弱く餓死しやすいので1日に2~5回の高頻度で給餌
  • 稚魚も親に食べられないサイズまでは隔離飼育

ただし、オロチは骨格が悪い個体が多く、曲がった体型になりやすいと言われています。そのため、出来れば種親にはオスメス共に綺麗な体型の親を選んでやったほうが良いでしょう。ブラック体色の固定率自体は高めなので、繁殖させて生まれた子供や孫の世代でも、十分にオロチの魅力を楽しむことができるはずです。

オロチメダカの魅力・おすすめポイント

オロチの最大の魅力は、やはりその真っ黒な体色です。他のブラックメダカと比べても、その黒さは一段上のレベルと言えるでしょう。とても格好良くて人気のあるメダカで、オロチのカッコよさに惹かれてメダカ飼育を始めたという話を聞くことも少なくありません。黒一色というシンプルなメダカではありますが、シンプルゆえの奥深さもあります。

水槽でも白容器でもオロチの濃いブラック体色は抜けることがないので、幅広い飼育方法で楽しめるというのもオロチの強みの一つです。飼育・繁殖ともに簡単な部類なので、初心者でも楽しむことができるでしょう。

体色の固定率が高いので、累代繁殖をさせてブラック体色に磨きをかけても良いですし、まだ比較的新しい品種なので色々な品種と掛け合わせてオリジナルの品種を作出するのも楽しいでしょう。改良メダカのなかでも非常に魅力的な品種であることは間違いないので、興味のある人は飼育を検討してみてはいかがでしょうか。

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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