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生物濾過と硝化バクテリアの働きまとめ!アクアリウム水槽管理の基礎

2013/02/11

濾過槽と水中ポンプを設置

こんにちは!アクアリストのK-ki(K-ki@AquaTurtlium)です。

このページは、アクアリウムの要とも言えるろ過について解説する連載「ろ過の原理・仕組みと利用方法」の第2回です。この連載に関連するページは以下の通りとなっています。ぜひ、関連ページもあわせて読んでみてくださいね。

前回の記事を書いてからずいぶん時間が経ってしまいました。次回の記事執筆までも、また少し時間がかかるかもしれませんがご容赦ください。じっくり解説していく予定です!

アクアリウムにおけるろ過の仕組み
物理ろ過/化学ろ過/生物ろ過の効果まとめ!アクアリウムの基礎

アクアリウムで生き物を飼育する水を浄化するために利用されるろ過は、物理ろ過・化学ろ過(吸着ろ過)・生物ろ過の3つに大別されます。このページでは、それぞれのろ過の種類について、原理や特徴を解説します。ろ過について学び、熱帯魚やエビを上手く育ててあげましょう。

前回は濾過の種類を紹介しました。物理濾過・化学濾過・生物濾過の3つがありましたね!

このうち生物濾過についてはより詳しい説明が必要だと考えたので、今回の記事では生物濾過の仕組みについて説明します。

水の汚れとは?

アクアリウムをしていたり、水棲カメ、半水棲カメを飼育していると、当然ながらだんだん水槽の水が汚れてきますよね。その汚れは目に見えるようなゴミや、水面に浮かぶ油(油膜)だけではなく、目には見えない汚れというものも存在します。水槽という限られた空間の中で生き物を飼っていると、そういった目に見えない汚れが知らず知らずのうちに蓄積していき、生き物を死なせてしまう場合もあります。

従って、アクアリウムではこのような目に見えない汚れを取り除く必要があります。その役割を担うのが「ろ過」なのです。

では、具体的に「目に見えない汚れ」とは何を指すのでしょうか?

例えば、餌を与えたときに、生体がそれを全て食べ切れずに、一部が残って砂利の間や流木の陰などの気付かれない場所に隠れこんでしまったとします。こういった残餌は次第に腐っていき、水を汚すことになりますね。他にも水草の枯葉や魚・エビの死骸など、有機物は基本的に水槽の中で腐り、水質悪化の原因となります。

この「腐る」という現象は、バクテリア(この場合は腐敗菌)の働きによって、有機物がアンモニア等に分解されることを意味します。この分解の結果生じるアンモニアは、生き物(魚やエビなど)にとって有毒であり、これこそが「目に見えない水の汚れ」の正体なんです。

補足説明

アクアリウム水槽の目に見えない汚れ(有毒物質)とは、アンモニアのことである。

また、水槽中の生き物は餌を食べ、有機物(糞)やアンモニア(魚類の尿)といった形で排泄します。こういった排泄物も同様に、水の汚れとなります。

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好気性バクテリアと嫌気性バクテリア

生物ろ過の説明に入る前に、「好気性バクテリア」と「嫌気性バクテリア」という言葉の意味を説明しておきます。この言葉を知った上で以下の文章を呼んだほうが、説明が理解しやすいためです。

好気性バクテリア

好気性バクテリアとは、生きていく上で酸素を必要とするバクテリア(細菌)のことです。酸素を利用する「好気呼吸」によって生きるためのエネルギーを獲得することから、「好気性」と呼ばれます。

嫌気性バクテリア

嫌気性バクテリアとは、好気性バクテリアの逆で、生きていくために酸素を必要としないバクテリアのことです。多くの生物は酸素を利用して呼吸しエネルギーを生み出しますが、嫌気性バクテリアは酸素の代わりに硫酸塩や硝酸塩を利用した「嫌気呼吸」によってエネルギーを生み出します。嫌気呼吸を行うことから、「嫌気性」と呼ばれます。

好気性バクテリアによる生物濾過(一般的な生物ろ過)

今回紹介する生物濾過には、バクテリア(=細菌)の働きが大きく関わっています。そこで、ここではバクテリアの働きに焦点を当てながら、生物ろ過について説明していきます。

水の汚れが成体の排泄物や有機物が分解されたアンモニアだということは説明しました。では、どうやってこのアンモニアを水槽内から除去すればいいのでしょうか。お察しの通り、ここでバクテリアの力を借りることになります。

腐敗細菌(従属栄養細菌)

まず水槽内の有機物(タンパク質)をアンモニアに分解するバクテリアが必要となります。それが従属栄養細菌です。従属栄養細菌は生育に必要な炭素を得るために有機化合物を利用し、アンモニアを生産します。有機物のあるところに出現し、ものすごいスピードで増殖します。

