アクアリウムで飼育する熱帯魚と言えば、やはりカラシン(テトラ)の仲間が定番ですね。一番最初に思い浮かぶのはネオンテトラかもしれませんが、ネオンテトラとよく似た外見ながら、より鮮やかでより丈夫な、カージナルテトラというとても飼いやすい熱帯魚がいます。
今回はカージナルテトラについて、飼い方や繁殖方法に加え、混泳の相性が良い生体(タンクメイト)の候補や、ネオンテトラとの違い、かかりやすい病気などを解説します。アクアリウムをやっていればカージナルテトラを飼う可能性は高いと思うので、今はカージナルテトラを飼っていない人も、飼育を始める前に基本的な知識を身に着けておきましょう。
カージナルテトラとは
和名・流通名 | カージナルテトラ |
---|---|
学名 | Paracheirodon axelrodi |
英名 | Cardinal tetra |
分類 | カラシン目カラシン科パラケイロドン属 |
原産地 | ブラジル、コロンビア |
飼い易さ | ★★★★☆ |
値段(1匹) | 100円程度~ |
最大体長 | 5cm程度 |
寿命 | 4~5年程度 |
遊泳層 | 中層 |
生息環境 | ブラジルのリオネグロ川の上流から中流域やバウペス川流域の、水草が多く浅い小川 |
適合する水質 | 水温:23~29℃ pH:3.5~7.5 |
特徴 | 銀、赤、青の三色からなる非常に鮮やかな熱帯魚。近縁種に非常に有名なネオンテトラが存在するが、ネオンテトラよりも大型で赤色の範囲が広い。 |
カージナルテトラは、ブラジル及びコロンビアが原産の熱帯魚です。カラシン目カラシン科パラケイロドン属の淡水魚であり、グッピーやネオンテトラなどと並ぶ、アクアリウムでは代表的な存在です。
形態
体の上半分(背中側)は青みがかった銀色、下半分(腹側)は赤色で、頭の先から尾びれの根元までにかけてメタリックブルーのラインが走っています。数多く存在する熱帯魚の中でも一際色鮮やかで、アクアリウムに彩りを与えてくれる魚です。アクアショップで販売されているカージナルテトラは小さめですが、最大体長は4cmから5cmほどになります。丈夫な熱帯魚であり、適切に飼育すれば寿命は4~5年ほどになります。
生態
カージナルテトラは非常に温和で大人しい、どちらかと言うと臆病な性格です。繁殖を試みる場合は水質に注意を払う必要がありますが、通常飼育の範囲であれば適応水質の幅が広く、丈夫でとても飼いやすい熱帯魚だと言えるでしょう。
野生下では、主に小さな無脊椎動物や甲殻類、糸状のコケ、水生生物の卵、水に落ちた果物などを食べています。
オス・メスの見分け方
カージナルテトラは小型の熱帯魚であり雌雄を判別するのは困難ですが、強いて言えばメスのほうがオスよりもひと回り大きく、丸みを帯びた体型をしています。
カージナルテトラの分布・生息地・生息環境
カージナルテトラはブラジルのリオネグロ川の上流から中流域やバウペス川流域を原産地としています。これらの流域の水質は酸性の軟水です。主に、大きな河川や支流から分岐した、水草が多く、浅い小川に多く生息しています。
比較的近くに生息しているネオンテトラやグリーンネオンテトラなどと分類が混同されていた時期もありましたが、地域ごとの遺伝的な差異が発見されたため、現在では別種に分類されています。
カージナルテトラとネオンテトラなどの違い・見分け方
カージナルテトラの見た目はネオンテトラに酷似していますが、いくつか容易に見分けられるポイントがあります。
腹部の赤色の範囲
ネオンテトラとカージナルテトラの違いで最も分かりやすいのは、体の下半分に入る赤色部分の面積です。ネオンテトラの場合は、頭部寄りの前半分は銀色で、尾寄りの後ろ半分程度のみが赤色であるのに対し、カージナルテトラは体の下部全体が赤く染まっています。また、最大体長はカージナルテトラの方がネオンテトラより約1cm程度大きくなり、群泳しやすいという特徴があります。
体長
