前回の記事では、テトラ テスト 6 in 1 試験紙の解説を行いました。そのときには、テトラ テスト 6 in 1は多くの項目を測定できて便利な一方、pHについては測定誤差が大きくて使いものにならないので、pHの測定は試薬かデジタルpHメーターで行うべき、との内容でした。
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精度は?使い方は?テトラ テスト 6 in 1 試験紙を解説!
アクアリウムでの熱帯魚やエビの飼育に重要な水質検査薬「テトラ テスト 6 in 1 試験紙」で検査できる水質項目、精度、使いどころ、使い方、使用感等を詳細にレビューします。多数の水質項目を一度に測定できる便利な商品です。
詳しくはこちらのページで紹介しているので、ぜひ一度目を通してみて下さい。
今回は前回の記事を踏まえた上で、私がpHを測定する際におすすめするテトラ テスト ペーハートロピカル試薬を紹介します。製品の概要や内容物、使い方・使いどころから使用感までばっちりレビューしていきます。
テトラ テスト ペーハートロピカル試薬
テトラ テスト ペーハートロピカル試薬は、前回紹介したテトラ テスト 6 in 1 試験紙と同じく、ドイツの老舗アクアリウムメーカー・テトラ社から販売されている水質検査薬の一つです。私もテトラ製品はいくつも持っていますが、アクアリウムではそれだけ有名なメーカーだということです。製品のクオリティは平均的に高く、信頼感のあるメーカーです。
この製品はpHの測定に特化した試薬で、6 in 1のように複数の水質項目を測定することはできません。検査できる項目が少ない分測定精度が高いなど性能が良くなっているのが特徴です。測定可能な範囲は一般的な淡水のアクアリウムに適した範囲となっています。
pHについて
pHとは“potential hydrogen”または“power of hydrogen”の略で、簡単に言えば水質が酸性なのかアルカリ性なのかを示す指標です。pH 7.0が中性、それより低いと酸性で高いとアルカリ性というのは、中学校の理科なんかでも習ったと思います。
アクアリウムにおいてこの指標が重要視されるのは、水草や魚の種類によって適正な範囲が存在するからです。多くの水草や熱帯魚は、その本来の生息地の水質に近い弱酸性の水を好みます。他にも弱酸性の水には二酸化炭素の溶存量が多いとか、有害なアンモニアがイオン化せずに存在する量が少ないといったプラスの効果があり、淡水のアクアリウムでは一般的には弱酸性の水を維持しようとする場合が多いです(もちろん飼育する生体によって例外はあります)。
しかし、水換えに使用する水の元々のpHや飼育している生体の種類・量、底床やレイアウト素材に何を使っているかによってもpHの値は変化するので、その数値をある程度コントロールするためには、まず正しい値を知るための検査が必要となります。
内容物
トロピカル試薬の内容物は上の写真のとおりです。pH試薬(10ml)とテスト用のプラスチック容器、比色紙(カラーサンプル)と取扱説明書が付属しています。この試薬1つでおよそ50回の水質検査を行うことができます。
比色紙にはpH 5.0、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、10.0のサンプルカラーが掲載されています。それによるとこの試薬は酸性が強いほど黄色く、アルカリ性が強いほど青~紫色を示すようになっています。この性質、中学校の理科で習った、液体が酸性・中性・アルカリ性のいずれかを調べる薬品のBTB溶液に似ていますね。試薬の成分については説明書などにも言及はありませんが、恐らくBTB溶液が主な成分なのではないでしょうか。
ラインナップ
テトラ社製の水質検査薬であるテトラ テスト シリーズには色々な項目を検査できる水質検査役がかなりたくさんありますが、ここではペーハートロピカル試薬と関連が深いものを紹介します。
まず、ペーハートロピカル試薬の海水版としてテトラ テスト ペーハーマリン試薬があります。私はこれを使ったことがないので詳しくは分かりませんが、多分比色紙のサンプルカラーの範囲が違うだけなんじゃないかなと思います(一般的に海水の方がpHが高いです)。
また、ペーハートロピカル試薬には詰替え用というか、補充用の試薬のみの販売もあります。比色紙やテスト容器は付属しませんが、基本的にはその分安いです。追加購入の際はこちらを買うのも良さそうですね。
他にもpH・KHを調整することのできるテトラ PH/KHプラス・テトラ PH/KHマイナス 250mlなどの調整剤もあります。水質調整剤の使用には賛否両論あるので、使う際には必要性や効果を良く検討してからにする方が良いでしょう。
