レッドファントムテトラは水槽内での群泳に向いている熱帯魚で、透明な赤い体色と黒いスポットが水草によく映えます。
今回は、水草水槽にぴったりのレッドファントムテトラについて、飼育環境や特徴、繁殖方法などを紹介していきます。
レッドファントムテトラとは
和名・流通名 | レッドファントムテトラ |
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学名 | Hyphessobrycon sweglesi |
英名 | Red Phantom Tetra |
分類 | カラシン目カラシン科ハイフェソブリコン属 |
原産地 | コロンビア、ベネズエラ オリノコ川の上~中流域 |
飼い易さ | ★★★★☆ |
値段(1匹) | 150円程度~ |
最大体長 | 4cm程度 |
寿命 | 3~5年 |
遊泳層 | 中層 |
生息環境 | 小さな川の支流や森林河川、三日月湖などの流れの緩やかな場所、水草の生い茂った場所 |
適合する水質 | 水温:20~28℃ pH:4.5~7.5 |
特徴 | 透明な赤の体色に、大きな黒いスポットが入る。体色には地域変異も見られ、赤みの強い個体は「ルブラ」などの名称で流通する。 |
レッドファントムテトラはカラシン目カラシン科ハイフェソブリコン属に分類される熱帯魚で、ブラックファントムテトラと近縁の種類です。また、レッドファントムテトラやブラックファントムテトラほど有名ではありませんが、イエローファントムテトラという近縁種もいます。
形態
体長は最大4cmほどで、透明な赤の体色に、大きな黒いスポットが入ります。原産地や、養殖個体、ワイルド個体などの違いに応じて多少色味に差があり、養殖個体では赤みが薄くなる傾向があります。通常は、ややオレンジ寄りの赤色の体色をした個体が多いです。
若い個体では、背ビレに黒と黄色の斑紋が見られますが、成長に伴い背びれが伸長するにつれ、斑紋も目立たなくなります。
品種
レッドファントムテトラの中には、体色の赤みが特に強いワイルド(野生採取)の個体群が存在し、「レッドファントムテトラ・ルブラ」や「レッドファントムテトラ・リオメタ」という名称で販売されています。ワイルド個体であることと色彩の鮮やかさ、そして希少性から一般的なレッドファントムテトラよりも高値で販売されます。
ただし、レッドファントムテトラ・ルブラに関しては、赤みの強い個体をそう読んでいるだけでレッドファントムテトラとの違いは明確に定義されていません。リオメタについても、「リオ・メタ/Rio Meta = メタ川」という川で採取された個体という以上の意味はありません。
実際のところ、これらの赤みが強い個体群については、生息地の水質や環境の影響を受けているだけで、レッドファントムテトラと同種であると考えられています。これらの個体が通常のレッドファントムテトラと同種であることを確認した研究報告(Zarske, A.(2014) / Zur Systematik einiger Blutsalmler oder “Rosy Tetras” (Teleostei: Ostariophysi: Characidae))もあります。
体色の美しい熱帯魚を追い求めたくなる気持ちはわからなくもありませんが、流通側に躍らされるのは避けたいですね。また、ルブラにしろリオメタにしろ、野生採取であるため原産地での個体数減少に少なからず影響を与えているという点も考慮してください。レッドファントムテトラは成長するにつれ体色も鮮やかになっていくので、美しい体色になるようにしっかり飼い込むのも楽しみ方の一つです。
レッドファントムテトラとよく似た近縁種でより赤くなる「クリスタルレッドテトラ」という熱帯魚もいるので、赤みの強い熱帯魚を飼いたい場合にはこちらを選ぶのも一つの方法です。
生態
レッドファントムテトラは、同種で群れる性質を持ちます。そのため、単独で飼育すると神経質になりやすい傾向にあります。最低でも5匹以上で群泳させるのが好ましいです。
比較的おとなしく、同種間の小競り合いは多少あるものの、他種に攻撃することはほとんどありません。
オス・メスの見分け方
成熟したオスはメスと比べ、背びれと尾びれが大きくなります。また、繁殖期にはオスはひれと体が赤く染まり、メスよりも派手な色合いになるのが特徴です。
また、幼魚のときには背びれに斑紋がありますが、オスは背びれの伸長に伴って斑紋が消えていきます。
レッドファントムテトラの分布・生息地・生息環境
レッドファントムテトラの原産地は南米で、ベネズエラおよびコロンビアに流れるオリノコ川の上~中流域に分布しています。原産地では、小さな川の支流や森林河川、三日月湖などの流れの緩やかな場所、水草の生い茂った場所を好んで生息しています。水質は弱酸性を好みます。
