トカゲ、イモリ、サンショウウオ、カエル、ヘビ、ヤモリ、レオパ(レオパードゲッコー)、タランチュラ、亀、熱帯魚など、ペットとして人間に飼育される変温動物(冷血動物)は数多く存在します。そしてこれら変温動物のエサも、同様に非常に多岐に渡ることが知られています。具体的には、植物のみを食べる草食動物、生きた他の動物からタンパク質を摂取する必要のある肉食動物、そして植物も動物も食べる雑食動物がいますね。
特に変温動物に関して言えば、昆虫やその他の無脊椎動物を主に食べる「昆虫食性動物(insectivore)」が大きな存在になってきます。多くの肉食性爬虫類・両生類が、必要な栄養を摂取するために昆虫などの無脊椎動物を食べるため、この昆虫食性動物に分類されるからです。あなたの買っているペットが昆虫食性動物なら、このページがきっと役に立つと思いますよ!
なお、この記事は、アメリカのペット業者「Petco」とのコラボレーションで、以下の記事をベースとしてK-ki(K-ki@AquaTurtlium)が執筆しています。元記事は英語ですが、有用な情報がまとめられているので興味のある方は読んでみてくださいね。
参考Before You Bug Out, Here’s What You Need to Know About Insects as Feed
昆虫食性の生き物についての基礎知識
自然界では、1~2種類の昆虫のみを探して食べ続けるサバクツノトカゲのような生き物がいる一方で、一日に10種類以上もの昆虫を食べる生き物もいます。このような傾向の違いにより、一口に昆虫食の生き物と言っても、その好みや必要なものは非常に幅広いです。こういった生き物をペットとして飼育するためには、適切な餌やりができるように、まずはその生態をしっかりと調べることが重要です。
また、餌昆虫は種類により、含まれる栄養素やその比率が異なる点にも注意しましょう。従って、特定の数種類の昆虫しか食べない生物(スペシャリスト)の爬虫類を飼っている場合でも、その種に適した栄養素を含んだ餌を与えられるように、多様なエサの選択肢を用意しなければなりません。
一方で、色々な種類の餌を食べる生物(ジェネラリスト)の爬虫類や両生類に対しては、多種の餌昆虫を与えることで「色々な種類のエサを食べる」という欲求を満たしてやる必要があります。これは場合によっては、多様な栄養素を摂取すること以上に重要です。
必要な栄養量は、爬虫類・両生類の種類によって大きく異なります。例えば、ガーターヘビとボールパイソンはどちらもヘビですが、ガーターヘビは昆虫、ボールパイソンはげっ歯類というように、両者は全く異なる餌を食べています。もしもこの2種に同じような餌やりを行えば、不幸な結果になるのは目に見えていますよね。
飼育している昆虫食性の爬虫類やクモ、両生類の種類によらず確かなことは、あなたのペットが栄養面で満足できるかどうかは、あなたに懸かっているいうことです。そのため、ペットがどんな餌を必要としているか、どんな餌を好むかを、ずっと調べ続けていく必要があります。もしも分からないことがあれば、爬虫類・両生類分野の経験豊富な動物学者や獣医に相談しましょう。
多くの昆虫食性両生類・爬虫類を飼育するためには、以下の項目を実現できる必要があります。両生類・爬虫類を飼育する前に、実現方法をよく考えておいてください。
- 多量栄養素と微量栄養素のバランスを調整できること
- 種類の異なる昆虫・無脊椎動物を入手できること
- 複数種の餌昆虫をキープ・準備するための複数の方法を理解できること
昆虫を食べるペット
地球には数千種の爬虫類、両生類、魚類、そしてそれ以上に多種のクモや昆虫がいます。研究者によれば、昆虫の種類数は90万種を超え、全動物種の80%を占めるそうです。そしてこの数十万種類の爬虫類、両生類、魚類、そして昆虫類のうち、昆虫食性のものは、実はほんの一握りに過ぎません。
ペットとしてよく飼育される変温動物のうち、餌の一部に昆虫を必要とするのは、多くのトカゲ類、オオトカゲ(モニター)類、サンショウウオ、イモリ、カメ、カエル、魚、ヘビなどです。イグアナのような一部の爬虫類では、昆虫を食べるのは幼体時だけで、あとは植物を食べているときに偶然食べてしまう程度です。こういった種類の爬虫類に対しては、日常的な餌として昆虫を与える必要はありません。
