野生生物保全 水族館・イベント等

アカウミガメ(野生動物)の生態調査-準備編:知識と必要な装備

2016/06/29

最近忙しくて、ブログの更新が滞り気味なK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。書きたいネタはたくさんあるのですが、どうにも手が回りません。読者の皆さんには気長に待っていてもらえると幸いです。

そんな忙しさを言い訳に、更新頻度も減少しているのですが、そんな中で最近は「野生動物保護」についての話題が多くなっています。これまでにも、日本での野生化が問題となっているミドリガメや、乱獲によって壊滅的な被害を受けたニホンイシガメのコロニーについてなど、この話題に関して多くの記事を書いてきました。


乱獲で壊滅したイシガメ達から学ぶ、動物保護の最低限の知識

【拡散希望】ブログで交流のある方が保護するイシガメが、乱獲により壊滅的な被害を受けました。この事件を多くの人に知ってもらうと共に、野生動物の保護について考えます。WC/CB個体・持ち腹の是非や遺伝的多様性等を解説します。


しかしこれらの知識はあくまで知識でしかなく、自分自身の体験が伴っていないことにこれまで問題を感じていました。やはり、自分でフィールドに出て、保護活動がどのようなものであるかを経験しなければ書けないこともあるはずです。

このように考えてフィールドワークの機会を探していたところ、「アカウミガメの生態調査」を行うボランティアが募集されていることを知りました。プロジェクトにはウミガメの研究者の方も関わっており、とても貴重な経験を積めそうだと感じたので、このアカウミガメの生態調査に参加することにしました。

今回の記事を含め数回に渡り、「アカウミガメの生態調査」への参加に必要な準備、得た知識や、フィールドワークの実際の様子などをまとめていきます。ウミガメに興味のある人、野生動物の保護・研究に興味がある人は、ぜひ継続して読んでみて下さい。

今回の記事は第1回「準備編」です。ウミガメの生態調査をするにあたって、あらかじめ目的を明確にし、調査に向かう前に出来る限りの準備をしておきました。

アカウミガメの生態調査活動へ参加する目的

まずはウミガメの生態調査へ参加する目的を、自分なりに明確化しておきます。もちろん研究者主導の調査の一環であるため、調査自体にはより明確な目的があるのですが、あまりその部分を詳細に書くのは研究者の方の不利益になってしまう可能性もあるため、とりあえずここでは私個人の目的を中心にまとめます。

フィールドワークの経験を積む

まず第一に、フィールドワークの経験を積むということが重要です。今はまだぼんやりとした思惑でしかないのですが、将来的にはニホンイシガメのような、淡水悽亀の調査・保護活動にも関わりたいと考えています。そのためにも、フィールドに出て自分の手足で情報を集め、野生の亀に触れて活動するという経験を積む必要があります。

最前線の研究者から話を聞く

フィールドワークに限らず、保護活動・研究活動を行うためには、しっかりとした科学的裏付けが必要です。野生動物の保護活動について知識面での勉強は多少していますが、実際の活動に関してはズブの素人なので、まずはしっかりとした知識・ノウハウを持っている人の下で活動すべきだと考えました。

今回の調査はウミガメの研究者が主導しており、最適な人の下で活動できると言っても過言ではありません。指示を受けて単純に作業するだけではなく、研究者の方といろいろな話をして、できるだけ多くのの知識を吸収したいと思います。

事前知識を身につけるための予習

フィールドでの調査活動をより実りの多いものにするためには、事前の予習も重要です。調べれば分かることは事前に勉強しておけば、現地では、調べただけではわからない、より実践的な知識の習得に時間を割くことができるからです。

そこで私は今回、以下の3冊の本を事前学習に活用することとしました。以下の本が適切であるかどうかは分かりませんが、もともと興味のあった野生動物の保全についての本を2冊、今回の調査対象であるウミガメについての本を1冊読むことにしました。

ワイルドライフ・マネジメント入門 野生動物とどう向き合うか

「ワイルドライフ・マネジメント入門」は、以前から私が読みたいと思っていた本のうちの1冊であり、野生動物の保全についてその現状と具体的な手法が説明されている本です。入門と銘打っているだけあり、野生動物管理(=ワイルドライフ・マネジメント)の概要を科学的な視点からまとめてあり、初学者にもおすすめできます。

