水槽を維持していく上で大変なポイントはいくつかあると思いますが、夏の高水温対策というのも大きな問題なのではないでしょうか。水槽用クーラー、部屋ごとエアコン、市販の冷却ファンなど対処法は様々ですが、どれも能力やコスト面など色々と問題があります。その中で一つコストパフォーマンスの高い方法として、冷却ファンを自作する方法を紹介します。
自作というと面倒、難しそう、というイメージがあるかもしれませんが、自分の本当に必要なものを作れるというのが大きなメリットです。「アクアリウムの醍醐味は自作にあり」なんて方もいる?ように自作はやってみると結構楽しいものです。これを機にDIY・アクアリウムライフを始めてみてはいかがでしょう!?
なぜ冷却ファンを自作するのか
なぜ様々な水槽冷却方法の中からファンを選び、さらにそれを自作をするのでしょうか。まずはその理由から説明していきましょう。もしこの項目を読んで「やっぱり自作じゃなくて市販品を買おう!」と思われた方は、水槽用の冷却ファンと逆サーモのおすすめを紹介している以下の記事を参考に商品を選んでみてください。
-
水槽用冷却ファン&逆サーモのおすすめ製品・選び方・使い方
アクアリウムの夏を乗り切るための、水槽用冷却ファンと逆サーモスタットの選び方を紹介します。水槽用ファンはテトラのCF-60 NEW、逆サーモはGEXのFE-101がおすすめです。設定温度など使用時のポイントも紹介します。
水槽用冷却ファン自作のメリット
冷却方法として水槽ファンを選び、それを自作することには以下のようなメリットがあります。
低コスト
水槽用クーラーや部屋ごとエアコンといった方法では電気代が結構なお値段になります。また、クーラーやエアコンを買うための初期費用もかなり必要ですよね(エアコンはほとんどの方が持ってるとは思いますが…)。お財布に余裕のある方ならば大丈夫かもしれませんが、やっぱりできる限り低コストに抑えるに越したことはないですよね。
設置が簡単
水槽用クーラーを設置しようと思うと配管を組んだりして水槽との水の循環が成立するようにしなくてはいけません。これは結構な大仕事ですし、冬場に取り外す時の片付けとかも大変です。
冷却ファンを使う場合はほとんど水槽の上に置くだけのようなものです。設置も、もちろん撤去もとても簡単です。
自作した方が高性能になる
市販品の冷却ファンはお客さんに販売するという都合上どうしても高い安全性が求められます。その結果ファンが露出しないようなデザインにせざるを得ず、装置が大きくなって邪魔・風量が低下する・騒音が大きくなるなどの色々な弊害を生んでしまっています。自作すればこういった性能低下を避けることができ、高性能なファンを作ることができます。
また、大体の場合自作した方が市販品を買うよりも安上がりです。
水槽用冷却ファン自作のデメリット
一方で水槽の冷却ファンやその自作には以下のようなデメリットも存在します。
市販品よりも安全性が低い
一つ上の項目で説明したように、高性能になる分安全性は低下します。下手な工作・手入れ不足などによりファンから発熱・出火する可能性もゼロではありません。適当に作るとリスクが高くなってしまうので、安全性の向上はできるかぎり心がけるようにしましょう。
クーラーやエアコンよりも冷却能力は低い
冷却ファン自体の冷却性能は当然クーラーやエアコンよりは低いです。扇風機とエアコンを比べるようなものですから当然ですよね。ファンの冷却能力は外気温-3~4℃程度がせいぜいといったところでしょうか。
また、冷却ファンは水面に風を当てることにより水を蒸発させ、その気化熱で冷却するので雨の日などのように湿度が高いと冷却効果がかなり低下します。
真夏の時期などは、結局エアコンと併用したりしないと十分な冷却効果が得られないという場合もある点には注意してください。
-
水槽の水温を下げる!水槽用クーラー・冷却ファン等の選び方・特徴
水槽用のクーラー、冷却ファン、エアコン等で夏に水槽を冷却し水温を下げる方法を紹介します。水槽を冷やす理由からクーラーやファンの原理・使い方・おすすめ商品まで、アクアリウムの天敵・高水温への対処法を分かりやすくまとめます。