また、この他にも、ペットとして飼育されることのある昆虫食性の無脊椎動物として、甲虫やカマキリ、サソリ、タランチュラ、その他の大型肉食昆虫などが存在します。
生き物の飼育方法は種類によって根本的に異なります。ここまではペットの餌としての昆虫を話題にしてきましたが、そもそも昆虫をエサとして利用する前に、飼い主が特に注意しておくべきことがあります。実際には、分類が少し異なると食性が全く異なるような生き物もいるということです。その最たる例がカメです。
完全な草食性のカメがいる一方で、雑食性の種類もいますし、中には動物性タンパク質の餌を中心に摂取する亀もいます。爬虫類や両生類の餌を一般化して語ることはできず、仮に同じ種類のであっても個体による差異もあります。どんな種類の昆虫をエサとして与えていくか決める際には、まず自分の飼育している生体の種類と好みを調べる必要があります。
昆虫から摂取できる主な栄養素と役割
爬虫類や両生類のエサを考えるときには、栄養素の問題は切り離せません。まず、昆虫を食べることによって、主にどんな栄養素を摂取することができるのか、その栄養素にはどんな働きがあるのかをまとめます。ただし、爬虫類や両生類の栄養学は完全に確立されているわけではありません。どんな栄養素がどれだけ必要か、不足するとどうなるかということはまだわからない部分も多いです。ここで紹介するのはあくまで目安だと考えて下さい。
また、昆虫に限らず爬虫類にとって必要な栄養素をまとめたページとして、以下のページがあります。
-
亀のエサの種類とおすすめ!あげ方や食べない時の対処も解説
亀の飼育で重要な亀のエサについてまとめます。爬虫類に必要な栄養素とバランス、配合飼料・生き餌・乾燥餌などのエサの種類、与えてはいけないエサ、エサの与え方等を解説します。亀以外にトカゲ・ヤモリ・ヘビ等の飼育にも役立ちます。
亀中心の内容になってはいますが、多くの爬虫類にも応用できるはずです。興味のある人はこちらもあわせて読んでみてください。
タンパク質
タンパク質は血液や筋肉などの体をつくる主要な成分であるとともに、生命の維持に欠かせない酵素などになります。また、エネルギー源として使われることもあります。
爬虫類や両生類のような変温動物は、体温を維持するためのエネルギー源となる炭水化物はあまり必要としません。そのため亀用の配合飼料にも炭水化物はあまり含まれていませんし、特に与える必要もありません。従って、このタンパク質がエサから摂取する主要な栄養素になります。
ビタミンA
ビタミンはエネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、他の栄養素が上手く働くための補助を行います。ビタミンの必要量は少ないですが、体内ではほとんど作れないため食べ物から摂取することが重要です。
ビタミンAは網膜細胞の保護に利用され、欠乏するとまぶたが腫れて眼球が飛び出したり、目が開かなくなる「ハーダー氏腺炎」という病気になる場合があります。
ビタミンE
ビタミンEは体内で抗酸化物質として働き、不飽和脂肪酸が酸化されるのを防ぐと考えられています。不飽和脂肪酸が酸化されると、細胞機能の低下や、動脈硬化、血栓の形成を誘発してしまいます。
ビタミンEに限らず、ビタミンは重要な栄養素ではあるのですが、ビタミンを摂り過ぎると「摂取過剰症」という病気になってしまうため、摂取量には注意が必要です。
脂肪
脂肪は主にエネルギー源になります。また、体の中でつくることができない必須脂肪酸が含まれていて、体内のホルモンの材料などになります。さらに、ビタミンA・D・E・Kなどの脂溶性ビタミンの吸収にも役立ちます。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸には、血液中の脂質濃度を下げる働きがあり、中性脂肪量を減少させ、心臓病の危険を低減させてくれます。嗜好性の高い餌は脂肪を多く含むものが多いため、そのようなエサを与える際には、上手くオメガ3脂肪酸も一緒に摂取させるとよいでしょう。
ルテイン
