アクアリウムで飼育されることのある熱帯魚の中でも、独特の形やユーモラスな動きから人気が高いのがドジョウの仲間です。そんなドジョウの仲間の中でも代表的なのがクーリーローチです。
今回は、黄色と黒の縞模様が鮮やかなクーリーローチについて、飼い方や繁殖方法、購入時に混ざってしまう可能性のある近縁種などを紹介します。
クーリーローチとは
和名・流通名 | クーリーローチ |
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学名 | Pangio kuhlii |
英名 | Kuhli Loach |
分類 | コイ目ドジョウ科パンギオ属 |
原産地 | インドネシア、ブルネイ、マレーシア |
飼い易さ | ★★★★★ |
値段(1匹) | 300円程度~ |
最大体長 | 10cm程度 |
寿命 | 10年程度 |
遊泳層 | 底層 |
生息環境 | 池沼、森林河川、泥炭湿地などの流れの緩やかな水域 |
適合する水質 | 水温:20~28℃ pH:3.5~7.0 |
特徴 | 黄色味のかかった体色に黒の縞模様が入る |
クーリーローチは、コイ目ドジョウ科パンギオ属に分類されます。近縁種としては、ジャイアントクーリーローチやブラッククーリーローチ、パンギオ・シェルフォルディが挙げられます。ジャイアントクーリーローチは、少し大型になり、縞模様も太いですが、ほとんどがクーリーローチとして販売されています。
形態
体型は一般的なドジョウ科の魚のイメージ通り細長く、体長は最大で10cmほどになります。黄色っぽい体色に黒の縞模様が入り、ドジョウ科らしい口ひげもあります。また、メスが抱卵した時には、腹部が大きく膨れ体色が薄くなるのが特徴です。
生態
クーリーローチは、低層を泳ぐ夜行性の淡水魚で、砂に潜る習性があります。また、臆病な性格のため、2~3匹で集まって砂に潜っていることが多いです。
また、クーリーローチはスカベンジャー(腐肉食者)と呼ばれる生き物で、動物の遺骸や枯れた水草、落ち葉などを食べます。また、デトリタス食性もあり、水底に堆積した有機物由来の粒子(デトリタス)も食べます。このような特徴から、水槽の掃除屋として利用されることも多いです。
クーリーローチの分布・生息地・生息環境
クーリーローチは、地理的にはマレー半島や大スンダ列島などの東南アジアに生息し、国としてはマレーシア、インドネシア、ブルネイ等に生息していることが確認されています。ただしその正確な生息地についてはまだ未確認の部分も多いです。
クーリーローチは自然下では、池沼や森林河川のような流れの緩やかな水域に生息しており、特に「泥炭湿地」と呼ばれる、有機物が分解せずに堆積している湿地帯に生息していることが多いです。このような環境では水中に無機物がほとんど含まれないために緩衝作用が弱く、有機物由来のタンニンや有機酸の影響を受けてpHが3.0~4.0程度まで下がっていることもあります。
生息地の底床は場所にもよりますが、泥炭(ピート)、泥、砂、落ち葉などのことが多いです。
クーリーローチの近縁種と販売時の混合
クーリーローチという名前で販売されている熱帯魚には、実は様々な種類が混ざっており、「クーリーローチ(Pangio kuhlii)」とは別の種類の熱帯魚がクーリーローチという名前で販売されていることが多々あります。この項目では、クーリーローチという名前で販売されることの多い別種を紹介します。
これらの別種を見分ける際には、黒い帯模様の太さや形をよく見るのが有効ですが、模様には個体差もあるため注意が必要です。
ジャイアントクーリーローチ(Pangio myersi)
クーリーローチと比べると体高が高く、黒い縞模様が太いという特徴があります。「ジャイアント」という名前がついて入るものの、体長には大きな差はありません。
クーリーローチと比べると入荷量は少なく、「ジャイアントクーリーローチ」という名前で販売されずにクーリーローチに混ざって売られることが多いため、ジャイアントクーリーローチを狙って入手するのはなかなか難しいです。
パンギオ・シェルフォルディ(Pangio shelfordii)
クーリーローチと似た色合いですが、縞模様が少し崩れて斑点・スポット状の模様になり、ややシマドジョウのような雰囲気も持ち合わせています。クーリーローチと比較してやや小型で、体長は最大で8cm程度です。
ブラッククーリーローチ(Pangio oblonga)
ブラッククーリーローチは黒の一色の体色体色をしており、クーリーローチと見分けるのは比較的簡単です。こちらもクーリーローチと比べるとやや小型で、体長はおよそ7~8cm程度です。
クーリーローチの飼育方法
クーリーローチは比較的飼いやすく、初心者でも飼育することが出来ます。しかし、夜行性のため、昼間はほとんど砂に潜ったり物陰に隠れているので、活発に動いているところを見るのは少し難しいです。
