魚やその他の水棲生物を飼育するには水質を適切に維持することが重要です。ですが水質は目で見るだけから判断することはできません。一見綺麗に見える水でも、水質を測定してみると実は汚れていたというのはよくあることです。
そんな水質を検査するアクアリウム用品の代表的なものとして、テトラ テスト 6 in 1 試験紙という製品があります。今回はこの商品の精度や使い方、注意点などを詳しく解説します。熱帯魚やエビ、水草などを上手く育てるためにも、水質に敏感なキーパーでいるようにしましょう!
テトラ テスト 6 in 1 試験紙
テトラ テスト 6 in 1 試験紙は、アクアリストなら誰もが知っているドイツのアクアリウム用品メーカー「テトラ(Tetra)社」から販売されている水質検査薬の一つです。水質検査薬には試験紙タイプと試薬(液体)タイプがありますが、こちらは試験紙タイプになります。検査したい水に試験紙を浸し、薬品が付いている部分の色の変化を読み取ることで水質を測定します。
これひとつで6つの水質に関する項目を1分程度で測定できる簡単さが特徴です。水質検査薬としては最もよく利用されているものの一つだと思います。
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pH測定を正確に!テトラ テスト ペーハートロピカル試薬
pHの正確な測定に役立つ、テトラ テスト ペーハートロピカル試薬を解説します。試験紙ではなく試薬タイプなので、精度が高いのが最大の特徴です。テトラ テスト ペーハートロピカル試薬の効果・使い方・レビューなどをまとめます。
ちなみに試薬タイプの水質検査薬の1つで、pHの検査に特化した「テトラ テスト ペーハートロピカル試薬」については上のページで解説しています。測定できる項目は少ないですが、制度が高いのが特徴です。この記事と合わせてぜひ読んでみて下さい。
また、この商品には使用期限があるので注意してください。私の購入したものは大体2年位で消費期限切れになる感じでした。商品の外箱に期限が書いてあるので、気になる方は購入時にチェックするようにして下さい。
内容
中身は上の写真のような感じです。フタには乾燥剤がついていて、試験紙が長持ちするようになっています。内容量は25枚となっています。普通に使えば25回使用できるわけですが、工夫次第でもっと使用回数を増やせます。詳しくは下の方の使い方にて。
精度
試験紙タイプの水質検査薬は試薬タイプに比べて測定誤差が大きいと言われてます。それに加えて読み取りも難しいので、はっきり言って測定精度は悪いです。特にpHの測定は誤差が大きくて正直なところ使い物になりません。
測定結果に正確性を求めるのであれば試験紙ではなく試薬タイプ、さらに言えばpHのようにデジタル測定器があるものについてはそちらを使うほうが良いです。この試験紙についてはNO2、NO3などの目安を安価に測定できるという程度に認識しておく方がいいです。
その他の水質検査用品
アクアリウム用の水質検査用品にはものすごくたくさん種類があります。6 in 1は淡水用の総合試験紙ですが、海水用だとテトラ テスト 5in1 マリン試験紙というのがあります。その他にもアンモニア試薬や溶存二酸化炭素量を測る試薬もありますし、高級なものではpHを常時監視してくれるpHモニターなんてものもあります。
しかし持っていないと困るものは本当に一部で、あとはあれば嬉しいという感じです。実用に際しては本当に使うものだけを買えば良いと思います。そういった意味では、最初にいろいろな検査薬をまとめ買いしたりするよりは、必要なときに必要なものを買う方が賢いかもしれません。
テトラテスト 6 in 1で検査できる水質項目
テトラ テスト 6 in 1 試験紙では、pH(ペーハー)・KH(炭酸塩硬度)・GH(総硬度)・NO2(亜硝酸塩)・NO3(硝酸塩)・Cl2(塩素)の6つの指標について水質を検査する事ができます。以下でそれぞれの項目について簡単に説明していきます。
pH(ペーハー)
pH(potential hydrogen、power of hydrogen)は理科の授業でも習うので割と親しみ深いのではないでしょうか。ざっくり言えば水質が酸性なのかアルカリ性なのかを示す指標です。pH 7.0が中性、それより低いと酸性に高いとアルカリ性に傾いているという感じです。
なぜこの指標が重要視されるのかというと、水草や魚の種類によって適正とされる範囲があるからです。多くの水草や熱帯魚は弱酸性の水質を好むと言われています。基本的には生息地の環境に近い水質を好むということなのですが、二酸化炭素の溶存量が多いとか有害なアンモニアがイオン化せずに存在する量が少ないといった理由もあります。
