ろ過システムや濾過フィルターには様々な種類がありますが、ウチの90cm水槽ではダブルサイフォン式のオーバーフロー濾過システムを採用しています。オーバーフロー式濾過を含めた、アクアリウムやカメ飼育に役立つ様々な濾過フィルターについては、以下の記事にまとめているので良かったら読んでみてください。
オーバーフロー濾過には濾過槽が必要になります。以前までは濾過槽には衣装ケースを改造して安上がりに作ったものを使っていましたが、耐久性に不安が残りますし見た目もあまりよくないため、この4月の引越しの際に思い切って新しく良いものを作り直すことにしました。その様子を濾過槽編・ウールボックス編・設置編の3回に分けて紹介していきます。
今回は第1回として、「濾過槽の作成」についての記事になります。ちなみにこの記事の最後にも、ウールボックス編と設置編へのリンクを再度張っておくので、記事を読んで興味を持ってくれた方は、ぜひそちらも読んでみてくださいね!
なお、今回の濾過層自作とは直接的な関係はありませんが、AquaTurtliumにはオーバーフロー水槽の自作方法を特集した連載記事もあります。水槽への穴あけ、塩ビ配管の設計と制作など、オーバーフロー水槽を作る方法を詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひあわせて読んでみてください。
旧濾過槽と問題点
以前まで使っていた濾過槽は、こんな感じの簡素なものでした。
ちょっとこの画像だけでは分かりにくいですが、衣装ケースの中に衣装ケースを入れ、内側の衣装ケースの底をすのこ状にカットして水が循環するようにしています。
模式図を描いてみるとこんな感じですね(ウールボックスは省略してます)。飼育水槽から落ちてきた水は、濾材が入っている内側の衣装ケースを通り、右側の水中ポンプから飼育水槽へと戻ります。
この濾過槽の一番の問題点は濾過槽の耐久性です。衣装ケースがいつひび割れて水漏れするか分からないので、これまで結構ビクビクしていました。まあ実際には室内の使用なら、少なくとも2~3年は大丈夫だと思うんですが、できるなら安全策を取る方が良いに決まっています。
それに内側の衣装ケース(濾材コンテナ)の外では水流がかなり弱く、水面が揺れないので油膜が大量に発生します。また、濾材コンテナ外でポンプがない側(画像だと左側)では、水の循環が悪かったようで藍藻のようなコケが発生していたこともあります。
以上の問題点を改善するため、今回はガラス水槽を利用した3槽式濾過槽を作ることにしました。
60cm規格水槽改造3槽式濾過槽
3槽式濾過槽というのは、図で描くとこんな感じの濾過槽です。
水槽を仕切り板で3つに分け、そこを水が循環するという構造になっています。この構造によって水が移動する距離が長くなり、水と濾材が触れ合う時間も長くなるので、結果として濾過能力が向上します。さらに、水面もある程度動くので油膜もあまり発生しません。濾過槽の製作にあたっては市販の水槽をベースに改造していくため、耐久性についてもこれまでより向上して心配が無くなります。
実は今年のcharmの年始セールで買った60cmオールガラス水槽は、この濾過槽自作のために買ったものだったんです!
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引越しを機に90cm水槽は実家に残しておいて新居で60cm水槽を新たに立ち上げるという案もあったんですが、やっぱり水槽を置いていく気にはなれなかったので60cm水槽は90cm水槽の濾過槽として使うことが決定しました。購入時のお値段は何と1000円です。やっぱり正月セールは偉大ですねえ…。
濾過槽として使用する水槽は、生体を飼育する本水槽よりもワンサイズ小さいものが使われることが多いです。例えば今回のように本水槽が90cmなら濾過槽は60cm、本水槽が60cmなら濾過槽は45cm、といった感じです。
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水槽についてはこちらの記事で色々と紹介しているので、参考にしてください。
濾過槽の寸法の決定
さて、3槽式濾過槽を作るにあたってまずやらなければならないことは、仕切り板の寸法・設置位置決めです。この仕切り板の寸法・設置位置は非常に重要です。
例えば、上に出した模式図の「仕切り板B」の設置場所によりポンプ室の広さが決まります。ポンプ室の容量が小さすぎると、冬場などの水の蒸発が激しい時期にポンプ室の水位がかなりのスピードで下がり、揚水ポンプがエア噛みしてしまう恐れがあります。
逆にポンプ室を大きくしすぎて濾材室を小さくしてしまうと、濾材容量が減りオーバーフローの旨みである高い濾過能力が損なわれてしまいます。また仕切り板Bが高すぎた場合には、ポンプを停止した際に配管や水槽から逆流した水で、濾過槽が溢れる可能性もあります。
さらに、ウチの水槽はダブルサイフォン式オーバーフローなので、通常のオーバーフローよりも水位に関しては敏感な部分があります。ダブルサイフォン式オーバーフローについてはググればいろいろな情報が見つかるので、興味のある方は調べてみてください。機会があれば当ブログでも紹介するかも…?
