• 最終更新日:2017/03/10 約44分

爬虫類と光/温度-バスキング・紫外線ライトと亀/トカゲの生理機能

バスキングをする雄のアガマ
Male Agama Lizard / wwarby

こんにちは。夏は黒焦げになるまで日焼けしちゃう系男子のK-ki(@AquaTurtlium)です。日焼けの原因は紫外線ということはよく知られているので、紫外線というと悪いイメージを保つ人も多いかもしれません。しかし紫外線には生物にとって重要な役割があり、こと爬虫類においてはその重要性はかなり高いです。

私の個人的な経験から言うと、紫外線の重要性をきちんと理解することが、爬虫類飼育初心者がまず克服すべき1つの壁だと思っています。私は最初これを甘く見ていて大変な問題にしてしまいました。

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今回はこの紫外線を含めた「光」が、亀はもちろんのこと爬虫類全般に対しどのような影響を与えるのか、詳しく紹介していきます。

なお、この記事は以下の記事の新規焼き直しとなっています。

こちらの記事の初稿は私がブログを書き始めた直後に書いたもので、その後何度か加筆修正はしていますが、ベースの部分の書き方が良くなかったり内容がが分かりにくかったりしたので、今回新規に書きなおすことにしました。内容的には今回の記事を読むだけで十分ですが、私の昔の下手くそな文章に興味がある方はこちらもご覧下さい(笑)。

光の分類と生物への働き

まずは今回のメインテーマとなる「光」について簡単に説明します。光は電磁波の一種で、要するに「波」であるということは高校の物理とかで習ったと思います(厳密に言えば粒子としての性質も併せ持っているため単純な波とはいえないのですが、物理の講義ではないので割愛します)。

光はその波長ごとに様々な特徴を持つため、ある程度の範囲に収まる波長の光に対して「赤外線」や「紫外線」と名づけて分類されています。光の「スペクトル分析」なんていう難しいお話も、基本的にはこんな考え方に基づくものです。

ちょっとややこしい話ではありますが、この光の分類を知っておかないと亀やトカゲ、ヘビなどの爬虫類と光や温度・熱の関係について理解するのは難しいので、最初はちょっと我慢して読んでみて下さい。

可視光

波長 380nm~780nm程度
特徴 人間の目に見える波長の電磁波(光)

可視光とは電磁波の中でも人間の目で見える波長のものを指します。具体的には、380nm(ナノメートル)から780nm程度の波長の電磁波がこの可視光に分類されます。可視光は波長によって色が変わって見え、日本では波長の短い側から順に、紫、青、水色、緑、黄色、オレンジ、赤の7色に見えると言われています。

当然ながら可視光は人間の目を基準に決められているので、爬虫類の目に見える光とは異なります。種類にもよりますが、一般的に爬虫類は人間よりも広い範囲の波長の光を認識できると言われているので、世の中がもっと色鮮やかに見えているかもしれませんね。

赤外線

波長 750nm~1000000nm(1mm)程度
特徴 赤色光よりも波長が長く近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分けられる。爬虫類の飼育においては熱を照射する役割をもつ。

赤外線は可視光の中で最も波長の長い赤色の光よりも、さらに波長が長く、750nm~1000000nm(1mm)程度の波長をもつ電磁波で、赤色光より外側のスペクトルを持つことから「赤外線」と名付けられました。英語では「infrared」で、infra(~以降の)とred(赤)の組み合わせから生まれた言葉です。

赤外線は可視光に比べて波長の範囲が広く、この中でさらに「近赤外線」「中赤外線」「遠赤外線」に分類されます。以下でそれぞれについて説明します。

近赤外線

波長が750nm~2.5μm(1μm=1000nm)の赤外線で、赤色の可視光線に近い光です。赤外線カメラや赤外線通信といった用途で利用されています。

中赤外線

波長が2.5~4μmの赤外線で、有機化学物質などの分光分析に利用されます。

遠赤外線

波長が4~1000μm(=1mm)の電磁波で、更に長波長の電波に近い性質も持っています。遠赤外線を利用した「赤外線ヒーター」という製品があることからも分かるように、遠赤外線は熱放射という物質を温める性質をもっています。

爬虫類の飼育用品で赤外線を利用して飼育ケージ内を温めるライトやヒーターがありますが、それらの製品ではこの遠赤外線が放射されています。赤外線の中でも爬虫類飼育で一番重要な役割を果たすものです。

紫外線

波長 10nm~380nm(1mm)程度
特徴 紫色光よりも波長が短く近紫外線、遠紫外線、極端紫外線に分けられる。近紫外線はさらにUVA、UVB、UVCに分類され、中でもUVAとUVBは爬虫類飼育で重要な役割を果たす。

赤外線は可視光の中で最も波長の短い紫色の光よりも、さらに波長が短く、10nm~380nm程度の波長をもつ電磁波で、光のスペクトルで紫よりも外側になることからこの名前がつけられました。英語の「ultraviolet」も同様の語源で、この単語から「UV」と略されます。

紫外線も赤外線と同様、波長が長い順に近紫外線、遠紫外線、極端紫外線とさらに細かく分けられます。地上に届く紫外線は波長290~295nm程度までであり、遠紫外線と極端紫外線は空気によって減衰されるので、地球の大気圏内で生きている動物にとっては、日常的にあまり気にするような光ではありません。

一方で近紫外線はUVA、UVB、UVCにさらに細分され、中でもUVAとUVBは爬虫類にとってはかなり重要な光です。以下でUVA、UVB、UVCについて説明します。

UVA

波長が315~380nmの紫外線で、可視光に最も近い紫外線です。太陽が発している紫外線のうち、UVBやUVCはオゾン層によって地表に到達するまでに減衰されるのに対し、UVAはオゾン層による減衰がほとんど起こりません。そのため地表に届く紫外線の99%がUVAとなっています。またUVBやUVCはガラスやプラスチックを透過しませんが、UVAは透過します。

紫外線には皮膚のタンパク質を変性させ細胞を破壊するという有害性がありますが、UVAのエネルギーはUVBやUVCと比べて弱いです。ただし照射量が圧倒的に多いため、影響は少なくありません。またこの他にも、細胞の代謝を活性化させる効果もあります。

UVB

波長が280~315nmの紫外線で、地表に到達する紫外線の中の、UVA以外の残り1%分に相当します。UVBが皮膚に作用すると細胞膜を破壊しますが、その際に色素細胞がメラニンを生成し防御反応を取ります。これがいわゆる「日焼け」ですが、この際に合成されるビタミンDは生物の体を作るためにとても重要な働きをし、爬虫類飼育にとても大切なものです。

爬虫類飼育で紫外線というと、大体はこのUVBを指しています。

UVC

波長が200~280nmの紫外線で、オゾン層と大気によって減衰されるため通常は地表まで届くことはありません。強い殺菌作用があり、近紫外線の中で生体に対する破壊性が最も強いです。地上まで到達しなかったのでこれまでは問題となっていませんでしたが、近年環境問題の一つとなっているオゾン層破壊により、このUVCの危険性が心配されるようになっています。

