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余った水草を水上化!水上葉でお手軽ストック&簡単増殖!?

2014/06/24

水草の水上葉を水上栽培

水草水槽が順調に維持できているときには、水草がもの凄い勢いで伸びてきますよね。そんな時はトリミングをして水草の長さを調節すると思いますが、そのときに出た水草の余りをあなたはどうしていますか。思い切り良く捨てちゃうタイプですか?それとも捨てられず何かに使おうと思って持て余すタイプ?

私は完全に捨てられなくてもて余す方のタイプで、いつもトリミング後の水草をどうするか頭を悩ませています。量が少なければ差し戻して密度を増すこともできますが、量が多くなってくるとそれにも限界があります。かといって次のレイアウトで使いたくなるかもしれないし、捨てるのももったいないですよね。

今回はそんなときに役立つ方法の1つである、水草を水上葉へと水上化する方法を紹介します。

水草の水上栽培とは

今回紹介する内容は、水草の水上栽培に関するものです。水上栽培とはその名の通り、水草を水中ではなく水上で育てることですが、それを可能とするには水草を水上葉と呼ばれる通常とは違う姿に変化させる必要があります。まずは水上葉とはなにかという点から書いていきます。

水上葉って何?

この記事は「水上葉でお手軽ストック」と銘打っていますが、そもそも水上葉とはなんでしょうか。まずはその点について説明します。

アクアリウムで利用されている水草は、ほとんどの種類は水中だけでなく水上でも生きていくことができます。というよりも、ほとんどの水草は水上だけでなく水中でも生きていける種類の植物であると言ったほうが正確でしょうか。

さらにそういった植物は、環境に応じて形態を変化させることにより環境に適応します。つまり水上葉というのは、水草が水上で生きていけるように適応した姿いうわけです。水上用は水中で管理しているときの姿とは大きく異なることも多く、花を咲かせたりすることもあります。

ちなみに普段水槽の中で見るような姿のことは水中葉と言います。植物は水中葉や水上葉といった異なる形態に、環境に応じて変化することにより生き延びているのです。

水上栽培のメリット

では水上栽培することにはどんなメリットがあるのでしょうか。

まず、植物にとっては水中よりも水上の方が生きやすい環境なので、水中で育てるよりも成長速度が速くなり増やしやすいという点があります。少量しかない水草も水上栽培で大量に増やすことができれば、それを再び水中に戻しレイアウトの完成を早めることも可能です。

また、水中で育てるより管理が楽という点も重要です。水槽の中で育てると様々なコケに悩まされますが、水上栽培だとそんな心配はありません。ただし虫がつくことがあるのでそれには注意する必要があります。

そして最後に、いつもとは違った姿を見られる・ちょっと変わった植物として育てられるという点があります。水槽の中とは違う姿を見せてくれる水草を育てるのはそれだけで楽しいものです。また水草は根腐れに強いので、丈夫な観葉植物という感覚で育てるのも良いでしょう。

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水草を水上葉へと水上化させる!

水草の水上葉・水上化・水上栽培というものがどんなものか、そのメリットは何かということが理解できたところで、実際に水草を水上葉へと変化させ、水上栽培を行う方法を説明します。

用意するもの

  • 使い古しのソイルまたは赤玉土
  • 水をためることのできるプランターなど(発泡スチロール箱などで可)
  • 水草(トリミングなどのあまりでOK)
  • 液体肥料(なくても良い)

簡単に言ってしまうと、土と器と水草があれば水上栽培を行うことができます。つまりそんなに難しいことではありません。水草を水上葉へと水上化することなんて誰にでも出来ます!

用意するものそれぞれについて簡単に説明していきます。

用土

赤玉土

一番安いのは赤玉土です。赤玉土は養分のほとんどない土ですが、水やり時に水槽の換水時の排水を使ったり、液体肥料をほんの少し足したりすれば養分は十分に足ります。水槽では底床が泥のようになると色々な害が発生しますが、水上栽培で水草を植えているだけなら特に問題はないので、使い古しのソイルやビオトープ用土なども適しています。一方で砂利や雑貨屋などにある透明のゼリーみたいなものでは、水草はあまり成長してくれない傾向にあります。

容器

水草を水上化する際にある程度水を貯める必要があります。逆に言えば水がたまる容器なら何でもいいです。小さい容器よりも大きな容器のほうが水分を保ちやすいので簡単に水上化できるでしょう。

ガラスの器にソイルを盛って水草の水上葉を美しく育てるのは良さそうに思えますが、土の中にコケが生えてあまり見栄えが良くなくなる場合があるので陶器をおすすめします。陶器を使うと和の雰囲気がでてきて、それはそれで風情がありますよ。

水草

基本的にはトリミング時に余った水草のようなもので構いません。水草に根がなくても水上葉へと変化する過程で生えてくるので大丈夫です。茎だけよりは茎も葉もある状態のほうがよいと思います。

ただし、いくつか水上化に向かない種類の水草も存在するので注意します。バリスネリア・マツモ・アナカリスといった沈水植物に分類されるタイプの水草は水上化させることができません。また、ミクロソリウム・アヌビアスのような水上葉と水中葉にほとんど差がない水草は、水上化自体は簡単ですが、かなりの高湿度を保たなければ葉が乾燥して枯れてしまうためこの記事で紹介している方法では上手くいかないと思います。これらの場合は、土を入れた容器に水草を植え、土がひたひたになる程度まで水を入れてラップなどでフタをし、日に数度霧吹きで湿度を保てば水上栽培ができると思います。