このように様々な要素が絡み合う仕切り板の位置と寸法は、主に経験によって決められます。頑張れば計算してベストな位置を決めることもできるかもしれませんが、それはそれでかなり難しい問題でしょう。…ということで、こういう時は偉大な先輩方のデータを頼りにさせて頂きます。
今回私は「海水魚飼育を始めよう」様の、60cm規格水槽を使った濾過槽の作成について書かれたページを参考にさせて頂きました。
参考自作の濾過槽を作成(元サイトの削除によりリンク切れ)
このページでは60cm水槽を改造して3槽式濾過槽を作成する場合の具体的な寸法が紹介されています。それを参考に自分の環境にあった調整も加えて、私は各寸法を次のように決定しました。
水槽は60cm規格水槽ですので、(横幅)60cm×(奥行き)30cm×(高さ)36cm、ガラス板厚は5mm、仕切りの塩ビ板も厚さ5mmです。もしもこの寸法を参考に濾過槽を作られて何か問題があったとしても、私はその責任を負えませんので、自作される場合はその点はご了承ください。先ほど紹介したサイトよりもややポンプ室を広く取ることで、水位変化に敏感なダブルサイフォン式オーバーフローへの対応としました。
ポンプの選定
今回私は揚水ポンプとして、エーハイムコンパクトポンプ2000を使用することにしました。このポンプは流量の調整が可能で、1時間あたり1000~2000リットルの水を吐出することができます。
2020年現在では、エーハイム コンパクトポンプ2000はほぼ販売されていません。後継商品としてエーハイム コンパクトオン 2100が販売されています。
アクアリウムにおけるろ過フィルターの流量は、基本的に水槽全体の水が1時間に何回ろ過装置を通るか、つまり、濾過の回転数=流量 [L/h]÷水槽全体の水量 [L]がいくらになるか、という観点から決められます。生物濾過を行うバクテリアの硝化能力から考えると、水量と濾材のバランスにもよりますが、1時間に1~2回転程度が適切とされています。
しかしそこまで流量が少ないと、水槽の中に水の流れがない「淀み」ができてしまったり、汚れた水がろ過されるまでに時間が掛かりすぎたりするということで、一般的には5~10回転程度、特に7回転あたりが目安とされています。
今回のオーバーフロー水槽だと、亀の飼育に使うので本水槽は大体半分程度の水位にして100リットル、濾過槽で50リットル程度なので水槽全体の水量は150リットル程度になります。7回転を目指すとすれば、必要な流量は1050 [L/h]ですね。
エーハイムコンパクトポンプ2000の最大流量は2000 [L/h]ですが、濾過槽から本水槽へ70cmくらい汲み上げるので、もう少し流量は少なくなると想定します。しかしそれでも1050リットル程度の流量は維持できそうですし、流量調整機能で流量を絞ることも出来るのでこのポンプを使用することにしました。
なおエーハイムコンパクトポンプも含め、水槽用のポンプは、東日本用の50Hz対応のものと西日本用の60Hz対応のものに分かれていることが良くあります。購入する際には自分の居住地の電源周波数に合った商品を選んでくださいね。
濾過槽作成(仕切り板の接着)
それでは実際に濾過槽を作っていきます。まずは仕切り板の接着です。
アクリルショップ・はざい屋さんで購入した塩ビ板(過去記事:アクリルショップ・はざい屋さんにて塩ビ板を購入!)を、先ほど決めた通りの場所にセットします。国語辞典は高さ調整用にかましているだけです(笑)。
塩ビ板をセットしたら、次にマスキングテープを使ってマスキングをします。マスキングをしないと接着剤が広がってとても汚くなってしまうので注意です。
仕切り板は塩ビ板ではなくアクリル板を使ってもよいですが、どうせあんまり見えないところなので安い塩ビ板を使います。カットは自分でもできますが、私は極力購入店舗(はざい屋さん)にお任せするのが良いと思っています。厚い板になってくると、工具もない素人には平らな切断面を作ることはなかなか難しいです。カット料金は安い割に精度はかなり高いので、個人的にはお勧めです。
接着には水槽用のバスコークを使います。
防カビ剤が入っていないところがポイントですね。マスキングテープがセットになっているところも嬉しいです。接着にはシリコンシーラント等が使えると思いますが、プライマーが必要だったり、水槽にはあまり適さないヤツもあったりでどれを使うか決めるのが難しかったため、結局よく使われているバスコークを使用することにしました。
接着する箇所の角にバスコークを十分に塗り、コーキングへらを使って均します。
コーキングへらは100円均一ショップのもので十分ですね。私は近所のダイソーで購入しました。
バスコークが乾いてしまう前にマスキングテープをはがし、その後丸一日程度バスコークの乾燥を待って仕切り板の接着は完了です!
