最近は水槽にフタを設けない「オープンアクアリウム」が流行っていますね。スタイリッシュな景観が魅力的なオープンアクアリウムですが、フタがないと飼育水の蒸発がはやくて足し水が面倒、水面にほこりやゴミが落ちる、魚が飛び出して死んでしまうなどデメリットも結構あります。
そこでいざ水槽にフタをしようと思っても、フタが小さくて隙間から魚が飛び出す、ピッタリサイズのフタは餌やりの度によけるのが面倒、そもそも水槽にフタがセットになっていないなどの問題が起こったりします。そんな時は自分の要求に合った蓋を自分で作ってしまうのはどうでしょうか?
今回はそんなかゆい所に手が届く、自作水槽フタの作り方を紹介します。何とこのフタ…動くぞ!?
…ということで、今回作るのは餌やりや足し水などのちょっとしたメンテナンスを簡単にする「可動式のフタ」です!
水槽にフタを設置するメリット・デメリット
水槽に設置するためのフタの自作方法を紹介する前に、フタをすることによってどんなメリットやデメリットがあるのか考えてみます。自分の求めている条件が満たせるようなら、フタを自作してみるとよいでしょう。
水槽にフタを設置するメリット
まずはフタをするメリットから紹介します。
熱帯魚・エビ・貝の飛び出しが防げる
一番のメリットはやはり、熱帯魚・エビ・貝などの生体が水槽から飛び出してしまうことを防げる点です。熱帯魚の中には勢い良く水面から飛び出したり、常に水面付近を泳いでいたりするなど、水槽の外に飛び出してしまいやすい種類の魚がいます。水槽にフタをすることで、こういった生体が水槽から飛び出して死んでしまうことを防ぐことができます。
水の蒸発や水しぶき、塩ダレを抑制できる
水槽の水は少しずつ蒸発していくので、定期的に足し水が必要になります。フタをすることで蒸発のスピードを遅らせ、足し水の頻度を減らすことができます。
また、水しぶきや塩ダレ(海水が飛び散って水槽の周辺で塩分が固まること)も防ぐことができるので、濾過装置や照明器具などのサビや故障の防止にもつながります。
異物の混入を予防できる
水槽にフタをしておくことで、水槽内に異物が混入することを防ぐことができます。何かの拍子にエサをひっくり返して水槽内に大量投入してしまったり、埃やゴミなどが水槽内に紛れ込むことを防ぐことができます。
水槽にフタを設置するデメリット
一方で、水槽にふたをすると以下のようなデメリットもあります。
レイアウトの幅が狭まる
水槽の上部にフタを設置すると、流木や水草の水上葉が水面から突き出すような水槽レイアウトにはできなくなります。また、陸地を水槽の上部に大きく突き出させるようなアクアテラリウムを作りたいと思った場合にも制限がかかることになります。フタを設置することで、レイアウトの幅が狭まってしまいます。
照明の光が水槽内に届きにくくなる
また、照明の光が水槽の中に届くまでに一度フタを通るため、どうしても水槽内に届く光の明るさが弱くなります。水草の育成には多かれ少なかれ影響してくるので、この点も考慮しておくべきでしょう。
他にもエサやりやメンテナンスやり難くなったり、夏場の冷却ファンが取り付けにくくなるという問題がありますが、今回紹介する可動式のフタではその点はクリアされているので心配は要りません。
用意するもの
水槽用のフタを自作するために、まずは用意するものから紹介していきます。用意するものは、最終的にフタになる「材料」と、材料を加工するために必要な「工具」に分けて紹介していますが、どれも基本的にはホームセンターに行けば入手できるものです。
材料
- 塩ビ板(3mm厚程度がよい)
- 塩ビ角棒(1cm角がよいが5mm角でも可)
- 蝶番(2つ)
- ボルト(8本)
- ナット(8個)
- フタ受け
- 塩ビ三角棒
