日本産淡水魚(日淡)は、あまり派手さはないものの渋いカッコよさがあり、アクアリウムで飼育する生体としても一定の人気があります。ひとくちに日淡と言っても種類は様々ですが、その中でも知名度・人気ともに圧倒的な種類の一つが「めだか」です。
めだかは教育用や実験用としてもよく利用される魚であり、多くの人にとって馴染みがあるでしょう。一方で、最近はめだかの品種改良が盛んで、「改良メダカ」という名前で様々な品種が流通しています。
今回はそんな多種多様なメダカの改良品種の中から「琥珀メダカ」という品種について紹介します。琥珀メダカを元に作出された改良品種も数多く、品種改良のベースとして活用することもできます。琥珀メダカについて知ってみて、興味が湧いたら飼ってみるのはいかがですか?
琥珀メダカとは
品種名 | 琥珀メダカ |
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種名 | キタノメダカ ミナミメダカ ニホンメダカ |
分類 | ダツ目メダカ科メダカ属 |
原産地 | 日本 |
飼い易さ | |
値段(1匹) | 200円程度~ |
最大体長 | 3cm程度 |
寿命 | 3年程度 |
遊泳層 | 中~上層 |
適合する水質 | 水温:16~30℃ pH:6.5~8.5 |
特徴 | 体色は赤みが強い茶色・オレンジ系で、尾びれと稜線には朱赤に近い鮮やかな色が現れる。 |
琥珀メダカは、2004年に改良メダカ専門店「めだかの館」によって作出された、琥珀色の体色をしたメダカの品種です。琥珀色の体色にちなみ「琥珀メダカ」と名付けられました。琥珀メダカの作出の前段には、同じくめだかの館で作出された「黄金メダカ」という品種が存在し、琥珀メダカはこの黄金メダカの派生品種に相当します。色合いは赤みが強い茶色系で、特に尾びれと稜線には朱赤に近い鮮やかな色が現れます。
上品な色合いと鮮やかなオレンジ色の尾ビレが魅力的な琥珀メダカには、普通体型、ダルマ体型、ヒカリ体型、ヒカリダルマ体型などの多様な体型が知られています。また、黄金と並び改良メダカの基本品種に位置づけられる品種です。この品種が誕生しなければ、楊貴妃メダカはもちろん、三色メダカや紅白メダカの誕生もなかったと言われており、様々な改良メダカのベースになっている品種です。
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楊貴妃メダカの特徴・作出方法から飼育・繁殖方法まで解説
メダカの改良品種の中から楊貴妃メダカについて紹介します。楊貴妃メダカは2004年に作出され、本来メダカが持たない赤色の体色を持つ改良メダカの中でも特に重要な品種です。メダカブームの火付け役でもあり様々な発展品種も存在します。
琥珀色の体色になる理由
メダカを始めとする変温動物は、色素胞と呼ばれる色素細胞を持っています。色素胞は「黒色素胞」「赤色素胞」「黄色素胞」「青色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の6種類が知られており、変温動物の体色は色素胞内の「色素顆粒」という細胞小器官の量や分布によって決定されます。
メダカの場合は、「黒色素胞」「黄色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の4種類の色素胞を持っています。また、色素胞は運動性を持っているため、明るさの変化など、外部からの刺激に応じて体色が変わることもあります。
改良メダカの中でも、茶色体色・黄金体色・琥珀体色の色合いは、非常によく似ています。これら3つの体色を分ける鍵は黒色素胞と黄色素胞です。黒色素胞と黄色素胞のバランス、絶対量、分布等の要因で、体色が変化すると言われています。黄色素胞の色が濃い黄金体色を選抜したことで、赤味のかかった体色が固定化されたメダカが琥珀体色と考えられています。
琥珀メダカの作り方(作出方法)
琥珀メダカが作出されるまでの経緯についても、簡単に確認しておきましょう。
まず、野生の原種メダカ(色合い的には茶メダカに近い)から、薄黄金色の個体が発見されました。その個体を累代繁殖していき黄金体色が固定化されたのが黄金メダカです。そして黄金メダカの中により体色が濃い個体を発見し、累代繁殖して固定化したものが琥珀メダカとなったのです。
こうして書くと簡単そうに聞こえますが、実際は気の遠くなるような選別と繁殖の積み重ねだと思われます。新品種を生み出すブリーダーの情熱には頭が下がりますね!
