熱帯魚・観賞魚 病気・疾患

観賞魚のエロモナス感染症の原因・症状と効果的な治療法

2014/08/09

観賞魚のエロモナス感染症(赤斑病)

熱帯魚や金魚・日本産淡水魚などを含む観賞魚を飼育していると魚が病気になってしまうことがあります。その中でも特に多いのがエロモナス感染症(アエロモナス感染症)と呼ばれる病気です。不治の病とも称されるこの病気は、感染の報告が多いにもかかわらず発症すると治る可能性が低い非常に厄介な病気です。

市販の魚病薬などでの治療が一般的ですが、今回はちょっと違ったアプローチで、効果的と言われている治療法を発見したのでまとめます。この記事を読めばわかるとは思いますが、もちろん必ずしも効果を保証するわけではないので、ここで紹介する方法を利用する場合は自己責任でお願いします。

エロモナス感染症とは?

エロモナス感染症とはその名の通り、エロモナス菌への感染により発症する病気です。進行すると手遅れになる場合が多く治療が難しい病気とされています。エロモナス菌は世界中の淡水中に存在している細菌で、魚だけが感染するわけではなく人間も感染することがあります。人間が感染した場合にもかなり重症になることがあるほど恐ろしい菌とされています。

この菌は大別すると鞭毛を持ち運動する事ができる運動性エロモナスと、鞭毛が無く運動しない非運動性エロモナスに分けられ、どちらも観賞魚の病気としてはメジャーな病気を引き起こします。運動性・非運動性エロモナスは両方とも病原性は強くなく、健康な魚が感染して発症することはほとんどありません。水質が悪いなどの原因で魚が調子を崩している時に発症する日和見感染症に当たります。

運動性エロモナス症

エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)という菌に感染することによって発症する病気です。この菌は水温 5~40℃、pH 6~11、塩分濃度 0~4%で発育可能でありとても適応力の強い菌です。特に25~30℃という高水温でよく増殖するという点が特徴です。

人間がこの菌に感染すると急性胃腸炎、いわゆる食中毒を引き起こします。また、以前に川で怪我をしたアメリカ人女性がこのエロモナス・ハイドロフィラに感染し、両手と両足の一部を切除するまで重症化したというニュースが報道されたこともありました。

参考「人食いバクテリア」感染女性が退院 両手と両足の一部切除 – MSN産経ニュース(元記事削除済)

こんなことにはそうそうならないと思いますが、アクアリウムや水棲生物の飼育をしている人はちょっと怖くなってしまいますよね。怪我をした手では水槽を触らない方がいいかもしれません。

非運動性エロモナス症

エロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmooicida)という菌に感染することによって発症する病気です。こちらはエロモナス・ハイドロフィラにくべて比較的低温(20℃程度)を好み、高温には弱いという特徴があります。軽くググッた感じでは人間への感染の話は見つからなかったので、こちらはあまり人間には影響がない菌なのかもしれません。人間の体温は36℃とかですから、この菌には少し高過ぎるのかも…。

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エロモナス菌による病気

エロモナス菌のことを少し知ってもらったところで、今度はその菌がどんな病気に関係してくるのかを紹介します。以下がその病気のリストですが、結構多いです。熱帯魚の病気の原因の結構な部分をこの菌が占めているような感じがありますね。病名の横に原因となるエロモナス菌の種類を示しておきます。

赤斑病:運動性エロモナス

運動性エロモナス菌による赤斑病を発症したカゼトゲタナゴ

この記事を書くきっかけにもなったのが、ウチの90cm水槽で飼育しているカゼトゲタナゴが発症した赤斑病です。画像を見てもらうとわかると思いますが、体表に皮下出血による赤斑が現れています。これは少し病状が進行した状態で、発病初期には鰭や体表が粘液の分泌によって白くなります。そしてしばらくしてから皮膚や皮下に出血(赤斑)が出てきます。

重症の場合には腹部が赤く変色して表皮が剥がれ、出血し潰瘍になったり肛門が充血して赤くなったりします。他の病気を併発しやすいそうです。

立鱗病(松かさ病):運動性エロモナス

鱗が松かさのように逆立つことから別名松かさ病と呼ばれています。体表に出血を伴うことも多く、腹部が膨張してきたり食欲が減少したりします。

エロモナス菌の感染によるものではなく、内臓に脂肪が溜まるなどの生理障害によっても同様の症状が見られることがあります。その場合は全身の鱗は立ちますが体表の充血はなく、体は透明感が強くなります。

ポップアイ:運動性エロモナス

ポップアイという病気というよりは立鱗病の症状の一つとして扱われることのほうが多いかもしれません。眼球が突出してくるような症状です。

鰭赤病:運動性エロモナス

鰭・体表・肛門が赤くなったり、皮膚が剥がれて粘膜が滲み出してくる剥離性カタルという症状が見られます。他にも肝臓がうっ血したり腎臓が腫れ上がったりするらしいです。赤斑病と似たような症状だと思われます。