ルテインには、紫外線から網膜を保護する作用があります。爬虫類は紫外線を浴びることで体内でビタミンD3を合成し、骨格を形成するカルシウムの吸収に役立てているのですが、その際に目に強い紫外線を浴びすぎると、四角機能に障害が発生する可能性があります。ルテインは紫外線を多く浴びる必要のある爬虫類にとって、非常に重要な栄養素です。
エサの栄養強化:ガットローディングとダスティング
どんな両生類・爬虫類であっても、ペットとして飼育されているのであれば、欲求が満たされるかどうかは飼育者次第です。爬虫類・両生類が持つ欲求には色々なものがありますが、清潔で環境の整った、適切な広さで、エサの捕食にも適した居住環境を整えてほしいと思うのも、その一つと言えるでしょう。ペットとして両生類・爬虫類を飼うのなら、こういった飼育環境を用意する必要があります。
さらに昆虫食性動物の場合、エサとしてその種に適した昆虫や無脊椎動物を与えるだけでは不十分です。これは、エサとして与えられる昆虫の栄養価は、その昆虫が食べているもの強く影響されるからです。飼育しているトカゲ、カエル、カメ、ヘビなどが、不適切な餌によって病気や骨疾患にかかったり、その他の健康問題を引き起こしたりするの防ぐには、餌を慎重に準備して与えることが重要です。
その具体的な準備方法として、給餌前のエサ昆虫に対して「ガットローディング」や「ダスティング」がよく行われています。これはエサとなる昆虫がバランスの取れた完全な栄養を含むようにするための栄養管理技術で、以下でその具体的な方法を解説します。
ガットローディング
ガットローディング(Gut Loading)は、簡単に言えば、餌になる昆虫の栄養価を高めるために、餌昆虫自体に非常に栄養価の高い食べ物を食べさせておくことを指します。昆虫は無脊椎動物であり骨格を持ちません。従って、両生類・爬虫類の餌という観点で昆虫の体組成を考えるとカルシウムが不足しています。しかし一方で、リンは非常に豊富に含まれています。
もしも両生類や爬虫類が、ガットローディングが施されていない昆虫だけを食べ続け、サプリメントの補助もない場合には、カルシウムとリンの栄養バランスが悪くなり、その結果として、時間とともに代謝性骨疾患(MBD:Metabolic Bone Disease)に陥ってしまいます(自然界では、土などに含まれるカルシウムを直接摂取していると考えられています)。
飼育下で、サプリメントを与えられていない昆虫食性の両生類や爬虫類は、体の代謝に必要な栄養素を供給するため、そして過剰なリンを適切に処理するために、骨に含まれるカルシウムを消費してしまいます。これにより骨から(亀の場合には甲羅からも)カルシウムが失われ続け、骨が柔らかく、脆くなり、歪な形に変形してしまうこともあります。MBDは放っておくと、最終的には非常に危険な状態になってしまう疾患なのです。これを防ぐために、ガットローディングが必要とされるのです。
ガットローディングを行う場合だけでなく、ペットに餌として虫を与える行為全般に言えることですが、与える餌昆虫が、その種に最適な方法で(コオロギはミルワームやローチとは違った方法でガットローディングされます)栄養が整えられているいることを常に確認するよう心がけしましょう。乾燥させてあったり、フリーズドライされた状態の昆虫や、配合飼料を購入した場合には、その餌が十分な栄養を含んでいるか、ラベルを見るなどして給餌前によく確認してください。
ダスティング
適切な栄養バランスを作り出すための2つ目の方法がダスティングです。ダスティングは、専用のカルシウムやマルチビタミンのサプリメントで餌をコーティングしてしまう、という方法です。ダスティングに使うサプリメントとしては、例えばジェックス(エキゾテラ)のカルシウム剤などがあります。
ダスティングは、エサとなる昆虫を爬虫類や両生類に与える直前に行わなければなりません。両生類・爬虫類の獣医であるThomas H. Boyer氏によると、主食として与えられるすべての餌昆虫は、カルシウムの粉末をまぶした状態で与えられるのが望ましいそうです。
ダスティングに使うカルシウムは、グルコン酸カルシウムやクエン酸塩、炭酸塩(生物学的に最も吸収されやすい)、乳酸塩を含め、どんな形であっても、リンさえ含んでいなければ許容されます。また、サプリメントのラベルにどう書いてあろうと、マルチビタミンサプリメントは昆虫食性生物の単一のカルシウム供給源にはなりえないことには注意しておきましょう。
