少し前に、宇宙で繁殖実験中のヤモリが実験衛生のトラブルで帰還の危機に陥っている、というニュースを紹介しました。今回はこのニュースの続報です。
前回のニュースはヤモリを乗せた衛星が制御不能になったというものでしたが、その後通信が回復し軌道への投入に成功していました。しかし、結局のところ残念な結果になってしまったというのが結論です。ロシアは宇宙分野では世界の先端にいるはずですが、ちょっと雑な印象を受けますね…。
繁殖実験用の宇宙ヤモリが全て凍死
- "宇宙に送られた生殖実験用ヤモリ、全て凍死 ロシア宇宙局"
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引用元
- 抜粋
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【9月2日 AFP】ロシア連邦宇宙局(Roskosmos、ロスコスモス)は1日、無重力が生物の生殖に及ぼす影響を調べるため、約1か月半前に宇宙へ送ったヤモリ5匹がすべて死んだと発表した。
ヤモリなど様々な生物を乗せて7月中旬に打ち上げられた研究用衛星「フォトンM4(Foton-M4)」は約1か月半、地球周回軌道を回った後、予定通り1日に地球に帰還した。しかし、ロスコスモスが生物を回収したところ、ヤモリは全て死んでいたという。
ロシアのインタファクス(Interfax)通信は、実験に携わった専門家の談話として「予備データから、ヤモリたちの死因は暖房システムの故障による凍死と判明した」と伝えた。一方、ヤモリらとともに宇宙に送られたミバエは生存しており、繁殖にも成功したという。
<-後略->
今回の研究用衛星「フォトンM4」は、軌道投入前にデブリか何かに衝突して通信が途絶してしまい、それがニュースになって世間をにぎわせていました(一部の人の間で話題だっただけかもしれませんが)。その後通信が回復して研究が上手くいきそう!となったところまでは良かったんですが、フタを開けてみれば結局ヤモリは死んでしまいました。
原因は暖房システムの故障とのことで、ちょっとお粗末な感じですね…。人工衛星は一度宇宙に打ち上げてしまうと修理もできないため、難しいものではあるんですが、今回の実験では研究対象を生かしておくことが重要だったはずなのに暖房システムの故障というのはいただけませんね。
航空宇宙工学を専門とする人間としても、一人の爬虫類ファンとしても単純に残念です。
なんでヤモリが実験対象?
ちなみにこの実験でなんでヤモリが使われているのだろう…?という疑問もあると思いますが、面白い記事を見つけたので紹介しておきます。
http://www.gizmodo.jp/2014/08/post_15212.html
どうやらロシアでは去年も同様の実験が行われていて、その時に生き残ったのがヤモリとカタツムリだけだったから、今度もヤモリを使ってみたということみたいです。うーん前も死なせてるんですね。その時の原因は分かりませんがやっぱりどうもやってることの雑さを感じます。まあ、ロシアらしいと言えるのかもしれませんが…。
ミバエの成功には価値がある
ヤモリは死んでしまうという残念な結果でしたが、同乗していたミバエ(ハエの1種)は無事生還し繁殖にも成功したようです。ハエは生きていられたということは暖房装置が故障しても多少の保温能力は持たせてあったということなんでしょうか。
生き残って繁殖にも成功したミバエについては、成果が得られたと言えますね。そもそも宇宙での繁殖の成功例は、当然ですがそれほど多くありません。今までに成功した宇宙での繁殖の例としては、ロシアで2007年にゴキブリで成功、また1994年には日本人宇宙飛行士の向井千秋さんが宇宙に連れて行ったメダカなどの例があります。
メダカでは泳ぎなどに宇宙滞在の影響が見られたものの、子どもには影響が見られないということでした。ミバエでどのような結果になるか楽しみですね。