殺菌効果があるため、熱帯魚用の殺菌灯として使われたりもしています。

光の分類まとめ

光のスペクトルと可視光・赤外線・紫外線
電磁スペクトル / Tatoute and Phrood

光は電磁波の一種であり、電磁波はその波長ごとに特徴が異なるため、ある程度の範囲ごとに名前をつけて分類されています。爬虫類飼育に重要な光は、波長の短い順に「紫外線」「可視光」「赤外線」となっています。

以下で光のスペクトルの話が出てくる部分がありますが、そこではどの波長の光がどの程度含まれているか、ということを書いています。難しく聞こえるかもしれませんが、大したことではないので気楽に読んで下さいね。

光の知覚・色覚に関連する爬虫類の体の構造・器官

お疲れ様でした。これで光についての予備知識の説明はおしまいです。私が物理学を専攻していたのもあってなんだか必要以上に詳しく書いてしまった気もしますが、そこはご愛嬌ということで(笑)。光についての勉強の次は、光に反応する爬虫類の身体の仕組みについて軽く説明していきます。

錐体細胞

錐体細胞は光刺激を電気信号へと変換する視細胞の1つで、円錐形をしていることからこの名前がつけられました。目に入った光の波長に対して敏感に反応し、色を見分ける能力(色覚)の基礎となっています。

錐体細胞
Cone cell / Distorted

人間は赤錐体、緑錐体、青錐体の3種類の錐体細胞を持っていて、目に入ってきた光にどの錐体細胞が反応するかによって色を判別しています(赤錐体と青錐体が反応したら紫など)。この錐体細胞が3種類であり、人間は3種類の光のみを感じ取ることができるため「光の三原色」という概念が存在するのです。

一方で多くの爬虫類は、紫外線の中でもUVAと呼ばれる波長の光に反応する錐体細胞を持っています。すなわち爬虫類にとっては光の三原色ではなく、「光の四原色」と表現すべきなわけですね(4色型色覚)。

錐体細胞の種類が多いということは、お察しの通り爬虫類は人間よりも鮮やかな色覚を持っていると考えられます。あなたのペットの亀やトカゲが自分の所に近寄ってエサをねだったりした時、「こいつら目いいのかなー、以外によく見えてるのかもなー」なんて思ったことがあるかもしれませんが、少なくとも色覚に関してはあなたより優れている可能性が高いです。舐めちゃいけませんよ!

桿体細胞

桿体細胞も錐体細胞と同様、錐体細胞は光刺激を電気信号へと変換する視細胞の1つです。錐体細胞が色を判別できるが弱い光には反応できないのに対し、桿体細胞は色の区別はできませんがわずかな光にも強く反応します。そのため、明暗を判別するのに役立ちます。暗い場所で色が分からなくても輪郭は分かるのは、錐体細胞が反応できない弱い光に桿体細胞が反応しているからです。

頭頂眼

爬虫類の視覚に関しては、さらに驚くべき点があります。実は一部の爬虫類(主にトカゲの仲間)には「第3の目」とも言える「頭頂眼」をもつ種がいます。

グリーンアノールの頭頂眼
Dorsal view of the head of an Anolis carolinensis clearly showing the parietal eye / TheAlphaWolf

これは日本では特定外来生物として知られているグリーンアノールの頭部の写真ですが、黄色く囲まれた部分に注目して下さい。小さなレンズのようなものが見えますが、これが頭頂眼です。頭頂眼はもともと脊椎動物の祖先が備えていたものですが、多くの種では退化して消えてしまいました。その中でトカゲやカエル、魚などの一部の種でのみ現在でも存在が確認できます。

頭頂眼は通常の目(外側眼)よりもかなり原始的な器官で、周囲の明暗を感知する程度の能力しか無いとされています。トカゲ・カエル・魚などでこの目が退化せず残ったのは、上空から襲ってくる鳥類という天敵の存在を素早く察知するためじゃないのかなーと個人的には考えていますが、実際のところはどうなんでしょうね。

この頭頂眼は光刺激を捉え、脳が24時間周期・1年周期のリズム(概日リズム・概年リズム)を整えることが出来る要因となっているので、爬虫類にとって重要な感覚器官であると言えるでしょう。

松果体

松果体は、解剖学的には頭頂眼と対をなすものといえます。動物の発生過程では、最初は眼の元となる細胞が左右対になって存在していますが、発生が進むにつれ片方が頭頂眼へ、そしてもう片方が松果体へと成長します。

松果体は脳の中心付近に存在しますが、爬虫類では頭蓋骨を透過した光に直接反応すると言われています。爬虫類はこの松果体により、昼間や夜の長さ、太陽が空のどんな位置にあるか、太陽光中の青色光強度・量などの情報を知覚し、現在が一日の中でどんな時刻か、一年の中でどんな季節かを知ることができます。

そしてここで得た情報により、ホルモンの分泌などを通じて自分の活動レベルや体温調節、繁殖サイクルなどを調整するとされています。昼行性の種だけでなく、夜行性の種も隠れ家から光刺激を感知することで同様の調節機能を実現しているようです。

爬虫類の飼育では、この松果体に適切な光刺激を与えるため、頭部に対して垂直に太陽光や飼育ライトの光が当たるような環境を整えることが重要です。

光が爬虫類に与える影響・効果・役割

ここまで光について、そして光刺激を知覚する爬虫類の身体構造・器官について説明しました。これらの知識を絡め、可視光・赤外線・紫外線のそれぞれが、爬虫類にどのような影響や効果を与え、どのような役割を負っているのかを解説します。

可視光と爬虫類

可視光の役割は理解しやすいです。爬虫類の目を通じて錐体細胞や桿体細胞で知覚されることで、色や明暗を判別することが出来るようになり、爬虫類に視覚を与えます。これは他の個体や天敵、エサを認識するのに役立ちます。

また、頭頂眼を通じて概日リズム・概年リズムの調整に役立ったり、松果体を通じて活動レベルや生理機能の調節に関わります。体温調節や繁殖行動にも関連します。爬虫類が生きていくために必要な光の中でも、最も基本的な光と言えます。

赤外線と爬虫類

赤外線の中でも爬虫類飼育に重要なのは遠赤外線です。電磁波は速度が一定(光速)の波なので、波長によって振動数(1秒間に波のピークが来る回数)が決まります。遠赤外線の振動数はちょうど多くの物質の固有振動数と重なるので、共振により物質の原子を振動させる、つまり熱を伝える効果があります。

爬虫類は変温動物であるため、自力で体温を維持することができません。赤外線を浴びることで活動に必要な温度まで体温を上げる必要があります。赤外線は爬虫類が活動を維持するために必要な光と言えます。

ホットスポットと温度勾配

basking turtle ホットスポットでバスキングする亀
The little one – Gelsomina / Maria Izzo

体温を上げるためには、暖かい場所で体を暖める必要があります。このような暖かい場所のことを、爬虫類飼育では「ホットスポット」と呼んでいます。またホットスポットの中でも、バスキングをするのに必要な条件も満たした場所、すなわち可視光や紫外線も十分に浴びられる場所のことは、「バスキングスポット」とも呼びます。