ダスティングの最も簡単な方法は、クリケットシェイカーを使うことです。
適切な量のサプリメントとコオロギなどの餌昆虫を入れ、サプリメントが昆虫の体を包むように優しくシェイカーを振ります。なお、エサとして虫を爬虫類に与える前に、60秒待つようにしてください。使った後のシェイカーは、食器用洗剤で洗うと綺麗になります。濡れた状態で使うと当然ながら上手くサプリメントが虫の体に付着しないので、使用時には乾燥状態となるように洗った後はよく乾かしてください。
餌昆虫の種類と栄養素
カメやトカゲ、カエル、レオパたちの生餌にすることのできる昆虫・無脊椎動物はたくさんいます。しかし、自分の飼育している生体への適合性、入手性、価格、給餌頻度、そしてエサを管理するためにどれほどの情熱と労力を割けるかなどによって、実際にエサとして利用できる種類は限られてきます。
餌昆虫として一般的なのは、コオロギ、ミルワーム、ミミズ、ハニースワーム(ハチミツガの幼虫)、ショウジョウバエなどで、近所のペットショップなどでも入手しやすいでしょう。他にも、バターワーム(Chilean mothの幼虫)、ローチ(ゴキブリ)、カイコの幼虫(シルクワーム)、トマトホーンワーム(トマトスズメガの幼虫)、フェニックスワーム(アメリカミズアブの幼虫)などの選択肢もあります。
コオロギ
コオロギは、多くの昆虫食性ペットにとって主食になる昆虫で、両生類・爬虫類界隈では非常に重宝されています。多くの両生類や爬虫類がコオロギを食べてくれますし、ガットローディングやダスティングを行うことで、栄養価が高く栄養バランスも良くなります。コオロギはガットローディングが容易なため、栄養素やサプリメントをペットに摂取させるのに非常に有効です。
非常に小さなものから大きなものまで、コオロギには多くの種類が存在するため、小さなカエルからオオトカゲまで、多くの生体のエサとして適しています。コオロギは丈夫なので、育てるのも繁殖させるのも容易です。また、安価に入手できることもあり、餌用昆虫の選択肢の筆頭といえます。
コオロギはうまく世話をすると8~10週間程度生きるので、幼虫を買ってきて繁殖方法を確立してしまえば、常に生餌を確保しておくことも出来ます。
コオロギの飼育・管理方法
コオロギを飼育するには、側面に足がかりがなく滑りやすい衣装ケースなどで管理するか、またはクリケットキーパーと呼ばれる専用の飼育ケースなどを使います。飼育ケースは冷暗所に置き、水分補給を怠らないようにしてください。ただし、コオロギに水を与えるときには非常に溺死が起こりやすいので注意しましょう。コオロギの溺死を防ぎつつ水分を与えるための最も簡単な方法は、湿らせたスポンジを使うことです。
コオロギのガットローディング方法
コオロギにはガットローディングのため、市販の高栄養価の飼料をあたえましょう。ガットローディングを行うためのコオロギ用飼料としては、例えばビバリアのコオロギフードがあります。
ただし、ガットローディングを行う際には、与える飼料の栄養価をよく調べ、ガットローディングに適した栄養が含まれていることを確認してください。また、コオロギをエサとして与える前に、数日間ガットローディングする必要があります。ガットローディングを行っている間は、粉ミルク、ジャガイモ、サツマイモ、にんじん、果物、ミックスシード、ナッツ、砕いたドッグフードや糠なども与えます。
ミルワーム(ミールワーム)などのワーム類
生餌として利用可能なワーム類には、ハニーワーム(ハチミツガの幼虫、ワックスワームとも)、ミルワーム、ミミズ、バターワーム、フェニックスワームを含め、多くの種類が存在します。ワーム類はタンパク質と脂肪のバランスに優れ、水分量も豊富で脱水症状の予防にも役立ちます。それぞれの種類に長所・短所があり、主要なエサになりうるものもいれば、「おやつ」やサプリメントの代用品として利用される種類もいます。
ワームの冷蔵保存
ワーム類には低温環境で休眠状態に入る種類が多いため、エサ用ワームの多くは、給餌するまで冷蔵保管できる形で販売されています。休眠状態にのワームは数週間は保管することが出来ますが、数カ月に渡る長期の保存はできません。冷蔵庫から出して室温環境に置くと、ワームは活動を再開し、給餌できる状態になります。
