白熱電球・蛍光灯の製造禁止?爬虫類/アクアリウム照明の未来

白熱電球
The incandescent light bulb / Anton Fomkin

爬虫類飼育では白熱電球や蛍光灯といった照明がとても重要な役割を果たすということは、このブログでも今までに何度も書いてきました。これはK-ki(K-ki@AquaTurtlium)も含め、特に爬虫類を飼い始めたての初心者の時期に犯しがちな間違いなので、知識に不安がある人はまず以下のページを読んでみてください。

爬虫類と光/温度-バスキング・紫外線ライトと亀/トカゲの生理機能
亀・トカゲ・ヘビ・ヤモリ等の爬虫類の飼育では、紫外線照射のような光の管理と、赤外線ヒーター等による温度管理が重要ですが、理屈が難しく理解していない飼育者が多いです。爬虫類飼育で重要な光・温度管理の方法を詳細に解説します。

もしも照明を疎かにすると、私のように飼育している爬虫類を病気にさせてしまう可能性があります。同じ過ちを犯してしまう人を一人でも減らしたいと思い、このあたりの知識についてなるべく詳しく紹介してきました。

亀の病気
亀の病気に関連する記事のまとめです。病気の判別法・治療法・亀の闘病記録など、飼育している亀が病気になった時や、病気になったかも?という時に役立つ記事をまとめています。亀の調子が悪い時は動物病院に連れていくことも考えましょう。

また、照明はアクアリウムにとっても非常に重要です。ネイチャーアクアリウムのような水草レイアウト水槽の主役である水草は、照明器具で光を当ててやり光合成をさせなければ成長できません。

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しかしつい先日、白熱灯(白熱電球)や蛍光灯が実質的に製造禁止になるというニュースが報道されました。爬虫類の飼育者にとってはかなり大きな問題となることは明白ですし、実際にその問題を取り上げてTwitterで不安をつぶやいている人も見かけました。

今回はこの「白熱灯・蛍光灯の製造禁止問題」について調査し、今後の爬虫類飼育やアクアリウムに与える影響を考察してみました。今回の問題もそうですが、他にも外来生物法や愛護動物管理法など、爬虫類飼育・アクアリウムを楽しむには法律に関する多少の知識は必要です。常にアンテナを張り最新の情報を取りこぼさないようにしましょう。

アクアリウムや爬虫類飼育における照明の重要性

白熱電球や蛍光灯が製造禁止になるとどのような問題が起こるのか、基本的なことではありますが一応確認しておきます。詳細は冒頭にも紹介したように以下の記事にまとめています。

爬虫類と光/温度-バスキング・紫外線ライトと亀/トカゲの生理機能
亀・トカゲ・ヘビ・ヤモリ等の爬虫類の飼育では、紫外線照射のような光の管理と、赤外線ヒーター等による温度管理が重要ですが、理屈が難しく理解していない飼育者が多いです。爬虫類飼育で重要な光・温度管理の方法を詳細に解説します。

爬虫類飼育における照明の役割

爬虫類飼育における照明の役割は、「体温調整」「カルシウム吸収に必要なビタミンD3の合成」「生活リズムの調整」の3つが主要です。本当にざっくりと説明してしまうと、赤外線で体を温め、紫外線でカルシウム代謝に必要なビタミンD3を合成し、(爬虫類にとっての)可視光で生活リズムを調整します。

これを踏まえたうえで、蛍光灯や白熱電球は以下の様な役割を負っています。

蛍光灯は紫外線供給の主要手段

信頼の爬虫類用紫外線ライト「ビバリウムグロー パワーUVB」

爬虫類飼育における蛍光灯の重要な役割は、紫外線を照射することにあります。紫外線を照射することが出来る照明器具は蛍光灯以外にも水銀灯やメタルハライドランプがありますが、これらは蛍光灯に比べるとかなり高価で、安くても2~3万円はします。

しかし蛍光灯であれば1本数千円程度ですから、コスト的には非常に重宝する存在です。性能的には決して高いとはいえませんが、照射時間を長く取ることでカバーできます。また発熱量が小さいという特徴があり、小規模な飼育ケージではほぼ唯一の選択肢となっています。

紫外線を十分に浴びることができないと、骨格の形成に悪影響が及びますし、亀ならば甲羅が柔らかくなったり脆くなったりしてしまいます。爬虫類を健康に飼育するためには蛍光灯はとても重要といえるでしょう。

白熱電球はポピュラーな保温手段

白熱電球は光と同時に赤外線も発する照明器具です。実際には消費電力のうち可視光として放射されるのは10%程度で、70%は赤外線として放射されます。照明器具としては効率が悪いですが、この赤外線放射率の高さを利用して爬虫類飼育では保温器具として利用されています。