水換えに使用する水の元々のpHや飼育している生体の種類・量、底床やレイアウト素材に何を使っているかによってもpHの値は変化するので、正しい値を知ろうと思うと検査薬による測定が必要です。
6 in 1での測定範囲は6.4~8.4で0.4刻みです。環境によってはもっと低いpHになっている場合もあるので、ちょっと測定範囲が狭いです。
KH(炭酸塩硬度)
KHは化学の分野では炭酸塩硬度を表し、炭酸水素イオン(HCO3-)と結合しているカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の合計した量を指します。しかしアクアリウムにおいてはこの用語は正しく扱われておらず、KH=炭酸水素イオン濃度=アルカリ度となってしまっています。ここらへんの話は色々とややこしいので割愛します。気になる人はググればたくさん情報がありますよ。
炭酸水素イオン濃度を測定すると何がわかるのかというと、それはpHの下がり難さです。またpHと照らし合わせることで、水草の育成に重要な水中の二酸化炭素濃度もわかります。大雑把に言えばKHが低いとpHが低下しやすくなるため、水草水槽のようにpHを低めにしたい場合はKHは低い値が好まれ、逆に大型魚を飼っている場合などpHが下がりすぎることのある環境では、あまり低いKHは好まれないようです。
測定範囲は0~20°dHで、0、3、6、10、15、20の値について比較用の色が示されています。
GH(総硬度)
GH(general hardness)は水中のカルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)の総量です。KHは炭酸イオンと結合したCa2+、Mg2+の量だったので本来はGH≧KHのはずですが、アクアリウムではKHは炭酸水素イオン濃度の事になっているのでかならずしもGH≧KHとはなりません。
水草を育成する場合、種類によって硬度を要求するものや逆に硬度があると育たないものがあります。パールグラス系はだいたい硬度が必要で、逆にホシクサなどはかなり硬度の低い環境でなければ育ちません。またエビなど甲殻類はある程度の硬度がないと脱皮不全を起こしやすくなるとされています。
石や砂、貝殻のようにカルシウム・マグネシウムを含むものを水槽に入れるとGHは上昇し、ソイル・ゼオライト・ソフナイザーのようなCa2+、Mg2+を吸着するもの使ったりピートモスなどイオンと結合する腐植酸を出すものを入れたりするとGHは低下します。
測定範囲は0~16°dHで、0、4、8、16の値について比較用の色が示されています。
NO2(亜硝酸塩)
生体の糞や食べ残しから発生し、水の汚れの原因となり生体に毒性をしめすアンモニアが分解されてできるのが亜硝酸塩です。亜硝酸塩にも毒性があり、アクアリウムにおいては水槽内に発生していてはいけない物質です。きちんと濾過が働いている環境ではこの亜硝酸塩も分解されているので検出されません
測定範囲は 0~10mg/Lで、0、1、5、10の値について比較用の色が示されています。水槽の立ち上げ初期を除いて、亜硝酸塩が検出されるのは濾過がきちんと働いていないかなりマズイ状況だと言えます。
NO3(硝酸塩)
アンモニアが亜硝酸塩に分解され、その亜硝酸塩がさらに分解されてできるのがこの硝酸塩です。アンモニア・亜硝酸に比べるとかなり毒性は低いですがそれでも水槽内に溜まり過ぎるとあまり良くありません。また硝酸塩濃度が高くなるとコケが発生しやすくなるとも言われています。一般的な環境ではこれを分解するのは難しいので、水換えによって水槽から排出します。
測定範囲は 0~250mg/Lで、0、10、25、50、100、250の値について比較用の色が示されています。この数値が日常的に高い値になるようだと、水換えの頻度を増やしたほうがいいと言えます。
Cl2(塩素)
ご存じの通り水道水の殺菌に使われているのが塩素です。別名カルキですね。アクアリウムに使う水は水道水からカルキを抜いて作る場合がほとんどだと思います。
人間にはなんともない物質でも魚のような小さな生き物には有害なのでカルキ抜きなどで無害化しているわけです。それが本当に無害化できているか、水中に残存していないかをチェックするのがこの項目を測定する理由ですね。
測定範囲は0~3mg/Lで、0、0.8、1.5、3.0の値について比較用の色が示されています。ただし日本の水道水の残留塩素量は0.8mg/Lもないことがほとんどですので、6 in 1での測定にどこまで意味があるかには疑問が残ります。