体温を調節するためには、体を暖めるだけではダメです。十分に体温が上がった後は、体温が上がり過ぎないように極端に暖かい場所(=ホットスポットやバスキングスポット)からは離れる必要があります。もしも飼育ケージ全体がホットスポットと同じような高温だったり、逆にホットスポットが無くて全体的に低温だったりすると、爬虫類は自分の体温を適切に調節することができなくなってしまいます。

そこで爬虫類飼育では、飼育ケージ内に温度勾配を作る必要があります。つまり、体温の上下を亀やトカゲ自身にコントロールさせることのできるように、飼育ケージの中に温度が低めの場所から温度が高めの場所まで用意しなくてはいけません。温度の範囲は種類によるので一概には言えませんが、26~35℃程度の範囲で温度勾配を付けるような環境が推奨されている種類は多いです。

紫外線(UVA)と爬虫類

先に説明したように、爬虫類の中にはUVAを感知できる錐体細胞を持った種がおり、それらの種にとってUVAは可視光と同じ役割をもちます。

さらにUVA独自の効果としては、細胞の機能を活性化させるため、脱皮の促進などにも関係すると言われています。

紫外線(UVB)と爬虫類

紫外線の中でもUVBは、爬虫類飼育に重要な光として良く話題になります。その理由は、爬虫類の骨、歯、爪、甲羅などの形成に必要なカルシウムを体内に吸収するために必要となる、「ビタミンD3」の合成に強く関わっているからです。逆に言えば、UVBを十分に浴びることができないと爬虫類はカルシウム不足に陥り健康上の問題が起こります。紫外線、特にUVBは爬虫類が健康を維持するために必要な光と言えるでしょう。

以下でこのようなUVBの効果・役割についてもう少し詳しく説明します。

カルシウム吸収に必要なビタミンD3の合成

爬虫類の皮膚では、コレステロールが代謝により7-デヒドロコレステロールという物質になって存在しています。この7-デヒドロコレステロールに波長300nm付近の紫外線(主にUVB)が照射されると、プレビタミンD3という物質に変化します。波長が290nmよりも短い紫外線は、大気圏内で減衰されてほぼ地上には届かないため、UVBの中でも290〜320nmの波長帯が特に重要です。

プレビタミンD3は自然にビタミンD3へと変化しますが、この変化が上手く起こるためには爬虫類自身が適切な温度環境(十分に温かい場所)にいる必要があります。すなわち、ビタミンD3を合成して爬虫類の健康を維持するためには、UVBだけでなく適切な温度も必要という点に注意が必要です。

実はこの辺りのメカニズムや化学構造の解明の功績に対して、ノーベル化学賞が授与されています。亀やトカゲなどの飼育知識も、元をたどると人間向けの研究による部分が大きいんですね。

このUVBの重要性は爬虫類に限った話ではなく、人間も同様です。人間の場合には、十分な量のビタミンDを生合成するためには、少なくとも週に2回、5~30分の間、日焼け止めクリームなしで、顔、手足、背中への日光浴が必要とされています。これが不十分だと健康上の問題を引き起こすこともありますから、根本的には人間も爬虫類も大きな違いはないということですね。

ただし注意すべきなのは、爬虫類では種類によって必要なUVB量に差があるという点です。例えば夜行性の爬虫類は、UVBをあまり必要としません。また、森林地帯に生息するリクガメと砂漠地帯に生息するリクガメでは、元の生息環境の違いから砂漠地帯のリクガメの方がより多くの紫外線を必要とします。さらに、肉食性のトカゲや、雑食性で動物性のエサも食べる水棲亀よりも、草食性のリクガメやイグアナなどの方がビタミンD3が不足しやすいです。

これは植物にはビタミンD3があまり含まれていないせいで、植物中心のエサを食べるリクガメなどはより多くのUVBが必要となります。ヘビは完全な肉食性でエサからのビタミンD3摂取量が多い上、「完全栄養食」ともいわれるマウスをメインのエサとして飼育される事も多く、あまりビタミンDが不足することはないようです。

ビタミンD3過剰の予防

ビタミンは亀・トカゲ・ヘビといった爬虫類の健康に欠かせないものですが、実は過剰になると有害であることが分かっています。しかし自然なレベルの紫外線であれば、過剰なプレビタミンD3やビタミンD3を無害な別の物質へと変化させます。

しかしこれは日光浴由来のビタミンに限った話で、あくまで体内でのビタミンDが生産過剰となるのを防ぐだけです。サプリメントを利用した場合など、体外から必要以上に大量のビタミンを摂取してしまった場合、ビタミン過剰症と呼ばれる症状が見られ健康状態が悪化することもあります。レプチゾルに代表されるような、サプリメントや栄養補助剤などを使用する際は、ビタミン過剰症には十分注意して下さい。

β-エンドルフィンの分泌

日光浴をすると気持ち良いと感じる人は多いと思いますが、これはβ-エンドルフィンという、鎮痛作用や多幸感をもたらす効果のある物質が体内で分泌されることによりますが、これにもUVBが関係するといわれています。バスキング中の亀やトカゲを観察しているとわかると思いますが、単純に気持ちが良くなるというのもUVBの一つの効果のようです。

「バスキング」という言葉について

ちょっと話が脇へ逸れますが、ここで「バスキング」という言葉について考えてみたいと思います。

バスキングという言葉は、【暖まる・ひなたっぼっこをする】という意味の英語「bask」の現在分詞形「basking」を指し、言葉の上では「ひなたぼっこをする」という程度の意味合いです。

ここまでの内容を読んでくれた方は分かると思いますが、爬虫類の飼育におけるひなたぼっこ・日光浴の主な目的は、「可視光による生理機能の調整」「赤外線による体温調節」「紫外線によるビタミンD3合成」です。そうであれば、バスキングという言葉はこの3つの要素を満足する状態を指すべきですよね。

実際の飼育環境に当てはめてみると、可視光と紫外線は蛍光灯などで飼育ケージ全体に照射され、赤外線(と赤~黄色の可視光も)は「バスキングライト」によって「バスキングスポット」と呼ばれる局所的に暖められる場所にのみ照射されます。その結果、バスキングスポットでバスキングをすることにより上記3つの要素が満足され、バスキングの目的を達成することができます。

しかし亀やトカゲがバスキングライトにより暖められている場所でバスキングをするため、爬虫類飼育者はバスキングライトと赤外線のみに注目してしまいがちなように感じます。バスキングというと、爬虫類がバスキングスポットで体を温めることと思っている方もいるかもしれませんが、私は上にも書いたように、光を浴びて「可視光による生理機能の調整」「赤外線による体温調節」「紫外線によるビタミンD3合成」の3つの要素が実現できる状況をバスキングと呼ぶべきだと考えます。

