アクアリウムで飼育される魚の多くは「熱帯魚」と呼ばれる熱帯に生息している魚です。熱帯というワードの響きからか、熱帯魚やアクアリウムと暑い夏は相性が良いように思いがちですが、実はそうではありません。アクアリウムにとって最も厳しい季節とさえ言えるのが「夏」なのです。
そうは言っても、暑い夏こそすずしげなアクアリウムで涼を取りたいと思うのが人間の性。そして何よりアクアリストなら、暑い夏だってアクアリウムを楽しみたいですよね。そこで今回は、アクアリウムにとって厳しい夏という季節を乗り越えるための対策を5つ紹介します。
夏対策をしっかり施したアクアリウムで、思う存分夏を楽しみましょう!
熱帯魚は暑さに弱いことを知る
まず1つ目のポイントは、アクアリウムの夏を楽しむ上で必須とも言える知識です。実は、熱帯魚は暑さに弱いんです。
アクアリウムで飼育される熱帯魚の原産地は様々ですが、代表的な者の一つに南米・アマゾン川水系があります。いかにも暑そうなアマゾン川でも、実は水温は高くても28℃程度、30℃手前くらいが一般的です。それに屋外環境なので、熱帯魚自身が自分で適温の場所に移動することも出来ます。
それに対して日本の屋内に設置された水槽の飼育環境では、夏場で人がいない時間帯には、水温が35℃くらいまで上昇してしまうこともあります。この2つを比べると、如何に日本のアクアリウム環境が過酷なものかがわかりますね。
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アクアリウム史上最悪の失敗…真夏の高水温の恐怖
私が起こしてしまったアクアリウム史上最悪の失敗を戒めも込めて紹介します。夏場にミクロラスボラ・ハナビの高水温耐性を過信し適切に水槽を冷却しなかった結果、3匹のハナビを死なせてしまいました。経緯と今後の対処方針をまとめます。
私も油断から、夏場の高水温で飼育していた魚を死なせてしまった経験があります。飼育者として非常に情けなく、申し訳ない気持ちになりました。熱帯魚は暑さに弱いという認識を持ち、油断せずに水温の適切な管理を心がけましょう。
水温計でこまめに水温を確認する
水温を管理するためには、もちろん水温を知る必要があります。水温を知るためには水温計が必要ですよね。
春や秋のような過ごしやすい季節には、特に対策をせずとも水温は概ね適切な範囲に入るため、中には水温計を設置していない人もいるでしょう。しかし夏や冬といった厳しい季節に、適切な水温管理を実現するためには、水温計で水温を確認しなければなりません。
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デジタル?アナログ?熱帯魚・アクアリウムの水槽水温計まとめ
アクアリウム等の生物飼育には欠かせない水温を測るための道具・水槽用の水温計についてまとめます。水温計といっても色々な種類があり、求める条件を整理して最も適した水温計を選んで下さい。目的別のオススメ水温計を紹介しています。
水温計は性能の高いデジタルの製品を購入してもせいぜい1000円程度です。こちらのページを参考に、持っていない人はすぐにでも水温計を用意してください。水温計なしでは、アクアリウムの夏を乗り切るのはまず不可能です。
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水槽用デジタル水温計なら ニチドウ マルチ水温計がオススメ
アクアリウムや両棲類爬虫類飼育で使用される水槽用デジタル水温計の定番、ニチドウ マルチ水温計の特徴・使い方・レビューなどを紹介します。安価ながら最高・最低温度記録やセンサと本体の2箇所の温度測定が可能な多機能水温計です。
水温計の種類が多すぎて選べない!という方は、とりあえずこちらのページで紹介している「ニチドウ マルチ水温計」を購入するのが良いと思います。
マルチ水温計は、気温と水温の両方を計測・表示することが出来て、摂氏・華氏表示の切り替えも可能なデジタル水温計です。バックライトも付いていて夜間の視認性も考慮されています。十分な機能性を備え、値段的にも財布に優しい優秀な水温計です。
冷却ファンやクーラーを設置する
熱帯魚が暑さに弱いことを知り、水温計を利用して自分の水槽の環境を適切に把握したら、理想的な環境=適切な水温を実現するために、水槽の水を冷やさなくてはなりません。水槽の水を冷やす手段として利用される方法の中で特によく利用されるのが「冷却ファン」を使う方法と、「水槽用クーラー」を使う方法の2つです。
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水槽の水温を下げる!水槽用クーラー・冷却ファン等の選び方・特徴
水槽用のクーラー、冷却ファン、エアコン等で夏に水槽を冷却し水温を下げる方法を紹介します。水槽を冷やす理由からクーラーやファンの原理・使い方・おすすめ商品まで、アクアリウムの天敵・高水温への対処法を分かりやすくまとめます。