多少お金がかかっても、安定して高い冷却能力を求めるのであれば、水槽用のクーラーやエアコンを使う方法をおすすめします。初期費用は高く設置もやや大変ですが、それを補って余りある冷却能力があります。部屋を閉め切ることが多く日中暑くなるような方は、水槽クーラーやエアコンも検討してみてください。水槽クーラーやエアコンの選び方、おすすめ製品についてはこちらのページで詳しく解説しています。
水槽の水がすごい勢いで蒸発する
水を蒸発させることで冷やしているんだから当たり前ですよね。冷却ファンを使うと通常よりも蒸発のスピードが速くなり、頻繁な足し水が必要になってきます。面倒がらずに足してあげてください。
用意するもの
次に水槽用冷却ファンの自作に必要なものを紹介します。用意するものは、「材料」とそのを加工に必要な「工具」に分けて紹介していますが、どれも基本的にはホームセンターに行けば入手できます。
材料
- PC用ファン
- ACアダプタ
- DCジャック
- DCプラグ
- 塩ビ板・塩ビ棒
自作の作業内容を簡単に説明すると、PC用のファンを改造して普通のコンセントにつないで使用できるようにします。個々のパーツの選び方などの詳細は後述します。
工具
- はんだごて
- はんだ
- ハサミなど
- 塩ビ用接着剤
補足説明
塩ビ板、塩ビ棒、塩ビ用接着剤は水槽に取り付けるための部品を作るときのみ必要です。他の方法で水槽に設置できるのであれば必要ありません。
はんだごてなんて持ってない!という方もいるかもしれませんが、最近は100円均一でも売っているみたいです。ただし100均のはんだごては温まりにくく使いにくいので、ホームセンターで得っている700円前後のものがお勧めだそうです(コメントよりアドバイスを頂きました)。
冷却ファンの仕組みと構造
普段あまり電子工作を行われない方の中には「ACアダプタ?DCジャック??DCプラグ???」となってしまい、何が何だか分からない!と思われる方もおられるでしょう。…というか、私がまさにそうでした(笑)。
作るものの仕組みが分かっていないと簡単なことでも失敗してしまう可能性があるので、ざっくりとでも理解しておいた方が良いと思います。以下で簡単に冷却ファンの自作に関する知識を補足しておきます。
ACアダプタ
一般家庭のコンセントから得られる電流は100Vの交流電流(AC)です。それをそれぞれの電子機器に対応した電流に変換するのがACアダプタです。今回は交流から直流(DC)に変換するので、正確にはAC-DCアダプタを使うことになります。
今回使うPCファンは12Vの直流電源で作動するので、ACアダプタは出力:12VDCと書いてあるものを選んでください。出力電流も書いてあると思いますが、PCファンに必要な電流はだいたい0.1~0.2A程度なので、ほとんどのACアダプタではPCファンを回すのには十分な電流を出力できているはずです。
ACアダプタは家で転がっているもう使わなくなったものを使ったり、ハードオフなどで安く入手するのが良いと思います。
PCファン
水槽用冷却ファンの自作に使うPCファンを選ぶ基準はサイズと回転数です。サイズは一般的には8cmまたは12cmの25mm厚が主流です。回転数は12cmサイズのファンで500~1500rpmぐらいが主流だと思います。rpmというのは1分間あたりの回転数(revolution per minute)のことです。
他にも風量などが表記してあることもありますが、必ず表記してあるわけではないので比較基準としては使いづらいです。
当たり前ですがサイズが同じなら回転数が高い方が、回転数が同じならサイズが大きいほうが風量が大きくなるので冷却効果が高いです。しかし注意すべきなのは、回転数が高すぎるとうるさく感じてしまうことです。風量と回転数のバランスをうまくとると満足のいく出来になると思います。
私が冷却ファンの自作に当たって調べた感じでは12cmファンの1200rpmくらいを使ってる人が多い印象でした(うろ覚えですが・・・)。小さな水槽用のファンを自作するのであれば8cmやもっと小さなファンも選択肢になると思いますし、その時はおそらく回転数ももっと高いものを選んだほうがいいと思います。
