こんにちはー!アクアリスト&爬虫類飼育者のK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。
今回は、アクアリウムの要とも言えるろ過について解説する連載「ろ過の原理・仕組みと利用方法」の第3回として、「ろ過方式」について解説します。なお、この連載に関連するページは以下の通りとなっているので、ぜひ関連ページもあわせて読んでみてくださいね。
連載「ろ過の原理・仕組みと利用方法」
今回は解説する「ろ過方式」とは、外部フィルターだとか外掛けフィルターだとかいう話ではなく、「ウェット式ろ過」や「ドライ式ろ過」という類の話になります。なお、今回でろ過の仕組み・原理的な部分については一通り抑えることができるため、次回はより実践的な内容に進み、水槽で使用するろ過フィルターについて紹介します。
ろ過方式の種類
ろ過方式は主に以下に示す3つの種類に分けることができます。
ろ過方式の種類
- ウェットろ過
- ドライろ過
- ウェット&ドライろ過
ちなみにここで「ろ過方式」と呼んでいるのは、前回説明した生物濾過を実現するための、具体的な方法を分類したものを指しています。「ウェットろ過」や「ドライろ過」という名前から大体どんな方法か想像がつくかもしれませんが、以下でそれぞれについて詳しく説明していきます。
ウェットろ過
ウェットろ過はその名の通り、ろ材が常に水没しているろ過方式で、市販されているろ過フィルターではこの方式を採用しているものが圧倒的に多いです。例えば、以下に紹介する「エーハイム クラシックフィルター」や「水作エイト」は、アクアリウム用のろ過フィルターを代表すると言っても過言ではないメジャーなろ過フィルターですが、どちらもウェット式を採用しています。
ウェットろ過は構造が簡単で扱いやすい
ウェットろ過は極端に言えば、何らかの容器の中にろ材を沈めて水が流れるようにしておけば、それだけで成立するろ過方式です。そのため、ろ過装置の構造を比較的簡単にすることができます。この特徴によりアクアリウム初心者でも扱いやすいのがウェットろ過の強みの一つです。
ウェットろ過は立ち上がりが早い
ウェットろ過は後述するドライろ過に比べると、ろ材にろ過バクテリアが定着するまでの時間が短いことが知られています。この点もアクアリウム初心者にとっては、ろ過が立ち上がるまでの待ち時間短縮になり嬉しいポイントです。
補足説明
ちなみに、アクアリウムの経験がをある程度ある人は、実はろ過をすぐ立ち上げることが可能です。既に稼働している水槽からろ材と飼育水を分けてもらいそれを使ってろ過フィルターを稼働させると、ゼロから立ち上げるよりも圧倒的に早く安定した水質を作り出すことができます。
ウェットろ過の濾過効率はあまり高くない
前回の記事:生物濾過とバクテリア で、ろ過は主には好気性バクテリアによるアンモニアの分解(硝化)であることを説明しました。少し考えると分かることですが、水中では好気性バクテリアの活動に必要な酸素は当然空気中より少なくなります。その分好気性バクテリアの働きは弱く、濾過の効率は低くなってしまうといわれています。
ドライろ過
ウェット式に対してドライ式ということでお分かりだと思いますが、こちらはろ材が常に空気中に露出しているろ過方式です。空気中に露出している濾材でどうやって濾過するの?と思われるかもしれませんが、ろ材に飼育水を掛け流すイメージで濾過を行います。
ドライろ過は濾過効率が高い
ドライろ過では濾材が水没しないため、常に空気と触れあうことになります。上にも書いたとおり、ろ過とは好気性バクテリアが酸素を利用してアンモニアを分解することですから、酸素を大量に消費できる分ろ過の効率が高くなります。一説には、濾過能力はウェット式の5倍とも言われています。(空気中の酸素濃度水中の5倍だからだそうです…実際はそこまで単純ではないとも思いますが。)
また、飼育水をろ材に掛け流す際に空気と良く触れあうため、アンモニアを硝化する前に気化させて除去できるという話があります。情報が少ないのでK-kiも真偽についてはあまり自身がないところではありますが、これが本当ならかなり大きなメリットと言えるでしょう。
ドライろ過はメンテナンスしやすい
ドライろ過方式では、濾材が水没していないおかげで濾材の間に汚泥がたまりにくいという利点もあります。ウェットろ過では長期間水槽を維持していると徐々にろ材が目詰まりしてきて、そのメンテナンスが割と大変だったりします。ドライろ過でもろ材のメンテナンスが不要になるわけではないですが、ウェットろ過よりも目詰まりが起きにくいため、メンテナンスの手間が省けるというわけです。
ろ過の立ち上がりは遅く市販製品が少ない
逆にデメリットとしては、濾過の立ち上がりが遅いといわれています。また、ドライろ過を利用する市販のろ過フィルターはあまりないので導入しにくいですし、ドライタワーと呼ばれるタイプのフィルターは設備が大掛かりになり比較的広いスペースが必要になります。
特に、アクアリウムの初心者やDIYが苦手な人にとっては、やや手を出しにくいろ過方式といえます。
ウェット&ドライろ過
