2000年代の初め頃から、メダカの品種改良がブームになっています。最近では毎年のように新しい品種が作出されており、メダカ界隈は非常に活気があります。こんなメダカの品種改良は、一体いつから始まったのでしょうか。
メダカの品種改良の中でも最も古いと言われているのが、今回紹介するヒメダカです。今回はそんなヒメダカが生まれた経緯や黄色っぽい体色になる理由を紹介しつつ、ヒメダカの飼い方や繁殖の方法についても紹介していきます。
ヒメダカ(緋メダカ)とは
品種名 | ヒメダカ |
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種名 | キタノメダカ ミナミメダカ ニホンメダカ |
分類 | ダツ目メダカ科メダカ属 |
原産地 | 日本 |
飼い易さ | |
値段(1匹) | 30円程度~ |
最大体長 | 3cm程度 |
寿命 | 3年程度 |
遊泳層 | 中~上層 |
適合する水質 | 水温:16~30℃ pH:6.5~8.5 |
特徴 | 黒色素胞が欠けた品種であり、黒っぽさが消えて黄色みが強く現れる。観賞用だけでなくエサ用としても流通し、価格はかなり安い。 |
ヒメダカの歴史は古く、江戸時代以前から観賞されていたとも言われています。野生のメダカから突然変異で産まれた品種です。野生の茶色いメダカしかいなかった昔は、ヒメダカの黄から橙色の体色は、非常に珍しく注目されたことでしょう。現在では非常に大量に流通している品種ですが、観賞用としてだけではなく、大型の観賞魚や爬虫類等の餌用として利用されている面もあります。
黄色の体色になる理由
変温動物は、色素胞と呼ばれる色素細胞を持っています。色素胞には「黒色素胞」「赤色素胞」「黄色素胞」「青色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の6種類が存在し、色素胞内の「色素顆粒」という細胞小器官の量や分布によって変温動物の体色が決まります。
一般的なメダカの場合、この6種の色素胞のうち、「黒色素胞」「黄色素胞」「白色素胞」「虹色素胞」の4種類の色素胞を持っています。一方でヒメダカは、このうち黒色素胞を欠く個体を固定して作られた品種であるため、黒っぽさが消えてメダカ本来の体色である茶色から、黄色またはオレンジ色の体色へと変化したのです。
ヒメダカの作り方(作出方法)
ヒメダカは上にも記載したとおり、野生のメダカから黒色素胞が欠けた突然変異個体を固定してできた品種です。すなわち、野生のメダカの中に黄色や橙色のメダカがいることを偶然発見し、それを累代繁殖を繰り返して固定してきたと考えられます。
ヒメダカと関連の深い品種
メダカの改良品種の中でも、ヒメダカは最古に固定された品種です。近年の改良メダカブームとは少し出どころの違う品種のため、改良品種の種類も極端に多いわけではないですが、ヒメダカと関連の深い品種もいくつか存在します。ここでは、それらの品種を簡単に紹介します。
ブチメダカ(斑メダカ)
ブチメダカは、体の一部に墨(黒色の斑点)が入るメダカです。何代もヒメダカを累代繁殖すると復帰突然変異という現象をおこし、持って無い黒色素胞が混じることがあります。この状態から斑が混じるとブチメダカとなります。この斑には、一匹と同じ斑模様の個体が存在しないという特徴があります。この特徴から、ブリーダーさんが繁殖させ色々な斑が楽しめるメダカとなっています。
黒メダカ(茶メダカ)
黒メダカ(茶メダカ)は、野生下に生息している原種メダカと色合いが近いメダカです。ただし、現在流通している黒メダカは、ヒメダカから産まれた子どものうち、先祖返りした個体を固定して作出した品種とされています。先祖返りの原理は、ブチメダカと同様と考えられます。
アルビノメダカ