ネオンテトラの体長は3~4cm程度ですが、カージナルテトラは最大で5cm程度まで成長します。カージナルテトラのほうが大型になり、水槽内での存在感もやや大きいです。
値段
基本的にカージナルテトラのほうがネオンテトラよりも高いです。カージナルテトラやネオンテトラのような小型魚は特に、まとめ買いをすると安くなるので一概には言えませんが、1匹あたりの単価にするとカージナルテトラの相場はネオンテトラの倍くらいです。
その他のカラシンとの違い
ネオンテトラの他にも、ダイヤモンドネオンテトラ、グリーンネオンテトラなどが同程度の大きさと同系色の色を持つ熱帯魚として挙げられます。ダイヤモンドネオンテトラは体の表面が金色がかっており、グリーンネオンテトラは他のテトラに比べて一回り小さく、赤色はメタリックブルーのラインに若干見られる程度に限られています。
カージナルテトラの飼育方法
カージナルテトラはとても丈夫で性格も温厚なため、アクアリウム初心者でも飼育しやすい種類です。熱帯魚というイメージ通りの鮮やかな体色も、水槽を華やかに見せてくれます。
基本的な飼い方
カージナルテトラは臆病な傾向にあり、群れで行動することを好みます。そのため、数が少ないと物陰に隠れてしまうことも多いです。ある程度の数カージナルテトラを入れることで、水槽の中で落ち着いて行動してくれるようになり、また、カージナルテトラの美しい群泳を堪能することができます。
飼育に必要な道具
カージナルテトラの飼育方法は、基本的には多くの熱帯魚と共通しています。以下の飼育用品を揃えれば、ひとまず最低限の飼育環境は整えることができるでしょう。
ただし、カージナルテトラの繁殖を狙うとか、より状態や見栄えをよくして飼育するためには、水槽用のライトや、底砂、レイアウト用の流木や石、水草などが必要になります。アクアリウムに慣れてきたら、これらも使ってより美しい水槽を作ってみましょう。
水槽
熱帯魚を買うためには、まず水を溜める容器が必要です。基本的には水槽を使うことになります。
水槽にはサイズや素材によっていろいろな種類がありますが、一番のおすすめは、60cm規格サイズのガラス製フレームレス水槽です。このタイプの水槽は、管理がしやすく見栄えも良いため、初心者から上級者まで多くの人が利用しています。
-
アクアリウム水槽(熱帯魚・金魚・水草)のおすすめと選び方
ネイチャーアクアリウムのような美しい水草水槽や、熱帯魚・亀・金魚等の飼育に必要な水槽を購入する時のポイントをまとめました。サイズ・設置場所・素材・デザイン・品質・メーカーなど多岐にわたる要点やおすすめの水槽を紹介します。
こちらのページを参考に、お気に入りの水槽を選びましょう。
水槽台
水槽に水を入れると思った以上に重くなります。そのため、一般的な家具に水槽を置くと重さに耐えきれず、棚板が曲がり、最終的には水槽の一部分に強い荷重がかかって水槽が割れてしうことさえあります。水槽は必ず専用の水槽台に設置しましょう。
-
水槽台の選び方・おすすめ製品!デザインの種類と強度計算法
水を入れた水槽はとても重くなるため、水槽を支える水槽台や床には十分な強度(耐荷重)が必要です。また、デザインや機能性、サイズも重要です。アクアリウムを安全に楽しむために大切な水槽台の選び方と、おすすめ製品を紹介します。
水槽台はサイズやデザインによって値段もピンきりです。60cm水槽用のものであれば2000円程度からあるので、上のページを参考にしながら自分の好みや予算と相談して、納得の行く商品を選びましょう。
ろ過フィルター
水槽の水質を維持するためにはろ過フィルターを使うと便利です。上部フィルター、外部フィルター、底面フィルターなど様々な種類があるので、自分がどんな水槽を作りたいのかよく考えて、適切なろ過フィルターを選びましょう。
-
水槽用ろ過フィルターの選び方と外部・底面など種類別おすすめ製品
熱帯魚、金魚、亀等を飼育するアクアリウムで必要になる水槽用のろ過装置を解説します。外部フィルター、底面フィルター等のろ過フィルター別の長所・短所・適合水槽や、ろ過の原理、ろ過フィルターの種類、ろ材についてもまとめます。