基本的な飼い方
水温設定が適切で、ろ過フィルターがうまく機能していれば問題なく飼育できますが、底面を泳ぐ魚なので底砂の汚れには注意してください。底砂が汚れていると、白点病など病気の原因になるため、プロホースを使って定期的に底砂掃除を行うのがおすすめです。
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また、角の尖った底砂を使用すると口ひげを痛めるなど怪我の原因となるため、角のない丸い底砂を使うようにしてください。ドジョウのような底物には、ある程度丸みのある田砂などの底砂が適しています。
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臆病な性格で夜行性ということもあり、急な電気の点灯にパニックを起こし、水槽から飛び出してしまうこともあります。事故を防ぐためにも水槽の蓋は必ずして、隠れて落ち着けるような流木を入れておくと、良い状態で飼育することができます。
水質
水温は20~28度、pHは3.5~7.0程度の、熱帯魚の飼育水質としては一般的な弱酸性~中性の水で飼育できます。原産地の環境では水質が酸性よりのため、酸性域には比較的幅広く対応できます。
エサ
人工飼料や冷凍飼料などをよく食べます。底層で暮らす熱帯魚のため、市販品されていて入手しやすい餌の中では、コリドラス向けの沈下性・タブレットタイプのものが使いやすいです。
また、複数を混泳させている場合は、他の魚が残したエサも食べてくれますが、水質悪化を防ぐためにもエサの与えすぎには注意してください。
混泳
底層を泳ぐ魚なので中層魚との相性は良いです。温和でシャイな性格のため、攻撃性の強い魚でなければどんな生体ともうまく混泳できます。
アクアリウム水槽での役割
水槽の底砂を掃除してくれる熱帯魚として人気があります。また、昼間は砂に穴を掘って顔をちょこっと覗かせたり、夜は水槽内をニョロニョロとせわしなく泳ぎ回ったりと、一般的な熱帯魚とは違う動き方をして楽しませてくれます。体色も派手な色味なので、泳いでいるときには目を惹きます。
しかし、砂を掘って潜る習性があるので、まだしっかり根が張っていない水草水槽に入れると、水草を抜いてしまう恐れがあります。
クーリーローチの繁殖方法
クーリーローチの繁殖は非常に難しく、水槽内で繁殖したという例はほとんど聞きません。その理由はいくつかありますが、まず、オス・メスの判別が難しい事が挙げられます。ドジョウの仲間ではよくあることですが、抱卵して初めてメスと判断できるくらい外見からの雌雄判別が難しいです。
また、上述したように、「クーリーローチ」という名前で複数の種類が販売されていることも繁殖の難易度を上げています。当然ながら繁殖を成功させるためには同種を揃える必要がありますが、購入時に別種が混ざり、繁殖に十分な数が揃っていないことに気づかない場合があります。
さらに、卵がお腹に詰まって死亡してしまうケースや、産卵してもすぐに食卵してしまうケースが多い点も繁殖難易度を上げています。
繁殖に挑戦する場合は、まず自然下の環境に近づける事が重要です。飼育水を水温が25度~27度、pH6.0~7.0の軟水に設定し、クーリーローチを5匹程度以上揃えた単独飼育の水槽を用意しましょう。流木などシェルターになる隠れられる場所を多く用意し、ストレスのかからない環境を目指してください。
産卵・採卵の方法
腹部が大きくなって、体色が薄くなったら抱卵しているサインです。急な水質変化を避けるため、水換えは1回の量を減らして頻度を上げるようにしましょう。3日に1回、10分の1程度が一応の目安です。
また、クーリーローチの卵は流木や底砂に産み付けられます。食卵を防ぐため、卵を発見したらすぐに、流木なら流木ごと、底砂なら底砂ごとゆっくりすくって別水槽へ移してください。この時、水は水質変化をさけるため、同じ水槽のものを使うようにしてください。卵は産卵後2~3日以内に孵化します。
稚魚の育て方
稚魚の育て方は、一般的な熱帯魚と同じく、人口プランクトンや、孵化させたブラインシュリンプを主に与えます。孵化してから1ヶ月程度経過して十分に成長したら、親と同じ水槽に移しても問題ないでしょう。
クーリーローチの魅力・おすすめポイント
飼育開始時の年齢にもよりますが、クーリーローチは約10年ほど生きると言われています。他の多くの熱帯魚に比べると、長い間じっくり飼うことができます。また、難しいと言われている繁殖に挑戦してみるのも面白いです。
底砂を用意してあげることで、砂の中に潜って顔を出すといった、一般的な熱帯魚では見られない習性を観察できるところも、大きな魅力です。水槽内のアクセントに、クーリーローチを導入してみると楽しそうですね。