ちなみに私は12cmの1300rpmのファンを使うことにしました。PCパーツショップなどに行けば1つ500円程度で手に入ります。
DCジャック・DCプラグ
ファンとACアダプタをつなぐ部分に設置します。ジャックがメス、プラグがオスでコンセントのように差し込んで使えるようにします。
ファンとACアダプタを直接はんだでくっつけてもいいんですが、DCジャック・プラグをかますことで電源とファンを分離しやすい=電源のオンオフがしやすいので使うことにしました。
冷却ファン用サーモスタットを使えばファンの電源は自動ON/OFFになりますが、今回私はサーモスタットを使わない(かなり大きな水槽に設置するので、水温が低下しすぎることはないと思われるため)ので電源の操作性向上を狙いました。今回はファンを2つ使うつもりなのですが、ジャック・プラグを使うことでファンを1つだけで使うことも出来るようになるなど、融通も利きますしね。
これもPCパーツショップで一つ100円もせずに入手できると思います。
水槽用冷却ファン自作の作業手順
それではいよいよ、水槽用冷却ファンを自作する具体的な手順を説明します。
注意
冷却ファンの製作及び使用中のいかなる事故・損害等について、K-kiは一切責任を負えません。部品の選定やはんだ付けなどの作業は慎重に行ってください。
まず水槽にファンを設置するための部品を用意します。私の場合は、以前水槽のフタを自作したときに一緒に作った「フタ受け」を使います。
-
蒸発・異物混入・飛出し事故を防ぐ!開閉式の水槽フタを自作
熱帯魚・エビの飛び出し事故や飼育水の蒸発、ゴミ等の混入を防ぐ水槽のフタの作り方を紹介します。可動式にする事で、エサやりや掃除などの水槽メンテナンスの際にも邪魔になりません。塩ビ板や蝶番等で簡単に自作できるのでお試しあれ!
このフタ受けはファンの大きさに合わせて作ってあり、ファンの穴と同じ場所に穴をあけて、ボルトとナットでファンを固定できるようにしてあります。
ファンをセットするとこんな感じになります。作り方などは上の記事を参考にしてください。他の方法でファンを水槽に設置するのであればこの部品は必要ありません。
次にACプラグの先端の端子を切り落とします。購入したDCジャックに変更するためです。
右がジャック、左がプラグです。これをファンとACアダプタに接続します。別にどっちがどっちでもいいと思いますが、私はファンにプラグ、ACアダプタにジャックを接続することにしました。
2017/10/21 追記
コメントで指摘がありましたが、一般的にはアダプタ側がプラグで機器側がジャックです。従って、汎用性を考えるのであれば、上記とは逆のファン側にジャック、ACアダプタ側にプラグ、という設定にすることをおすすめします。
ACアダプタの電線は2本のコードでできていると思うので、先端部分を少し割いて1本ずつに分けてカバーを削ぎ、中の電線をジャック結びつけます。3端子のDCジャックの場合は両端の2つの端子を使って下さい。
次にファンをDCプラグに接続します。
プラグ内はこんな感じになっています。画像ではすでにはんだ付けしてありますが、はんだ付けをする前に必ずACプラグと接続してファンがちゃんと回転するか確認してください。
DCジャックやプラグは端子が外側と内側に分かれていて、ジャックとプラグで内側同士がプラス、外側同士がマイナスだとちゃんと動くんですが、ACアダプタの電線のどちらがプラスでどちらがマイナスかが分からなかったりもするので、一応動くことを確認してからはんだ付けしてください。テスト段階でプラスマイナスを間違えて接続したとしても、少しくらいで壊れたりはしないはずです。
ちなみにPCファンは色つきコード(赤や緑)がプラス、黒や白がマイナスである場合が多いらしいです。
2015/05/06 追記
なお、上の写真のように内側同士がマイナス、外側同士がプラスでも動くことは動きますが、一般的には内側が+、外側が-となっているようです(コメント欄参照)。