こちらのページでは、ろ過フィルターの種類と特徴をまとめています。ろ過フィルター選びの参考にしてください。
ヒーター
カージナルテトラの原産地は熱帯であるため、日本の冬の低水温を耐えることは出来ません。年にもよりますが、例年9月頃からは水槽用のヒーターで水温を26℃程度に保ってやる必要があります。
-
熱帯魚水槽のヒーター・サーモスタットの選び方とおすすめ
アクアリウムで冬場に水槽水温を維持するため、ヒーターやサーモスタットを使用し水を加熱する際の注意点や、オススメの商品も紹介します。ヒーター・サーモスタットは正しく使わないと事故に繋がるので、安全上の注意点も紹介します。
こちらのページを参考に、水槽のサイズ・水量に合わせ、使いやすいヒーターを選びましょう。
冷却ファン(クーラー)
カージナルテトラは冬の低水温だけでなく、夏の高水温も苦手としています。野生環境では、暑いときは日陰の涼しい場所に移動することも可能ですが、水槽という閉鎖空間ではそのような温度調節は不可能です。夏場には、屋内に設置された水槽の水温は簡単に30℃を超えてしまうため、溶存酸素の減少や水質悪化を引き起こして飼育生体に大きなダメージを与えてしまうこともあります。
-
水槽の水温を下げる!水槽用クーラー・冷却ファン等の選び方・特徴
水槽用のクーラー、冷却ファン、エアコン等で夏に水槽を冷却し水温を下げる方法を紹介します。水槽を冷やす理由からクーラーやファンの原理・使い方・おすすめ商品まで、アクアリウムの天敵・高水温への対処法を分かりやすくまとめます。
従って、夏場は水槽に冷却ファンやクーラーを設置し、水温を少しでも低くする努力が必要です。水槽用のクーラーはかなり効果なので、基本的には、水槽のサイズに応じた冷却ファンを利用しましょう。
水質
水温は23~29℃が好ましく、pHは3.5~7.5程度の弱酸性~中性、硬度は軟水~中硬水が適切です。サンゴ砂などの水槽のpHを上げてしまう底砂の使用は、カージナルテトラの飼育には避けてください。
水質の適応範囲は広く、水質の悪化にも比較的強い種類ですが、硝酸塩の蓄積した古い水には弱い一面を持っています。水換えは定期的に行うようにしましょう。
エサ
カージナルテトラは人工飼料、冷凍飼料、活餌など、なんでも食べてくれますが、口が小さいため、顆粒タイプなど口に入るサイズの小さめのエサを与えることで、食べ残しが水槽内に蓄積することを減らし、水槽内の水質を保つことができます。
基本的な餌は人工飼料で問題ないですが、たまに冷凍アカムシやミジンコなどの活き餌を与えると、カージナルテトラをより健康的に飼育することが出来ます。
水槽のサイズと飼育できる数
ろ過がしっかり機能した水槽なら、水量1リットルあたり1匹のカージナルテトラを飼育することができるでしょう。ただし、急にたくさんの魚を入れると生物ろ過のバランスが崩れてしまう可能性もあるため、今週は10匹、次の週にまた10匹という風に、少しずつ数を増やすようにしましょう。
60cm規格水槽なら、カージナルテトラだけを飼育するとして、最大で40~50匹程度は飼育できます。
できる限りブリード個体を購入する
カージナルテトラは繁殖が難しく、流通している個体も野生採取のものが多いです。そしてその人気から、熱帯魚全体でも流通量はトップクラスであり、野生個体の捕獲量も相当であることがうかがい知れます。
野生個体の大量捕獲は、種を絶滅に近づける行為です。また、カージナルテトラはアマゾン川流域の生態系の下層に位置するため、より上位の肉食生物の生存にも大きな影響をの与えかねません。
幸いにも、近年はカージナルテトラの養殖個体(ブリードカージナル)も流通しています。価格的にもワイルド(野生採取)とブリード(養殖)個体にはほとんどさがないので、自然環境を保護しつつ今後も継続的にアクアリウムを楽しめるようにするため、ぜひともブリードカージナルを購入するようにしましょう。
参考ブリードカージナル特集 【チャーム ペット・ガーデニング・インテリア雑貨の専門店】