テトラテスト 6 in 1dで検査できない水質項目
水質項目は上で紹介した以外にも多くあり、テトラ テスト 6 in 1 試験紙では測定できないものもあります。その中でもアクアリウムや水棲生物飼育に関係があるものを紹介しておきます。
NH3/NH4+(アンモニア)
上の方にも書きましたが、生体の糞や食べ残しから発生し、水の汚れの原因となり生体に毒性を示す物質です。これが検出されないようにするのが濾過装置を使う理由の一つです。
普通は水槽の自らは検出されません(というか検出されるような環境では魚を長期間飼育できない)が、濾過の立ち上げ直後には検出されます。濾過の立ち上げ時には水質検査を頻繁に行い、アンモニアの量が減っていくのをみて濾過の立ち上がりを確認します。アンモニアは亜硝酸塩に分解されていくので亜硝酸塩の量の減少で濾過の立ち上がりを確認することもできますが、アンモニアが亜硝酸に分解され始めるまでタイムラグがあるのでできればアンモニア量を確認できるようにしておいたほうが安心です。
TDS(導電率)
厳密にはTDSと導電率は違うのですがここではそれはおいておきます。導電率は水の電気の通し安さを表し、純水では0ですが水に不純物が溶けていると数値が上昇します。なのでこれを測ると水にどのくらいの物質が溶けているのかが分かります。
不純物と言ってもがいのある物ばかりではなく、生体が生きていくのに必要なミネラルなども含まれます。なので一概に低い数値がいいというわけではなく、あまり高すぎるのは良くないという程度です。また導電率をある程度まで下げてやらないと繁殖をしにくい魚なんていうのもいます。GHの増減に連動するので簡単に計測できるTDSが使われることも多いようです。ビーシュリンプなど水質に敏感な生体を飼うときや、ミネラルなどの添加を行う場合に測定されている印象です。かならず測定できないと困るようなものではありません。
テトラテスト 6 in 1の使いどころ
テトラ テスト 6 in 1 試験紙で検査できる水質項目や内容物、精度など一通りの紹介をしました。ところで、この試験紙は一体どんな場面で役に立つのでしょうか。次は6 in 1 試験紙の使いどころを解説します。
水槽立ち上げ時
水槽の立ち上げ直後やリセット時のように水質が安定していない時には水質検査薬が活躍します。とくに亜硝酸塩や硝酸塩のような濾過の立ち上がりを確認できる項目はこまめにチェックした方がいいです。私も普段はあまり水質検査はしませんが、水槽の立ち上げ時には2~3日ごとに水質検査をすることもあります。
水草や生体の調子が悪い時
水草や生体の調子が悪い原因が水質にあることも多いです。なので、不調の原因を特定するために水質検査をすることが有効な場合も当然多くなります。
水草や生体には適切なpHや硬度、硝酸塩濃度の範囲があることがあり、その範囲から外れると調子を落としてしまいます。水質検査の結果とインターネットなどで調べた情報を照らしあわせ、水質が適切な範囲にあるか確認してみると良いでしょう。
自由研究などにも
小中学校などで夏休みの課題として自由研究をするように言われることもあるかと思います。そんな時にこの試験紙を使えば水質についてのデータが取れるので、なにかと活躍することもあるはずです。環境問題についての研究なんかと愛称が良さそうですね。
テトラテスト 6 in 1の使い方
ケースから試験紙を一枚取り出します。この時は試験紙の上側の端を持ち、薬品が付いている出っ張りの部分は触らないようにします。今回はメイン水槽である90cm水槽の水質を測ってみます。
飼育水に1秒程度浸します。本当は別の容器に飼育水を取り出してそこに浸したほうがいいんですが面倒なのでこうしてます。
1分待ちます。水がつきすぎたなと思ったら余分な水分はティッシュなどで拭いて構いませんが、やはり薬品が付いている部分はいじらないようにします。
ケースに付いているサンプルカラーリストと比較して水質を読み取ります。時間の経過とともに色が変わっていってしまうので読み取りは素早く行います。
この場合だと大体硝酸塩が50mg/L、亜硝酸塩は0、GHが8~16の間くらい、KHはサンプルカラーと色が違うのでよく分からない、pHは6.4付近、塩素は0.8mg/Lといったところだと思います。ですがpHをもう少し精度の高い液体タイプの試薬で測ると5.0くらいでしたし、魚も普通に飼育出来てる水槽なので残留塩素は0.8mg/Lもあるわけがありません。カルキ抜きの添加量が雑で規定量よりも多くなりがちなので塩素の残留は殆ど無いはずです。KHに至っては読み取り不能ですしね…。硝酸塩と亜硝酸塩の値は亀水槽で水換えから2日後ということを考慮するとそこそこ妥当な数値だと思います。テトラ テスト 6 in 1 試験紙の精度はせいぜいこの程度だと思ってください。