従って、バスキングライトだけではバスキングの環境を整えるのには不十分です。紫外線ライトと可視光を補うための昼光色の蛍光灯などを追加で用意しなければなりません。くれぐれも、3つの中の1つか2つだけの要素を満足しただけで、バスキングのために十分な環境を整えたと勘違いしないようにして下さい。

飼育下で爬虫類に必要な光・温度環境を作る飼育器具

ここまでの内容で、爬虫類と光やそれに関連する項目(温度など)について、大体の知識は身につけられたと思います。ここからは知識を実際の爬虫類飼育に活かすため、飼育器具の種類やその使用方法に焦点を当てていきます。

まずは飼育下の爬虫類に適切な光・温度環境を用意するための飼育器具を紹介します。なお以下では便宜上、紫外線照射が目的のライトを「紫外線ライト」、赤外線による保温が目的のライトを「保温ライト」、可視光照射がメインのライトを「可視光線ライト」と呼ぶことにします。

白熱電球

白熱電球は爬虫類飼育では保温に利用されるため、「保温ライト」に分類されます。爬虫類の保温の話になると時々話題に登る「ひよこ電球」も、この白熱電球の1種になります。

白熱電球は本来可視光を得るためのものなので、当然赤外線だけでなく可視光も放射します。スペクトルが赤外線の方に偏ったランプなので、放射する可視光も赤~黄色の光が中心です。逆に青色光やUVA、UVBはほとんど発していません。

一般的に使用されているものでは全エネルギーの約10%が可視光、70%が赤外線の放射に使用されていて、照明としては効率が悪いです。また、本来は赤外線照射を目的として作られたものではないので、次に紹介する赤外線ヒーターと比べると保温の効率も悪いです。また、夜間の使用など可視光なしで赤外線だけを得たい場合には、使いづらく感じられる場合があります。

しかし赤外線と可視光を局所的に集中して出すため、照射範囲の温度を十分に上げることができ、「バスキングライト」と呼ばれる働きをすることができます。つまり紫外線ライトと組み合わせることで、爬虫類がバスキングする場所を用意することができます。可視光を出さず赤外線のみを照射し、また熱が拡散しやすいものが多い赤外線ヒーターでは、この役割は十分に果たせません。

また、一応夜間の使用に対応した白熱電球として、「ヒートグロー」に代表される赤系の光を出すものや、「ナイトグロー」のように青系の光を出す商品があります。

赤系の光を出すライトは、赤色光を認識する錐体細胞が欠けている種類(一部のヤモリなど)が、赤色の光を見づらい点を利用したものです。しかしこれらの種においても、緑錐体が反応するため全く見えないというわけではなく、薄暗い光は感じ取っていると考えられています。一方で青系の光を出すライトは、自然界の月光を再現することを目指しているようです。

これらのライトは夜用と謳われてはいますが、爬虫類にとって完全に見えない光というわけではなく(赤系の光は種類によっては良く見えている可能性もある)、概日リズムの形成に悪影響を与えないことが保証されているわけでもありません。夜間の保温が必要な場合は、次に紹介する赤外線ヒーターの方がおすすめです。

赤外線ヒーター

赤外線ヒーターは可視光を出さず、赤外線のみを出す製品を指します。可視光を出さないので「ライト」として紹介するのはちょっと違和感がありますが、用途としては「保温ライト」に分類されます。

飼育ケージ内を効率よく温めることができますが、可視光を照射しないので明るくなりません。夜間の使用など可視光なしで温度だけを上げたい場合には有効ですが、可視光を出さず熱も拡散しやすいためバスキングスポットを作るという用途には向きません。どちらかというと飼育ケージ全体の保温や、ケージ内に温度勾配を作るのに役立ちます。白熱電球より寿命も長いので、保温・加温を主目的とするならこちらを使用するべきでしょう。

以下で爬虫類で利用される代表的な赤外線ヒーターである、「セラミックヒーター」「パネルヒーター」「暖突」を紹介します。

セラミックヒーター

この手の商品では、電球の代わりにセラミック製のヒーターから赤外線が照射されます。白熱電球と比べると寿命が長く、数年程度使えます。消費電力は白熱電球と同程度といったところです。可視光を出さない白熱電球といった位置づけのヒーターです。

多くのセラミックヒーターは、クリップライトのスタンドに設置して使用することが出来ます。しかし消費電力が一般的なライトと比べてかなり大きい場合もあるので、専用のスタンドを使った方が安全です。詳しくは照明装置の項目を確認してください。

暖突

セラミックヒーターとは異なり、電球というよりもマットに近い形状をしたヒーターです。セラミックヒーターがヒーターの種類を指すのに対し、暖突は商品名です。飼育ケージの天井部に設置し、赤外線を出して飼育ケージ内の広い範囲を温めることができるのが特徴です。また消費電力が少なめなので、電気代が安く済むのもメリットです。ただしその分、局所的に温度を上げる能力では劣ります。

暖突はセラミックヒーターや白熱電球と比べると、ヒーターそのものが持つ熱が小さく爬虫類が火傷をしたり水滴がかかって割れたりする心配がありません。また製品の寿命がとても長く、半永久的に使えると考えて問題ありません。セラミックヒーターや電球のように交換コストがかからないので、そういった意味でも経済的なヒーターです。

パネルヒーター

他の赤外線ヒーターとは異なり、飼育ケージの底部に敷いて使用します。暖突と似たヒーターですが、暖突より消費電力が少ない分保温効果も低く、ケージ内を温めるというよりも、パネルヒーターの表面だけを温める程度の能力です。

飼育ケージ底部に敷くため水がかかりやすいので、爬虫類飼育に使用する場合は完全防水仕様の「スーパー1」というパネルヒーターがおすすめです。

ハロゲンランプ

ハロゲンランプは白熱電球と同じように、フィラメントに電気を流すことで発光します。白熱電球と違うのは、電球の内部にハロゲンという物質を加えてある点です。このハロゲンを加えることにより、フィラメントがより高温になり、一般的な白熱電球よりも明るい光を放射することができます。また、ランプの寿命も白熱電球に比べると長くなる効果があります。

基本的には白熱電球の上位互換だと考えれば良いでしょう。名称が似ていることから、後で紹介する「メタルハライドランプ(メタハラ)」などと混同されがちですが、発光の原理が異なります。あくまでハロゲンランプは白熱電球と同じ発光原理なので、メタルハライドランプのように紫外線を出す効果は期待できません。

蛍光灯

一般的な蛍光灯は主に可視光を供給するので、「可視光線ライト」に分類できます。一口に可視光と言ってもそのスペクトルは商品により様々で、太陽光に近い色味のものから赤系の光を発するもの、青系の光を発するものなど色々あります。

発光原理としては、アーク放電という現象を利用しています。アーク放電よって出た光には紫外線が含まれていますが、その紫外線が蛍光管の内側に塗られた「蛍光物質」に当たると、可視光へと変換されます。つまり蛍光灯は、紫外線を減らして可視光を増やしたライトと言えます。

