以前、ダブルサイフォン式のオーバーフロー濾過システムで亀を飼育している90cm水槽用に、60cm規格水槽を改造して3層式濾過槽を自作するという記事を書きました。
前回の記事からは少し間が空いてしまいましたが、今回はこの続きということで、オーバーフロー濾過システムでは濾過槽と並んで重要な「ウールボックス」の自作方法を紹介します。ちなみに「オーバーフロー濾過?」という方は、下の記事にアクアリウムのろ過フィルターのことが詳しく書いてあるので、ぜひ読んでみてください。
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この記事で作り方を紹介するのは、普通のウールボックスではありません。メンテナンス性を高めるため、引き出しのようにウールマットを取り出して交換できる「引き出し式」のウールボックスになっています。
また、今回のウールボックス自作とは直接の関係はありませんが、AquaTurtliumではオーバーフロー水槽の自作方法も紹介しています。
水槽に穴をあける方法や塩ビ管の配管方法など、オーバーフロー水槽を作るためのノウハウをまとめています。こちらもあわせて読んでみてくださいね。
ウールボックスの役割
簡単に言ってしまうと、ウールボックスの役割は物理濾過です。物理濾過とは、エサの食べ残しや大型生体の糞などが分解されて水の汚れになる前に濾し取ることで、水が汚れるのをあらかじめ防ぐというような濾過方法です。
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濾過の方法には物理濾過だけでなく、濾過バクテリアの働きによって汚れを分解する「生物濾過」、特殊な構造を持つ材料を使って汚れを吸着する「化学濾過(吸着濾過)」などがあります。上の記事でこれらの濾過方法についてまとめているので、知識の確認も兼ねて目を通してみてください。
オーバーフローろ過システムでは、飼育水が本水槽から濾過槽に流れ込む前にウールボックスを通ることにより物理濾過が機能し、大きなゴミが取り除かれて生物濾過の負担が減ります。また濾過槽も汚れにくくなるので掃除をする頻度を下げることも可能です。
ウールボックスの仕組みを簡単に説明すると、大抵のものでは底に穴が開いた箱の中に上部式フィルターなどでも使われるウールマットを敷き、そこに飼育水を通すことでゴミを濾すような構造になっています。この性能だけを実現するならば、タッパーの底に穴をあけてウールマットを敷くだけでもいいんですが、今回は静音性・美観・機能性の向上を実現するために塩ビ板からの自作を行います。
必要な材料・工具
ウールボックスを自作するためには、必要な材料や工具を集めなければいけません。まずはウールボックスの作成に必要なものを紹介していきます。
材料
- 塩ビ板(3mm厚)
- 塩ビ四角棒(5mm)
- 塩ビ三角棒(5mm)
- メッシュボード(ルーバー)
- 鉢底ネット
- 猫よけマット
- ウールマット
ウールボックスの作成は主に塩ビ素材を使います。他に選択肢としてはアクリル素材もありますが、アクリルは塩ビより綺麗な分値段が高いので今回は塩ビを採用します。どうせ基本的には水槽台の中に隠れている部分になるので、そこまでの綺麗さは私は求めません。
メッシュボード(ルーバー)は100円ショップ「Seria」で売っていたこれを使います。
既製品として販売されているウールマットでもこれと全く同じなんじゃないか?? と思うようなメッシュボードを使っていたりするので、性能的には十分です。
ウールマットにはいろいろ種類がありますが、私のオススメはローズマットかファインマットです。この2つは目が細かく耐久性もあるので洗って何度も使うことができます。
工具
- アクリルカッター
- 塩ビ板用接着剤
- 金鋸
- 瞬間接着剤
- 電動ドリル
- ホールソー(木工用でも可)
塩ビ板のカットに使うアクリルカッターと接着剤は必須です。接着剤は塩ビ管用のものは粘度が高くて使い難いので、塩ビ板用のものを購入する方が便利です。また塩ビ板を接着する際には接着剤用の注射器が必要になるので、注射器の同梱されている接着剤を購入するのがオススメです。