特にタンパク質を分解して、アンモニアなどに分解する、つまり有機物を腐敗させる細菌を総じて腐敗細菌(腐敗菌)と呼んでいます。

ニトロソモナス(独立栄養細菌)

ニトロソモナスは、アンモニアを分解し、亜硝酸塩を生成するバクテリアです。アンモニアは生体にとって有毒だという話はしましたが、ニトロソモナスによって生成される亜硝酸塩もまた、生物にとって有毒です。淡水魚はこの亜硝酸塩に対して強い耐性をもっているようですが、やはり毒性があることに代わりはなく、更なる分解が必要になります。

ニトロスピラ(独立栄養細菌)

ニトロスピラは、亜硝酸塩を分解し、硝酸塩を生成するバクテリアです。ここで生成される硝酸塩は、生体にとって無害とはいえないものの、アンモニアや亜硝酸塩と比べるとその毒性は非常に低いです。また、硝酸塩には微弱な毒性の他に、水に溶けて酸性を示すという性質があります。従って、硝酸塩の蓄積は生体への毒性があるという面と、極端な低pH環境になってしまうという2つの面で危険性があると言えます。

一般的な生物濾過では、アンモニアをこの硝酸塩まで分解し、その後水換えによって硝酸塩を水槽外に排出することで水質を保ち、上記の危険性を回避します。また、ニトロソモナスやニトロスピラは、アンモニアを亜硝酸や硝酸塩へと分解する働きから、総じて硝化バクテリア(ろ過バクテリア)と呼ばれます。

結局のところ、水質を維持するためには水を変えなくてはならないのですが、硝化バクテリアの働きによって水換えの頻度を下げることができる、というのが濾過を利用する大きなメリットです。

補足説明

ろ過のメリットは、硝化バクテリアの働きによってアンモニアを毒性の低い硝酸塩に分解し、水換えの頻度を下げられること。

以上から、水質の維持には、上で紹介した腐敗菌や硝化バクテリアがバランスよく水槽内に生息していることが必要になります。基本的に腐敗菌はほぼどんな環境でも勝手に湧いてくるので、アクアリウムでろ過を確立するポイントは硝化バクテリアを如何に水槽内に定着させるかです。

この、水槽内に硝化バクテリアが定着できる環境を整える作業を、水槽(ろ過)の「立ち上げ」と呼びます。具体的な濾過の立ち上げ方は、また別のページで紹介する予定です。

嫌気性バクテリアによる生物濾過(還元ろ過)

ここまでに紹介した、好気性バクテリアによる有機物の分解と適度な水換えで水質の維持は可能です。しかしさらに発展して、水換えもせずに水質を維持することは可能なのでしょうか。

答えは「理論上は可能」とでもいいましょうか。そもそも自然界では水換えなんてないわけで、どこかで硝酸塩も分解され完全に無害な物質にされなければいつか魚やエビは絶滅してしまいますね。この硝酸塩を無害な物質(窒素)に分解するのが、この項目で紹介する「嫌気性バクテリア」の仕事です。しかし、この嫌気性バクテリアを水質浄化に役立てるには次のような難点があります。

嫌気領域の確保が難しい

硝酸塩を窒素に分解することを、還元濾過や脱窒と呼び、嫌気性バクテリアは、嫌気呼吸(特に硝酸塩呼吸)を行うことでこの還元濾過を実現しています。しかし、嫌気性バクテリアはいつでも嫌気呼吸を行うわけではなく、酸素のある場所では好気呼吸を行うため、還元濾過をしてくれないのです。

嫌気性バクテリアに還元濾過をしてもらうためには、酸素のない「嫌気領域」を作らなくてはなりません。しかしその一方で、硝化バクテリアや魚などが生きていくために、水槽内の水には十分な酸素が含まれている必要があります。この相反する2つの条件を満たす環境を作らなくてはならないことが、一つ目の難点です。

有害な嫌気性バクテリアの排除が難しい

水槽の底に分厚く底砂を敷いてしまえば、水中は好気領域、底砂の奥深くは嫌気領域となり、上記の相反する要求を満たすことは可能です。しかし、それだけでは還元濾過は上手く行きません。

嫌気性バクテリアには還元濾過に貢献するものだけでなく、有毒な硫化水素を作り出すものも存在します。還元濾過を実現するためには、硫化水槽を生み出す有害な嫌気性バクテリアの繁殖は抑え、硝酸塩を分解するを行う有益な嫌気性バクテリアの繁殖のみを促進させなければなりません。