ジャイアントミルワーム(スーパーワーム)のように冷蔵できないものは、プラスチックの飼育ケースに入れて、オートミールやスライスしたポテトをエサに与えて管理します。
ミルワーム
ミールワームやカイコは、多くの昆虫食性の生き物にとって主要な餌の一つとなります。ミールワームはよく見かけますが、外骨格が硬く、それによって栄養価が制限されてしまいます。カイコは、より多くのカルシウムを含んでいます。
ミルワームはビタミンA、ビタミンE、オメガ3脂肪酸を多く含んでおり、他のワーム類と比べると、栄養バランスに優れています。また、ワーム類全般に言えることですが、あまり動き回れないので、エサ皿などに入れて与えることで給餌時の管理が用意になり、生体も食べやすいという長所があります。
ハニーワーム
ハニーワームやバターワームは、栄養面を考えると、他の餌昆虫に比べて2倍のカルシウムを含んでいますが、普通は主食としては利用しません。どちらかといえば「おやつ」という扱いに近いです。脂肪を非常に多く含むため、体重の減っている生体に食べさせることもあります。
ビタミンE、ルテイン、オメガ3脂肪酸を多く含んでおり、嗜好性の高い餌と言えます。
フェニックスワームも同様にカルシウムを多く含み、好き嫌いの激しい生体でもよく食べます。トマトホーンワームの体重は、一般的なコオロギの20倍もあるため、飼育しているカメ、トカゲ、ヤモリ、カエルなどの体重を増やしたいときや、栄養や水分が多く必要なときに役立ちます。
ジャイアントミルワーム
ジャイアントミルワームはその名の通り非常に大きいワームで、英語ではスーパーワーム(superworm)と呼ばれます。一般的なミルワームが2~3cm程度なのに対し、ジャイアントミルワームは4~5cmと2倍ほどの大きさです。
ミルワームに比べると脂肪と繊維質を多く含んでいます。全体としては、ビタミンA、ビタミンE、ルテイン、オメガ3脂肪酸を多く含んでおり、また非常に活発なので、好き嫌いの激しい生体でもよく食い付きます。
ミミズ
ミミズはビタミンAやビタミンEなどのいくつかの栄養素については、とても重要な栄養源であるといえます。ミミズはプラスチックの飼育ケースでガットローディングしながら管理でき、また冷蔵用のものも販売されています。
ローチ・デュビア(ゴキブリ)
ローチ・デュビアのどちらも、餌用に利用されるゴキブリのことを指します。もう少し詳しく言えば、ローチはゴキブリ全体を指し、デュビアはその中の1種の名前です。爬虫類用の餌としてはレッドローチや、デュビアがよく利用されます。ローチの仲間はタンパク質を非常に多く含んでいながら脂肪の含有量は少なく、水分が豊富です。このような特徴は、多くの昆虫食性動物にとって、ローチが理想的な餌であることを示しています。
ただ、結局のところ「ゴキブリ」と言ってしまえばそれまでなので、どうしてもローチは嫌われてしまいがちです。しかし、それを補って余りあるほど多数の長所があることを知っておいても損はありません。
特に、森林性のゴキブリであるデュビアは飼育が簡単です。臭いがなく、飛びも跳ねもせず、手を噛むこともありません。また、壁を登ることが出来ないため脱走せず、鳴かないので静かです。プラスチックのボトルに入れ、果物や野菜、ナッツ、ドッグフードなどを与えて飼育することが出来ます。多産なので、トカゲやカエルの餌として常にストックしてある状態にすることも可能です。デュビアはおよそ12~18ヶ月ほど生き、栄養価の高い餌昆虫の中ではもっとも寿命が長いという点も長所と言えます。
ショウジョウバエ(コバエ)
ショウジョウバエ(コバエ)は小型のトカゲや両生類、そして孵化したての幼体にとって非常に重要な餌です。餌昆虫として利用可能なショウジョウバエは、基本的にキイロショウジョウバエとカスリショウジョウバエ、そしてトリニドショウジョウバエの3種です。カスリショウジョウバエは繁殖スピードが早く、キイロショウジョウバエはカスリショウジョウバエよりも少し大型なのが特徴です。
トリニドショウジョウバエは、カスリショウジョウバエよりも繁殖スピードが早くてキイロショウジョウバエよりも大きいという非常にエサ向きの特徴を持っています。比較的大きな生体には非常に重宝するショウジョウバエです。どの種類も簡単に飼育でき、繁殖させたりしない限り特に餌を与える必要もありません。