ヒメダカは黒色色素を作ることはできますが、黒色素胞を欠くために体色を黒くすることが出来ません。一方で、黒色色素を作ること自体ができない個体は「アルビノ」と呼ばれます。
黒色色素を作ることができるヒメダカは目が黒いのに対し、黒色色素を作れないアルビノメダカは目が赤いところに違いがあります。
ヒメダカの飼育方法
ヒメダカの飼育はとても簡単です。まずは飼育の基礎となる、水質やエサについて確認しておきましょう。
基本的な飼い方
基本的には、一般的な小型熱帯魚の飼育方法で飼うことができます。一般的に、小型魚の飼育では、体長1cmにつき1リットルの水が用意できる環境が望ましいと言われているため、60cm規格水槽で20匹弱が目安になるでしょう。これはろ過フィルターを使うアクアリウムで飼育する場合の目安なので、睡蓮鉢など屋外飼育の場合はもう少し多めの水量を確保したほうが良いと思います。
過密飼育も不可能ではありませんが、水質悪化や病気の蔓延、繁殖時の卵の食害などのリスクがあるためおすすめしません。
飼育容器選びのポイント
ヒメダカのきれいな黄色やオレンジ色を楽しみたい場合は、背地反応を抑えるため黒容器での飼育をおすすめします。白容器や何も囲いをしない水槽では、背地反応により色が抜けることがあります。
背地反応とは
周囲の色によってメダカが体色を変化させる保護色機能のことを「背地反応」と呼びます。
飼育に適した水質
メダカはもともと、水田やその付近の水路など比較的過酷な環境に生息している魚です。このような過酷な環境に適応できるメダカは、水質面ではかなり丈夫な魚だと思って構いません。水温の適温は16~30℃程度ではありますが、10℃以下の低温から30℃を多少超える高温まで、幅広い水温で生きていくことが可能です。pHについても、弱アルカリ性~弱酸性まで幅広く適応できます。
ただし、どんな魚にも言えることですが、水質が急激に変化すると大きなダメージを負う可能性があります。導入時の水合わせなどは丁寧にやるにこしたことはありません。
エサ
口に入るものなら何でも食べるメダカですが、栄養バランスや管理のしやすさを考えると、市販のメダカの餌が一番扱いやすいです。市販の飼料ならどれを与えても大きな差は有りませんが、古くなり劣化したエサは与えないようにしましょう。
屋外飼育で必要な飼育用品
メダカの飼育は、大きく屋外飼育と屋内飼育の2つに分けられます。まずは屋外飼育の場合に、必要となる道具類をまとめておきましょう。
飼育容器(睡蓮鉢・プラスチック容器等)
屋外飼育の場合、飼育容器は睡蓮鉢、プラスチック容器、発泡スチロール容器などが選択肢になります。
睡蓮鉢は水草などを植えるとビオトープのような雰囲気も出せるため、観賞面を重視する場合におすすめの飼育容器です。
一方、コストやメンテナンス性を重視する場合は、プラスチック容器や発泡スチロール容器がおすすめです。
水草
屋外飼育では、大規模な池で飼育するような場合を除き、基本的にろ過フィルターを使用できません。したがって、水質を維持する方法が非常に限定されます。
もっとも手軽で有用な方法が、水草を使用する方法です。特に、ホテイアオイなどの浮草系の水草は、根の部分がろ過バクテリアの住処になるうえ、成長が早く硝酸塩を吸収してくれるので、屋外飼育では非常に重要です。
底砂
底砂も、水草と同様にろ過バクテリアの住処になるため水質の維持に役立ちます。メダカ飼育でよく利用されるのは、赤玉土やアクアリウム用のソイルです。いずれも、粒が崩れにくく比較的長期にわたって使用することができます。
メンテナンス用品
メダカを上手く飼うためには、日頃のメンテナンスも欠かせません。バケツ、魚網、水換え用ホースなどが必要になります。
バケツなんて何でも良いと思うかもしれませんし、たしかにそれも一理あるんですが、それでもイノマタ化学の「なるほどバケツ」は、使いやすくなるように考え抜かれたバケツで、非常に人気が高いです。