カージナルテトラと相性の良い混泳魚(タンクメイト)
カージナルテトラは温和な熱帯魚のため、ほとんどの小型の魚と混泳が可能です。ただし、活発に動き回る魚と混泳した場合には、その種類につられてバラバラに泳いでしまう可能性があります。
群泳を楽しみたい場合は、単種飼育をするか、またはカージナルテトラと同じように大人しい種類の熱帯魚と混泳させましょう。同程度の大きさの小型カラシンや、コリドラス、オトシンクルスなどのコケ取り生体との混泳も容易です。
カージナルテトラと混泳可能な熱帯魚は非常に多く、個々の種類を紹介しているとキリがないのですが、参考までに当サイトで過去に紹介したことのある熱帯魚やエビから、カージナルテトラと混泳させやすいものをピックアップしておきます。
アフリカンランプアイ
-
アフリカン・ランプアイの飼育・繁殖方法!青く光る目が美しい熱帯魚
青く光る目が特徴的な小型熱帯魚「アフリカン・ランプアイ」について飼育方法・繁殖方法を中心に紹介します。飼育・繁殖ともに比較的容易で、アクアリウムの入門種としてもおすすめできます。やや弱めのライト、濃い色の水草が植えられた水槽で飼育すると美しさが一層際立ちます。
アフリカンランプアイは比較的上層付近の泳ぐため、カージナルテトラと泳層が被りません。体格的な差も少なく、こちらも群れやすい種類なので、大型水槽で混泳させれば上層と中層に別々の魚群が出来て面白いかもしれませんね。
ゴールデンハニードワーフグラミー
-
丈夫で鮮やかな熱帯魚!ゴールデンハニードワーフグラミーの飼育と繁殖
小型魚ながら迫力のあるゴールデンハニードワーフグラミー(GHDグラミー)を紹介します。GHDグラミーはアナバス類(キノボリウオ亜目)に属しアクアリウムで人気のベタとも近縁の熱帯魚です。酸欠に強く、黄色い体色が鮮やかなため、ボトルアクアリウムや水草水槽に適します。
カージナルテトラより幅がありますが、動きが遅いのでケンカにはなりません。どちらも派手なので、水槽内の色合いが喧嘩しないように数でバランスを取りましょう。
ペンシルフィッシュ
-
ペンシルフィッシュ10種まとめ!飼育・繁殖法とコケ取り能力
アクアリウムで古くから飼育される美しい熱帯魚・ペンシルフィッシュを紹介します。ペンシルフィッシュはカラシン目レビアシナ科ナノストムス属に分類される魚の総称で、2013年時点で20種が存在します。コケ取りを期待されることもありますが、実際はあまりコケを食べません。
ペンシルフィッシュは派手なものから地味なものまで幅広いですが、カージナルテトラとはまた違った美しさがあり、相性が良いと思います。性格的にも穏やかで群れやすい種類が多いです。
チェリーバルブ
-
真紅の熱帯魚・チェリーバルブの飼育と繁殖!スネール対策にも大活躍
婚姻色がでると真っ赤になるオスの体色が特徴的な、チェリーバルブの飼育や繁殖の方法を紹介します。スリランカ原産のコイの仲間であるチェリーバルブは、体色が美しいだけでなく、スネールやプラナリアなど水槽に湧く生き物を食べる「スネールイーター」として活躍します。
チェリーバルブは真っ赤な体色がきれいな魚です。多数のカージナルテトラの中に、アクセント的に入れると面白いでしょう。自分より小さな生き物に対しては結構獰猛なので、体格差がある場合は注意が必要です。
ラスボラ エスペイ
-
ラスボラ・エスペイ-水草水槽を鮮やかに彩る群泳性の小型熱帯魚
オレンジ~赤色の鮮やかな体色と黒いバチ模様が水草水槽に映える熱帯魚「ラスボラ・エスペイ」を紹介します。ラスボラ・エスペイは弱酸性・軟水の水域に生息し、群泳する性質があります。活発で温和な性格で混泳も幅広く可能なためアクアリウムでは人気が高い魚です。
カージナルテトラと同じくらい人気のあるアクアリウムの定番熱帯魚です。群れやすく大人しいため混泳はしやすいですが、色合い的には少し喧嘩するかもしれません。
ハチェットフィッシュ
-
ハチェットフィッシュ全3属9種の飼育と生態-飛び出し事故に要注意!