「フルスペクトルライト」の謳い文句で太陽光に近い光を放射すると主張する商品もありますが、そういった蛍光灯も可視光は太陽光と似たスペクトルだた紫外線は出していないとか、人間の目には太陽光と同じような光に見える、つまり演色を工夫しているだけでスペクトルは全然違うといったものでしかありません。つまり、一般的な蛍光灯で太陽の光を完全に再現することなどできないのです。

一般的な蛍光灯を使う目的は、可視光域の光をできるだけ太陽光に近づけることであると言えます。次に紹介する紫外線ライトや、上で説明した白熱電球でも可視光は出していますが、その光は青や赤に偏っているため、蛍光灯で太陽の光に近づけるイメージです。商品によってはスペクトルを紹介している蛍光灯もあるので、それを参考にして選ぶと良いでしょう。

また蛍光灯を選ぶ際には、スペクトルだけでなく色温度や演色性など見た目の美しさや、飼育ケージ内に水草や植物が植えられているのであればそれら植物の成長に必要な光を出しているかなどもポイントになってきます。この辺りの点については、以下の記事で説明しているので興味のある方は読んでみて下さい。

上の記事では見栄えを重視して色温度が高めの「めだっ輝」を選びましたが、太陽光に近いスペクトルという観点からはスドーのオセアニアンホワイトが良いようです。しかし爬虫類飼育では紫外線ライトや白熱電球など、蛍光灯以外にも可視光を出すライトが存在します。これらのライトと組み合わせた結果、太陽光に近いスペクトルの光となるように工夫して下さい。

UVB蛍光灯

UVB蛍光灯は上で説明した一般的な蛍光灯とは異なり、紫外線を照射することのできる蛍光灯で、「紫外線ライト」に分類されます。紫外線だけでなく可視光も発しますが、青系の光が中心でその強度も弱いため、このUVB蛍光灯だけで十分な可視光を放射することはできません。基本的には一般的な可視光主体の一般的な蛍光灯や、保温用の白熱電球と組み合わせて使用することになります。

多くのUVB蛍光灯では、その製品で照射することのできるUVBの量を「2.0」「5.0」「10.0」などの数字で表していて、数字が大きくなるほど強い紫外線を出すことができるとされています。しかし注意すべきなのは、商品が異なると基準も異なってしまうので、どの紫外線ライトがUVB照射量が多いのかが分からないことです。ユーザーが手軽にUVB量を測定することもできないので、どのUVB蛍光灯を選ぶか、というのが難しい問題になっています。

私個人としては、ポゴナ・クラブのビバリウムグローを信頼して使用しています。

一応ユーザーがUVB測定器を利用して、複数の紫外線蛍光灯について実際に照射されているUVB量を測定したデータも存在します。ただしこれも正確さが保証されているわけではないので、あくまで参考程度に考えるのが良いでしょう。

参考http://rikugame.jp/files/UVB.pdf
参考各社UVB蛍光灯の測定データ|結果 Oh! Life|1.023world

UVB蛍光灯は全体的に、照射されるUVB量が少ないという傾向があります。これは強いUVBを出すと主張する「10.0」のライトでも同様です。商品によるので一概には言えないのですが、30cm程度離れた距離で、だいたい朝早い時間(7時とか)の太陽光程度のUVB量しか放射されていないという測定結果もあります。そのため、UVB蛍光灯は日光に比べるとかなり長い時間、爬虫類に対して照射する必要があります。

ただし、UVB蛍光灯以外の紫外線ライトは強い熱を発生するものが多いため、小さな飼育環境では暑くなりすぎるのを防ぐため発熱の少ないUVB蛍光灯が適しています。また、寿命は点灯時間にもよりますが約1年程で、それを過ぎると可視光は出ていてもUVBがでなくなってくるので、新品に交換する必要があります。

UVBコンパクト蛍光灯

UVBコンパクト蛍光灯は、上で紹介したチューブ型(直管形)のUVB蛍光灯をスパイラル型にしたものです。基本的な特徴はUVB蛍光灯と同じですが、UVB蛍光灯が直管用の照明器具使用する必要があるのに対し、スパイラル型のUVBコンパクト蛍光灯は大きめのクリップライトで使用できるため、やや手軽に使えます。

しかしUVB蛍光灯と比べると劣化しやすく、半年程度で交換する必要があります。また直管形と比べて照射範囲が狭いため、バスキングスポットとの位置関係や亀・トカゲのポジションニングによっては、上手く紫外線を照射できない可能性もあります。

水銀灯

水銀灯は、蛍光灯と同じくアーク放電という現象を利用して発光する、「HIDランプ(高輝度放電ランプ)」の1つです。HIDランプは蛍光灯のように蛍光物質を塗っていないため、紫外線も照射します。しかし、明るくなければ照明として意味が無いので、蛍光物質を塗る代わりに発光物質として様々な物質を水銀蒸気と一緒にランプの中に封入しています。これにより明るさや光の色が改善されるわけです。

HIDランプは封入している物質により主に以下の3つに分類されます。

  • 水銀灯
  • 高圧ナトリウムランプ
  • メタルハライドランプ

これらHIDランプは可視光・紫外線・赤外線の全てを放射するため、「可視光線ライト」であり「紫外線ライト」であり、「保温ライト」でもあります。特徴としては、光が強く、高効率で、寿命が長く、太陽光と色温度が近い、などが挙げられます。光が強いことと、照明自体が熱くなりやすく温度のコントロールが効きにくいことから、基本的には大規模な飼育設備で利用されます。また、点灯するためには放電を安定させるための安定器が必要です。セルフバラスト水銀灯のように安定器が不用なものもありますが、これらは発光効率が悪く安定器が必要なものに比べて暗くなってしまうようです。

高圧ナトリウムランプは、発光物質としてナトリウムの蒸気を封入したHIDランプで、トンネルで使われているライトです。爬虫類の飼育で使われるという話はあまり聞いたことがないのでここでは除外します。

水銀灯は、水銀とアルゴンが封入されたHIDランプで、品質やUVB照射量について幅が広く、製品によってマチマチという感が否めません。基本的には紫外線量は多いが可視光が少ないといった感じで、見た目には暗い感じがします。

UVBの照射量は本当に多いようで、爬虫類用水銀灯の代表格である「パワーサン」を使用したところ、紫外線が強すぎて爬虫類に日焼けなどの悪影響が出たという場合もあるそうです。このような場合はライトと生体の距離を広げるなど、適切に使用すれば問題ありません。とにかく紫外線量にこだわりたい場合にはおすすめです。

メタルハライドランプ

メタルハライドランプ(メタハラ)は、金属ハロゲン化物(メタルハライド)を発光物質として封入したHIDランプで、爬虫類飼育では比較的最近取り入れられるようになった照明です。封入するハロゲン化合物の種類・比率により色温度を調整することができ、他のHIDランプよりも演色性に優れる、つまり太陽光に近い色の見え方に物質を照らしてくれます。