円形の穴をあけたりもするので電動ドリルとホールソーも必要になります。ホールソーは木工用のものがかなり安いのでそれを使いましたが、塩ビ板の穴あけに使っても特に問題はありませんでした。
構想と設計
必要な機能・使い方などを考え形状と寸法を決めていきます。今回は引き出し付という性能とフレームレス水槽を利用した濾過槽に落とし込むように設置するという設置法に基づいて設計しました。
自作するときは手書きの設計図を描いて作りましたが、そのままブログの記事にすると分かりにくいので、GoogleのSketchUpというフリーソフトを使用して設計図を描き起こしました。まずは外枠部分の設計図から紹介します。
下から40mmくらいは濾過槽の中に落とし込んで設置するようになっています。ここでは塩ビの角棒をストッパーとして使用しています。次は引き出し部分の設計図です。
前面の板の横幅が少し広くなっているのは、引き出しを引き出したときに濾過槽に落ちてしまわず引っかかるようにするためです。そしてフタの設計図が下の画像です。
描くパーツを組み合わせるとこんな感じになります。実際の使用時のイメージができるでしょうか。
設計時には、塩ビ板の板厚が3mmであることも考慮して寸法を計算します。また、引き出しや濾過槽に落とし込む部分は片側1mmずつ、両側で合わせて2mmのクリアランスを設けています。濾過槽に設置した際のイメージはこんな感じです。
寸法はあくまでも私の環境・要求に合わせたものなので、この通りに作れば完璧・安全というものではありませんので注意して下さい。何かあっても私は責任を取れませんので。
上の画像だけでは分かりにくい! という方はGoogle SketchUpの実寸大モデルデータがありますので、コメントなりメールフォームなりで連絡していただければデータをお渡しします。あとついでに塩ビ板を購入する際にショップに送った塩ビ板のカット図面も貼っておきます。全ての部材のサイズを指定してあるわけではないですが、それぞれの部材サイズの参考になれば幸いです。
ウールボックスの作成
では実際にウールボックスを作っていきます。塩ビ板はアクリルショップ・はざい屋さんで購入した塩ビ板(過去記事:アクリルショップ・はざい屋さんにて塩ビ板を購入!)を使います。
大きな板はサイズを指定してあらかじめカットしておいてもらいました(有料)。カットは自分でもできますが、はざい屋さんにお任せした方が綺麗な切断面を作ってくれるのでお勧めです。カット料金もそんなに高くありません。届いた塩ビ板はこんな感じです。
この塩ビ板を使ってウールボックスを組み立てていきます。まずは仮組をします。
テープを使って2枚の板を引っ張るように固定し、しっかり直角を作ってから注射器を使って接着します。YouTubeのアクリル板接着方法という動画が参考になると思います。3枚以上の板で仮組をした方が安定して直角を作れます。
さっきの状態から少し進み、接着してさらに引き出し(ウールボックスを載せるトレー)を支える部分まで作った状態です。引き出しを支える部分は、水が溜まって引き出し伝いに外に流れてしまわないように穴をあけておきます。また、引き出し部分の重量が全てかかるので三角棒で補強しておきます。
実はこの支えの部分は塩ビ板の注文段階では寸法をちゃんと決めていなかったので、カットを依頼せずに自分でカットしたのですがこのカットが非常に大変でした(塩ビ板のカット方法はこちら → アクリル板カット方法)。カット自体はすぐできますが、断面を平らに仕上げるのがかなり難しいです。紙やすりでずっと磨くのも骨が折れますし、できるだけカットは購入時に依頼しておいた方がいいと思います。
ちょっと写真がとんでしまいますが、ウールボックスの外枠が完成した状態です。底部にはホールソーを使って穴をあけ、引き出し上側のガイドとフタ受け用の四角棒、そして前面の引き出しの上下の板を接着しました。底面の穴はφ40mmとしていますが、流量によってはもう少し大きな穴にするか、穴の数を増やした方がいいかもしれません。