水面付近を泳いで虫などを食べる、扁平した独特の姿形の熱帯魚・ハチェットフィッシュの種類や飼い方、繁殖などについてまとめます。ハチェットはカラシンの仲間で3属9種が知られています。アクアリウムで飼育する際には、導入時の水質変動と飛び出し事故には注意が必要です。
上層付近を泳ぐハチェットフィッシュは、カージナルテトラとはかなり雰囲気の異なる、また別の良さを持った熱帯魚です。個人的には結構良い組み合わせだと思います。
コリドラス
-
コリドラス・パンダの飼育・繁殖・生態-小型で柄が可愛い底棲熱帯魚
アクアリウムで人気の熱帯魚「コリドラス」の中でも、小型で可愛らしい姿とパンダのような模様から人気の高いコリドラス・パンダを紹介します。コリドラス・パンダは南米・ペルー原産のナマズの仲間で、水槽の底砂を掃除してくれる熱帯魚として活躍します。
コリドラスの仲間は主に底層で生活するため、こちらもカージナルテトラとは泳層がかぶりません。底物には独特の可愛さがありますし、見た目的にもメインフィッシュの邪魔をしないので、ぜひ混泳させてみましょう。
クーリーローチ
-
クーリーローチの飼い方・繁殖・近縁種―鮮やかな色のドジョウの仲間
アクアリウムで飼育されることの多いドジョウの仲間「クーリーローチ」について、飼育方法・繁殖方法や近縁種との見分け方などを紹介します。底砂に潜って顔を出すようなユーモラスな動き、他の熱帯魚にはない独特の形態が水槽のアクセントになる面白い魚です。
クーリーローチはドジョウの仲間で、細長い体型が特徴です。見た目は割と派手で、細長いため体長もそこそこありますが、夜行性であまり目立つ魚ではありません。好きならタンクメイトにすればいいんじゃない、というところでしょうか。
ミナミヌマエビ
-
ミナミヌマエビの特徴と飼い方-繁殖が容易なアクアリウムの人気者
アクアリウムで飼育されるミナミヌマエビの分類・特徴・分布・飼育・繁殖・保全状況等を解説します。ミナミヌマエビは日本固有亜種ですが中国南部原産のシナヌマエビとよく混同されます。一生を淡水で過ごす陸封型のため繁殖が容易です。
アクアリウムで飼育するエビの代表種であるミナミヌマエビとは、もちろん混泳可能です。カージナルテトラがミナミヌマエビの稚エビを多少食べてしまうことがあるかもしれませんが、ミナミヌマエビの繁殖力はかなり強いので、水草の茂みなど隠れるところが十分にあれば徐々に数は増えるでしょう。
水槽に魚以外の生き物がいると、グッと自然観が増すので、私はタンクメイトに必ずエビを加えます。また、ここでは取り上げていませんが、もちろんヤマトヌマエビとも混泳可能です。
カージナルテトラとの混泳に向かない魚
カージナルテトラは温和で混泳向きの熱帯魚なので、混泳できる魚を探すよりも、混泳出来ない魚を探したほうが簡単です。以下の点に注意すれば、カージナルテトラと相性の悪いタンクメイトを選ばずに済むでしょう。
カージナルテトラを食べてしまう魚
当たり前ですが、カージナルテトラを食べてしまうような魚とは混泳出来ません。肉食性である程度の大きさ(体長10cm以上)の魚とは、混泳させるのは避けるのが無難です。
注意
エンゼルフィッシュ、ポリプテルスの仲間、ピラニアの仲間、中型以上のナマズ(キャット)の仲間など
気性が荒い・縄張り意識の強い魚
気性が荒い魚や、縄張り意識の強い魚は、カージナルテトラを追いかけ回して過大なストレスを与えてしまいます。このような魚とも、混泳させるのは避けましょう。
注意
ベタ、スマトラ、ブルーテトラ、ペンギンテトラなど
カージナルテトラの病気
カージナルテトラにはいくつか感染しやすい病気が存在します。小型の生き物なので、病気に感染すると治らずに死んでしまう可能性は高いです。病気を持ち込まないよう、新しい生体を導入するときには、水合わせやトリートメントをしっかりと行いましょう。
-
生体導入!熱帯魚やエビの水合わせ&トリートメントの方法
熱帯魚やエビの水槽への導入を安全・慎重に行うための鍵になる「水合わせ」と「トリートメント」について解説します。水合わせは環境の変化で生体にダメージを与えないために、トリートメントは病気の蔓延を防ぐために、とても重要です。
白点病
白点病は、ウオノカイセンチュウ(イクチオフチリウス)の寄生によって発症する淡水魚の病気です。熱帯魚に寄生したウオノカイセンチュウが白井店のようにみえることからこの名前がつきました。