トカゲやカエルにエサとして与える際には、ショウジョウバエの飼育ビンを軽く叩きます。こうするとショウジョウバエが瓶の底に落ち、飼育ビンのフタを開けた際に飛んで逃げにくくなります。飼育ビンを叩いてショウジョウバエを底に落とした後、飼育しているトカゲ・カエル等のケージの上でさらにビンを叩いてショウジョウバエを必要な数だけケージに落としてください。
ショウジョウバエは栄養が豊富で多くのペットのエサに適しています。さらにダスティングを行えば、主食にすることも可能です。市販されている羽なしタイプ(ウィングレス)や、羽はあるが飛べないタイプ(フライトレス)のショウジョウバエを利用すれば、仮に給餌するときに逃げ出しても、あたりを飛び回ったりしないので非常に管理が楽になります。また、他の餌昆虫のように音を立てることがなく、非常に静かだという長所もあります。
与えてはいけない餌
ペットの爬虫類や両生類に、エサとしてどんな昆虫を与えればよいかを説明してきましたが、それとは逆に、与えてはいけない生き物もいます。例えば、有毒な生き物、攻撃性が強く危険な生き物、栄養面で不安のある生き物などは、エサとして与えるべきではありません。
餌として与えるべきではない生き物の、具体的な種類を以下で簡単に紹介しておきます。
有毒な生き物
当たり前のことですが、毒を持った生き物をエサとしてトカゲやカエル、レオパなどに与えてはいけません。重大な障害が残ってしまったり、場合によっては死んでしまうこともあります。自然界では食べないような生き物でも、飼育ケージの中という限られた環境では食べてしまう場合があるため注意が必要です。
有毒な生き物としては、例えば次のような例が挙げられます。
- ホタル
- トウブテンマクケムシ(オビカレハの仲間)
- サソリ
- ダニ
サソリやケムシが毒を持っているというのはよく知られていますが、ホタルが毒を持っているということは知らなかった人が多いのではないでしょうか。「知らなかった」で毒のある生き物を与えてしまわないように、エサとして昆虫を与える場合には、その昆虫についてよく調べておく必要があります。
危険な生き物
自然界では基本的に体の大きい生き物が強く、小さな生き物は食べられてしまうことが多いのですが、中には攻撃性が強く、体重差を気にせずに攻撃を仕掛けていくような生き物もいます。このような生き物をエサとして与え、狭いケージ内に飼育生体と一緒にして閉じ込めてしまうと、トカゲやカエルのほうが逆にケガをしてしまう場合もあります。
以下にリストアップしたような危険な生き物は、エサとして与えないようにしてください。
- スズメバチ・ジガバチの仲間
- ミツバチの仲間
- クモ
- ムカデ
- ヤスデ
野生採取した生き物
野外で捕まえてきた生き物をエサとして与えることには、多くのリスクが潜んでいます。採取した昆虫が農薬や化学肥料に汚染されていて、それを食べたトカゲやカエルが中毒症状を起こしてしまう可能性もありますし、寄生虫が潜んでいることもあります。野生採取した生き物は与えないのが基本です。
給餌法とそのテクニック
トカゲ、カエル、熱帯魚、カメ、サンショウウオなどの昆虫を食べる生き物に餌を与える方法は様々です。一般的なのは、生体の飼育ケージに生きた昆虫やその他の無脊椎動物を入れ、自分で捕食させる方法です。
エサとしてマウスやラットなどの脊椎動物を与える場合には、生きた状態で与えることは推奨されません。しかし、昆虫食が主体の生体に対しては、基本的には生きた昆虫のみで飼育したほうが良いでしょう。多くの両生類・爬虫類は動くものしかエサとして認識しませんし、狩りをして獲物をとらえるという行為自体が生体に満足感を与えるものだからです。
与える餌昆虫の大きさ・サイズ
昆虫を食べるトカゲやカエルたちに餌を与えるときには、その生体にとって適切なサイズの昆虫を与えるようにします。経験則ではありますが、一般的には、トカゲに与える餌昆虫の大きさは両目の間の幅よりも小さいものが良いと言われています。一方で愛好家の間では、トカゲの頭の幅の50~100%の大きさの餌が好ましいという意見もあります。
気を付けておくべきなのは、昆虫の外骨格は消化されにくいため、大きな餌昆虫を1匹あたえるよりも、小さな虫を数匹与えるほうが生体の健康に良いということです。与える餌昆虫のサイズには注意し、ペットの両生類・爬虫類の消化系に負担をかけないようにしましょう。