この本はもともと読みかけていたものですが、その途中でウミガメの生態調査に参加することが決まり、関連が深そうだということで予習用書籍リストの中に挙げておきました。

野生動物と人間の共生とは何か/ワイルドライフ・マネジメント入門

「生物多様性保全」という言葉、知ってはいても理解している人は少ないでしょう。今回は「ワイルドライフ・マネジメント入門」という野生動物を保全するための学問・野生動物管理学=ワイルドライフ・マネジメントの入門書を読み、理解したことをまとめます。

この本の書評をこちらの記事にまとめてあります。野生動物保全に興味のある人にとっては非常に有用な書籍だと思うので、ぜひこちらのページも合わせて読んでみて下さい。

野生動物と共存できるか 保全生態学入門

前述の「ワイルドライフ・マネジメント」がかなり科学的な視点からの本であるのに対し、こちらはジュニア向けということもありもう少し簡単に、分かりやすく書かれた書籍です。もちろん、著者は保全生態学の研究者ですから、科学的な検証も十分に行われています。

保全生態学はワイルドライフ・マネジメントと共通する部分も多いですが、対象とする生物の「生態」により主眼をおいたアプローチをとるようです。「ワイルドライフ・マネジメント入門」と併せて読むことで、同じ問題を扱う別の方法を知ることができ、野生動物の保全というテーマに対してより深く理解できるようになったと感じます。

こちらも近いうちに書評記事を書く予定です。興味のある方はFacebookやfeedlyで当サイトを購読してもらうと、記事が更新されると通知がいくので便利ですよ。

屋久島発 うみがめのなみだ その生態と環境

この本では、ウミガメという生物やその生態、人間との関わり、生態調査の方法などを紹介しています。著者の大牟田一美氏は、NPO法人屋久島うみがめ館の代表で、1985年から30年以上ウミガメの生態調査や保護活動を行っています。その豊富な経験から得られた知識と、フィールドで撮影された大量の写真がつめ込まれた良書です。

写真やイラストが非常に多く、学術書に抵抗のある人にもとても分かりやすい構成になっています。一方で、ウミガメ各種の解説や、形態、生態、環境がウミガメに与える影響、生態調査の方法や産卵頻度の高い砂浜の紹介まで、幅広い情報が集約されている濃密な本でもあります。ウミガメについて勉強してみようと思った時に、最初に手に取る本として最適でしょう。

フィールドワークに必要な装備品の用意

フィールドワークへ向かう目的を明確にし、必要な知識の予習もできました。残る事前準備としては、フィールドワークに必要な装備を用意することが挙げられます。

言われなくても分かっていることだとは思いますが、フィールドワークでは普段の生活とは違う活動をすることになるので、その環境に適した服装や道具が必要です。もちろんどんな活動をするかによって必要なものは変わりますが、今回私が用意した中で、汎用性の高そうなものを中心に紹介します。

サワタビ

ウミガメの生態調査では、個体の識別が重視されています。そのため、砂浜で産卵に訪れたウミガメの成体や、孵化直後の海に向かう子亀を探して、個体識別のためのマイクロチップや標識を取り付けます。

ウミガメを見つけ出すためには、砂浜をかなりの距離歩く必要があります。また、このような砂浜には川が流れ込んでいる部分もあり、ウミガメを探す際にはその川を歩いて渡らなければなりません。

したがって、ある程度の水深がある川を渡れて、長距離を歩いても辛くないような靴が必要です。このような用途に適した靴として、沢登り用の靴(沢靴)やダイビングブーツ・マリンブーツなどが挙げられます。私は値段なども考慮して、モンベルのサワタビを用意しました。この手の靴は濡れないようにするというよりも、靴の中の水の出入りが少なくなるようにして、体温を奪われないようにするという設計思想になっているようです。

スポーツタイツ

上にも書いたように、ウミガメの生態調査では膝上くらいの水深の川を渡ることもあります。その際に普通のズボンを履いていると、水を吸って重くなってしまい、動きづらいです。また、長時間濡れたままでいると体温を奪われ風を引いたりする原因にもなってしまいます。

スポーツタイツを利用すれば、水に濡れてもあまり重くならないし、速乾性があるので体温の低下も防げます。沢登り用のタイツもありますが、高価なものが多いので、比較的安価なランニング用のスポーツタイツで代用することにしました。

長袖・長ズボン・上着

ここまで体温を奪われないようにする、という点を強調してきていますが、それはなぜかというと、ウミガメの調査を行う深夜は意外に寒いからです。特に雨が降った日などは長袖を着ていても寒くて震えるほどの時もあるとか。