この微妙なバランスを水槽という限られたスペースで作り出すのが非常に難しいです。

還元濾過の途中生成物の危険性

還元濾過では、硝酸塩を窒素に分解すると説明しましたが、その過程は正確には以下の流れを辿ります。

補足説明

【還元濾過の分解過程】

硝酸塩 ⇒ 亜硝酸塩 ⇒ 窒素

実は還元濾過では、硝酸塩を一度毒性の強い亜硝酸塩を経由して窒素に分解するのです。従って、仮に還元濾過がうまくいっていたとしても、何かの拍子で問題が生じたときに水槽内の亜硝酸塩濃度が上昇して危険な状態になる恐れがあります。水質維持のためにやっていることが、水質悪化につながってしまうこともあるんです。

以上の問題点を考えると、還元濾過を取り入れるということはリスクも伴い、一概にお勧めできることではありません。しかし、労力の削減や自然環境の再現という観点からも非常に魅力的な方法ではあります。

この還元濾過を扱うフィルターとして、トットというメーカーから「パーフェクトフィルター」というろ過フィルターが販売されています。扱いの難しい還元濾過を対象にしたろ過フィルターは非常に少ないため、興味のある人は試してみてください。

有機物サイクル

今まで説明してきた内容のまとめとして、水槽内の有機物の流れを図にしました。

アクアリウムにおける水槽内の有機物サイクル

この図でポイントとなる点をいくつか説明します。

分解者としての小型生体

図中では、大型生体の排泄物が小型生体の餌となっています。もちろん小型の生体が全て大型の成体の排泄物を餌として食べるわけではありませんが、ドジョウやヌマエビ類などはこのような「水槽内の掃除屋」としての役割も果たしてくれます。

こういった生体のおかげで、アンモニアが生成される量が減り、水質の維持へとつながるのです。つまり、水槽内に豊かな生態系を作ることは水質の維持につながるということです。もちろん成体の数を増やしすぎては結局水の汚れが増えてしまい意味がありません。あくまで大切なのは「バランス」です。

リン酸

残餌からはアンモニアだけでなくリン酸も生成されます。リン酸は水草の栄養やコケの原因となる物質で、水草水槽の場合は飼育水にある程度の量が含まれていなければなりませんが、やはり多すぎると生体に有害となります。

このリン酸塩を取り除く方法は、換水または大量の水草に栄養分として吸収させるといったものがあります。硝酸塩ほど意識される存在ではありませんが、こういった物質もあるので還元濾過を行ったとしてもたまには換水すべきだと思われます。

硝酸塩と水草

リン酸と同じように、硝酸塩からも水草に向かって矢印が出ています。お察しの通り、水草は硝酸塩も栄養分として吸収してくれます。じゃあ水草を植えれば水換えしなくてもいいじゃん!と思うかもしれません。確かにそれは半分くらいは正解です。

ただ、水草の吸収する硝酸塩の量は少なく、本格的な水草水槽のように、生体の量に対して水草の量が非常に多いような環境でないと硝酸塩の吸収量が生成量に追いつきません。逆に言えばそういった環境では、水草の成長に必要な硝酸塩が不足するので、意図的に硝酸塩を肥料として添加する場合もあります。

まとめ:生物ろ過と硝化バクテリアの働き

今回はアクアリウムにおける生物ろ過について、硝化バクテリアの働きの観点から解説しました。最後に、このページの内容をまとめてみましょう。

生物ろ過と硝化バクテリアの働き

  • 水の汚れ(有毒物質)とは、アンモニアのことである。
  • ろ過バクテリアには好気性バクテリアと嫌気性バクテリアの2種類が存在する。
  • 好気性バクテリアによりアンモニアは亜硝酸を経由して毒性の低い硝酸塩に分解される。
  • 嫌気性バクテリアにより硝酸塩は亜硝酸を経由して窒素に分解される。
  • 水槽内では好気性バクテリアによるろ過が主流

ちなみに、当サイトでは亀水槽にろ過を導入する方法も紹介していますが、熱帯魚やエビならまだしも亀のような爬虫類ははここまで濾過に気をつかわなくても死にません。あくまで、亀の飼育においては換水の頻度を下げるため・魚やエビとの混泳を可能にするためのものです。毎日換水するスタイルの方はそれで問題はありません。

でも、もしカメをレイアウト水槽で飼ってみたい!とか、いろんな生き物と混泳させたい!と思っている方は、参考にして頂けると幸いです。

さて、連載「ろ過の原理・仕組みと利用方法」の第3回となる次回は、濾過方式とその特徴について紹介します。ぜひ、次回も読んでくださいね。

ウェット式?ドライ式?水槽維持のためのろ過方式とその特徴

アクアリウムの濾過方法として重要な生物ろ過の中でも、ウェット式、ドライ式、ウェット&ドライ式と呼ばれる分類について解説します。多くのろ過フィルターはウェット式ですが、ろ過能力面で勝るのはドライ式という説もあります。それぞれのメリット・デメリットをまとめます。

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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