この濾過方式はウェット式とドライ式を組み合わせたもの、つまり濾材が水没したり空気中に露出したりするろ過方式です。実際にはどんなシステムになるかというと、単純にウェット式とドライ式を併用するタイプと、濾材が入れてある容器の水位が上下し、ある時は水没、ある時は露出となるタイプがあります。後者は、間欠式とも呼ばれたりします。
この濾過方式はウェット式の扱いやすさとドライ式の濾過能力を兼ね備えるため、一部で人気があります。実際ネットで調べても結構な数の例がヒットすると思います。下の動画は間欠式の一例です。
長所は上に書いたように、ウェット式の扱いやすさとドライ式の濾過能力を兼ね備えるところ。ドライ式が立ち上げに時間が掛かっても、その間ウェット式で濾過することができます。なんだかんだウェット式は扱いやすいので重宝しますね。
また、間欠式は市販のウェット式のフィルターを改造して結構簡単に作れたりもするようです。さらに海水では、間欠式は水流を生み出してくれるので、より好まれる傾向にあります。一方で短所は、併用するタイプ(間欠式以外)では、ウェット式ドライ式それぞれの短所を併せ持つことになります。また間欠式では、プラスアルファとして排水時にうるさいとう点も挙げられます。
なお、ウェット&ドライろ過に対応した市販のろ過フィルターとしては、GEXのグランデカスタムなどが挙げられます。
ウェットろ過・ドライろ過の選び方
ここまでの説明では、ドライろ過は濾過能力が高い!ということを説明してきました。この説明を読むと、それならウェットろ過じゃなくてドライろ過を採用した方がいいんじゃないか、と思う人も多いでしょう。しかし、実際はそこまで簡単な話でもありません。
濾過効率が高くても水換え頻度は下げられない
濾過効率が高いということは、つまり、アンモニアの硝化能力が高いということです。簡単に言えば、大量にアンモニアが出てもすぐに害の少ない硝酸塩に分解することができるというだけです。つまり、生成される硝酸塩の量が少なくなるわけではないですから、水換えの頻度を少なくできるわけではありません。
もう少しイメージが伝わりやすいように具体例をあげると、「濾過効率が高い水槽では、生体が水槽内に多数いても、アンモニアによるダメージを受けにくい」と言うことができます。従って、過密な水槽には向いているといえますが、過密水槽では硝酸塩の蓄積スピードがどうしても高くなるため、水換えの頻度は上げなければなりません(還元ろ過もしない過密水槽で水換え頻度が低いのはただの手抜き飼育です。)。
このような背景もあり、個人的には過密飼育自体をあまりお勧めしていません。また、過密水槽の水換え頻度を下げるためにろ過能力を上げようとしても、意味がないということは改めて強調しておきます。
ろ過能力向上は水槽で飼える生体数を増やすだけ
さらに言えば、現状濾過が安定していてアンモニアも亜硝酸も検出されないような水槽について言えば、追加でドライ濾過を適用する意味なんてありません。…というよりも、アンモニアや亜硝酸が検出されない水槽の濾過能力を強化すること自体が無意味なんです(生体を追加したいから濾過能力を強化する、という場合は別です。)。
濾過能力を強化しても水槽内の生体収容数のキャパシティが大きくなるだけで、安定している水槽の換水頻度が下がったり水質が向上したりはしません。またドライ式は、一般家庭にあるような水槽では、その小規模さから効果を十分に発揮できないという情報もあります。
まあ、これが分かっていても新しいシステムを作ってみたくなってしまうときもありますが…笑。それが趣味ってものですね。
ろ過能力は必要十分なラインを狙うのが良い
K-kiの意見をまとめると、ろ過能力は水槽内で飼育している生体数に見合った能力以上に追求する必要はなく、コストパフォーマンスも加味するならば必要十分なラインを狙うのが賢いと思います。以上を踏まえて、このページの結論を以下のようにまとめます。
ろ過方式の選び方
- 基本的には扱いやすく市販品も多いウェット式で十分
- 過密水槽の場合はドライ式やウェット&ドライ式も検討の余地あり
- アンモニアを気化させる効果や、間欠式の水流を期待してシステムに組み込むのはおもしろそう!誰かやってみて結果を教えて!
ややドライ式に対して批判的な内容となってしまいましたが、私は時間的金銭的余裕があれば、アンモニアの気化を狙ってドライ式を取り入れてみるのも面白そうだなと思っています。いつかチャレンジしてみたいですね。
ろ過方式のまとめ
今回は図もなしで長文となってしまいましたが、いかがだったでしょうか。なんだかんだ説明した割に結論は、「普通にしとけば大丈夫」みたいな感じになってしまいましたが…。でも、知っておくと何かで役に立つかもしれませんしね!
さて、連載「ろ過の原理・仕組みと利用方法」、次回はいよいよ濾過フィルターについてです!
-
水槽用ろ過フィルターの選び方と外部・底面など種類別おすすめ製品
熱帯魚、金魚、亀等を飼育するアクアリウムで必要になる水槽用のろ過装置を解説します。外部フィルター、底面フィルター等のろ過フィルター別の長所・短所・適合水槽や、ろ過の原理、ろ過フィルターの種類、ろ材についてもまとめます。
やっと実用的な話になってきています。また次の記事も読んでくださいね!