メタハラは、UVB蛍光灯よりも強いUVBを照射することができます。メタハラ自体はUVC領域の光も放射しますが、基本的に短波長域の光はフィルターでカットされるため、生体に害が及ぶ心配はしなくて良いでしょう。高効率なため小さなワット数でも強い光が出せ、明るく省エネ効果もあるといえます。また、寿命が長く長期間にわたって使用できるため、ライトを交換する頻度が少なくて済む点も長所です。

一方でHIDランプ全般に言えるデメリットではありますが、安定器が必要で場所をとること、安定した明るさになるまで数分掛かること、電球に直接触ると寿命が短くなるため手袋をして扱う必要が有ること、などの問題があります。また、光が強すぎるのでライトを直接見てはいけません。

光が強いこともあり、基本的には紫外線供給が必要な大規模飼育設備で使うことを想定されています。発熱量はそこそこありますが、これだけで大きな飼育ケージ全体を暖められるというほどではないので、赤外線の供給が別途必要になるでしょう。

色々とメリット・デメリットを紹介しましたが、メタルハライドランプ導入の一番の障害は恐らくその価格だと思います。導入の初期費用には数万円かかるので、中々気軽に使えるわけではありませんが、ランニングコストはそこまで大きなわけではないですし何と言っても高性能なので、一度導入してしまえばきっと満足できるのではないでしょうか。

UV計

ここまで説明してきたように爬虫類の飼育には可視光・赤外線・紫外線が必須です。この中で可視光は、目で見れば明るい、暗い、色温度がどうだとかをある程度把握できますし、赤外線は温度計で測定できますが、紫外線は簡単には測定できません。

紫外線量、特にUVBを測定することができると、飼育環境が適切かどうかの判断が非常にやりやすくなります。このようなUVBを測定できる「UVB測定器」というものが販売されています。UVB測定器は安価ではないが必ず役に立つので、金銭的に余裕がある人は購入してみると良いでしょう。もしも購入して色々なライトの紫外線量を測定したら、ぜひそのデータを共有して欲しいです。

UVB測定ができる製品は色々ありますが、少なくともビタミンD3合成に強く関わる290〜320nmの波長の紫外線を測定できる製品を選ぶのが良いでしょう。安価な製品だとこの辺りの波長を計測できない場合もあるので、購入する前によく確認するようにして下さい。

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飼育器具の限界:ベストなのは日光

ここまで爬虫類飼育に利用する照明をかなり細かく紹介してきましたが、飼育器具により人工的に出せる光には限界があります。結局のところ、日光に勝る飼育器具は存在しないんです。

現在の技術では、人工的な照明によって、太陽光に含まれる全てのスペクトルを太陽光と同じ強度で含む光を放つことは不可能です。「フルスペクトルライト」や「トゥルーライト」などの名称で、太陽光のスペクトルに近い光を出すというライトが売られていたりもしますが、スペクトルの含有率は近くても強度が全然足りなかったり、可視光域ではフルスペクトルでも紫外線は放射されておらず、ビタミンD3の合成には不十分だったりするのが現実です。

飼育環境が許すのならば、屋外飼育で日光を十分に浴びさせて飼育したり、人工的な照明器具と日光を併用したりする方が、人工照明だけで飼育するよりも明らかに良いです。このことは心に留めておいて、チャンスが有れば積極的に日光を利用するのが良いと思います。

紫外線灯やバスキングランプ使用のポイント

「光の分類」「爬虫類の身体構造」「光が爬虫類に与える影響」「飼育器具」など、爬虫類飼育と光の関わりについて説明してきました。次は爬虫類飼育において、照明や保温関係での注意すべきポイント、ノウハウをまとめます。

バスキングスポット

爬虫類がバスキングをするために、飼育ケースの中でも特別に環境を整えた場所をバスキングスポットと呼びます。バスキングスポットには、当然ながら可視光・紫外線・赤外線が適切に照射される必要があります。飼育している爬虫類の種類にもよるので一概には言えませんが、飼育ケース内でも他の場所より暖かくて35℃程度に維持されており、紫外線ライトとの距離は適切に保たれる(ライトの種類にもよるが30~40cm程度)必要があります。

また「バスキングスポット」という名前ではありますが、実際には「バスキングゾーン」と言えるくらいの広い範囲をバスキングできる環境に整える必要があります。バスキングの際には爬虫類の体全体がバスキングスポット内部に入る必要があるからです。バスキングスポットが狭いと皮膚の一部しか暖められず、体の他の部分は冷たいのに一部分だけが危険なくらい熱くなる場合もあります。こうなると生体はもっと暖まろうとしてその場所に留まり続け、火傷を負ってしまう可能性がゼロではありません。生体の身体全体が収まる十分に広いバスキングスポットを用意して下さい。

これ以外にも、バスキングスポットには以下の要素が必要です。

  • 足場が安定している
  • 爬虫類が怪我をしない
  • 表面が乾燥しやすい
  • 種に応じた適切な明るさ

1つ目と2つ目は、爬虫類が安全にバスキングするために必要です。3つ目は、水棲亀などのバスキングには皮膚を乾燥させて皮膚病や寄生虫を防ぐという目的もあるため、重要なポイントになります。4つ目は、生体が用意されたバスキングスポットでバスキングができることを認識するために重要です。

ホットスポットと温度勾配

赤外線と爬虫類の関係の項目でも説明しましたが、爬虫類の飼育ケース内には温度勾配を作る必要があります。変温動物である爬虫類自身が、自分の体温をコントロールできる環境を作らなければいけません。飼育ケージの中に温度が低めの場所から温度が高めの場所まで用意し、亀やトカゲが自分の望み通りの温度の場所に自由に移動できるようにしておきましょう。

距離

ライトから出る光は、ライト近くでは強く、ライトから離れるに連れて弱くなっていきます。それは紫外線や赤外線も同じで、ライトから遠い場所では十分な効果を得ることができません。逆にライトに近すぎると、紫外線が強すぎたり、温度高くなりすぎたりするため、ライトと爬虫類の間は適切な距離に保たれなければなりません。

基本的には製品ごとに適切な使用距離が定められているはずなので、その指示に従いましょう。どんなに近くてもライトとの距離は15cm以上はあけておいた方が無難だと思われます。

光は頭の真上から当てる

爬虫類を飼育する時には、飼育ケースに上で説明したような様々な光を照射することになると思いますが、その光は頭の真上から当てるようにして下さい。

フトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps) 天王寺動物園(大阪市)にて
フトアゴヒゲトカゲ(Pogona vitticeps) 天王寺動物園(大阪市)にて / OpenCage.info

爬虫類の顔をよく観察すると分かりますが、眼の上の眉毛に当たる部分が少し出っ張っています。この出っ張りには、眼に直接光が入るのを防ぐ効果があります。逆に言えば、横から光を当てられるなどして眼に直接光が当たるのはストレスになるということです。

人間だってずっと眩しいところにいればストレスになりますよね。目に深刻なダメージを与え得るため、この点については可視光だけでなく、UVAやUVBについても注意すべきです。