バスキングランプと呼ばれるものや、ナイトランプと呼ばれる青い光を出すもの、赤外線照射をうたう赤い光を出すものなどは、全て白熱電球です。上に書いた水銀灯やメタルハライドランプも赤外線は放射しますが、高価ですし光が非常に強いので温度環境だけをコントロールするには不向きです。一方でセラミックヒーターのような赤外線のみを照射するものも利用されますが、こちらは光を全く発さないので白熱電球と比較しても一長一短です。

変温動物であり自分で体温調整をできない爬虫類にとって、温度環境は非常に重要です。例えば餌を食べた後に暖かさが十分でない環境に置かれると、消化不良を起こし死んでしまうこともあります。温度環境をコントロールする白熱電球も、爬虫類飼育にとって非常に重要な事が分かりますね。

アクアリウムにおける照明の役割

上にも書きましたが、アクアリウムでも照明は非常に重要です。水槽を彩るのは淡水ならば水草、海水ならばサンゴになりますが、これらは両方とも光合成をすることで生きていくのに必要なエネルギーを得ています。特に水草用の照明は性能的にもコストパフォーマンスでも蛍光灯が主流です。

蛍光灯なしでアクアリウムは楽しめないと言って良いほど、蛍光灯はアクアリウムにとって重要な飼育器具なのです。

白熱灯(白熱電球)・蛍光灯が製造禁止に

白熱電球と蛍光灯の重要性を紹介したところで、今回の話題である白熱電球と蛍光灯が製造禁止になると報じているニュースを紹介します。爬虫類飼育だけでなく日常生活にも関わることですから、注目度はかなり高かったようです。

"蛍光灯、実質製造禁止へ 20年度めど、LEDに置換"
抜粋

政府は、エネルギーを多く消費する白熱灯と蛍光灯について、国内での製造と国外からの輸入を、2020年度をめどに実質的に禁止する方針を固めた。省エネ性能が高い発光ダイオード(LED)への置き換えを促す狙いだ。

<-中略->

政府はLEDと蛍光灯それぞれについて、品目ごとに省エネ性能が最も優れた製品の基準を満たさないと製造や輸入をできなくする「トップランナー制度」で規制してきた。来夏をめどにつくる省エネ行動計画に、照明についての品目を一つにまとめることを盛り込む。LED並みの省エネを達成するのが困難な白熱灯と蛍光灯は、事実上、製造や輸入ができなくなる見通しだ。来年度にも省エネ法の政令を改める方針。

ここでは朝日新聞デジタルのニュース記事を紹介しましたが、他にもたくさんのメディアが同様の内容を報じていました。Twitterでもこれらのニュースを取り上げ、今後の展開を心配する声が散見されました。

今回は爬虫類飼育とアクアリウムを主に取り上げていますが、白熱電球は小動物の飼育では保温器具として広く利用されています。爬虫類飼育やアクアリウムに限らず、ペットを飼っている人からは不安の声が多く挙げられているように感じました。

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照明業界の団体・企業による解説

しかしこのニュースが世間を賑わせてから数日後、照明業界の団体や企業から報道内容を否定するような発表がされ始めました。

"蛍光灯製造に関するマスコミ報道に対するご説明"
抜粋

最近、新聞、テレビ等で白熱電球や蛍光ランプが2020年をめどに実質製造禁止となるという報道がなされ、各方面からのお問い合わせが殺到しておりますので、当工業会が経済産業省に確認した内容をご説明致します。

エネルギー消費効率の高い製品の普及促進をめざし、製造事業者等に機器等のエネルギー消費効率の向上努力を求めているトップランナー制度に関して、照明製品を一本化した新たなトップランナー制度の導入検討がこれから開始されますが、これは2020年に白熱灯(白熱電球)、蛍光灯(蛍光ランプ)の製造を禁止するものではないとのご回答をいただきました。

トップランナー制度につきましては、まだ政府と製造事業者間の議論も始まってお らず、現時点で具体的な内容は一切決まっておりません。

<-後略->

こちらは照明関連器具の製造及び販売を行う会社が会員となって運営する「一般社団法人日本照明工業会(JLMA)」の発表です。照明に関する規格・基準の作成や統計調査、技術動向調査などを行っており、照明業界では権威のある存在です。

また、照明機器を中心として事業展開している大手電機メーカーの岩崎電気からも、同様の発表が行われています。

岩崎電気より白熱電球、蛍光灯製造に関するマスコミ報道に対するご説明です。

照明業界においては主導的な立場にある団体・企業が発信している情報ですし、照明器具の省エネ化推進政策であるトップランナー制度(トップランナー方式)を主導する経済産業省にも確認をとっているとのことですから、メディアの報道よりも信頼性がありそうです。どうやら不正確な情報を流され照明業界側もやや迷惑している様子です。

白熱電球も蛍光灯も製造禁止にはならない!