また、ウミガメの産卵地である南西諸島特有の虫がいて、刺されると非常にかゆいそうです。その対策としても、皮膚の露出は極力避ける必要があります。

雨具

雨に濡れると体温が奪われ、想像以上に体力を消耗するため雨具は必須です。傘を使うと、傘に雨が当たる音をウミガメが警戒してしまう場合があるため、基本的にはカッパを着用します。

軍手

産卵に訪れるウミガメの成体は体重100kgを超えることも普通で、その力は一般的な成人男性よりも強いです。しかし個体識別のための標識(タグ)を装着する際には、どうしてもウミガメを押さえこまなければならない場面もあります。

ウミガメの甲羅はゴツゴツしていたり、カメフジツボと呼ばれるフジツボが付いているため、素手で触ると手を切るなどしてケガをする恐れがあります。また、ウミガメの手足(ヒレ)には爪が付いており、そこを触ってしまっても危険です。このような場面で怪我を防止するために、軍手は欠かせません。

赤い光の懐中電灯

ウミガメは光に非常に敏感で、浜辺が明るいと産卵のための上陸をやめてしまう場合があります。従って、浜でのウミガメ調査において懐中電灯の使用は厳禁です。一方で甲長の測定結果や装着した標識番号を控える場合など、調査上どうしても明かりが必要な場面もあります。

このような場合には、ウミガメのような爬虫類にとって見えづらいと言われる「赤い光」を使用します。光を知覚するための爬虫類の体の構造や器官については、こちらのページで詳しく解説しています。

爬虫類と光/温度-バスキング・紫外線ライトと亀/トカゲの生理機能

亀・トカゲ・ヘビ・ヤモリ等の爬虫類の飼育では、紫外線照射のような光の管理と、赤外線ヒーター等による温度管理が重要ですが、理屈が難しく理解していない飼育者が多いです。爬虫類飼育で重要な光・温度管理の方法を詳細に解説します。

また、赤い光にはさらなる利点もあります。

夜間のウミガメ調査では目を暗闇に慣らす、つまり暗順応する必要があります。しかし、せっかく時間をかけて暗闇に目を慣らしても、蛍光灯の強い白色光を見てしまうと、その後再び暗順応するために長い時間が必要になります。

一方で、赤い光を使えば、白い光よりも暗順応に掛かる時間を短縮することが出来ます。このように赤い光の蛍光灯は、夜間のフィールドワークをスムーズに進めるためにとても有効です。

虫除けスプレー

created by Rinker
サラテクト
¥439 (2021/03/06 17:15:13時点 Amazon調べ-詳細)

上にも書いたとおり、ウミガメの産卵地である南西諸島では、本土よりも虫刺されへの対策が重要です。虫除けスプレーは持っておいたほうが良いでしょう。虫除けスプレーにも様々なものがありますが、虫除け効果に定評があり、ダニやノミなど幅広い虫に効果がある言われている「サラテクト」を選んでおけば無難です。

最近は、従来の虫除け成分である「ディート」不使用をうたい、より安全性の高い虫よけ成分である「イカリジン」を使用している虫よけスプレーも登場しています。虫よけキンチョール DF(ディートフリー)などが代表例です。安全性が気になる人は、こちらを選ぶと良いでしょう。

入念な準備が成果を最大化する

今回はアカウミガメの生態調査に参加するにあたって、事前準備としてやるべきことをまとめました。アカウミガメに限らず、野生動物の調査や保全活動に従事する際には、同じような準備が必要になるはずなので、該当する方の参考になれば幸いです。

今回のような調査活動に参加することによって得られるものは多くありますが、一方で調査に参加するための渡航費や装備を用意するコストも馬鹿になりません。こういった投資に対して最大限のリターンを得るためには、やはり入念な準備が必要不可欠です。しっかりと準備を整えて調査に臨みましょうね!

この記事を第1回とする連載「アカウミガメの生態調査」、次回は、調査を通じて研究者の方から受けたレクチャーで学んだ知識をまとめる予定です。お楽しみに!

K-ki

この記事を第1回とし、「アカウミガメの生態調査」に関する連載記事をお届けしていきます。次回は、野外調査や研究者の方から受けたレクチャーを通じて学んだ知識をまとめる予定です。お楽しみに!

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

-
-水族館・イベント等
-

© 2021 AquaTurtlium