クーラーや冷却ファンの種類、用途、特徴や選び方はこちらのページで詳しく紹介しています。基本的には小型水槽では冷却ファンが、大型水槽では水槽用クーラーがおすすめです。
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水槽用冷却ファン&逆サーモのおすすめ製品・選び方・使い方
アクアリウムの夏を乗り切るための、水槽用冷却ファンと逆サーモスタットの選び方を紹介します。水槽用ファンはテトラのCF-60 NEW、逆サーモはGEXのFE-101がおすすめです。設定温度など使用時のポイントも紹介します。
水槽用の冷却ファンを使用する場合には、K-kiのおすすめ製品を紹介しているこちらのページも役立つはずです。端的に言うと、冷却ファンとしてはテトラの「CF-60 NEW」を、冷却ファン用のサーモスタットとしてはGEXの「FE-101N」をおすすめしています。
また、冷却ファンは自作することも出来ます。アクアリウム用品の自作は、それ自体がかなり楽しいと思うので、DIYや電子工作に興味のある人は、ぜひとも冷却ファンを自作してみてください。
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水槽用冷却ファンの自作!アクアの関門“夏”を乗り切る方法
アクアリウムで夏に水槽の水温を安価に下げるための、冷却ファンの作り方を解説します。冷却ファン自作の長所・短所や自作の手順、ACアダプタ・PCファン・DCジャック・DCプラグなどのパーツの選び方・おすすめなども紹介します。
水槽用クーラーを何台も使用しなければならないほど大量の水槽を管理しているアクアリストには、エアコンを利用して水槽が設置されている部屋をまるごと冷やすという方法もおすすめです。エアコンは起動時に電力の消費が大きくなるため、エアコンで水温を管理する場合には24時間運転しっぱなしのほうが電気代が安くなる場合もあります。
水温は25~28℃を維持する
一般的な熱帯魚にとって適切な水温は、おおよそ「25~28℃」と言われています。クーラーや冷却ファンを使用する場合には、設定温度はこの範囲内にするとよいでしょう。
ただし、生き物の話なので当然ながら種類によって差があります。例えばヤマメやイワナのような渓流魚を飼育する場合には、適正水温は20℃程度です。種類ごとの適正水温をしっかりと把握するとともに、適正水温の大きく異なる生き物同士は同じ水槽で飼育しないようにしましょう。
電気代をチェックする
上で説明したように、アクアリウムで夏対策を行うためには、冷却ファンや水槽用クーラーなど、電気を使用するアクアリウム用品を活用して水温を下げる必要があります。そのため、夏場は、暖房代でアクアリウム関連の電気代が高騰する冬に次いで、電気代が高くなりやすい季節です。
アクアリウムにかかる電気代を管理するためには、このようなワットチェッカー(消費電力計測器)が便利です。例えばこのワットモニターは、消費電力(W)、積算電力量(kWh)、1時間あたりの電気料金、積算電力料金、使用時間、二酸化炭素量の6種類の項目を測定することが出来ます。つまり、水槽用の電源を1つの電源タップから取得するようにた上で、その根本にこのワットモニターを設置しておけば、アクアリウムの維持に必要となった電力や電気料金がひと目で分かるということです。
基本的にはアクアリウム水槽の水温設定値は、飼育生体や水草にとって適切な水温となるように設定すべきです。しかし、あまりにも電気料金が高い場合には、生体等に悪影響の及ばない範囲で、設定温度を高めにするなどの対処が必要になるでしょう。
ワットチェッカーを利用すると、このような判断を行うための材料・根拠となるデータを取得することが出来ます。
蒸発による水位低下に注意する
ここまでに紹介した4つの項目と比べて、やや見落としやすいのがこの「水位が低下しやすい」という観点です。水温の高い夏場はただでさえ水が蒸発しやすく、アクアリウム水槽の水位は低下しやすいです。
それに加え、水が蒸発する際の気化熱を使って水温を下げる冷却ファンでは、意図的に水を蒸発させているためさらに水位が低下しやすいです。水位の低下は、ろ過フィルターを駆動するポンプに負担をかける場合があり、水量が減ることで水質が悪化しやすくなる、水温が変化しやすくなるなど、意外にも様々なデメリットがあります。
夏場は普段よりもこまめに水位をチェックして、足し水の頻度も気持ち高めにしてあげると良いでしょう。どうしても足し水が面倒だとか忘れてしまうという人は、以下のような自動給水を行ってくれるアクアリウム用品を使用するのが良いでしょう。
ちょっと見た目は悪いですが、足し水の頻度は下げることが出来ます。数日間出掛けて家を空けたりする場合には、特に重宝しますね。
アクアリウムの夏対策まとめ
今回は、アクアリウムにとって厳しい季節となる「夏」に向けた対策・心構えなどを紹介しました。色々なテクニックを紹介しましたが、何と言っても夏対策にはまず水温管理が重要です。水温計と冷却ファン・クーラーを使用して、しっかりと25~28℃の適切な水温を維持しましょう。