野生生物保全
アクアリウムや爬虫類飼育といった趣味は、少なからず野生生物に負担をかけます。世界中で希少な生き物が乱獲され、その数を減らしていっている原因の一つは、私たちのような生き物を飼育する趣味を持つ人に販売するためであることを忘れるわけにはいきません。
本来、生き物が好きで飼育しているはずの私たちには、意図せず生き物を絶滅させる行為に肩入れしてしまわないためにも、野生動物の保全について知っておく責任があります。このページでは、野生生物の保護・保全や管理に関連する知識や、絶滅の危機に瀕する希少な生物や日本の生態系に影響を及ぼす外来種問題への対策など、生物多様性の保全に繋がる情報をまとめます。
また、野生動物の保全に関わる活動(フィールドワーク)に、K-kiが実際に参加した様子なども紹介します。
野生動物保全に関わる基礎知識
K-kiも野生動物保全についてはほとんど素人で、まだまだ勉強中です。K-kiがこのテーマについて学ぶ際に参考にした情報の中でも、特に役に立ったと感じているのが、三浦 慎悟先生の「ワイルドライフ・マネジメント入門」です。
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野生動物の保全は、知らない人から見ると動物愛護と混同されがちです。しかし、これら2つには根本的な違いがあります。
個々の動物の生存・権利・福祉を重視する傾向のある動物愛護に対し、動物保全の考え方の根底は「野生動物は資源」という点にあります。動物の権利を守ることが目的ではなく、あくまで人類にとって有限の資源である野生動物を、持続的に活用する方法を考えるという立場に立っています。
K-kiの個人的な理解ですが、この「野生動物は資源」という考え方によって初めて、野生動物の保護が個人の主観の枠を超え、人類にとって共通の問題になるのです。以下のページでワイルドライフ・マネジメント入門を読んで学んだ内容を簡単に紹介しています。ぜひ目を通してみてください。
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野生動物と人間の共生とは何か/ワイルドライフ・マネジメント入門
2020/5/9
「生物多様性保全」という言葉、知ってはいても理解している人は少ないでしょう。今回は「ワイルドライフ・マネジメント入門」という野生動物を保全するための学問・野生動物管理学=ワイルドライフ・マネジメントの入門書を読み、理解したことをまとめます。
生物多様性の保全
野生動物の保全をさらに一歩進めた考え方に「生物多様性の保全」というものがあります。
人間は、生態系によって提供される多くの仕組みや資源から大きな利益を得ています。これらは「生態系サービス」と呼ばれ、平均して年間33兆ドル(約3800兆円)もの価値があると言われています。例えば、食料や資源の供給、光合成による二酸化炭素の酸素への変換、土壌形成や水・空気の浄化、農作物の受粉補助など、非常に幅広いです。
生態系サービスは、バランスの取れた生態系によって供給されます。多くの生き物が複雑に絡み合ってバランスが取られている生態系においては、ある1種類の生き物が人為的に増えたり減ったりすると、バランスが大きく崩れてしまうこともあるのです。
従って、生物多様性の保全とは、生態系サービスの恩恵を持続的に得るために、生態系のバランスを保つことを意味します。これが「野生動物は資源」という考え方をさらに突き詰めたものと言えるでしょう。このあたりの話は、以下のページが詳しいです。
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#つなごうミドリガメ に思うこと-生物多様性保全と動物愛護の狭間
2020/7/8 アカミミガメ(ミドリガメ)
Twitterで見つけた「#つなごうミドリガメ」というタグと、それに関連するミドリガメ駆除中止の署名活動についてK-kiの考えを紹介します。生物多様性保全と動物愛護の違いは、動物愛護が個人の感情に基づくのに対し、生物多様性保全はあくまで人間の利益確保が目的である点にあります。
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乱獲で壊滅したイシガメ達から学ぶ、動物保護の最低限の知識
2020/5/9 ニホンイシガメ
【拡散希望】ブログで交流のある方が保護するイシガメが、乱獲により壊滅的な被害を受けました。この事件を多くの人に知ってもらうと共に、野生動物の保護について考えます。WC/CB個体・持ち腹の是非や遺伝的多様性等を解説します。
フィールドワークで野生生物の現状を知る
書籍やインターネットの情報で野生生物の保全について勉強するのも重要ですが、実際に野外に出て、野生生物を取り巻く現状がどのようなものか知ることにも価値があると思います。K-kiの力で何かができるわけではありませんが、この分野の最前線で活躍している研究者の方々のお手伝いができればと、フィールドワークに参加させていただいたこともあります。
野生動物が置かれている厳しい環境を目の当たりにしたり、研究者の方のお話を聞いたりすると、やはり思うところは色々とあります。野生生物の保全を身近な問題として考える切っ掛けとして、ぜひフィールドワークの記録を読んでみてください。
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ニホンイシガメ保全調査に参加-フィールドと最前線の研究者から学ぶこと
2020/5/9 ニホンイシガメ
個体数減少が危惧されている日本の淡水性カメ類(主にニホンイシガメ)ですが、実は定量的な生息状況の評価が行われておらず、適切な保全が行いにくいのが現状です。これらの亀の生息調査にボランティアとして参加したので、フィールドワークで得た知識や考えたことをまとめます。
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アカウミガメ(野生動物)の生態調査-準備編:知識と必要な装備
2020/7/8 アカウミガメ
野生動物の保全についてより実践的な知識を得るため、アカウミガメの生態調査に参加することにしました。産卵に来た親ウミガメや孵化直後の子亀に個体識別のための標識を装着するのが主な作業です。調査に必要な知識や装備品など準備方法をまとめます。
亀と外来種問題
このサイト「AquaTurtlium」のメイン生体でもある「亀」についても、日本国内で野生生物の保全に関する大きな問題があります。それは「外来種問題」です。本来日本には生息していないアカミミガメ(ミドリガメ)やカミツキガメの数が増え、日本固有種であるニホンイシガメ等在来種の数が減っているのです。
外来種の亀が増えたことが、在来種の亀を減らす直接の原因になっているかどうかは判然としていません。むしろアライグマなどの肉食外来生物が移入してきた結果、在来の亀が食べられてしまっていることのほうが影響としては大きいとも言われています。身近に思える生き物にも着実に危機が迫っていることを知り、生き物を飼う人間の責任として、野生生物の保全について考える切っ掛けになれば幸いです。
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(撤回)ミドリガメ輸入・販売・飼育禁止?-飼い主はどうすれば良い?
2020/8/6 アカミミガメ(ミドリガメ)
日本で最も人気のペット亀・ミドリガメ(アカミミガメ)が、生態系保護等の理由で2020年を目処に輸入・販売・飼育禁止となることが決定しました。規制の背景・内容・今後の展開と現在飼育している飼い主が取るべき行動をまとめます。
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カミツキガメはなぜ駆除される?外来種問題やワニガメとの違い
2020/7/24 カミツキガメ属
カミツキガメは、甲長約50cm、全長約100cm近くまで成長する大型の亀で、陸上では特に攻撃的です。また、特定外来生物に指定されており日本では輸入・販売・飼育等が禁止されています。近縁種にワニガメが存在しますが、実はワニガメより噛む力は弱いです。