ウオノカイセンチュウは25℃以下の低水温を好むため、水温を28~30℃程度に保つことで、寄生しているウオノカイセンチュウを減らすことが出来ます。メチレンブルーやマラカイトグリーンによる薬浴や塩水浴をあわせて行うとさらに効果的です。
尾ぐされ病
尾ぐされ病は、カージナルテトラに限らず観賞魚全般に良く見られる病気です。鰭の周囲がカラムナリス菌という細菌に感染したことによって発症します。この菌が出すタンパク質分解酵素によって鰭が避けてしまうことに由来した病名です。
発見が遅れると死んでしまうことも多い病気です。尾ぐされ病に感染した個体を発見したら、まず隔離した上で観パラDやグリーンFゴールドによる薬浴を行いましょう。
ネオン病
ネオン病は尾ぐされ病と同じくカラムナリス菌に感染することで発症する病気です。カラムナリス菌は一般に魚の鰭やエラ、口などで繁殖しますが、ネオンテトラやカージナルテトラのような小型カラシンでは、筋肉組織で繁殖することがあり、これをネオン病と呼んでいます。
病気としては小型カラシンに特有ですが、根本的には尾ぐされ病と同じなので、隔離した上で観パラDやグリーンFゴールドによる薬浴で治療します。
アクアリウム水槽での役割
水槽の中層をテリトリーとするカージナルテトラの魅力は、何と言ってもその色鮮やかな群泳です。群泳は魚の数が多いほど綺麗ですが、やみくもに沢山のカージナルテトラを水槽に入れ過密飼育の状態になってしまうと、水質が悪化し、熱帯魚にとって良くありません。60cm水槽の単独飼育であれば、まずは20匹以下に抑えて様子を見るようにしましょう。
カージナルテトラの繁殖方法
カージナルテトラの繁殖は可能ですが、かなり難しいとされています。現在でも流通している個体の大半はワイルド(野生採取)であり、東南アジアなどで養殖された個体が多少出回っている程度です。
親魚の準備
カージナルテトラは集団で繁殖を行うため、十分に成熟した親魚を30~50匹以上揃えられると繁殖の成功率が上がります。体長2cm程度の個体なら、2ヵ月程度飼い込めば親魚として準備が出来るでしょう。
また、繁殖の成功率を高めるため、カージナルテトラのみの単種飼育水槽を用意しましょう。
採卵・産卵の方法
親魚の準備ができたら、採卵の準備を開始します。pHを普段よりも少し下げるとカージナルテトラの繁殖を誘発させる効果があるという説もありますが、はっきりとしたことは分かっていません。ただ、熱帯魚の中にはpHの低下がトリガーになって繁殖行動を取り始める種類がいるのは確かです。
カージナルテトラは卵を水底にばらまくように産むバラマキ型の産卵を行います。ただ、繁殖のために集団で飼育していることもあり、産卵したそばから親魚が食卵してしまいます。そこで、食卵を防ぐため、水槽の底を高床式にした鉢底ネットやウィローモスの塊で覆っておき、親魚が入り込めない隙間に卵が入り込むような工夫をしましょう。また、親魚の数が多く親を隔離するのは大変なので、水槽の底に小型のトレーなどを敷いておき、卵を隔離しやすいようにしておきましょう。
産卵は夜に行われることが多いので、朝早くに卵がないか確認し、卵を見つけたらすぐに飼育水槽から隔離しましょう。
稚魚の育て方
隔離した卵はスポンジのフィルターなどを用いて水流を極めて弱いものにします。
有精卵であれば、およそ24~36時間ほどで卵は孵化し、3~4日後には稚魚が泳げるようになります。孵化直後はヨークサックの栄養で育つため給餌は不要ですが、少し泳ぐようになった稚魚には、インフゾリア、冷凍ワムシ、人工プランクトンなどを与えます。
その後は、ブラインシュリンプなどを与えつつ、徐々に人工飼料に餌付けしていきましょう。カージナルテトラの稚魚は弱く、せっかく生まれても死んでしまう確率が高いです。諦めず、生き残った稚魚を地道に育てましょう。
カージナルテトラの繁殖方法は、アクアリウムや爬虫類の飼育用品でおなじみの「スドー」のウェブサイトに、分かりやすくまとめられているページがあります。こちらも参考にしてみましょう。
カージナルテトラの魅力・おすすめポイント
カージナルテトラはアクアリウム初心者の入門魚としてよく知られています。しっかりと飼い込むことによって、腹部の赤色は増していき、より水槽を鮮やかに彩ってくれます。温和で丈夫、見た目も鮮やかで美しく、これから熱帯魚飼育をはじめる方にはおすすめの熱帯魚です。