手順

前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ水上化の手順の説明に入っていきます。

発泡スチロール箱に赤玉土を入れる

まずは容器に土を入れていきます。この時土を満タンまで入れてしまわないように気をつけます。水位はフチから5cm程度は低いところまでにしておくと良いと思います。

ちなみに私は土は赤玉土、容器は発泡スチロールという安さ最重視の組み合わせにしました。

水槽の排水を使う

次に水を用意します。私は水槽の換水時に出た排水を使うことにしました。節約とほんの少しの養分を期待しているだけで、水道水で特に問題はありません。

容器に水を張る

用意した水を先ほど土を入れた容器に注ぎます。水深3cmくらいまで入れれば良いでしょう。当然水が濁るので、濁りが収まるまで待ちます。

水の濁りが収まるまで待つ

何時間か経過して水の濁りがおさまりました。

水草を植える

次は水草を植えていきます。植物はすぐには新しい環境に適応できないので、この時水中葉が水上に出ているとその部分は枯れてしまいます。そこで水草全体が水中に沈むようにします。

奥に見えている細長い植物は水につかっていませんが、これは抽水植物(根元が水につかった環境で育つ植物)のピグミーアコルスで水草ではありません。ピグミーアコルスが手元に余っていて、水草の水上葉と同じような環境でそだつので一緒に植えただけです。

この後は水の蒸発に合わせて足し水をしながらも、2週間程度で水位がほぼ土と同じ高さになるように水を減らしていきます。徐々に水位が下がっていくのに対して植物が適応し、水中葉から水上葉へと変化するのです。

管理のポイント

水上化してからも普通の植物に比べて水を多めにやっておく方が良い気がします。私は土の表面が水に隠れるかどうかの状態をキープしています。

また、あまり直射日光に当てすぎないようにもしています。日差しが強すぎると葉から枯れてきてしまうことがよくある気がしたためです。私は朝方に少し日差しが当たる程度の場所に置くようにしています。

赤玉土のように肥料分に乏しい土を使った場合は、月に1度程度園芸用の液体肥料を規定量かそれよりも少なめに与えるとよいと思います。ソイルを使っている場合でも徐々に栄養分がなくなっていくので、たまに肥料を加えてあげると良いでしょう。

ただし、寒くなってくる秋~冬にかけては、水上栽培にとって難しい季節になります。 普通にしていると枯れてしまうので、大事な水草であれば何かしらの対処が必要です。

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上の記事で水上葉の冬場の管理・活用の方法を説明しているので、良ければ参考にしてください。

そして1年後…

ここまで紹介してきた水草の水上化の様子は、実は1年前のことでした…! 20cmキューブ水槽を立ち上げたときに、余った水草を捨てるのがもったいなかったので有効活用しようと思ったのが発端です。ずっと記事にしようと思って後回しにしてきた結果こんなに時間が経ってしまいました…。

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しかし1年という時間の経過により、水上葉がしっかり生い茂るようになりました。1年後の様子はこちら。

1年かけて繁茂した水草の水上葉

亀水槽のレイアウトに使おうと思ってアコルスの仲間を買ったものの、少しイメージに合わずこっち植えているのでアコルスが結構増えたように見えます。

グリーンロタラやロトンジフォリア、グロッソスティグマやショートヘアーグラスなどが植えてある
水上栽培している水草の様子

グリーンロタラやロタラ・ロトンジフォリアはかなり増えています。花を咲かせているのもありますね。他にもグロッソスティグマやショートヘアーグラスの水上葉なんかも少しあります。

発泡容器で水上栽培している水草の全体像

1年も経っているわりには密度が低いですが、実は冬に管理をさぼった結果1度すべて枯れさせてしまったんです。それでも春になって水をやってみたところ勝手に芽がでてきてここまで増えました。つまりこの程度の密度なら、上で紹介したような状態からでも2~3ヵ月で到達することができます。

また、最近20cmキューブをリセットしたのですが、その時にでたショートヘアーグラスの余りでもう一つ水上葉用の発砲スチロール鉢を作ってみました。

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以前の発泡スチロール鉢では、ロタラに飲み込まれてショートヘアーグラスはあまり増えてくれなかったので、今回新しい鉢をもう一つ作りました。それがこちらです。

ショートヘアーグラスの水上化・水上栽培
ショートヘアーグラス水上栽培(拡大)
ショートヘアーグラスの水上栽培(超拡大)

こちらも既に水上化は完了し、あとは増えていくのを見守りながら水やりをするくらいです。

水草の水上栽培まとめ

今回は余った水草を有効活用できる水草の水上化の方法について紹介しました。こうやってキープしておけば、レイアウトを変更しようと思った時に買いなおす水草をグッと減らすことができます。

また、育成が難しい水草も水上でなら簡単に育てられる場合もあるので、貴重な水草のキープにも役立ちます。ヘアーグラスなど人気の水草であれば、水上で大量に増やしてヤフオクなどで売るとちょっとしたお小遣い稼ぎができるかもしれませんね。

水草を水上化させて水上葉で水上栽培する方法

ウチの水上用育成も、まだまだ発展途上です。これからも変化があれば報告していくので、ぜひまたのぞいてくださいね。

今回は発泡スチロールの容器でとにかく大量に水上葉をストックする方法を中心に紹介しましたが、これとはちょっと違うアプローチで、見た目にも綺麗なインテリアとして水草の水上葉を育てる方法もあります。

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こちらの記事では、ADAが販売している佗び草と同じようなものを、自分で作ってしまう方法を紹介しています。水上葉の可能性の一つとして、面白いものができると思いますよ!

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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