また、爬虫類は頭頂眼や松果体によって太陽の位置を掴み、概日リズム・概年リズムを整えています。爬虫類の生活リズムを保つためにも、やはり照明は頭の真上から当てるべきだといえます。

照明装置

飼育器具の項目で様々な飼育用のライト類を紹介しましたが、メタハラや暖突、パネルヒーターのような一部を除き、これらのライトを使用するためにはライトを設置する照明器具が必要です。

電球タイプのライトであれば口金とワット数に注目してクリップスタンドを購入すれば良いです。口金というのはライトとスタンドの接続部のサイズのことで、E17とかE26と表現されています。これが合わないとスタンドにライトを設置できません。

また、バスキング用の白熱電球や水銀灯には100Wを超えるような消費電力の大きなライトがあります。爬虫類用ではないクリップスタンドでも、口金の規格が合えばライトを設置することができますが、そういったクリップスタンドは消費電力が40W程度場でしか対応していないことが殆どです。

スタンドの消費電力を超えるライトを使用すると事故の原因にもなり危険なので、消費電力の大きなライトを使用する場合には爬虫類用のクリップライトスタンドを使用して下さい。上に紹介しているレディオクリップなら、150Wまでの消費電力に対応しています。

蛍光灯の場合は、熱帯魚用の照明器具を流用するのが便利です。熱帯魚用の照明器具は基本的に水槽のサイズに合わせたものが用意されていて、対応する水槽サイズによって使用できる蛍光灯の長さが異なります。例えば60cm水槽向けの照明器具なら蛍光灯は20Wの物を使うタイプが主流ですし、90cm水槽向けならば32Wが主流です。

ただし商品によって特殊な規格の蛍光灯でないと使えなかったりするので、購入前によく確認して下さい。

タイマー

爬虫類の生活リズムを保つためにも、ライトは毎日決まった時間に点灯・消灯する必要があります。しかしそれを手作業でやるのは大変です。仕事や学校もあるでしょうし、旅行で数日間家を空けることもあるでしょう。そこで照明の管理には、タイマーの利用がほぼ必須です。

タイマーにはいろいろな種類がありますが、最低限の機能を備えたものなら1000円程度からあります。詳しくは上の記事で紹介しているので、ぜひ読んでみて下さい。

ただし、メタルハライドランプなどにタイマーを使用する際は注意が必要です。メタハラでは点灯時に突入電流といって使用時の3~4倍の電流が流れます。何も考えずに対応電力の低いタイマーを使用していると火災の原因となるため、対応電力の大きいタイマー(例えば150Wのメタハラに対して600W対応のタイマー)を使うか、突入電流キャッチャーと併用するようにして下さい。

サーモスタット

照明の自動管理にはタイマーを使いますが、温度を管理する場合にはサーモスタットが必要です。サーモスタットは飼育ケージ内の温度があらかじめ設定された温度より低くなると電源をオンにし、高くなるとオフにしてくれます。セラミックヒーターなどをサーモスタットと接続することで、飼育ケージ内部を常に一定の温度に保つことが可能です。

上でリンクを張っている「タイマーサーモ RTT-1」という製品なら、1台でサーモスタットとタイマーの両方の機能を使用することができます。さらにタイマーのオン・オフ状態によってサーモスタットの設定温度を変更できるため、自然環境の昼夜を再現することも可能です。これは爬虫類飼育者の中でかなり評判の良かった「爬虫類サーモ」の後継機で、人気の飼育用品の一つです。

白熱電球の使い方を工夫

白熱電球やハロゲンランプはバスキングスポットを作ったり飼育ケース内部を温めたりするのに必要ですが、少し工夫することで面白い使い方ができます。

これらのライトは赤系の可視光を発しますが、これを利用して朝焼け・夕焼けを再現することが可能です。白熱電球を紫外線ライトや可視光線ライトとは別のタイマーにつなぎ、点灯時間を少し早く、消灯時間を少し遅く設定すると、飼育ケージ内が昼間の明るさになる前後に、朝焼け・夕焼けのタイミングが生まれるというわけです。

これがどこまで爬虫類の生活リズム調整に影響を与えるかは明確ではないですが、爬虫類もいきなり昼間の明るさになるよりもストレスが少なそうに思います。別に難しいことでもないので、興味のある方はやってみてはどうでしょうか。

紫外線なんて必要ない?

時々「紫外線ライトなんて必要ない」という意見の人がいます。こういう人は、「経口摂取のビタミンD3だけでカルシウム代謝はできる、紫外線ライトなんてものはペット業界の金儲けの手段だ」という主張をしていたりします。

実際のところ、確かに理論上は経口摂取のビタミンD3だけでも問題が無いと思われます。しかし、適正な摂取量も明確でない中、経口摂取だけでビタミンDの量を調整するのは難しすぎて現実的でないというのが私の考えです。バスキングにより合成したビタミンD3であれば、過剰にならないような体のメカニズムが働きますが、経口摂取だと与え過ぎるとビタミン過剰症になり健康に害を及ぼしてしまいます。

どうせバスキングをさせないと体温調整や概日リズムの調整はできないのですから、ここに紫外線ライトを加える方が、ビタミンDの経口摂取量を正確に管理するよりもよっぽど現実的な方法だと思います。

おすすめの照明システム構成例

以上で紹介した飼育用ライトなどを実際に使用する際に、どのような使い方をすれば良いのかについても説明しておきます。あくまでも照明システムの構成例なので、参考程度に考えて下さい。

蛍光灯+UVB蛍光灯+ハロゲンランプ+セラミックヒーター

信頼の爬虫類用紫外線ライト「ビバリウムグロー パワーUVB」

紫外線ライトとしてUVB蛍光灯を使う場合、可視光が不足するので普通の蛍光灯も併用します。この場合、バスキングスポットを作るために赤外線を局所的に発して温めるハロゲンランプも必要になります。

基本的には上記3つで問題はありませんが、冬場など飼育ケージ内の温度が下がるようならセラミックヒーターも追加しましょう。この時はサーモスタットを使用するのも忘れずに。暖突でも良いのですが、暖突は飼育ケージ天井付近を覆うように設置するため、蛍光灯の光を遮ってしまう可能性があるのでセラミックヒーターとしました。

メタルハライドランプ+セラミックヒーター

メタルハライドランプは紫外線・赤外線・可視光の全てを放射するため、照明システムがシンプルになります。基本的には温度を維持したりバスキングスポットを作るための赤外線が足りなくなるので、それを補うセラミックヒーターと併用します。暖突を選ばないのは蛍光灯の場合と同じ理由です。

バスキングスポットを作るためにはセラミックヒーターよりもハロゲンランプなどの方が良いのですが、メタハラだけでも十分明るいはずなので、可視光を出さないセラミックヒーターとしました。飼育ケージを温めるためのセラミックヒーターとは別にもう一つ、メタハラ直下辺りを温めてバスキングスポットを作るためのセラミックヒーターを用意すれば良いと思います。設置の際には適切な温度環境になっているかしっかり確認して下さい。