私は今回ファンを2つ使用するのでジャック側を2つに拡張します。ファンの電線のいらない部分をカットしてジャック同士をつなぐのに使いました。DCジャックの同じ端子同士をつなぐようにします。
ここまでやってACアダプタをコンセントに繋ぎ、ファンが回転することを確認したら、はんだ付けを行います。普段電子工作なんてしないのでヘタクソですが、一応上の画像が参考写真です。
もうちょっとアップです。下手さが際立ちますかね…? 正直それすらも良く分からないんですが…^^;
安全性に不安がある人ははんだ付けした部分を絶縁体でカバーしておくといいかもしれません。私は手ごろなものがなかったので上の写真のようにビニールテープを巻いただけでしたが…。しかもそれもすぐに剥がれてしまって今ははんだ部分が露出しています。これがまずいことなのかどうかわからないので、誰か詳しい方教えてください。
2015/12/16 追記
やはりこの部分はまずかったようで、漏電の心配があるそうです(コメント欄参照)。端子部分を養生テープでグルッと巻いて筒状にし、ホットボンドで固めてしまうのが良いらしいので、自作される場合はそのようにすることをお勧めします。
ここまでで冷却ファンの自作は完了です。ファンの写真は一つしかありませんが、実際は私は2つ作っています。
作った冷却ファンを水槽へ設置
自作したファンを水槽に設置します。風の流れを考えてできるだけ効率良く冷やせるように設置しましょう。
今回は、冷却ファンをろ過槽に取り付けることにしました。オーバーフロー水槽なので邪魔なものは全部ろ過槽に設置することができます。
ただしウチの90cmオーバーフロー水槽のような大掛かりな設備になってくると、冷却ファン程度ではなかなか温度を下げるのは厳しい面もあります。それでも調子のいい時は-3℃くらいにはなるので、何もしないよりはマシですね。
濾過槽の配管の都合上、ファンの1つはホースが邪魔で水平に取り付けることができず斜めに取りつけています。これは塩ビの取りつけ器具をファンの固定面が斜めになるように作ることで実現しました。
また、濾過槽ということでキャビネットの内部になり配線や色々な機器などで若干ごちゃごちゃするときもあるので、安全上常に濾過槽にはフタをしています。したがって、フタの影響でファンを設置しても水面近くの空気の流れが若干澱みがちになると思われます。
そこで私は2つのファンのうち片方を水槽の中から外に向かって風が吹くように設置しました。こうすることにより片方のファンから水面に風がぶつけられ、もう片方のファンで空気が外に排出されるようになり効率的な冷却が可能になると思っています。
ちなみにフタはファンがぴったり収まるようなサイズに作ってあります。
上の写真に空気の流れを書き入れるとこんな感じですね。
今回はフタをするので少し変わった取り付け方にしましたが、フタをしないのであれば水面向きに風を当てるのが一番効率良く冷やせると思います。冷却効率を追求するのであれば、色々なファンの設置方法を試してみるのもいいでしょう。
冷却ファン自作のまとめ
今回は夏を乗り切るための冷却ファンの自作方法を紹介しました。長文となってしまいましたが、一応この記事を見るだけで冷却ファンが作れるようになるはずです!
冷却ファン自体の冷却能力では不十分なときがあったとしても、ファンがあればエアコンで気温と湿度が下がった空気を水面にバンバンあてられるので、エアコンの設定温度が高めでも水温が下がるという省エネ効果もあります。持っていて損になるようなものではないので、この機会に自作にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、当サイト「AquaTurlium」では、冷却ファン以外にも様々なアクアリウム用品の作り方を紹介しています。アクア用品の自作に興味がある人は、以下のページに関連するページをまとめているので、ぜひ覗いてみてくださいね。
タグ自作・DIY
分からないことがあればコメント欄に書いていただけたら教えますよ!