フタの材料には塩ビ板を使用します。塩ビ板は割れにくく保温性も高いため、フタに適しています。アクリル板も候補に挙がりますが、水分により反りやすいのと塩ビ板より高価なことがネックです。ただし値段と重さに目をつぶれば、厚めのアクリル板にすることで塩ビよりも透明度が高い蓋を作ることもできます。
蝶番・ボルト・ナットは作成するフタの形状に合わせて必要な数を用意してください。普通は蝶番を2つ止められるだけの数があればよいと思います。私は60cm水槽サイズのフタで25mmの蝶番と3×6の六角ボルトを使用しましたが、水槽サイズが大きくなるのであれば蝶番も大きくて丈夫なものにした方が良いと思います。
また、水槽にフタを乗せるためのフタ受けが3つ必要です。ない場合は作ります(下の方で作り方を解説しています)。塩ビの三角棒はフタ受けを作る時に必要になります。
材料の入手法
上に挙げた材料は、ホームセンターでほとんど揃えることができると思いますが、塩ビ板は若干価格が高めのことが多いです。そこでアクリルショップ・はざい屋というお店でのネット通販が安くてお勧めです。最近はオービターというお店が、はざい屋よりも少し送料が安くて人気があるようです。
これらの通販ショップではかなり安い値段で精度の高いカットもしてくれるので、先に寸法を決めておきそのサイズにカットしてくれるようお願いすると、手間が省けてとても便利です。私は以前に濾過槽やウールボックスを作ったときにはざい屋を利用しました。今回はその時のに出た余りの塩ビ板でフタを作ります。
オーバーフロー濾過システムで必要になる濾過槽を自作する方法を紹介します。60cm規格水槽を塩ビ板で仕切った3層式濾過槽の作り方を濾過槽の仕組みや詳細な寸法、自作に必要な道具、画像・動画による手順の説明を交えて解説します。 前回の濾過槽の自作に引き続き、ウールボックスの自作方法を解説します。ウールボックスは物理濾過によって水が汚れるのを防ぐオーバーフロー濾過システムでも重要なものです。メンテナンス性向上のため引き出しタイプを自作しました。
自作オーバーフロー濾過システム!60cm水槽改造濾過槽の自作
自作オーバーフロー濾過システム!引き出し式ウールボックス
蝶番・ボルト・ナットについてはホームセンターでの購入で問題ありませんが、ステンレス製のものを選ぶと錆びに強く使い勝手が良いと思います。最後に紹介する参考サイトにサイズについても記述があるので参考にしてください。
工具
- 電動ドリル(塩ビ板に穴をあけられるもの)
- アクリルカッター
- 塩ビ板用接着剤
塩ビ板を穴あけ・切断加工するので電動ドリル・アクリルカッターは必要になります。また塩ビの接着剤には、塩ビ板用・塩ビ管用があると思いますが、今回は塩ビ板の接着を行うので塩ビ板用のほうが使いやすいです。塩ビ板用の接着剤を使用するときには注射器が必要になるので、注射器がセットになっている塩ビ板用接着剤を買うのが一番手軽です。
開閉式の水槽フタ自作の作業手順
次は作業手順を紹介します。実際にフタを作る工作の作業も大切ですが、どんな使い方をするフタを作るのかを考える「構想・設計」の段階がとても重要です。よく考えてから作業に取り掛かるようにして下さいね。
構想・設計
フタの形状・寸法を決めます。このときフタのどの部分を支持して水槽に載せるかをちゃんと考えておきます。変なところを支持するつもりでいるとフタがちゃんと水槽にのりません。私の場合は写真の赤色の部分を支持することにしました。
右側の少し小さくなっている部分がフタの可動部です。バランスを考えると、フタの可動部は稼働しない部分の半分から3分の1くらいの大きさがよいでしょう。ちなみにこのフタは濾過槽用なので形状・寸法が少し特殊です。また、夏場には可動部の場所には冷却ファンを設置するので、ファンが置けるだけのスペースが生まれるようなサイズにしてあります。
蝶番の取り付け