穴あき病:非運動性エロモナス

ここまでは運動性エロモナス菌による病気でしたが、この穴あき病は非運動性エロモナス菌による病気です。鱗1枚程度の範囲で充血が見られることから始まり、充血範囲の拡大、鱗の脱落、さらにその下の真皮が充血して筋肉が露出、というような段階を踏んで病状が進行します。これが魚の体に穴が開いたように見えるので穴あき病というそうです。致死性は低いですが傷跡が残ることがあり、見栄えが大事な観賞魚には罹ってほしくない病気です。

新穴あき病:その他のエロモナス

従来のエロモナス・サルモニシダとは異なる非定型エロモナス・サルモニシダによって発病する新しいタイプの穴あき病です。症状は穴あき病とほぼ同じですが、進行が早いらしいです。市販されている魚病薬では効果が無いなんて話もあります…。

治療法

エロモナス菌が原因となる病気をひと通り紹介したところで、次はその治療法を紹介します。一般的な方法からあまり知られていない方法まで5種類の方法を紹介します。

薬浴

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魚の病気の基本は薬浴です。エロモナス菌に効果があるとされているのはグリーンF ゴールド(顆粒・リキッド)、観賞魚用パラザンD(観パラD)など主成分がオキソリン酸である薬剤です。これらを溶かした水中に病気に罹った魚をしばらくの間泳がせておくという方法が薬浴です。分量は説明書に従えばいいと思います。

これらの他にも塩やメチレンブルー、マラカイトグリーン、過酸化水素などでの薬浴にも部分的な症状に対する効果が認められているようです。塩の場合には濃度は0.5%くらいが良いという情報が多いようですが、0.1%が良いとか1%が良い等といろいろな情報があって定かではありません。私も塩浴は試してないのでどのくらいの濃度が良いのかは正直なところよく分かりません。

ココア浴

ココアの成分がエロモナス菌のもつアルカリ性のバリアに対しダメージを与えるので、薬の効果を高める効果があるそうです。砂糖などを含まない純ココアを6リットルに対し1g溶かした水の中に2~5日ほど魚を泳がせておくという方法です。

ただこの方法はあまり効果があったという報告がなく、否定的な意見を持っている飼育者が多いようです。

水温を上げる

穴あき病の原因となるエロモナス・サルモニシダが高温に弱いという性質を利用し、水温を上げて治療する方法です。水温は25℃以上にするのが良いとされています。

熱帯魚水槽のヒーター・サーモスタットの選び方とおすすめ

アクアリウムで冬場に水槽水温を維持するため、ヒーターやサーモスタットを使用し水を加熱する際の注意点や、オススメの商品も紹介します。ヒーター・サーモスタットは正しく使わないと事故に繋がるので、安全上の注意点も紹介します。

この方法は非運動性エロモナスであるサルモニシダには効果がありますが、運動性エロモナスのハイドロフィラは高温のほうが活動が活発になるので逆効果です。原因となっているエロモナス菌をしっかり見極めた上で行いましょう。

殺菌灯

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アクアリウム用品に殺菌灯というものがあります。飼育水を紫外線を照射するライトが設置された管に通すことで病気の原因となる寄生虫・ウィルス・細菌を殺してくれるという優れ物です。

効果は高いと思われますが、それなりに高価です。また、予防には大きな効果があるが一度発病してしまった場合には薬浴などの治療をしっかり行う必要がある、という意見もあります。殺菌灯は発熱するので小さな水槽には向きませんし、エロモナス菌は常在菌なので殺菌灯といえども全くいない状態にまではできないと思います。状況を見極めた使用が求められると思います。

メトロニダゾール(フラジール)

ウチで飼育している亀が以前病気にかかった時に、その治療のためにメトロニダゾールという薬を個人輸入しました。メトロニダゾールはは抗生物質の1つでフラジールやアスゾールという名前で販売されており、色々な細菌に効果があります。ディスカスの飼育においてはよく使われる薬の一つのようです。

このメトロニダゾールを使ったエロモナス感染症の治療方法が2ちゃんねるの【不治の病】運動性エロモナス症を治す方法というスレで話題になっていました。ちょうど手元にメトロニダゾールがあり、赤斑病を発症してしまったカゼトゲタナゴの治療法を考えていたのでこの方法を試してみることにしました。メトロニダゾールは入手するが少し面倒ですが、下の記事で詳しい入手方法や成分・使用法などを解説しています。参考にして下さい。

メトロニダゾール(フラジール)の入手・使用法
亀や魚の病気に!メトロニダゾール(フラジール)の入手&使用法

飼育中の亀(ニホンイシガメ)が呼吸器感染症(肺炎)に感染し、現在治療中です。身近に信頼できる動物病院がないため、過去の診察や処方箋を参考に投薬治療を行うことにしました。治療薬「メトロニダゾール」の概要と個人輸入による入手、使用法等を紹介します。