ここで紹介した手順は、YouTubeの水槽の作り方という動画シリーズを参考にしています。特にマスキング編とコーキング編が役に立つと思いますので、ぜひ一度ご覧ください。
とりあえず一番目を引くコーキング(接着)編の動画を貼っておきます。実際の作業がイメージしやすいので、もし濾過槽の自作を考えている方は見てみると面白いですよ。
濾過槽作成(すのこの自作)
さて、ここまでで既に濾過槽はほぼ完成していますが、もう一つ必要な作業がすのこ作りです。「すのこ?」と思う方も多いかもしれませんが、濾過槽にはこのすのこがが必要なんです。
上の3槽式濾過槽の説明図を見てもらうと、一番左の区画と真ん中の区画に濾材が入っていますよね。でも実際に図の通りに水が流れると、左区画の濾材は流されて中央区画に集まってしまいます。そうすると水も流れにくくなって淀みもできやすいのですのこを敷くわけです。
そしてすのこを敷いた状態を表した図がこちらです。
すのこがあることによって、濾材が流されるのを防げることが分かると思います。このすのこは、ホームセンター等でそれっぽいものを買ってきてもいいんですが、せっかくですしそこら辺にあるもので(安上がりに)作っちゃいましょう。
材料はこちら。
鉢底ネットと、
100均とかで売ってる猫よけマット、これだけです。
これをちょうど良い大きさにカットして、猫よけマットの上に鉢底ネットを載せます。
完成です!
鉢底ネットが動かないように、結束バンドなどで猫よけマットと固定しておく方がいいと思います。これを上のイラストに示した場所に置くだけ!これで濾過槽は完成です。
濾過槽の自作まとめ
今回は60cm水槽を改造して3槽式濾過槽を製作する方法を紹介しました。お役にたったでしょうか? この方法なら費用はほぼ水槽・仕切り板・バスコーク代のみです。何万円もする高い濾過槽を買わなくて済むのは大きいですね!
今回の記事で分かるように、アクアリウム用品の中には、購入すると高価でも、自作すると安価になるものが実はたくさんあります。DIYに興味がある人は、ぜひともアクアリウム用品の自作に挑戦して欲しいです。なにか面白いものを作ったら、ぜひK-kiにも教えてください!
さて、今回自作した濾過槽だけだと、飼育水槽から出た餌の食べ残しや大型魚の糞などの大きなゴミが全て濾過槽に溜まってしまいます。そこで次は、大きなゴミを濾し取ってくれるウールボックスの作りましょう。
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自作オーバーフロー濾過システム!引き出し式ウールボックス
前回の濾過槽の自作に引き続き、ウールボックスの自作方法を解説します。ウールボックスは物理濾過によって水が汚れるのを防ぐオーバーフロー濾過システムでも重要なものです。メンテナンス性向上のため引き出しタイプを自作しました。
上の記事で自作しているウールボックスは普通のモノよりちょっと凝った作りになってます。普通のウールボックスよりもメンテナンスの手間がかからないようになっているので、ぜひ真似してみてくださいね!
ウールボックスの作成には興味が無いけど、ここで作った濾過槽がどのように使われるのかが気になるという方は、下の記事から濾過槽の設置の様子をご覧ください。
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自作オーバーフロー濾過システム!濾過槽のセッティング
オーバーフロー濾過システム自作のため、これまでに自作した濾過槽とウールボックスを設置する方法を紹介します。フタ、ポンプ、ヒーター、チャンバー(分水器)等を追加しオーバーフロー濾過システムが機能するようセッティングします。
他にも濾過槽設置後の掃除方法や、アクアリウム用品の自作についてまとめたページもあります。興味のある人はこれらのページものぞいてみてくださいね。
では、また次の記事で会いましょう!