使いどころ
ではこのテトラ テスト ペーハートロピカル試薬は、どんな場面で役に立つのでしょうか。pHを測定したくなるような、トロピカル試薬の使いどころを紹介していきます。
水草や生体の調子が悪い時に
水草の多くは弱酸性の水を好みます。その理由は色々ありますが、一番大きな理由はアクアリウムに用いられる水草の多くがアマゾン原産であり、その原産地アマゾンの水質が弱酸性だからです。同じように生体も種類によってそれぞれの原産地の水質を好みます。魚では弱酸性を好むものが多いですが、アフリカンシクリッドなどは弱アルカリ性くらいの水質が良いようです。
魚や水草の調子が思わしくない時は、pHの値がその生き物に合っていない可能性があるので検査してみると良いでしょう。
水換えタイミングの目安に
大型魚など餌をよく食べて水を汚しやすい生体を飼育していると、どうしても生物濾過の最終生成物である硝酸塩が蓄積します。硝酸塩は水質を酸性に傾ける傾向があるので、こういった水槽ではどんどん水質が酸性に傾いてしまいます。あまり水が酸性に傾いていると魚の皮膚がボロボロになったりと悪影響が出てくるので、その予防のためにも、硝酸塩やpHを測定して適切な水換えのタイミングを掴んでおきたいところです。
使い方
では次に試薬の使い方を紹介していきます。
まずはテストする水槽の飼育水で試験管をすすぎます。
今回も前回と同様に、メイン水槽である90cm水槽の水質を測ります。
試験管の目盛りを参考にして飼育水を5ml取り出します。
試薬を7滴分だけ滴下します。
滴下後はこんな感じになりました。
付属の試験管の蓋を閉め、軽く振って混ぜます。
混ぜたら試験管と比色紙を垂直に持ち、テスト溶液の色と最も近い比色紙の色を探します。一致した色がpHの値です。テスト後は水道水で試験管をすすいでから片付けます。
今回の場合だと大体pH 5.0程度といったところでしょうか。ちょっと低すぎですね…。pHは高すぎても低すぎても生体の負担になるので、少し調整の必要があるかもしれません。とりあえずのところは換水が一番簡単な対処法ですね。
使用感(レビュー)
テトラ テスト ペーハートロピカル試薬の製品概要や使いどころ・使い方を紹介したところで、実際に私が使用してみた感想をまとめてみます。
測定範囲の広さ・精度は◎
6 in 1ではpHの測定範囲は6.4~8.5でしたが、この試薬だと5.0~10.0まで測定できます。淡水ではソイルなどを使っているとpH 6.4は簡単に下回ってしまうので、この測定範囲の広さは大きなポイントですね。まあ精度なども考慮すると6 in 1でpHを測定するというのは実際のところ無理な話です。やはりpHを測定するなら試験紙ではなく、精度の高い試薬かデジタルpH計を使いたいです。
測定は少し面倒
試験紙タイプの検査薬だと水に手を触れることなく水質を検査することができますが、試薬タイプはサンプルの水を取り出さないといけないのでどうしても手が濡れてしまいます。個人的には手が濡れると洗ったりしないといけないので結構面倒に感じます。スポイトなんかを使って水を吸い出せば手は濡れませんが、それはそれで面倒です。この辺りは今後改善されると嬉しいですね。
もしかして…BTB溶液を買えばいいんじゃない?
この記事を書いている途中で思いついたんですが、別にテトラの試薬を買わなくてもBTB溶液を買ってそっちを使えばいいんじゃないでしょうか…? AmazonあたりではBTB溶液が600円位と、ペーハートロピカル試薬よりもかなり安く売っています。アクアリウムの専用品が同等の性能の一般的な商品よりも高いのは周知の事実ですから、これもまた当然ですよね…。テトラの製品ですから魚毒性などの点で工夫がされているのかもしれませんし、私もBTB溶液を買って使ったことはないのでよく分からない部分もありますが、有力候補の一つにはなると思います。もしBTB溶液で水質検査をしている人がいたら、ぜひどんな感じか教えて下さい。
頻繁に測定するならデジタルpHメーターがおすすめ
コスト・手間を考えると、水槽がいっぱいあったりして頻繁に水質検査をするのであれば、試薬を買うよりもデジタルpHメーターを買ったほうがお得な場合があります。確かに初期投資は結構かかりますが、デジタルpH計は長く使えるのに対し試薬は50回しか使えません。デジタルpH計の寿命内で何回測定するか考え、測定1回あたりの値段が安くなる方を使うのが賢い商品選びだと思います。
今回はpHの正確な測定に役立つ、テトラ テスト ペーハートロピカル試薬を解説しました。水質検査なんてアクアリウムをやっていないとまずやることはないですから、一度くらいは試してみるのをおすすめします(笑)。意外に水質検査そのものが実験みたいで楽しい!なんてこともありますからね!