メトロニダゾール(フラジール)による治療の手順

ではメトロニダゾール(フラジール)を使ったエロモナス感染症の治療手順を紹介していきます。

メトロニダゾールの錠剤を粉末にする

メトロニダゾール(フラジール)の錠剤を粉末にする

まず、上で紹介した記事を参考に購入した錠剤を乳鉢などで粉末にします。色々なコーティングがされているので、そのコーティングを剥がします。

薬浴用の容器を用意する

メトロニダゾールの粉末を溶かす

薬浴用の容器を用意して水を張り、メトロニダゾールの粉末を溶かします。私は手元に手頃な水槽がなかったのでバケツで代用することにしました。分量は10ガロン(38リットル)に対してメトロニダゾールが100mgから250mgとされています。私の購入したアスゾール錠250mgは1錠あたりメトロニダゾールを250mg含んでいるので、大体5リットルに対し10分の1錠分くらい使用することにしました。

コトブキのボトムインフィルターをエアーストーン代わりに

この薬液を1週間に渡って2日に1回のペースで交換します。少し長丁場になるのでエアーポンプも設置しておきました。上の画像はちょうどエアーストーンがなかったのでコトブキのボトムインフィルターをエアーストーン代わりにしています。

翌日の様子

エロモナス感染症をフラジールで治療中のカゼトゲタナゴ
エロモナス感染症をフラジールで治療中のカゼトゲタナゴ その2

うーん…。尾びれがボロボロになってきてるし充血も広がってる気がする…。もしや手遅れだったかも。

さらにその翌日

エロモナス感染症(赤斑病)で死んだカゼトゲタナゴ
エロモナス感染症(赤斑病)で死んだカゼトゲタナゴ その2

治療していたカゼトゲタナゴが死んでしまいました。闘病開始後から尾ぐされ病のような症状も発症しだしてしまい、結局そのまま回復しませんでした。2ちゃんねるではかなり効果的な方法とのことでしたが、うちの場合はうまく治してあげることはできませんでした。原因を少し考えてみます。

  • 環境変化のストレスが最後の体力を奪った
  • メトロニダゾールの濃度のミス
  • そもそも手遅れだった

考えられるのはこんなところです。メトロニダゾールの濃度のミスというのは、実は5リットルに対して10分の1錠のところを最初間違って倍の5分の1錠入れてしまったんです。その後すぐに気づいて濃度を薄めましたが、これが良くなかったのかもしれません。そうでなければ、もう病気に打ち勝つだけの体力が残っていなかったということだと思います…。

カゼトゲタナゴのいた90cm水槽は、以下の記事を見てもらうと分かるようにレイアウトが複雑で、泳ぎの速い魚をすくい出すのは本来難しいです。

亀のレイアウト水槽飼育 アクアリウムとの融合
亀とアクアリウムの融合!レイアウト水槽で魚との混泳飼育!

アクアリウムの濾過やレイアウト技術を取り入れ、亀の水槽を出来る限り綺麗にレイアウトしてみました。ニホンイシガメ・カゼトゲタナゴ・シマドジョウが混泳しており、底砂は田砂、水草はウィローモスが中心の爽やかな陰性レイアウトです。

以前カゼトゲタナゴを人口繁殖させようと思って水槽から取り出そうとしたことがあったんですが、その時は物陰に逃げ込まれて全然捕まえられず諦めました。それが今回治療するときにはとても簡単に捕まえられたので、かなり弱っていたのかもしれません。

…と、いうことで今回の治療は結論としてはうまく行きませんでした。

エロモナス感染症対策のまとめ

長文になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。長文の割に実際の治療はうまく行っておらず申し訳ないです。

ですが2ちゃんねるでは多くの人が治療に成功しているようだったので、エロモナス感染症の治療法の一つとしてメトロニダゾールを使った方法はいくらか有効性があるはずだと思います。もし試した方がおられたら結果を報告してくださると嬉しいです。

魚の病気への対策としては、治療よりも予防の方がずっと大事です。アクアリウムで飼育する観賞魚はほとんどの種類が体が小さく、体力もあまりないため、一度病気にかかってしまうと完治させるのは簡単ではありません。

生体導入!熱帯魚やエビの水合わせ&トリートメントの方法

熱帯魚やエビの水槽への導入を安全・慎重に行うための鍵になる「水合わせ」と「トリートメント」について解説します。水合わせは環境の変化で生体にダメージを与えないために、トリートメントは病気の蔓延を防ぐために、とても重要です。

魚の病気の予防には、新規導入時のトリートメントが効果的です。病原菌を外部から自分の水槽の中に持ち込ませないことは、当たり前ですがとても重要です。常在菌であるエロモナス菌に対してはあまり有効ではありませんが、トリートメントによって防げる病気もたくさんあるので、その方法は知っておいた方が良いですよ!

参考サイト

この記事の執筆にあたり以下のサイトを参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

参考日本動物薬品株式会社 | 金魚の病気について
参考NISHIKIGOI

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K-ki

K8ki・けーきはK-kiのシノニム。 AquaTurtlium(アクアタートリウム)を運営しています。 生き物とガジェットが好きなデジタル式自然派人間。でも専門は航空宇宙工学だったりします。 好きなことはとことん追求するタイプ。

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