ということで、爬虫類飼育者やアクアリストの中にはニュースを見て心配していた人も多いと思いますが、とりあえずは白熱電球や蛍光灯が製造禁止になることはなさそうです。トップランナー制度で定められる性能基準によっては蛍光灯や白熱灯の立ち位置も変わってくるかもしれませんが、「禁止」というような大きな変化は怒らないでしょう。ひとまずは、安心してください、まだ使えますよ!

将来的には不安が残る

照明廟会側からの発表にもあるように、2020年に製造禁止となるというのはどうやら誤報のようですが、だからといって白熱電球や蛍光灯が今後もずっと規制されないという保証はありません。特に白熱電球の製造中止は世界的な流れですし、日本でも大手企業が次々と撤退しています。ペット用品としての白熱電球も、いつかは姿を消す事になるでしょう。

今後の白熱電球や蛍光灯の規制を考慮し、これらの飼育器具を作っているメーカーの方には、早いうちから代替製品を検討しておいて欲しいです。またユーザーとしては、規制対象外となるHIDランプ(メタハラ・水銀灯などの総称)への移行も検討の余地がありますが、やはり価格が高いのがネックです。白熱電球や蛍光灯が規制されるまでには、もう少し値段がこなれてきて欲しいですね…。

コメントを頂いて知ったのですが、HIDランプのうち高圧水銀灯は、別の国際条約(水銀に関する水俣条約)の影響により2020年に製造が禁止される見込みです。メタハラは規制対象外なのでとりあえずは大丈夫ですが、白熱電球や蛍光灯の規制を加味して水銀灯に移行するというのは選択肢として不適切でした。訂正させていただきます。 水俣条約に関してコメントを頂いたので補足します。水俣条約では、特殊用途のライトは規制対象外とする、とされています。この「特殊用途ランプ」には、紫外線ライトも含まれるようですが、家庭での爬虫類飼育を主目的にしたライトが「紫外線ライト=紫外線を発生させるためのライト」として認定されるかは、正直なところ自信がありません。今後も動向を注視する必要があると言えるでしょう。

アクアリウムやトカゲ・ヘビ・亀などの爬虫類の飼育に使う照明を選ぶ際には、今回紹介したような問題があることも心の片隅にとどめておき、将来的には照明器具をどう移行していくかも考えておいたほうが良さそうです。

今回は白熱電球・蛍光灯の製造禁止を伝えたニュースと、それを訂正する照明業界からの発表を紹介しました。とりあえずまだしばらくは白熱電球も蛍光灯も使えそうですが、今後少しずつ規制されていく可能性も十分にあるため、この問題については注意しておきましょう!

コメント

  1. ポタカ より:

    私もこれは気になってます。
    冬眠ができないカメには死活問題な気もします。
    水銀の関係でメタハラと水銀灯も禁止になる的な事をみたので心配しましたがなんとか例外で残して欲しいですね。

    • K-ki より:

      ポタカさん、コメントありがとうございます。

      確かに暖かい地域の亀や爬虫類の飼育のハードルがかなり上がってしまうことになりますね。セラミックヒーターが主流になるのかもしれませんが、混乱は確実に生じそうです。

      水銀灯の話は知らなかったので調べてみましたが、どうやらメタハラは規制対象外のようです。

      一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)の製造・輸出・輸入が2020年末日までに禁止されます。蛍光ランプも2017年末日までに禁止されますが、日本のメーカーのほとんどの蛍光灯は、引き続き製造・販売が可能です。
      しかし水銀灯は規制される可能性がありますね。情報ありがとうございます。本文中にも追記させていただきます。

  2. 匿名 より:

    高圧水銀ランプは、一般照明用ランプに付いては規制範囲内(代替えランプとしてメタルハライドランプ等が残るため)かもしれませんが、照明用としてではなく爬虫類飼育用などの様な特殊ランプに付いては対象外ではないのでしょうか?例えば高圧水銀ランプの一種でありますセルフバラスト水銀ランプなどです。(紫外線と赤外線を同時に放射する爬虫類飼育用ランプです)

  3. K-ki より:

    コメントありがとうございます。少し古い記事ですので、頂いたコメントを踏まえて簡単にですがもう一度調べてみました。

    特殊用途のライトが水俣条約の適用対象外というのはご指摘の通りです。ただし、爬虫類飼育用のライトが特殊用途として認められるかについては、定かな情報はありませんでした。紫外線ランプは一応特殊用途とされるようですが、爬虫類飼育用のランプは基本的に家庭向けのものですし、簡単に例外認定されるかは正直分からないというところです。今後も情報を確認していく必要があると思います。

    また、セルフバラスト水銀ランプは安定器の必要ない水銀灯を指す言葉で用途は関係ありませんので、「セルフバラスト水銀ランプは規制対象外」という理屈は成立しないと考えます。

    以上、ご指摘等ございましたらお気軽にコメントください。また、指摘いただいた内容を記事本文に追記しておきます。ありがとうございました。