…しかしこの記事のために久しぶりに水質を測ったんですがpH 5.0はちょっと低すぎですね。しかも水換え2日後なのに…。亀水槽なのでどうしてもpHは低くなりがちなはずですがちょっと予想を超えていました。前は底床が大磯砂でアルカリに傾きやすかったんで気にしてなかったんですが、田砂に変えたせいでその効果がなくなってたんですね。これはちょっとどうにかしないといけないかも。
お得な使用法
テトラ テスト 6 in 1 試験紙は25枚入りですが、この量はちょっと少ないかなという感じもします。普通に使っていればそうそうなくなりはしないですが、できれば長く使いたいですよね。
そんな時にはハサミなどで試験紙を縦に分割してしまいましょう。2枚にすれば2倍、3枚にすれば3倍、4枚にすれば4倍の回数使用できます。単純ですが以外と自分では思いつかないですよね。裁縫用の裁ちバサミなんかを使うと裁断の精度が高くなって細かく分割できます。ちなみに私は4分割して使っていましたが、全然なくならずに使用期限が切れそうなのでそこまでする必要はなさそうです(笑)。
注意点
ここまで色々と水質検査の必要性や項目について解説しましたが、くれぐれも数値ばかりを追いかけないようにしましょう。結局は生体や水草を状態よく飼育することが目的であり、pHがいくらで硝酸塩濃度は~mg/Lで…みたいな水を実現することが目的ではありません。
水質は色々な項目が複雑に絡み合っているので、それぞれに相関関係がありすべての項目を自分の意図通りの値にするのはほとんど不可能です。それに多少数値が理想値から外れていても生体の調子が良ければそれでいいのです。むしろそうした少しの差を無理に修正しようとしてバランスを崩してしまうほうが恐ろしいです。水質だけではなく水槽の状態をよく観察するようにしましょう。
テトラテスト 6 in 1の使用感・レビュー
ここまでに6 in 1 試験紙の概要や使いどころ、使い方などを紹介してきました。次は実際に私が使用してみて感じた、使用感のレビューをまとめます。
日常的に使用するものではない
使いどころの項目で、水質の安定しない時には水質検査薬が活躍すると書きましたが、それは裏を返せば水質が安定していれば水質検査薬はあまり使うことがないということです。立ち上げからある程度時間が経つと水質は安定してくるので、こまめに検査してもあまり変化がありません。NO3濃度を検査して水換えのタイミングを図る事に活用したりも出来ますが、水換えは週に1回や2週間に1回など定期的に行う場合のほうが多いでしょう。
pHなどは継続的に計測して変化を追うことで水槽のいろいろな状態がわかってくるとも言われますが、この試験紙では精度が悪くてあてにならないのでそういった用途には向きません。試験紙は時間の経過とともに劣化してさらに精度が悪くなりますし、あまりたくさん購入しても使い切れないと思います。立ち上げのサポートくらいに思っておくと良いと思います。
目測での判断は難しい部分も
上の方にも書きましたが、テトラ テスト 6 in 1は試験紙の色の変化をカラーサンプルと見比べることで水質を測定します。カラーサンプルにはかなり限定的な色しか載っていないので、見比べても水質がよくわからないということも多々あります。そういった面で使いにくさを感じることもあるかもしれません。
安さは嬉しい
精度の問題はあるとはいえ、一度に6種類の水質項目を検査できてこの値段というのはお得です。一つ一つの試薬を購入するとなかなかの値段になりますが、6 in 1なら1000円ちょっとなので非常に手を出しやすいです。常に高精度の測定が求められるわけでもないですし、上手く使えばとても便利だと思います。
テトラテスト 6 in 1 試験紙のまとめ
今回はテトラ テスト 6 in 1 試験紙について解説しました。アクアリウムにおいて水質管理はとても重要であり、水質を検査することもまた重要です。この試験紙では多くの項目を測定できますが、精度にやや難があるのであくまでも目安程度に考えておくのが良さそうです。ですが目安とはいえあるとないとでは全然違うので、1つは水質検査薬を持っておくことをおすすめします。あくまでも目的は水槽の状態を良くすることで、水質を理想値に近づけることではないということをお忘れなく!