大体どんなフタにするか決まったら、蝶番を取りつけます。まず塩ビ板の上に蝶番を仮置きして取り付け場所を決めます。蝶番はできるだけまっすぐに並べないと、フタを動かしにくくなってしまうので注意してください。
私はこんな感じのバランスにしました。まあよっぽど変な取り付け方をしなければ大体大丈夫です。
取り付け場所が決まったらマスキングテープなどで蝶番を固定し、穴あけ位置に印を打ちます。こうしないと穴をあけてもずれてしまい蝶番がうまくとりつけられなくなる可能性があります。
後は穴を空け、蝶番をボルトとナットで固定します。穴径は、通すボルトの径よりも少し大きくしておくとスムーズに取り付けができます。固定後はこんな感じになります。
また、フタの可動部に塩ビ角棒を短く切って貼り付けると取っ手を作ることができます。下の写真はフタの完成写真です。取っ手取り付けの参考にしてください。
ここまででフタについては完成です。
フタ受けの作成
フタを水槽に乗せるためのフタ受けを作ります。使えるフタ受けが3つ以上ある方はこれを作らなくても大丈夫です。
作業途中の写真が残ってなかったのでいきなり完成写真です(笑)。コの字型の部分をフレームレス水槽に引っ掛け、出っ張り部分にフタをのせて使います。
もう少し構造が分かりやすいようにしたのが上の写真です。青色が塩ビ板、緑が角棒、赤が三角棒です。塩ビ板と角棒によってコの字部分を作り、フタを受ける出っ張りを三角棒で補強しています。
このフタ受けは冷却ファンを水槽に取り付ける時のクリップの役目もしてもらうので、幅は冷却ファンに合わせて12cmとしました。水槽用の冷却ファンの自作方法を紹介している以下の記事を読んで下さい。
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水槽用冷却ファンの自作!アクアの関門“夏”を乗り切る方法
アクアリウムで夏に水槽の水温を安価に下げるための、冷却ファンの作り方を解説します。冷却ファン自作の長所・短所や自作の手順、ACアダプタ・PCファン・DCジャック・DCプラグなどのパーツの選び方・おすすめなども紹介します。
ちなみに私は冷却ファンのクリップとして使いたかったのでフタ受けを自作しましたが、その必要がないならフタの縁に水槽に引っ掛ける羽根を付けておけば十分です。参考サイトに詳しい方法が紹介してあります。
完成&設置
これでフタとフタ受けが完成しました。後は水槽に設置するのみ!
実際に設置した様子が上の写真です。ピッタリですね! 今回は濾過槽用にフタを自作したので、配管部分を通すためにフタの可動部を一部小さくしてあります。
フタを開くとこんな感じです。水が蒸発して水位が下がってきた時も、このようにふたを開けるだけで足し水ができるのでとても便利です!
ちなみにフタ受けのところで紹介した、水槽用の自作冷却ファンをセットするとこんな感じになります。さすがに専用に作っただけあって、ピッタリの出来栄えです。
参考サイト
この記事の執筆にあたり以下のWEBサイトを参考にしました。ありがとうございました。
参考塩ビ板で可動式のフタを作る – WATER PLANTS WORLD
また、このブログでは今回紹介した水槽のフタ以外にも、色々なアクアリウム用品の自作に挑戦しています。
タグ自作・DIY
こちらのページで、アクアリウム用品の自作に関連する記事をまとめています。水槽のフタよりももっと複雑なものも自作しているので、アクアリウム関連の自作に興味がある方はぜひ目を通して下さいね!
今回は日々のちょっとした面倒を解消してくれる可動式の水槽蓋の作り方を紹介しました。やはり自分で作ると要求を全て満たすモノを作れるので使いやすいですね。大して難しい工作もないので、皆さんもぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか!?