水換え用のホースでは、「プロホース」が使い勝手がよく定番の商品です。
屋内飼育で必要な飼育用品
次に、屋内飼育の場合に必要となる飼育用品を紹介していきます。
水槽
屋内飼育の場合は、飼育容器は水槽が基本です。ボトルアクアリウムのように小さなガラス瓶で飼うことも可能ですが、やはりメダカに負担をかけるので、水槽をおすすめします。
水槽の候補は、第一に横幅60cmの60cm規格水槽、第二に全ての辺が30cmの30cmキューブ水槽です。
60cm規格水槽は、アクアリウム用の水槽として最も一般的なサイズのため、ライトやヒーターなどの周辺器具も安い商品が多く、コストパフォーマンスに優れます。60cm水槽にもいろいろな商品がありますが、3000円前後と非常に安く入手できるエーハイムのEJ-60が人気です。
30cmキューブ水槽は、60cm規格水槽の大体半分程度の大きさなので、場所を取らずに気軽におけるのがメリットです。こちらは、コトブキのクリスタルキューブ300が人気で、K-kiも使用しています。
ろ過フィルター
屋内飼育では、ろ過フィルターを使って水質を維持するのが一般的です。ろ過フィルターにはいろいろな種類があり、それぞれに特徴があるため、詳しくない人はまず以下のページで全体を把握しておきましょう。
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水槽用ろ過フィルターの選び方と外部・底面など種類別おすすめ製品
熱帯魚、金魚、亀等を飼育するアクアリウムで必要になる水槽用のろ過装置を解説します。外部フィルター、底面フィルター等のろ過フィルター別の長所・短所・適合水槽や、ろ過の原理、ろ過フィルターの種類、ろ材についてもまとめます。
その上で、メダカの飼育には、インテリア性が高く水草の育成とも相性が良い外部フィルターか、濾過効率が高い底面フィルターがおすすめです。
底砂
水槽の底面に底砂を敷けば、ろ過バクテリアが定着したり、水槽の見栄えが良くなったりとメリットがあります。また、ヒメダカは明るい環境だと色が飛びやすいので、暗めの底砂を敷いてやると、黄色やオレンジの色合いを楽しみやすいです。
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アクアリウム水槽の底砂・底床まとめ-ソイルから大磯砂まで網羅!
アクアリウムで使われる底砂・底床は多くの種類があり、それぞれが様々な効果を持っています。ソイルや砂利、セラミック系底床などアクアリウム用底砂の種類ごとに特徴や長所・短所をまとめ、どんな水槽にどんな底砂が適しているかを解説します。
アクアリウムで使用される底砂にはいろいろな種類があるので、種類ごとの違いや性能の差については、こちらのページを参考にしてください。
ライト
メダカに限らず生き物は周期的なリズムを持って生活しており、このリズムをキープすることは体調管理の上でとても重要です。そのためには、毎日決まった時間に明かりがつき、決まった時間に暗くなるというように、光の周期を固定してやる必要があります。
アクアリウムで使用する水槽用のライト・照明を適切に選ぶ方法を解説します。色温度や波長など光に関する知識や、生体・水草などアクアリウムの目的別にどのようなライトが適しているか、蛍光灯・メタルハライドランプ・LEDそれぞれの特徴などをまとめます。 アクアリウムの日常的な管理・メンテナンスを楽にしてくれるプログラムタイマーの用途・使い方・商品例・使用感などを紹介します。水槽周辺の照明や二酸化炭素の添加など、毎日決まった時間にオンオフする器具の管理に非常に役立ちます。
アクアリウム水槽用ライト・照明(蛍光灯・メタハラ・LED)の選び方とおすすめ!熱帯魚・水草への効果も解説