また、メタハラのサイズによっては明るすぎるという程でもないな、と感じる場合もあるかもしれません。その場合はセラミックヒーターをハロゲンランプにしても良いでしょう。

水銀灯+暖突

日本で使用される爬虫類用水銀灯の主流であるだろう「パワーサン」は、蛍光灯やメタハラとくらべてかなりスポット的に光を出すように思われます。その特徴により、このライトだけで可視光・赤外線・紫外線全てをカバーした上、バスキングスポットも作れるのではないかと考えました。

ただし局所的に光を照射するので、ケージ内でも光の当たらない部分は温度が低くなる可能性があります。状況に応じて、暖突を使用するなど保温を行うと良いでしょう。パワーサンはスポットライトのため場所を取らず、暖突を設置するだけのスペースが余っているはずです。また、もし光の届かない部分が暗すぎると感じる場合は、普通の蛍光灯を加えて可視光を補うと良いかもしれません。

不適切な光・温度環境による病気

ここまで飼育環境を適切な光・温度環境へとセッティングする方法の説明は終わりです。この項目では、もし光や温度が適切でなかった場合に爬虫類のみに起こる問題を紹介しておきます。

かくいう私も、飼育しているニホンイシガメが幼体だった時に、知識不足から適切な飼育環境を整えられず病気にさせてしまいました。爬虫類を一度病気にさせてしまうと、治療はものすごく大変です。これらの病気を防ぐためにも、飼育環境はしっかりと整えて下さい。

肺炎

肺炎の一番の原因は、飼育環境が適切でないことです。肺炎の原因となる病原菌・ウイルスは本来どこにでもいるものです。爬虫類が健康であれば、本来持っている免疫力によって肺炎に掛かることはありません。しかし、温度が低いとか栄養バランスが悪いといった、不適切な飼育環境により、爬虫類の抵抗力が落ち感染してしまいます(日和見感染症)。

肺炎を防ぐためにも、ライトやヒーターを使用して適切な温度環境を整えることが非常に重要です。

クル病・代謝性骨疾患(MBD : Metabolic Bone Disease)

骨
L0057714 / Science Museum, London, Welcome Images

血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれるため、カルシウムの摂取量が少なかったり、カルシウム吸収に必要なビタミンD3の欠乏によりカルシウム吸収量が減少すると、骨などに蓄えられてたカルシウムが血液中に放出されます。

この状態が続きスカスカになってしまった骨をペーパーボーン(paper bone)と呼びます。また、この症状はさらに骨格の変形や歩行障害へと進展していきますが、このような病気のことを代謝性骨疾患(MBD : Metabolic Bone Disease)と呼んでいます。人間で言うところの骨軟化症(クル病)や骨粗鬆症と同じような病気です。

MBDは自然界にはない疾病で、温度管理や紫外線照射不足などの人為的な原因によるものです。幼体時の骨の変形は元に戻らない場合が多いため、MBDの予防がとても重要です。そのためにも、十分な紫外線照射と温度管理が大切ですね。

まとめ

かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。内容が多岐にわたったので、もう最初の方の話を覚えていないという方も多いと思います。最後にこの記事の内容を簡単にまとめておきます。

  • 爬虫類を飼育するためには可視光・赤外線・紫外線の3種類の光(電磁波)を照射することが欠かせません。これらにより生活リズムの維持、体温調整、カルシウム代謝などが行われます。
  • これらの光を照射する飼育用品には多くの種類がありますが、種類によってどの光を出すかが異なります。必要な光を照射するためには適切な飼育ライトをしようしましょう。
  • 飼育器具で人工的に出せる光には限界があります。日光でバスキングをさせることが爬虫類にとって最も良いということを理解し、積極的に日光を利用しましょう。
  • 飼育用ライトの使用法にも様々なポイントがあるので、なるべく飼っている亀やトカゲがストレスを感じないように工夫して下さい。
  • 爬虫類は種類によって必要な光・温度環境がかなり違います。飼育している生体についてよく勉強し、適切なライティング・保温をするよう心がけて下さい。

参考

この記事の執筆にあたり以下のサイトを参考にさせていただきました。ありがとうございました。

参考Reptile Lighting Information
参考Tortoise Trust Web – UNDERSTANDING REPTILE LIGHTING SYSTEMS
参考紫外線とビタミンD
参考メタハラ [爬虫類・両生類] All About

(追記)

2016年10月26日、ビタミンD3合成に関連する紫外線の波長の記述を修正しました。ご迷惑をおかけしました。

爬虫類の飼育でちょっと難解だと思われる、紫外線・バスキングなどに関連して、光や温度についての知識をまとめました。ここまで長文になるとは思っていなかったので自分でもびっくりです。それだけ複雑で難しいテーマということなのでしょうが、少しは分かって頂けたでしょうか。分からないところ、間違っているところなどあれば、気軽に指摘して下さいね!

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Comment

  1. よよ より:

    ビタミンD3は肉にもほとんどないですが、どうして草食のほうが欠乏しやすいんでしょう?

    • K-ki より:

      よよさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

      ビタミンD3は魚に多く含まれています。雑食・肉食性の亀は基本的に水棲種なので魚を食べる機会が多く、ビタミンD3不足に陥りにくいと考えられます。魚ではなくても、動物の肝臓にはビタミンD3が多く含まれるはずです。

      また、草食性の亀(≒リクガメ)の方が体の大きさに対して甲羅が大きいため、必要なカルシウム量、そしてそれに対応するビタミンD3も多くの量を必要とすると考えられます。これは泳ぐ必要のある水棲亀が水の抵抗を減らすため偏平な形の甲羅なのに対し、リクガメはこんもりとした甲羅であるという違いです。

      このあたりが理由になり、水棲亀(雑食・肉食)よりもリクガメ(草食)の方がビタミンD3不足に陥りやすいと考えています。

  2. DD魔神 より:

    なぜビタミンD3を生成するのは270~290nmの紫外線と表記しているのでしょうか?ビタミンD3の反応は298nmがピークですし(CIE作用曲線より)、そもそも太陽光にしてもメタハラにしても290nm以下の紫外線は微量なので、あえてその帯域の計器を買うのも正解からは遠い気がします。

    • K-ki より:

      DD魔神さん、ご指摘ありがとうございます。

      内容を確認した結果、参照元の情報が間違っていたようです。プレビタミンD3生成のピークスペクトルが298nmという点は、私の方でも確認しました。

      また、自然光のスペクトルがおおよそ290~295nmまでという点は認識しながら執筆していたはずなのですが、途中で抜け落ちてしまい、上記の間違いと合わさって計器の推奨帯域のところにも現れてしまったようです。

      メタハラで290nm以下の波長が出ないという点は知りませんでした。太陽光に合わせてフィルターでカットされているんですね。これを踏まえると、290nm程度まで測定できる計器が適切と言えそうです。

      該当箇所を近日中に修正しておきます。参考になる情報をご提供いただきどうもありがとうございました。

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著者:K-ki
K8ki・けーきはK-kiのシノニム。
AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。

生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。
好きなことはとことん追求するタイプ。

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