琥珀メダカの飼育方法
琥珀メダカと聞くと特別なメダカのように聞こえますが、飼育の方法は一般的なメダカと同じです。大きく分けて屋内飼育と屋外飼育の2つの方法があるので、それぞれについて簡単に紹介していきましょう。
屋内飼育の方法
屋内飼育の場合は、水槽での飼育が基本になります。いわゆるアクアリウムと総称される飼育スタイルです。
準備するものとしては、主に以下のような飼育器具が挙げられます。
- 水槽
- ろ過フィルター
- 底砂
- ライト
- 水換えホース
- 水温計
- カルキ抜き剤
また、この他にも魚を掬うための網や水換え用のバケツがあると便利です。
水槽
水槽はアクアリウムの見栄えに一番影響を与える飼育器具です。水槽がおしゃれであれば、水槽内のレイアウトが多少下手クソでも、何となく見栄えがよく見えるものです。最も一般的なサイズは横幅が60cmの「60cm水槽」ですが、最近は各辺が30cmの立方体形状の「30cmキューブ水槽」も人気があります。
大きい水槽のほうが管理が楽で扱いやすいですが、場所を取るという問題もあります。基本的には60cm水槽をおすすめするものの、メダカは日本で飼育する上ではかなり強靭な魚であり、初心者でも30cmキューブのような小型水槽で比較的安心して飼い始められます。
ろ過フィルター
屋内飼育の場合はどうしても飼育容器が小さくなり、屋外飼育の場合に比べると過密な環境になりやすいです。そのため、アクアリウムではろ過フィルターを使用し、ろ過効率を高めて飼育するのが一般的です。上のリンクのような外部フィルターは、比較的どんな水槽でも使用でき、水槽の美観も損ねないので人気があります。他にも底面フィルターや外掛けフィルターなど様々な種類のろ過フィルターがあるので、一度以下のページに目を通してろ過フィルターの種類を抑えておくと良いでしょう。
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水槽用ろ過フィルターの選び方と外部・底面など種類別おすすめ製品
熱帯魚、金魚、亀等を飼育するアクアリウムで必要になる水槽用のろ過装置を解説します。外部フィルター、底面フィルター等のろ過フィルター別の長所・短所・適合水槽や、ろ過の原理、ろ過フィルターの種類、ろ材についてもまとめます。
どの品種のメダカについても言えることですが、メダカは水流があるとその方向へ向かって泳ぐ習性があり、強い水流の場合には体力を消耗して疲れ、痩せてしまう場合もあります。そのため、ろ過フィルターは使わない又は使用する場合でも水量を弱く調整出来るフィルターが好ましいです。
底砂
底砂は必須というわけではありませんが、あると水槽内のレイアウトに雰囲気が出るのでおすすめです。また、底砂に濾過バクテリアが定着してろ過能力の面でもプラスの効果があります。一方で、底砂の隙間にゴミが過度に溜まると水質悪化に繋がる場合があるので、次に紹介する「プロホース」などを使用して、時々底砂掃除をするようにしましょう。
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アクアリウム水槽の底砂・底床まとめ-ソイルから大磯砂まで網羅!
アクアリウムで使われる底砂・底床は多くの種類があり、それぞれが様々な効果を持っています。ソイルや砂利、セラミック系底床などアクアリウム用底砂の種類ごとに特徴や長所・短所をまとめ、どんな水槽にどんな底砂が適しているかを解説します。
底砂の種類についてはこちらのページも参考にしてください。
水換え用ホース
水換え用のホースにもアクアリウム用の製品が存在します。代表的なのは、以下の「プロホース」という製品です。
プロホースは、付属のポンプを何度か押すことで、簡単に水を水槽の外に吸い出すことができます。また、先端がプラスチック製のパイプになっていて、このパイプ部分を底砂に突き刺すと、底砂内部の汚れを吸い出すこともできる優れものです。底砂を敷いてメダカを飼育する場合には、ぜひ持っておきたい道具です。
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プロホースの使い方-水換え時に水槽を掃除できる排水ホース
水換え・水槽掃除の定番プロホースを紹介します。水換えや掃除は水槽のメンテナンスの中でも最も高い頻度で行う作業なので、ここで使う道具はとても重要です。プロホースの使い方や特徴・構成・種類ごとの違い・レビュー等を紹介します。
具体的な使い方はこちらのページで紹介しているので参考にしてください。ただし、「ソイル」と呼ばれる土を焼き固めた底床材に対しては、土の粒を崩してしまうため使用しないほうが良いでしょう。
ヒーター・クーラーは基本的に不要