餌昆虫を与える際の注意点と給餌頻度
あまり大きな虫はエサとして与えられないため、給餌の際には、成体が満足できるように小さな餌昆虫を数多く与える必要があります。
餌昆虫の適切な給餌数を把握できるまでは、給餌前に飼育ケージに入れた虫の数を数えておき、数時間たっても食べられなかったものがいた場合は取り除くようにします。そうすることで、餌昆虫が飼育生体に害を与えることを防ぐことが出来ます。
給餌の頻度は、毎日または1日置きと言われますが、若い個体に対しては1日に2~3回程度と、より高頻度で餌を与えます。
生餌を使わない給餌方法
生きた昆虫を与える以外の給餌方法もあります。コオロギやミールワームは冷凍されたものや焼かれたものも販売されていますし、爬虫両生類学者の中には安全面から事前に殺した昆虫を与えるよう推奨している人もいます。
また、他の生きていない餌の選択肢として、乾燥飼料や缶詰タイプの餌もあります。乾燥飼料は給餌前に水に浸し、戻しておくようにしましょう。水で戻した乾燥飼料や缶詰タイプの餌、そしてその他の事前に殺した状態の餌昆虫は、ピンセットで摘んで飼育生体の周りで動かしてやると、実際に狩りをして餌を捕らえる感覚に近くなり、トカゲやレオパの満足度も向上します。この手法は、生きた昆虫を食べさせていたペットを、乾燥飼料や缶詰タイプの餌に餌付かせる際に特に有効です。
生きた昆虫をエサとして与える際の問題とリスク
エサ用昆虫の世話をするのは簡単ですが、余分な手間や時間が掛かることに変わりはありません。そのため多くの人は、餌を与えて成長させたり、飼育ケースを用意したりする必要のない、事前に殺してある餌を使うほうが楽だと考えるでしょう。さらに、コオロギや地虫(コガネムシやカブトムシの幼虫)のように一見無害と思える餌昆虫でさえ、生きたまま与えることにはリスクがあります。
多くの著書を執筆している爬虫両生類学者のMelissa Kaplan氏は、コオロギやミルワームを「大胆不敵」で「飢えている」と表現しています。コオロギやミルワームは、十分な餌のないトカゲたちの飼育ケース内に放置されると、トカゲやカエルの皮膚をかじったり、目から水分を奪ったりする、とのことです。与えた餌昆虫の行方をしっかりと認識しておくことは非常に重要だということですね。
缶詰タイプのものや混ぜて作るタイプのような爬虫類・両生類向け市販飼料は、この分野では比較的新しく登場したものです。栄養面での健全性と、自分の飼育している昆虫食性の爬虫類・両生類に適しているかを常に新調に確認し、給餌するようにしましょう。市販飼料の中には、補助的にサプリメントを試用する必要のあるものも存在します。必ずパッケージを読み、含まれている微量栄養素・多量栄養素を確認して、適切かどうか判断するようにしてください。
多くの飼育者は、生きた昆虫と事前に殺してある昆虫の両方を使い、飼育生体に適した栄養を与えられるように工夫しています。生餌や乾燥飼料、缶詰などという分類にこだわりすぎず、適切な栄養を与えるために最善となる方法を追求してください。
エサ用昆虫のまとめと全体的な注意点
両生類や爬虫類に餌を与えるときには、常に安全性と健康面を優先しましょう。与えようと思った餌昆虫が病気のように見えたり、意図せず死んでいたりした場合は、給餌しないようにしてください。
また、コオロギやミルワームなどの餌昆虫をトカゲ・カエルの飼育ケージに入れたら、数時間以上放置しないようにしましょう。トカゲたちが眠っている夜の間に、エサとして入れたはずの昆虫が、逆にトカゲを食べようとすることもあります。給餌前後には必ず手洗い、清潔にするのも大切です。
そしてもっとも大事なのは、ペットの世話をする時間をしっかりと楽しむことです。分からないことがあれば近所のペットショップの店員に質問したり、かかりつけの獣医に相談するようにしましょう。
今回はアメリカのペット業者であるPetcoさんとのコラボレーションで、爬虫類や両生類などのエサとしての昆虫についてまとめました。このページを執筆しながら、私自身も非常に勉強になりました。両生類・爬虫類の飼育と餌用昆虫は切っても切り離せないので、上手く扱えるようにしておきたいですね。