次は引き出し部分を作ります。側面の枠組みを作り、底部の両側にも少し板を接着しておきます。側面の枠組み部分は三角棒で補強して強度を出します。前面にくる部分の板は少し長くしてあり、濾過槽の縁に引っ掛かるので引き出しが濾過槽の中に落ちません。
さらにメッシュボードをさっきの引き出し部分に収まるサイズにカットします。結構かたいですが金鋸を使うと簡単に切れます。
引き出し部分にセットするとこんな感じになります。ウールボックスとして使用するときにはこの上にウールマットを敷きます。一般的にはこの部分はパンチングボードを使うのですが、パンチングボードが高かったのでメッシュボードで代用しています。こちらの方が強度は弱いですが通水性が良いです。
外枠と引き出し部分を合わせるとこんな感じになります。大分それらしい感じになりました。引き出しには四角棒で取っ手をつけておきました。
引き出しを閉めた状態でも、引き出しの奥側とウールボックスの壁の間には約1cmほどの隙間が残るようになっています。これはウールマットが目詰まりして通水しなくなった場合に、後ろの隙間を水が流れることでウールボックスから水があふれてしまうのを防ぐためです。
しかしこのウールボックスは引き出し式なので、引き出しの隙間からも水があふれてしまいます。それを考慮せず、引き出しの手前側の板と奥側の板の高さが同じになってしまっているため、ウールマットが目詰まりした際にはおそらく奥側からだけでなく引き出しの隙間にも水が流れてウールボックスから水があふれてしまうと思います。
もしこのウールボックスを作る場合は奥側の板の高さを少し低く修正してください。または奥側の板に幾つか切り込みを入れ、その切り込みを水が流れるようにすることでも対処できると思います。
さらにウールボックスのフタも作成しました。引き出しと同様フタにも取っ手をつけています。ウールボックスの周囲に濾過槽にひっかけるための四角棒も接着しました。
ここまでくればウールボックスはほとんど完成です。残りの作業はフタに配管パイプを通す穴をあけたり、ウールマットをカットして敷いたりなど実際に濾過システムを構築しながらとなるので次の記事で紹介します。
注意点
ひとつ注意点ですが、ここで作り方を紹介した引出しタイプのウールボックスは、引き出しが濾過槽の最上部よりも高い位置になっています。実際に使用して気づいたのですが、引き出しの底部が濾過槽の上端よりも上だと引き出しを引き出した時に水が濾過槽の外に溢れてしまう可能性があります。
もしこの記事を参考に引き出し式のウールボックスを作る場合は、少し設計を変更して引き出しの底部が濾過槽の上端よりも低くなるようにすることをお勧めします。引き出しの一部分を少し濾過槽に落としこむようなイメージです。
引き出し式ウールボックスの作り方まとめ
今回は60cmフレームレス水槽改造濾過槽用の引き出し式ウールボックスの製作法を紹介しました。参考になったでしょうか? 当ブログを参考にウールボックスを作って何かトラブルが起こりましても、私は責任を負いかねますのでご了承ください。
ちなみに私がこの引き出し式ウールボックスを作る際に参考にしたのは、こちらのトレー引き出し式ウールボックスなんですが、購入するとなると結構な値段です。やはり安く済ませたいのならば自作は有効ですね。
さて、前回の記事と合わせて、これで濾過槽・ウールボックスの制作が終わりました。次はこれらをセッティングし濾過システムを構築します。
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自作オーバーフロー濾過システム!濾過槽のセッティング
オーバーフロー濾過システム自作のため、これまでに自作した濾過槽とウールボックスを設置する方法を紹介します。フタ、ポンプ、ヒーター、チャンバー(分水器)等を追加しオーバーフロー濾過システムが機能するようセッティングします。
濾過槽編・ウールボックス編と続いてきた濾過槽の自作記事も次で最後となります。ぜひこちらも読んでみて下さい。