レッドファントムテトラの飼育方法
レッドファントムテトラは比較的飼いやすい種類です。しかし、白点病にかかりやすい熱帯魚でもあります。
飼い方
水質には極端に敏感な種類ではないため、飼育自体は簡単な部類に入ります。そのため、ろ過フィルターがうまく機能していれば問題なく飼育できます。
しかし、水温の変化には弱く、白点病にかかりやすいという弱点があります。そのため、特に導入時にはまず、白点病がないかを入念にチェックし、必要に応じてトリートメントも行ってください。その上で、しっかりとした水合わせをして水槽に導入するようにしましょう。
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もし、導入時に白点病が見つかった場合はすぐに別水槽へ隔離し、白点病治療薬などを使用し、水槽の温度を上げて治療してください。白点病は、一度感染してしまうと感染力が強く、他の熱帯魚にもすぐに感染してしまいます。また、導入後も水温の急な変化が起こると白点病を発症しやすいので、特に水温は慎重に管理してください。冬場のヒーターだけでなく、夏場のクーラーによる冷却も非常に重要です。
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また、神経質な面も持ち合わせているので、同種の5匹以上での群泳をさせるようにし、水草を植えるなどして身を隠す場所を作ってください。そうすることでストレスが減り、状態良く飼育できます。
水質
弱酸性~中性(pH6.0~7.5)で、弱酸性よりの軟水で育てると、一層赤色が際立ち色味がキレイになる傾向にあります。水温は20℃から28℃程度が適切とされていますが、急な水温の変化には気をつけてください。
エサ
人工飼料や赤虫など、何でもよく食べます。小さい種類で中層を泳ぐ熱帯魚ですので、人工飼料は口の大きさに合わせた、小さな顆粒タイプ・浮遊性のものが好ましいでしょう。
混泳
レッドファントムテトラは比較的おとなしい性格で同種以外での小競り合いはあまりないので、温和で、レッドファントムテトラが食べられてしまわない程度の大きさの口をしている小型の熱帯魚と混泳できます。タンクメイトとして利用される代表的な熱帯魚としては、グッピーやネオンテトラ、コリドラス、オトシンクルス、ラスボラなどが挙げられます。
アクアリウム水槽での役割
透明で綺麗な赤色の体色をしているため、鮮やかな緑色の水草とよく合います。水草をバックに群泳する姿には目を惹くものがありますね。価格も、養殖個体であれば比較的安価で購入でき、温和な性格から他種との混泳も難しくなくいので、混泳水槽に追加する場合も導入しやすいです。
レッドファントムテトラの繁殖方法
繁殖はやや難易度が高く、特にワイルド個体では難しいです。原産地の環境に限りなく近づけることが繁殖への鍵となります。
産卵までの準備
底床はソイルを使用し、流木にミクロソリウムを活着させたものを入れます。ウィローモスなどの水草もたくさん入れるほうが良いでしょう。この時の水質は必ず、弱酸性の軟水にしてください。
pHを6.0付近まで落とす事が好ましいですが、この時、pHショックを起こす可能性があるので、水槽の様子を見ながら慎重に落としていってください。
稚魚の育て方
産卵したら、換水のペースを早めますが水を換える量は10分の1程度にしてください。換水するペースは3日に1回くらいのペースで換えていきます。水換えの基礎ではありますが、水質変化を極力抑えるために、換水する水はカルキを抜き、ヒーターを使用して水槽内の飼育水と同じ温度にしてください。
産卵したら、卵を触らないように、水草ごと産卵ケースへ移します。卵が正常な状態で保たれれば、48時間以内に孵化します。孵化後の稚魚は数日間ヨークサックで成長します。その後は人工プランクトンやブラインシュリンプなどの餌を中心に与えます。
魅力・おすすめポイント
レッドファントムテトラは、ビビットな赤ではなく、透明感のある非常に上品な体色をしています。そのため水槽内で主張しすぎることもなく、水草をメインに据えた水槽に適度な彩りを与えてくれる熱帯魚だと言えます。
また、原産地や、飼育環境によって、多少の色味の個体差があるところも楽しいです。レッドファントムテトラは成長するにつれ体色も鮮やかになっていくので、美しい体色になるようにしっかり飼い込むのも楽しみ方の一つですね。ルブラなどの赤みの強い個体群がもてはやされますが、それに負けない色合いの個体を育て上げるような楽しみ方をしてほしいと思います。