アクアリウムの必需品!プログラムタイマーで照明等を自動化
そのため、ライトとタイマーを使用して、水槽の明るさを自動で管理するのが一般的です。また、メダカと一緒に水草を育てる場合、水草の光合成のためにもライトが必要になるため、その重要性はさらに増します。
メンテナンス用品
屋内飼育でも、屋外飼育と同様にメンテナンス用品は必要です。この手の道具については、屋内と屋外であまり差はないので、屋外飼育のメンテナンス用品の項目を参考にしてください。
ヒメダカの繁殖方法
ヒメダカを繁殖させるためには、まずは最低限以下の条件を揃える必要があります。
- 繁殖可能な大きさまで成長した雌雄のペアがいること
- 日照時間が12時間以上あること
- 水温が18℃以上であること
この条件を揃えたら、以下のポイントを参考に繁殖に挑戦してみましょう。
産卵から孵化までの環境づくり
上の条件が揃った状況でメダカを飼育していると、自然にメスが産卵するようになります。メスは基本的に朝の早い時間帯に卵を産み、しばらくは尻ビレ付近に卵の塊を付けたまま泳いでいます。
その後メスは卵塊を水草などに産み付けますが、メダカは口に入るものを何でも食べてしまう性質があるため、水草に産み付けられた卵や孵化した稚魚を食べてしまうことが非常に多いです。そのため、卵を見つけたらすぐに親メダカとは別の容器に隔離します。
このとき、産卵床を使用していると、産卵床ごと取り出して隔離できるため、卵の管理が楽になります。繁殖を考えている場合は、持っておくととても役に立つアイテムです。
メダカの卵のうち、受精卵は透明ですが、無精卵は白く濁っています。無精卵を放っておくとカビが生え、最悪の場合は受精卵までカビに侵されてしまうので、無精卵は見つけ次第取り除くのがベターです。
あるいは、メチレンブルーなどの薬剤を使用してカビを防止するのも良い方法です。
メダカの卵が孵化するまでにかかる時間は、水温によって変わりますが、水温(℃)×日数が250になる辺りが孵化時期の目安とされています。この式を念頭に置いて、稚魚育成の環境を準備しておきましょう。
稚魚(針子)の育て方
孵化した稚魚は、少なくとも親魚の口に入らない大きさに育つまでは、継続して親とは別の容器で飼育します。生まれてから2~3日間は、ヨークサックから栄養を摂取するため餌は不要ですが、その後はエサ切れを起こさないように注意が必要です。
メダカに限らず、魚の稚魚を飼育している場合に、死因として最も多いのは餌不足による餓死だと言われています。1日に2~5回を目安に、とにかくエサ切れにならないよう継続的に餌を与えましょう。
日中の頻繁な餌やりができない人は、大量の植物プランクトンが含まれるグリーンウォーター(緑水)で稚魚を飼育することでエサ切れを防止できます。ただし、グリーンウォーターが濃くなりすぎると、酸素不足や水質悪化につながるため注意が必要です。
ヒメダカの魅力・おすすめポイント
ヒメダカは、野生のメダカからの突然変異を固定して品種化した、改良メダカの最初の品種です。歴史も古く江戸時代には観賞魚として飼育されていたとの記録があります。メダカの改良品種の中では基本品種に位置づけられるメジャーな品種ですが、繁殖を重ねるとラメがのったりもしますし、色が白い個体や斑をもった個体などが出てきたりと、個性を楽しむこともできます。
価格が手頃で、市場の流通量も多く手に入れやすく、そして飼育も繁殖もとても簡単なため、メダカを飼う楽しさを感じやすい品種だと言えるでしょう。購入の際は、5匹から10匹くらいの数を購入して、繁殖まで挑戦してみることをおすすめします。また、子どもの自由研究の素材として、「メダカの繁殖」について研究してみるのも良いと思います。のめり込むタイプの子なら、ゆくゆくは新しい品種を作出したりしちゃうかもしれません!