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イベリアトゲイモリ型のロボット「Pleurobot」と生物模倣ロボットの話

2015/03/18

最近のロボットに関する研究開発の一つの方針として、実在する生物の運動を参考にするというものがあります。実在する生物の体の構造や手足・尻尾・羽などの動かし方を参考にすることで、より幅広い状況に対応できるようなロボットを作り出すことができる可能性がある、というのが一つの動機となっています。

これまでにも動物をベースにしたロボットは数多く開発されてきました。例えばアメリカ国防総省の研究機関とハーバード大学が共同で開発した「BigDog」なんかが有名ですね。日本でももう10年くらい前になりますが、ソニーが「AIBO」というロボット犬を販売していたこともありますね。

こんな感じの前振りから今回紹介するのは、スイスで開発された生物ベースのロボット「Pleurobot」です。このロボットはなんとイモリをベースにしています。両爬ファンには中々気になるロボットです。

イベリアトゲイモリベースの「Pleurobot」

Pleurobotは、Auke Jan Ijspeert氏が教授を務めておられる、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のBiorobotics Laboratoryという研究室で開発されました。YouTubeにも動画が幾つか投稿されているので、その動画を紹介しておきます。

両爬好きならずとも、そのリアルな動きにはびっくりしてしまうでしょう。これだけリアルな動きを再現出来た理由は、イベリアトゲイモリ(pleurodeles waltl)の動きをX線撮影し、その動画から骨格の動きを3次元運動データとして読み取りトレースしているからです。

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生物をベースにしたロボット作りの大変さ

実は私は以前、この手の生物の動きをベースにした工学分野の研究を行っていたことがあります。だからこそ分かるんですが、この手のデータを取るのは非常に骨が折れる仕事です。

まず生き物相手なので思い通りの動きをしてくれません。活性の低いイモリやサンショウウオのことなので、歩いて欲しいと思ってもきっと全然歩いてくれなかった頃でしょう。だからといってイモリをつついて歩かせても、正常な補講にはならないのでまともなデータは取れません。非常に根気がいるんです。

そして補講の動画が取れたとしても、解像度などの問題もあり中々満足の行くデータは取れません。そのため複数回のデータを取り、それを上手く補正したりしてやっとそれなりのデータとなります。少しはその大変さが伝わったでしょうか。

このような苦労の甲斐もあり、こちらの動画にも見られるようなリアルな動きが可能になっているんですね。もちろん動きのデータを取るだけでなくそこから実物のロボットに再現するのもとても大変です。Pleurobotのボディでは、イベリアトゲイモリの運動を再現するのに最適な関節の数や配置となるような工夫が施されています。本当にこのロボットは素晴らしい研究成果だと思います。

「Pleurobot」の前身「Salamandra robotica II」

このレベルのロボットになるともちろん急にポンっと作れるものではなくて、その土台となっている様々な研究が存在します。例えば「Salamandra robotica」と「Salamandra robotica II」が、このPleurobotの前身とも言えるロボットです。

Pleurobotが素晴らしくリアルに有尾類の歩行運動を再現しているのに対し、Salamandra robotica IIの歩行はどこかぎこちないです(というか関節なども正確には再現されていません)。しかしこのSalamandra robotica IIは、泳ぐ事もできるんです。

泳ぎの様子を見てみると、本当にリアルな動きをしていることが分かります。サイズ感のせいか、ちょっとウミイグアナのようにも見えますね。

恐らく性能的にはPleurobotも泳ぐことができるのですが、こちらは防水仕様ではないようです。Pleurobotの研究計画では、防水かつ柔軟性の高い皮膚の開発が予定されているので、今後が楽しみですね。

「Pleurobot」の目的と展望

イモリ型の使い道はパッとは思いつかないかもしれませんが、Pleurobotは以下の様な目的の下で研究されています。将来的には様々な役に立ってくれるのかもしれません。

研究用のハードウェア・プラットフォーム

Pleurobotの一つの目的は、神経科学者・古生物学者・生態学者などの研究用のプラットフォームとなることです。このロボットをベースに、脊椎動物の神経系の働きなどが明らかにされることを目指しています。工学分野の成果が他の学術分野で活かされるというのは、エンジニアにとってとても嬉しいことですね。

捜索・救助ロボットへの応用

学術目的だけでなく、実用的な捜索・救助ロボットへの応用も視野に入っています。Pleurobotのような四足歩行のロボットは、車輪を利用したロボットよりも悪路の踏破性に優れているので、災害救助ロボットでは注目されています。日本でも東日本大震災以降、一層注目を浴びている研究分野ですから、この分野でも今後の活躍が期待されますね。

K-ki

イベリアトゲイモリをベースにした、「Pleurobot」というロボットを紹介しました。一応工学系の大学院生なので、私の知りうる知識も混ぜ込みながら記事を書いてみましたが、楽しんで頂けたでしょうか。個人的にはこういった生物ベースのロボットは、とても面白そうで非常に興味があります。今後も様々なロボットが登場してくれることに期待ですね!

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K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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