この他に、アクアリウムで使用する一般的な飼育器具としては、水温を調節するためのヒーターやクーラーがあります。しかし、メダカは日本在来の魚であり、また野生下では水田周辺の水路や池という水温の面では比較的過酷な環境に生息しているため、飼育するために特別な温度管理は必要としません。
ただし、夏場の閉め切った部屋は、マンションなど建物の種類によっては35℃を超えるなど屋外より厳しい環境になる場合もあります。さすがのメダカも水温が35℃に近くなるとダメージを負う場合もあるため、特に夏場の最大水温が何度になるかは気にしておき、場合によっては冷却ファンの使用等を検討しましょう。
屋外飼育の方法
琥珀メダカは屋外での飼育も可能です。次は屋外飼育の方法について紹介していきます。
飼育容器は睡蓮鉢やプラスチック容器が主流
屋外飼育の場合には、睡蓮鉢、発泡スチロール容器、プラスチック容器(NVボックス等)で飼育します。
屋内で水槽飼育する場合は、メダカを横から観賞することが多いですが、屋外で飼育する場合は不透明な飼育容器が多いこともあり、上から観賞する「上見」が基本になります。
水草を入れておくのがおすすめ
また、飼育容器に水草を入れて、光合成による酸素供給やメダカに隠れ家を作ってやることもおすすめです。特に、「ホテイアオイ」はメダカ飼育と相性のよい水草としてよく知られています。
屋外ではグリーンウォーターでの管理も選択肢になる
屋外飼育の場合には、飼育水をグリーンウォーターにして飼育する方法もあります。グリーンウォーターとは、アオコなどの植物プランクトンが大量発生し、緑色になった水のことを指します。
適度なグリーンウォーターは、微生物が豊富でメダカのエサ不足による餓死を防げます。また、メダカが常にエサにありつける環境になるため、クリアウォーター(グリーンウォーターではない透明な飼育水)よりも稚魚や若魚の成長が早く、丈夫な個体になるという人もいます。
ただし、余りにグリーンウォーターが濃くなると、飼育水が劣化して匂いが発生したり、植物プランクトンが夜間に酸素を大量消費して酸素不足になってしまうため、維持管理に注意が必要です。また、グリーンウォーターでは、メダカの泳ぐ姿が見にくく、またメダカの天敵となるヤゴなどがいても見つけることが難しいです。ただ、それを差し引いても稚魚の歩留まりが高くなるメリットが大きいため、大規模なブリーダーさんはグリーンウォーターで飼育をしている場合が大半です。
ろ過フィルターは基本的に使用しない
屋外飼育の場合は、比較的水量を確保しやすく、底砂などに定着するろ過バクテリアのろ過能力と、水草や植物プランクトンの硝酸塩吸収能力でろ過能力の大半をまかなえるため、基本的にろ過フィルターは使用しません。そもそも、屋外だと電源の確保も難しいため、使用できないことも多いでしょう。
琥珀メダカの繁殖方法
メダカは、日照時間が約12時間以上かつ水温が約18℃以上の条件になると、産卵を開始すると言われていす。れは、地域により若干の差はあるものの、概ね4月から10月頃がこの条件を満足する気候となるので、メダカの産卵時期はこの期間が基本です。健康なペアを揃えれば、自然に産卵を始めます。
産卵までの準備と産卵方法
確実に産卵をさせたい場合は、オス1にメスが2~3の割合にすると良いと言われています。1対1の割合でも産卵はしますが、個体同士の相性もあるので、オスに対してメスが多少多いほうが確実です。産卵時は、ホテイアオイ等の浮草の根の部分に、付着糸と呼ばれる粘着性を持った糸状の物質に絡めた卵を、その粘着性を利用して貼り付けるように産み付けます。
稚魚の育成
メダカは口に入る物は食べてしまう習性があるので、産み付けた卵を食べてしまうことがあります。親魚に食べられてしまわないよう、産み付けられた卵は水草ごと稚魚飼育用の容器に隔離する方が良いでしょう。市販の産卵床を使うと、産卵した卵の回収がより簡単になります。
卵の孵化までにかかる期間は水温によって変わり、水温(℃)×日数が250になる辺りが孵化の目安とされています。水温25℃なら10日で孵化する計算です。
生まれた稚魚は、上記の通りグリーンウォーターで管理すればエサに困ることがなく、多くの成魚まで成長できる稚魚の数が多くなります。また、グリーンウォーターが用意できない場合は、稚魚用の人工飼料か、親魚用の人工飼料を乳鉢・乳棒ですりつぶしたものを孵化後3日目くらいから与えるのが良いでしょう。
稚魚はエサ切れに弱いので、できれば少量ずつに分けて1日4~5回程度エサを与えるのが望ましいです。
琥珀メダカの魅力・おすすめポイント
琥珀メダカの中でも最上級まで色が揚がった個体は、非常に深みのある色合いになります。黄金メダカと共に作出から長い年月が経ちましたが、その美しさから未だに根強く人気がある品種です。
上にも書いたとおり、琥珀メダカは楊貴妃メダカなど、赤系統の品種が派生していく元になっている改良メダカの基本品種です。これからメダカ飼育を始めようという方は、この品種から始めてみてはいかがでしょうか。